口内フローラ改善~歯周病・虫歯から脳卒中予防まで~あさイチより

先日の『あさイチ』では、「口内フローラが歯周病を防ぐ」と題し、口内環境について特集していました。腸内フローラという言葉は最近よく耳にしますが、口内フローラとは、どのようなものなのでしょうか?よい口内フローラを保つための歯磨きの仕方や生活習慣などのセルフケアなどについても伝えていました。口内環境は歯周病のみならず、心筋梗塞といった一見関係のなさそうな怖い病気とも関連があるとのことなので、ぜひ知っておきたい内容です。

 

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口内フローラとは?

口の中は、粘膜が露出していてデリケートな場所ですが、その粘膜を守るため口の中には細菌がたくさん生息し、「外敵から体を守る防衛隊」の働きをしていると言います。その細菌の種類は700種を超えるというから驚きです!

これらが口の中で生態系を形成していて、虫歯の原因となるミュータンス菌や歯周病の原因となるスピロヘータ菌などもいれば、悪玉菌から口を守るミティス菌なども含まれているとのことです。

このようにたくさんの細菌が生息する様子を、花が咲く花畑になぞらえて「口内フローラ」と呼ぶそうです。
そして最近ではDNA解析が進み、口内フローラを改善することで歯のみならず全身の健康に大きな役割を果たすことがわかってきたそうで、お口のケアが大切だということが一層感じられます。

 

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口内フローラの乱れが病気につながるメカニズム

口内細菌について43年にわたって研究している日本大学の落合邦康特任教授は、口内フローラの乱れが病気につながる原因は2つあると言います。

1)直接、細菌が原因となるケース
虫歯の穴や炎症部分から細菌が血管に入って病気になる

2)炎症を起こしている歯周組織から、炎症物質「炎症性サイトカイン」が持続的に供給されるケース
歯周病等で歯茎が腫れると、「サイトカイン」という物質が発生し、それが血管内に入って全身に巡り、心臓病や糖尿病などのリスクになる

恐ろしい病気につながる口内フローラの乱れですが、どう防げばいいのか?落合邦康特任教授は、

「免疫力が十分であれば心配ないが、加齢で免疫力は落ちるので、年齢とともにリスクは上がる。40歳以降ぐらいから相当に気をつけてほしい」

とし、40オーバーの人に注意を喚起します。

虫歯が脳出血に関係!

さらにイギリスの科学雑誌では、国立循環器病研究センターを中心としたチームによる、口内細菌と病気の関係についてのショッキングな最新研究結果も発表されました。

「虫歯が微小な脳出血に関わっている」ことがわかったというのです。

脳の毛細血管から出血するのが「微小脳出血」ですが、大きな出血につながる恐ろしいものです。
国立循環器病研究センター脳神経内科の猪原匡史医長は、

「特殊なタイプの虫歯菌があると、微小出血を起こす確率が5~6倍になるので、リスクはかなり高くなる」

と指摘します。特殊なタイプの虫歯菌とはcnm遺伝子を持つミュータンス菌のことで、ミュータンス菌の約1割がcnm遺伝子を持つそうです。出血をすると、通常は血小板とコラーゲンが結合して血を止めます。しかしcnm遺伝子を持つミュータンス菌が血管内にいると、菌がコラーゲンと結合してしまい、血小板の働きを阻害するので、血が止まらないというのです。
人工的に脳出血を起こさせたマウスにcnm遺伝子を持つミュータンス菌を投与すると、微小な出血が大幅に悪化したそうです。

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あさイチ!より

猪原匡史医長は、

「口内を清潔に保つことで脳卒中を防げるのではないかと示唆された。脳卒中が虫歯という身近なことと関係があることがわかった点は大きい」

と語ります。
虫歯のある人はだいたいミュータンス菌を持っているとのことですが、中でもcnm遺伝子を持っているのは1割です。ただ、残りの9割の人も大丈夫というわけではないようです。鶴見大学歯学部の花田信弘教授は、

