脳に働きかけて痛みに対処する方法~ガッテン!より

 

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腰痛や肩こり、関節の痛みなど、多くの人が何らかの痛みを感じながら日々生活をしています。
こういった痛みの多くは、マッサージやストレッチ、薬を飲むなどの対策をしても治まらない厄介な痛みで、原因が「」にあることが多いそうです。
今回は、こうした慢性的な痛みについての情報を紹介していた『ガッテン』を中心に、痛みと脳の関係についてまとめていきたいと思います。

原因不明の痛み

大阪に住むMさん(58歳女性)は、頑固な歯の痛みに悩まされていました。

「顔の半分に激痛があって、顔が破裂しそうな感じ。何がどうなったんだろうと思った」と本人が話すほどの痛みのきっかけは、親知らずでした。

歯医者で親知らずを治療して「これで安心」と思った数日後、再び痛みがぶり返したそうです。虫歯がズキズキするような痛みが24時間治まらなかったので、歯医者に診てもらいましたが悪いところが見当たらず、痛みだけが残っていたそうです。

愛知県のKさん(41歳男性)は、昨年腰の痛みを発症し、歩くのも辛い状態になってしまいました。

「最初に痛くなった時は起きることもつらかった。歩こうとしても四つん這いにならないといけないほどだった」というKさんは原因を求めて病院を転々とし、様々な検査を受けましたが、結局痛みの原因はわからないままだそうです。Kさんは「このまま歩けなくなったらどうしよう、という不安がなかなか抜けない。焦りも出てきた。と話していました。

現在、日本全国で2,300万人が、MさんやKさんと同じような「慢性痛」に悩まされていると言われています。

この2人は重症のケースですが、特に理由が無いのに体が時々痛んだり、薬やマッサージなどの治療をしても痛みがぶり返したりすることが3ヶ月以上続く場合は、「慢性痛」と診断されます。
慢性痛のため、仕事を休んだり辞めたりする人が多くなってきており、社会的な問題になっているそうです。

 

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慢性痛と側坐核

人が痛みを感じるメカニズムを30年間調べてきた、ノースウエスタン大学(アメリカ合衆国シカゴ)のヴァ―ニャ・アプカリアン教授によると、「痛みというのは頭の中にある。痛みの解明は脳の働きを解明することと一緒」といい、研究の結果、「脳の活動が痛みの強さを決めていると言ってもいい」と話していました。

脳には1千億の神経細胞が集まっています。
例えば「腰が痛い」と感じるときは、腰から電気信号が脊髄を通って脳に送られます。ものすごい速さで痛みの信号が神経細胞に伝達されるのですが、痛みを司るのは脳内の一箇所ではなく、非常に広い範囲が関わり、痛みを感じます。

痛みを感じているときは、脳の中の扁桃体という部分が活発に働いています。扁桃体は恐怖や不安などの負の感情を引き起こす部分で、ここが活発に働くと「心配だ」「痛い」などの感覚が出現します。
扁桃体は、痛みが長期間続くと異常な興奮状態に陥ることがあり、実際には患部を治療して痛みの信号が来なくなっても興奮したままとなり、慢性痛を生じさせることがあるのです。

しかし、最新の研究では、脳には痛みを和らげる働きを持つ場所もあることがわかってきたそうです。痛みの信号が脳に伝わると、「側坐核(そくざかく)」という脳の中心付近にある部位から痛みを和らげる物質が放出され、扁桃体の異常な興奮状態を鎮める=痛みを抑えるそうです。
アプカリアン氏は「側坐核を利用することができれば、私たちは多くの人の慢性痛を治すことにつながると考えている。」と話していました。

側坐核を活性化させる治療法

番組では、京都大学の阿部修人准教授が、パソコンを使ったゲームで側坐核の活動を上げるアプローチを解説していました。
パソコンの画面に図形が表示されたらマウスのボタンをすばやく押すだけのシンプルなゲームで、押し遅れると失敗となります。
阿部氏はゲーム開始前、被験者に「うまくボタンを押すことができたらお金が謝礼として発生する」と説明しました。その上で、脳の活動を調べるMRIに入った状態で実験をスタートさせると…

ガッテン!より

ゲームによって強く活動した部分(赤くなっている部分)が側坐核です。

認知行動療法

「謝礼がもらえる」と知ってからゲームに集中することで側坐核が活性化されるような原理を活かした治療法として、『腰痛診療ガイドライン2012』には「認知行動療法」が挙げられています。慢性的な痛みに対しては薬よりも効果的な治療法として世界中の痛み治療の現場で採用されている、いま最も効果的な手段の一つと考えられている治療法です。

愛知医科大学も認知行動療法を取り入れている医療機関の一つで、腰の痛みに悩まされているKさんもここに通っているそうです。

こちらの治療でもっとも重視されているのが、会議室で行われるミーティングです。ミーティングでは、患者本人が設定した治療の目標を「治療目標設定シート」に書き込みます。目標は、簡単にはクリアできない“大きな目標”と、少し頑張ればクリアできそうな“小さな目標”の2つを設定することがポイントだそうです。

