大動脈解離の早期発見法と治療法~チョイスより

 

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心臓の病気で思い浮かべるのは、心筋梗塞や動脈硬化、それに狭心症など、どれも命に関わる恐ろしい病気ばかりです。このうち日本人が突然死する確率で、心筋梗塞に次いで高いのが【大動脈解離】という病気です。この恐ろしい病気について「チョイス@病気になったとき」では、症状や最新の治療方法などを紹介していました。もし発症してしまったら?普段の生活で気を付けることは?大動脈解離と向き合うためのポイントをまとめました。

突然死を引き起こす大動脈解離とは?

大動脈とは心臓から全身に血液を送る、私たちの体の中でもっとも重要な血管です。
この大動脈の内側が裂けてしまい、そこに血流が流れ込むことで血管が膨らみ、ある日突然破裂してしまう。これが大動脈解離という病気です。
前触れもなく突然発症するため死亡率も高く、とても危険な病気だと言うことです。

番組では大動脈解離を発症する仕組みが詳しく紹介されていました。
大動脈は心臓から全身に血液を送るおおもとの血管と言われ、直径2~3センチと体の中ではもっとも太い血管です。心臓を出るといったん頭の方に上がり、その後心臓の後ろ側を通って足の方へと向かいます。

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チョイス@病気になったときより

大動脈の断面を見てみると内膜、中膜、外膜と言う3層の膜でできているそうです。
この一番内側の膜がなんらかの原因で傷つき、そこから血液が流れ込んでいきます。すると血液が流れ込む圧力によって膜はさらに剥がれて行き、血液が溜まってしまうと言うのです。

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チョイス@病気になったときより

大動脈解離を発症した状態です。
大動脈の中で従来血液が流れていたところと、新たにできた血流の流れに分かれています。
この従来血液が流れていたところを真腔、新たにできたところを偽腔と呼びます。偽腔では血液は徐々に固まっていくと言われています。

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チョイス@病気になったときより

このまま放っておくと、新たにできた血液の流れ・塊=偽腔がどんどんと外側に膨らんでいき、最終的には外膜が破裂してしまい、大動脈破裂を起こしてしまいます。
大動脈が破裂すると大量の血液が出血するので、その結果死に至る可能性は非常に高くなると考えられています。

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発症年齢は70歳代がもっとも多く、60歳代、50歳代、80歳代でもかなり多いと言われています。
また男女比では中年期には男性が女性に比べて2~3倍で、高齢になるにつれて差は小さくなりますが、おおむね男性の方が発症率は高いようです。

 

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治療までのタイムリミットは?

大動脈解離を発症し病院に到着するまでに半数の方が亡くなると言われています。さらに病院に到着した後も24時間以内に治療を開始しなかった場合でおよそ25%、48時間で50%、1週間で75%の方が亡くなるとされていていて、一度発症してしまうと1分でも早く治療を開始することが大事だと言うことです。

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チョイス@病気になったときより

このように発症してしまったら一刻を争う恐ろしい病気の大動脈解離ですが、この病気にかかってしまった二人のケースから、その治療法について解説していました。

Aさんの場合

20160402122547Aさんは4年前に突然、経験したこともないような激しい胸の痛みに襲われたそうです。
痛みが出たのは左胸と背中で、あまりの激痛に気を失いそうになったと言います。
もともと痛みに強いという自覚があったAさんは、しばらくすれば治まるだろうと我慢をしていたそうです。
しかしあまりの痛みに、ようやく1時間経ってから妻に連れられて病院に向かいました。

病院でCT検査を受けることになったAさん。
もしも大動脈解離を発症していたら破裂の危険性もあり、1分1秒を争う状態。そのため医師も検査に立ち会い、その場で大動脈の状態を確認していったそうです。
その時のAさんの大動脈のCT画像がこちらです。

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チョイス@病気になったときより

中央に太い血管がありますが、ここがキレイに二つに分かれています。

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チョイス@病気になったときより

真腔と偽腔をはっきり見ることができます。
この結果、Aさんは大動脈解離を発症していたことが分かりました。

さらにAさんの場合は、この解離を起こしている場所が問題でした。
その場所とは心臓に近く、万が一破裂すると血流が心臓の周りに流れ出し、心臓の動きを阻害して死に直結してしまうと言われる“上行大動脈”。
幸いAさんはまだ破裂は起こしていませんでしたが、そのまま緊急手術を受けることに。

 

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上行大動脈解離の恐ろしさとは?