「虫歯菌の付着因子はたくさんあり、コラーゲンに付着するもの以外にも腎臓や心臓といった臓器に付着するものがある。cnm遺伝子を持つものに限らず、虫歯菌が血液中に入ること自体が大きなリスク。まだ解明されていないこともたくさんある」

と解説します。

<口の中の細菌が引き起こす病気>
プラーク形成菌や歯周病菌が原因のもの
細菌性肺炎、細菌性心内膜症

歯周病が誘引となるもの
糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞、バージャー病(血管の病気)、早産・低体重児出産

このように病気が広範にわたることについて、花田教授は、

「血管はテニスコート6面分もある大きな臓器なので、血液中に口腔細菌が入るとどこに障害を作るか予測できない。そのため虫歯や歯周病はすぐに治療するべき。軽くても炎症を放置すると潰瘍面ができてくる=血管が露出するので、体内に細菌が入ってくることになる」

と言います。

 

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口内フローラを解析

2人の女性視聴者の口内フローラを、横浜のとりがおか歯科で「メタゲノム解析」していました。メタゲノム解析では、細菌のDNAを抽出して遺伝子情報を読み取り、どんな菌がどれぐらいいるのかを知ることができるとのことです。まず唾液、そして悪玉菌が多くいる歯周ポケットの菌を採取します。これを香川県の谷口誠歯科医師に送って解析します。谷口歯科医師は、全国の大学や歯科医院から依頼が届く、口内フローラ解析の第一人者だそうです。

しっかりケアしている人の解析結果

解析を受けるTさんは、3度の歯磨きの他にデンタルフロスやワンタフトブラシ(小さいブラシ)などを使って歯の裏まで毎日しっかりケアしています。
このTさんの歯周ポケットからは158種類の細菌が検出されました。入念にケアをしているTさんでも、歯周病菌が菌全体の8.6%いることがわかりました。同時に歯周病菌を阻害する菌も9.7%いました。Tさんの口内フローラの構成比は次の図のとおりで、よい状態だったようです。

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あさイチ!より

しかし唾液の結果を見ると、歯周病に関する菌が32%をも占め、その中でも特に危険な菌も多く生息していました。谷口歯科医師は、

「この菌が歯周ポケットに移ると歯周病が少しずつ進行する可能性がある」

と警鐘を鳴らします。

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あさイチ!より

ケアがおろそかな人の解析結果

ケアが苦手なSさんは、歯磨きは朝と「たまに夜」に1分ほどしている程度で、面倒くさいときはうがいの後にガムを噛んで済ませています。
このSさんの歯周ポケットからは173種類の細菌が検出されました。歯周病に関する菌は24%と、しっかりケアしているTさんの倍以上です。

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あさイチ!より

さらに唾液では、歯周病に関する菌が41%をも占めていました。谷口歯科医師からは、
「歯周病の進行に注意を払うべき。まだ進行はしていないが、早めに対処したほうがよい。ちゃんと磨かないといろいろな菌が増えるので、ちゃんと磨いてください」
とのコメントでした。

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あさイチ!より

この結果を見て花田教授は、

「舌(ぜつ)磨きが足りない。舌には舌苔(ぜったい)というバイオフィルムの一種があるので、舌(ぜつ)ブラシで舌を磨くことが必要。また、自分の磨き方だけでは歯間のプラークが取れていないのが実情」

と感想を述べていました。

mametisiki

「自分もメタゲノム解析を受けたい」と思った方も多かったと思います。番組内で解析を担当した谷口歯科医師のウェブサイト(http://tani8020.jp/metadent/oral_explorer.php)で、口内フローラメタゲノム解析について、より詳しく説明してあります。
口内フローラメタゲノム解析に対応している医療機関としては、谷口歯科医院のほかには奈良県の「こうの歯科医院」と、番組でロケが行われていた「とりがおか歯科」が掲載されています(http://tani8020.jp/metadent/metadentist2.php)。近くに対応の医療機関がない場合は、かかりつけの歯科医院に相談するようにとのことです。費用については番組では「2万円ほど」と言われていましたが、ウェブサイトでは「各医療機関に問い合わせ」を促しており、詳細は不明でした。
気になる方は、ウェブサイトを熟読の上、問い合わせされてみてはいかがでしょうか。

