多くの男性を悩ませている薄毛。
巷には、薬や食べ物、髪の洗い方など、「薄毛を改善する」と謳う商品が溢れています。しかし効果が不確かなものも多く、薄毛が改善されずに悩み続けている人も多いようです。
今回は、薄毛に関する正しい知識や、髪型やファッションなどの対策法などについて紹介していた『あさイチ』を中心に、薄毛対策の情報をまとめていきたいと思います。
薄毛に悩む人の声
現在、日本の成人男性の3人に1人が薄毛であると言われています。
その要因の8割が遺伝であるため、努力ではどうしようもできない面も厳然として存在するようです。
番組では、そんな薄毛に悩む4人の男性が覆面で登場し、薄毛が進行する経緯や心情について赤裸々に語っていました。
「年々徐々に進行して、26歳くらいでスキンヘッドにした。」
「30歳くらいから、夏場に髪を洗っていると抜けるようになってしまった。」
「20代後半からハゲ始めて、現在は60歳。カツラを着用するようになってもう30年ほどになる。」
皆さん比較的若い年齢で薄毛が気になりだしたようです。
薄毛は心理状態に大きな影響を及ぼします。
「鏡を見るたびに心が沈んだ時期があった。」
「どんどん自信を失っていく。」
「電車に乗っていると女性の目線を感じる。」
髪を失うにつれて自信まで失ってしまう傾向にあるようです。
治療が可能な薄毛とは?
薄毛の進行度合いを示す「ハミルトン・ノーウッド分類」というものがあります。
あさイチより
額の後退が始まるステージ1から進行していき、ステージ7では頭頂部の毛が薄くなり、薄毛が頭部全体に広がります。
ある医師が患者4800人のデータをもとに、各ステージに到達する 平均年齢を導き出したところ、多くの人は20代半ばで薄毛が始まり、以後5年ごとに1段階ずつ上がっていく傾向があることがわかりました。
この結果から、治療の効果が得やすいのは40代以下であることもわかりました。40歳以下であれば多くの人はまだステージ4未満です。額と頭頂部の薄毛がつながる前に治療を始めれば効果が出やすいのです。
下図は36歳・ステージ3の段階で治療を始めた男性と、50歳・ステージ5の段階で治療を始めた男性の治療前後を比較した写真です。
あさイチより
治療の効果がでやすいかどうかは年齢よりも進行度によるので、50歳以上でもステージ3未満なら効果が出やすいそうです。
治療開始
治療を受ける必要があるかどうかは、病院でチェックしてもらえます。
薄くなっている部分の頭皮を拡大して見てみると、じつは髪の毛がないわけではなく、細く短い産毛が生えています。せっかく生えてきた毛が成長する前に数ヶ月で抜けてしまうため、薄くなってしまうのです。これを男性型脱毛症といいます。
このように、髪が細くなったり短くなったりする「軟毛化」が確認されると、治療が必要であると判断されます。
世の中に数多存在する治療法の有効性を評価した日本皮膚科学会によるガイドラインでは、それらの治療法が「行うよう強く勧める」Aランクから「行うべきでない」Dランクまで5段階に分けて評価されています。
Aランクに分類される治療は3つあるのですが、そのうち2つは病院で処方が必要な飲み薬です(詳細は後ほど)。効果はほぼ同じですがどちらも保険適用外なので1日1錠で月に5000〜8000円ほどかかります。安くはないお値段ですが、1年継続して飲むと58%、2年飲むと68%、3年飲むと78%の人に、薄毛の改善が見られるといいますから、高確率で効果が得られる確実な治療法ではあります。
これらの薬は副作用として性機能障害などが起きる可能性もありますが、その可能性は1%未満だそうですから、あまり心配する必要はないでしょう。また、将来的に不妊につながる心配もないそうです。
※Aランクの飲み薬の詳細
Aランクとされている飲み薬は、「フィナステリド」と「デュタステリド」の2種類です。
・フィナステリド
男性型脱毛症は、睾丸から分泌されている「テストステロン」という男性ホルモンが、毛周期(毛が長く太くなるまでの期間)を短縮化させるホルモンの「DHT」に転換されることで引き起こされます。
テストステロンをDHTに変化させるのは「5α-還元酵素」という酵素なのですが、治療薬フィナステリドは5α-還元酵素を阻害してDHTの産出を抑制し、毛周期を正常に戻すことで薄毛の進行を食い止めることができます。
・デュタステリド
フィナステリドよりも強い5α-還元酵素阻害剤として開発されたのがデュタステリドです。5α-還元酵素には1型と2型があるのですが、フィナステリドが2型のみに作用するのに対し、デュタステリドは両方の働きを阻害します。
また、デュタステリドは皮脂腺への影響が強いため、頭皮のベトベト感が解消されるという利点もあります。
・副作用について
東京メモリアルクリニックの佐藤明男院長は、薄毛治療薬の副作用について、以下のような見解を示しています。
「私の病院に来た161人の10年間のデータを集計した結果、性欲が減退したという人が9人、EDになったという人が4人。薬を飲んですぐに症状が出なければ副作用ではない可能性があるため、治療開始から副作用が出た期間も集計してみたのですが、性欲減退が平均して約1年後、EDが約3年後でした。そのうえ、性欲減退やEDが起こった患者は、どちらも平均で45歳から46歳以上。40歳以上の男性がEDを起こす発生率が約20%ですので、薬の服用とは関係なくEDや性欲減退が起こった可能性が高いです。」
やはり、副作用についてはあまり心配する必要はないようです。
参考:
薄毛治療薬でEDになる!?