Kさんは大きな目標に「旅行に行けるようになること」を、小さな目標には「遠くの本屋まで歩いていくこと」を設定していました。腰痛が出る前には毎年家族で旅行に行っていたのに、腰痛が出てからは諦めていたそうです。“もう一度家族で旅行に行きたい”という思いから設定した大きな目標を達成するための小さな目標を日々クリアすることで側坐核が刺激され、それを繰り返すことによって少しずつ側坐核が活発になるそうです。この治療についてKさんは、「クリアしたときは痛みを忘れている。そして達成感。何気ないことだけど、普通の人と同じことができるようになったという実感はある」と話していました。
歯の痛みに悩んでいたMさんは、大きな目標に「習字がうまくなること」を設定し、小さな目標に「一文字一文字丁寧に」を設定しました。Mさんは「習字をしているとき、痛みを感じていない。痛みとうまくお付き合いをするために私には習字が必要なのではないかな」と話していました。

下の画像は、慢性痛の人の脳の血流を可視化した画像です。

ガッテン!より

この人に、認知行動療法を行ってもらうと…

ガッテン!より

全体的に赤く変化しました。脳の血流がアップしたと言うことです。この画像を撮影する実験に参加した17人全員がこのように変化したそうです。この状態のときは、側坐核が活発に働いていると考えられています。

 

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側坐核と痛みについて

奈良学園大学保険医療学部教授の柴田政彦氏によると、「痛みというのは本来動物が元気でい続けるために、外憂を避けるために備わっている火災報知器のようなもの。しかし、これは正確に働かないことがある。火事なのに鳴らないときもある一方で、逆に(患部に大した傷などがないのに)強い腰痛を感じることもある」と話していました。私たちは痛くないのが当たり前のことであり、痛いと何か原因があるという思い込みがありますが、その常識を変える必要があるようです。

柴田氏によると、側坐核を喜ばせるコツは、痛みがあっても取り組みやすい、得意なことや好きなことに取り組むことだそうです。認知行動療法における目標設定とも共通していますが、なにか「達成感」を得ることが側坐核を刺激するようです。

側坐核に関する最新研究

東京医科歯科大学の倉田二郎氏は痛みに関する不思議な現象を発見し、痛みの科学雑誌「PAIN」に紹介しました。
倉田氏が行ったのは、痛みの刺激を与える装置を被験者の左腕につけて、痛みが強くなったと感じたら右手の手元にある機械のレバーを右へ、弱くなったと感じたら左へ移動するという実験です。
その結果…

ガッテン!より

赤線は実際に与えた痛みの強さ、青線は被験者が感じた痛みの強さを表しています。痛みをほんの少し強くしてすぐに元に戻したとき、被験者は実際以上に痛みが大きく和らいだと感じることを発見しました。

このときの脳の様子をMRIで見ると、側坐核が関係していることもわかったそうです。一瞬強くなった痛みが元に戻ったことに側坐核が反応し、痛みを和らげてくれたと考えられます。

倉田氏は「ほんの少し痛みが減っただけでも大きな喜びになる。おそらく健康な人には本来備わっていて、多くの人がこれを体験しているのでは」と話していました。

側坐核を元気にするには

側坐核を刺激する方法として、「負荷を調整できる」という利点から運動が最適とされています。

原因不明の首の痛みに悩んでいた男性(39歳男性)は、軽めのダンベルを持ち上げることから初め、徐々に負荷を重くしていったそうです。そうして達成感を積み重ねていくことで、今では首の痛みが軽くなり、ジョギングができるまでに回復したそうです。
「どこが悪いんですか?と言われるくらい動けるようになったので、前向きな気持ちになることができた」と話していました。

腰痛が原因で足全体に痛みを抱えていた男性(45歳男性)は、以前は杖をつかなければ歩けないほどでしたが、今では杖を殆ど使わずに歩けるようになったそうです。

この男性はスキーが趣味だったのですが痛みが出てからは諦めていたそうです。しかし、昨年から滑る時間を5分、10分と伸ばしていくことで、痛みが徐々に改善していったそうです。「痛みの強度が変わった。短くなったり弱くなったりしている」と嬉しそうに話していました。

体が動かせないほど痛い人は、運動以外で自分が好きだと思うことに挑戦してみましょう。小さい目標を定めて少しずつクリアしていき、成功体験を重ねていくことで側坐核が活発化していきます。
目標に挑戦するときは時間制限をつけるとより効果的だそうです。

扁桃体について

今回、痛みの原因として紹介された扁桃体(または扁桃核)は、「情動反応の処理と記憶において主要な役割を持つ」とされています。
ここが“暴走”することで、痛みだけでなくメンタルの不調を引き起こすこともあるそうです。
これに着目し、様々な治療・対処法が発案されています。
以下に、関連記事をご紹介いたします。

・瞑想(マインドフルネス)
ストレスや不安などを緩和させて病気を予防させる方法として「瞑想(マインドフルネス)」が注目されています。
http://kenkouiji.info/?p=5349

・呼吸法
ストレスや冷え性、不眠、高血圧など、様々な身体的な不調を緩和する呼吸法も存在します。
http://kenkouiji.info/?p=7614

いずれも比較的カンタンに生活に取り入れることができる内容なので、参考にしてみてください。

参考:
https://president.jp/articles/-/22878

まとめ

番組の中で、柴田氏は「真面目な性格の人が慢性痛になりやすい」と話していました。
思い当たる節がある方は、痛みを感じるメカニズムを知り、その改善法を信じて、日々小さな達成感を得られるような工夫を生活に取り入れてみてはどうでしょうか。


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