それぞれの口内菌の働き

ジンジバリス菌
歯周病菌の一種で歯茎を炎症させる これがあると口臭がきつくなる

ミティス菌
過酸化水素とバクテリオシンを発し、ジンジバリス菌などの他の細菌の働きを抑える

唾液
抗菌作用のあるラクトフェリンとリゾチームを含み、細菌の活動を抑えてバランスを保つ

このように口内細菌のバランスを保つ仕組みがあるのですが、歯磨きを怠り口の中に糖が多くなるとバランスが崩れます。善玉菌であるミティス菌が糖にひかれて歯に付着してしまい本来の役割を果たさないので、ジンジバリス菌が活性化して歯に付着した細菌が歯垢になるのです。ジンジバリス菌は歯に「バイオフィルム」と呼ばれるバリアをつくってしまい、こうなると唾液も中に入れなくなるので、ますます菌が繁殖します。こうして歯周病が進行するのです。
このバイオフィルムを作らせないために歯磨きをすることが重要だということです。
花田教授によると、

「1週間もあれば糖がこびりつくが、血液に細菌が進入するには3週間かかる。3週間歯を磨かない人はいないと思うが、歯間を磨かない人は結構いて、3週間フロッシングや歯間ブラシを使わないとそこから血中に細菌が入ってしまう」

と解説します。ケアに関して、マウスウォッシュはしないよりはいい、歯を磨くタイミングにこだわるよりも磨けるときに磨くほうがよい、磨きすぎるということはないので安心磨いてよいとのことです。

口内ケアのポイント

①寝る前の歯磨きは特に念入りに行う
寝ているときは唾液の分泌が減って細菌が増殖しやすいため

②歯周ポケットを磨く
歯周病菌が一番繁殖する場所なので、歯ブラシを歯と歯茎の間に斜め45度に入れ、かき出すように磨くこと

③過度な睡眠不足にならないようにする
自律神経が乱れると唾液の分泌が悪くなる

④口呼吸しない
口が渇き唾液が少なくなるので、細菌が繁殖しやすくなる

⑤ビタミンDとビタミンAを摂る
ビタミンDとビタミンAが不足すると唾液腺が萎縮する おすすめの食品は青魚(ビタミンD)と、レバー(ビタミンA)だそうです

⑥よくかんで食べる
よくかむことで、唾液がよく出る

口内ケアのポイントは、菌を取り除いて唾液をよく分泌させることに尽きるということですね!

<歯磨きのポイント>
口内ケアの鍵となるひとつが歯磨きですが、歯を磨くときは「えんぴつ」を握のと同じぐらいの強さで磨くのと、デンタルフロスは歯周ポケットまで入れて使うのがよいようです。

 

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歯に関するQ&A

Q 50代になってドライマウスが気になる。ドライマウスと口内フローラとの関係は?
A 花田教授は「降圧剤などの生活習慣病薬を飲むと唾液の分泌が落ちるので、これまで虫歯のなかった人でも急速に多発性の虫歯になることはよくある。できるだけ生活習慣病にならないように気をつけることだ」と回答しました。

Q 総入れ歯でも歯周病になるか?
A 「総入れ歯にすると細菌の血液への進入路はなくなるが、入れ歯による潰瘍面ができるので、そこから進入するようになる。歯はなくなっても舌のほうに細菌は絶対に残るので、入れ歯はきちんと洗ってほしい」との花田教授の回答でした。

Q 洗口液で歯周病予防をしているが、液で善玉菌まで殺してしまって口内フローラをこわすことはないか?
A 花田教授によると「バイオフィルムは細菌の抗菌力を500倍に上げるので、洗口剤を使うと善玉菌のほうが先に死んでしまい、バイオフィルム菌は残る。歯磨きやフロス、歯間ブラシでバイオフィルムを物理的に除去するのが最優先で、洗口剤による殺菌消毒は第2選択と考えるとよい」とのことでした。