上行大動脈とは心臓から出た血液が初めに通る大動脈で、頭の方に向かって流れていくので“上行”と言われています。この大動脈からは頭の方に向かう細い血管も近く、その血管が巻き込まれると脳梗塞を起こす危険性もあると言われています。

また、心臓の周りには心臓に栄養を送る冠動脈があり、ここが病変に食い込まれると心臓に行く血液が滞り心筋梗塞を起こす可能性も。
さらに破裂はしていなくてもしみ出した血液が心臓の周りにたまってしまうと、心臓の動きをさまたげてしまうこともあるそうです。
いずれにしても非常に危険な状態だと言えそうです。

治療に当たった国立国際医療研究センター心臓血管外科の福田尚司医師は大動脈解離の手術の緊急性について、次のように話していました。

「大動脈解離を疑った時点ですぐにCT検査を行います。1秒を争うのでCTを見てすぐに判断して、手術できるのであればGOサインを、その場で出さなくてはなりません」

また、福田医師は大動脈解離を引き起こす原因として考えられる要素について

「動脈硬化が関係していると思われます。動脈硬化によって血管の内側の壁に硬い部分と柔らかい部分ができたとすると、大動脈自体も心臓の拍動=心拍に合わせて収縮するので、硬い部分と柔らかい部分の境目に、亀裂が入ることが予想されます」
と指摘していました。

 

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血管が裂ける原因として考えられること

1.動脈硬化
拍動=心拍で血管が収縮し亀裂が生じる

2.高血圧
血管に亀裂が生じた場合に血圧が高いと、その圧で血流が偽腔に流れ込みやすくなる。

さらに動脈硬化を引き起こす原因には、高血圧喫煙糖尿病脂質異常などが挙げられています。
今回手術を受けたAさんも、実は普段から血圧が高く、ヘビースモーカーだったそうです。

 

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上行大動脈解離の手術では「人工血管」を使う

Aさんの場合は解離している大動脈を切り取り、人工血管を縫い付けると言う手術を行いました。

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チョイス@病気になったときより

これが人工血管です。手に持っている感じから結構大きなものであることがわかります。

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チョイス@病気になったときより

この手術では心臓を止めて行うため大きな危険も伴うと言います。
5時間半にも及ぶ手術は無事に成功し、Aさんは再発もなく安定した状態に回復することができたそうです。

 

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Bさんの場合

1年前に大動脈解離を発症したBさんは、最初の症状としては、目を開けていられないほどの激しい閃光が見えて、その後に心臓の後ろ側のちょうど肩甲骨あたりに痛みを感じたそうです。
しかしBさんの痛みはそれほど強くなく、意識もしっかりしていて体を動かすこともできたと言います。
そこで異常が出てから数日後に病院を受診したところ、大動脈解離を起こしていたことが分かりました。

Bさんの大動脈解離は心臓から少し離れた“下行大動脈”で発症していました。

下行大動脈解離の治療法は「経過観察」から

下行大動脈は心臓から少し離れているため、万が一破裂しても心臓への影響はないと考えられています。さらにBさんの場合は偽腔に溜まった血液がすでに固まり血栓になっていたため、この状態では血管の膜がさらに裂けてしまった場合でも血液が偽腔に流れ込む可能性が低く、破裂の危険性は少ないと考えられました。
そのため行った治療法は「血圧を下げ経過を観察する」こと。