AGA(男性型脱毛症)発症は1200万人超!
フィナステリド
デュタステリド
・塗り薬のミノキシジル
もうひとつAランクに設定されている治療法が、塗り薬の「ミノキシジル」です。
塗り薬では唯一医薬品と認められています。朝晩頭に塗って一ヶ月5000〜8000円程度です。 (高血圧の治療を受けている人は注意が必要なので、医師に相談をしてください。)
注意しなければならないのは、ミノキシジルの飲み薬です。インターネットなどで販売されているのですが、ガイドラインでは「行うべきではない」を意味するDランクの評価が下されています。
頭皮に塗ることの有効性は確認されていますが、それを飲むことの安全性と有効性は検証されていないため、飲むべきではないでしょう。
・ヘルメット
赤色LEDを照射するヘルメットが治療用の器具として売られており、ガイドラインではBランクの評価を得ています。赤色LEDの光は「髪の毛を伸ばせ」と指令を出す細胞を刺激します。週に2、3回、1日20〜30分かぶると半年ほどで効果が出てくるそうです。
Aランクの薬ほどの効果は期待できませんから、Aランクの治療と併用すると良いでしょう。
Bランクには他に、塗り薬の「アデノシン」や、「自毛植毛」という治療法も選ばれています。
あさイチより
自毛植毛とは、自分の後頭部から皮膚と毛包を切り取って、切り取ったものを1本ずつに分け、それを薄毛部分に植毛する治療法です。後頭部の組織をそのまま移植するので、植毛した部分の毛が抜けてもまた生えてくるそうです。
この移植は外科医が行う医療行為で、4〜5回ほど行うことができるそうです。費用は1000本で50万〜100万円ほどで、局所麻酔をするので痛みは無いそうです。
以上が効果の期待できる治療法ですが、すべて男性型脱毛症のち療法です。女性の薄毛はメカニズムが違うため、専門の医師に相談するようにしてください。
スポンサーリンク
自然にカバーする髪型
髪型で印象は大きく変わります。
あさイチより
ヘアスタイルを変えるだけでこんなに違って見えるのです。
番組では薄毛のタイプ別におすすめの髪型が紹介されていました。美容院などでオーダーするときに参考にしてみてください。
額から進行するM字型。
前髪はアシンメトリーにします。視点は短い方から長い方に流れていくので、しっかりカバーできている長い方に目が向きやすくなるそうです。
すきバサミの入れ方にもポイントがあります。薄毛が気になるところにはすきバサミを入れないようにして、両サイドの毛の密度の濃い部分だけすくようにします。こうすることで薄毛部分と毛のある部分の色のコントラストを弱めることができます。
ワックスをベタベタにつけて前髪が割れてしまうと後退した額が目立つので、ワックスはサイドの髪と前髪の長い部分を結びつけるようにつけます。こうすることでセットが1日崩れないそうです。
頭頂部から薄毛が進むO字型
いわゆる「バーコード」の髪型が最も普及しています。バーコードはたしかにカバーする能力に優れていますが、明らかに隠していることが伝わると印象はよくありません。薄毛部分を覆うための髪は長くしすぎず、覆い隠すことができるギリギリの長さにしましょう。
髪を被せた後は、目の細かい櫛で毛をバラバラにして多く見えるようにします。
O字型の場合もワックスをつける位置が重要になります。被せる毛にワックスをつけると隙間だらけになってしまうので、そこには絶対につけないようにします。かぶせた毛先と毛のある部分とが交わる部分に、髪と髪を接着するイメージでワックスをつけましょう。
専門家によると、洗髪の後にトリートメントをしないことも、見た目を良くするという意味では有効だそうです。髪の毛がある程度ごわついたほうが、ボリュームが多く見えるためです。髪の毛が痛んでも髪を作る内部の組織にはあまり関係がないので、問題ないそうです。
薄毛対策のファッション
手っ取り早く効果があるのはメガネです。
メガネをかけることによって、相手の視点がおでこや頭部ではなくて目に行き、目線が合いやすくなります。
メガネの選び方
薄毛の人は、「フレームが細くて肌色に近い色」のメガネは避けましょう。そのようなメガネだと肌と同化してしまうため、薄毛対策のファッションとしてメガネをかける意味はあまりありません。太めのインパクトあるフレームのメガネを選ぶようにしましょう。
服の選び方
無地で丸襟、色が薄い服はよくありません。ファッションのプロによると、「薄毛の人がそういった服を着るとパジャマみたいになってしまう」そうです。