歯周病をセルフチェック

公益財団法人8020推進財団が作った「歯周病セルフチェック」。3~5個の項目に該当すると歯周病が進行している、1~2個で歯周病の可能性があるとのことです。

□歯ぐきに赤く腫れた部分がある
□口臭がなんとなく気になる
□歯ぐきがやせてきたみたい
□歯と歯の間にものがつまりやすい
□歯をみがいたあと、歯ブラシに血がついたりすすいだ水に血が混じることがある
□歯と歯の間の歯ぐきが鋭角的な三角形ではなく、うっ血していてブヨブヨしている。
□ときどき歯が浮いたよような感じがする
□指でさわってみて少しグラつく歯がある
□歯ぐきから膿みが出たことがある

該当するものがなくても、成人は誰でも歯周病菌を持っているので、気をつけなければならないとのことです。

歯周病菌を撃破する「マウスピースによる除菌」治療

歯周病菌など悪い菌だけを取り除くのは難しいとのこと。薬剤でうがいをしたり、歯に直接薬剤を塗ったりといった方法がありますが、口内フローラにやさしい方法として「マウスピースによる除菌」があるといいます。

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あさイチ!より

鶴見大学歯学部附属病院の宮之原真由歯科医師によると、「3DS除菌」と呼ばれるこの方法では

「歯の表面に狙いを定め、よい菌を残しながら悪い菌を効率的に殺菌することができる」

と言います。

具体的な方法ですが、マウスピースに抗菌剤や殺菌消毒剤を入れ、これを1日に2回、1回に5分ほど装着します。こうすることで、除菌する場所を歯と歯の周りに限定でき、口の粘膜にいる善玉菌は残すことができるので、口内フローラはバランスよく保たれるという仕組みです。もちろん、歯磨きをきちんとすることが前提です。

この3DS除菌ですが、歯周病の発症予防と重症化予防に効果があるもので、すでに歯周病になっている人に関しては効果がないそうです。ただ、歯周病を治療をしたあとで行えば、歯周病の再発防止には非常に効果があるそうです。
3DS除菌は全国200ヶ所で受診することができます。費用については保険が適応されないので、歯科医によって差はあるものの、10万円ほどかかるとのことです。

mametisiki

この3DS除菌が受診できる歯科医院・歯科医師はどこなのか、鶴見大学歯学部探索歯学講座のウェブサイト(http://tansaku.tsurumi-u.ac.jp/3ds_contact)に掲載されていました。北海道から沖縄まであるので、気になる方はご自分のお近くの歯科医院を訪ねてみてはいかがでしょうか?

正確な除菌のため、マウスピースは患者に合わせたものが作られます。また患者一人ひとりにあったより効率的な薬剤を選ぶため、唾液を採取して菌の数や種類を調べるとのことです。

除菌をするのは歯周病や虫歯を予防するためだけではなく、口内細菌が血管に入ると動脈硬化につながり血管が老化するので、除菌により血管の健康を維持することにもなります。口内ケアで血管が柔らかくなるというのです。
鶴見大学歯学部附属病院では、血管年齢を測定していました。宮之原歯科医師は、

「歯科医院に行くことで全身の健康も保ってもらいたい」

と語ります。

血圧との関係について花田教授は、

「厚生労働省が発表する生活習慣病のリスク因子には栄養、運動、休養、たばこ、アルコール、歯の健康の6つがある。このことから考えると、歯の健康の血圧への効果は単純に16~17%ぐらいではないか」

と見解を述べていました。

まとめ

情報が盛りだくさんの内容でしたが、最低限やるべきこととして花田教授は、

「バイオフィルムができる場所は、歯の4つの表面、そして舌の中央部の2ヶ所。ここに細菌が集まってくるので、そこをちゃんと磨かないといけない。歯磨きは1日3回で、どうしても難しければ寝る前だけは磨いてほしい。バイオフィルムを物理的に除いたあとに、薬を使うことを考えるという順番で行うことが大切だ」

と締めくくっていました。

汚れ(細菌)の除去によってバイオフィルムを取り除くことが何より大事なので、歯磨きはしっかりしないといけないということが改めてわかりました。歯磨きをきちんとした上で洗口剤などで仕上げて、口内フローラをいい感じのバランスで保っていきたいものですね!


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