具体的にBさんが行ったことは
・普段から飲んでいた高血圧の薬を増やした。
・肥満防止のために歩くことを心掛けた。
・いきんで血管が破裂しないように、荷物は小分けにして運んだ。

しかし8か月後のCT検査で、Bさんの血管はさらに膨らんで太くなっていました。偽腔がふさがらずに、かえって膨らんでいたのです。

そこでBさんは手術を選択しました。

下行大動脈の手術では「ステントグラフト」を使う

Bさんの手術で使用したのは「ステントグラフト」。

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チョイス@病気になったときより

ステントグラフトを使った手術は、足の付け根の大動脈からカテーテルを挿入して行うため、人工血管の手術に比べると患者の体への負担やリスクも少ないとされています。
手術時間も1時間半~2時間ほどで済むそうです。

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チョイス@病気になったときより

人工血管が大動脈の病変部分との入れ替えなのに対し、ステントグラフトの場合は血管を切り取らずに内側から補強するような感じです。負担が少ないわけですね。

人工血管とステントグラフトの手術を比較すると

◎人口血管の場合
 ・胸を切って開き心臓を止めて行うため、体への負担が大きい。
 ・入院期間は2~3週間。
 ・費用は自己負担額がおよそ150~200万円。
◎ステントグラフトの場合
 ・足の付け根を4~5センチ切るだけ。
 ・入院期間は5~7日間。
 ・費用は自己負担額がおよそ10万円。
※高額療養費と言う制度があるので、役所などに申請をすると、自己負担額はさらに減る可能性もあるそうです。

大動脈解離の患者はここ数年倍増していると言われています。普段から知識を少しでも増やしておいて、万が一の時に備えたいですね。

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《参考書籍》
「大動脈解離―診断と治療のStandard」井元清隆、上田敏彦、安達秀雄(中外医学社)
「イラストでわかる実施困難症例の大動脈ステントグラフト: Visualization of Expert Skills and Techniques」宮本伸二、本郷哲央(南江堂)
「血管の壁が裂ける―大動脈解離~患者を生きる~」朝日新聞(朝日新聞社)
「血管を強くするおいしいレシピつき 図解でわかる動脈硬化・コレステロール(徹底対策シリーズ)」白井厚治、大越郷子(主婦の友社)

まとめ

発症した時の特徴は?

もっとも多くの患者さんが訴えるのが、背中の痛みだと言われています。特に肩から背中の肩甲骨にかけて、さらに胸にも激しい痛みが走ることがあるようです。また血管の裂け方が進行すると、痛みも肩から肩甲骨の内側に沿って移動する場合も。
背中の次に胸にかけて、経験したことのないような激しい痛みを覚えたら、いち早く病院に行くことが大事だと言うことです。

血管の裂けた場所によっては治療方法も変わる

心臓に近い場所の血管が裂けた場合には、体への負担は大きいですが、人工血管を使った手術を行うことが多く、心臓から遠い場所の場合はステントグラフトの挿入が考えられるそうです。
また、心臓から遠い場所で破裂の危険性が少ない場合は経過観察をすることもあります。

大動脈解離の原因となり得る病気や生活習慣

高血圧の方は注意が必要です。
高血圧では常に血管に圧力がかかっているため、血管内部の膜を傷つけやすい状態になっていると言われます。そのため動脈硬化を発症する危険性も高まり、その結果、大動脈解離を発症する可能性が高まるそうです。
高血圧の方は医者から処方された血圧を下げる薬をきちんと飲み続けることが大切だと言うことです。
生活習慣では喫煙をやめ、適度な運動を取り入れながらある程度の減量を心掛けること。そして野菜中心の食生活にすることで大動脈解離の危険性を低くできるそうです。

大動脈解離を発症しないためには、血管に負担をかけないような生活を送ることが大切なようです。
一度発症してしまうと一刻を争う状態になってしまう大動脈解離。普段の生活から予防を心がけて、発症の危険性をなるべく少なくして生活していきたいものです。


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