例えばTシャツなら、大きな柄で胸にポケットがついているものを選びましょう。ただし、ポロシャツの襟を立てるようなことは避けた方が良いそうです。プロによれば「頑張っている感じが見受けられ、痛々しくなることがある」といいます。
ビジネスウェアでも、視線を誘導することがポイントになります。
ワイシャツなら襟だけ色が違うものや丸襟のもの、ボタンダウン、柄物などを選んでみましょう。
ネクタイも柄が大きいものなどを選ぶと良いそうです。
あさイチより
俗説の検証
これまでに1万人以上の薄毛男性を治療してきた佐藤明男医師が、巷にあふれる薄毛予防の俗説に対して、現時点の医学ではどのように考えられているかを◯☓形式で回答していました。
・頭皮マッサージをして血行を良くすると毛が生えてくる?→☓
佐藤氏によると「むしろ血行を悪くした方が、薄毛が改善したという実験結果もある」くらいだそうです。
アメリカで行われたある実験では、頭部に向かう動脈を糸で結んであえて血行を悪くしてみたところ、70%の被験者の薄毛が改善したそうです。ところが、半年経つとまた薄毛が戻ってしまったといいます。これは、糸で結んだ動脈の働きを補おうとして血管のバイパスが出来て、血流が復活したためと考えられています。この実験結果から、薄毛は男性ホルモンが血流にのって頭部に届くことで引き起こされると考えられるようになりました。
この知識を応用して薄毛を改善しようと、ヘアバンドで血行を止めてしまった人がいるそうですが、その人はやりすぎて頭皮が腐ってしまったそうです。くれぐれもそのような行為はしないようにしてください。
・皮脂が毛穴に詰まると薄毛になる?→☓
ある実験の結果、皮脂は育毛に作用していないことがわかっているそうです。皮脂は頭皮のバリア機能を果たしているので、「テカテカして嫌だ」という理由で皮脂をとろうと洗いすぎると、皮脂が過剰に分泌されて余計に頭がベタついてしまいます。洗髪は、最初に丁寧にブラッシングをして汚れを浮き上がらせてから、お湯ですすぐだけでも汚れの7〜8割はとれるそうです(ゴシゴシ洗うと頭皮に傷がつくため、軽く揉むように洗うのが“正しい洗い方”です)。本来シャンプーは、夏場を除けば2、3日に1度で十分だそうですから、洗髪をしすぎないようにしましょう。
ちなみに、育毛作用のあるシャンプーの育毛効果にははっきりとした科学的根拠はないそうです。「育毛作用のある物質」が入っているからといってあまりすすがないようにするのはいけません。シャンプーには化学物質が入っているので、きちんと洗い流しましょう。
・炎天下にヘルメットや帽子、カツラをかぶると薄毛になる→☓
ヘルメットをかぶったまま3時間運動すると、頭皮の細菌の量などの状態がどう変化するかを調べた実験があるそうです。
その結果、たしかにヘルメットをかぶりっぱなしだと細菌の数は増えたそうですが、洗い流せば元通りになる程度のもので、薄毛に直結するほどではないことが明らかになったそうです。
・タバコやストレス、酒、睡眠不足などは薄毛の原因になる→△
これらが薄毛に関係するという研究もありますが、はっきりと因果関係を裏付ける研究は無いそうです。
・海藻を食べると毛が太くなる→×
佐藤氏はハッキリと「科学的には何の根拠もない」と話していました。
これらの俗説にすがるよりも、佐藤氏は「薄毛の治療を考えている場合は皮膚科へ行くように」とアドバイスしていました。
薄毛の最新治療
理化学研究所の辻孝氏は、髪の毛の元となる「再生毛包原基」を研究しています。直径1ミリ以下の毛包原基を頭皮に埋めて毛を増やそうという研究です。辻氏によると「2020年度には実際に薄毛の方で、治療として受けられる状態を目指している」といいます。
この治療では、まず、毛が生えている後頭部から皮膚を切り取って、髪の毛を包む「毛包」ごとに切り分けます。次に、毛包の中から毛となる細胞と、毛を作る指令を出す細胞とを取り出します。この2つの細胞を20日ほど培養すると細胞分裂して増えていきます(辻氏は現在、この方法で「毛が100倍から300倍まで増えるようにしたい」と考えているそうです)。培養して増やした後、この2つの細胞をくっつけたものが「再生毛包原基」です。
この治療にかかる費用は、最初は2000〜3000万円位でスタートすることになると考えられているそうです。
まとめ
今回の特集からわかる薄毛改善のポイントは「早い段階で治療を受ければ改善させることができる」ことと、「俗説はほとんど効果がない」ことだと思います。
薄毛に悩んでいろんなものに手を出すよりも、皮膚科を受診して専門的な治療を受けるようにしましょう。