疲れが取れない~しつこい疲労感の原因と対策~チョイス@病気になったときより

最近、疲れがたまっていませんか?
仕事や子育て、家事に介護、人間関係など、現代人の生活は“疲れのもと”に囲まれています。
特に心配なのは慢性的な疲れで、
「歩いていてもしんどい」
「朝起きても疲れている」
というような疲れは、放って置いても解消されません。

しかも、そのまま無理して頑張り続けてしまうと、脳梗塞や心筋梗塞、がんなどの大病につながることもあるといいます。
そこで今回は、「疲れ」について特集していた『チョイス@病気になったとき』をまとめておきたいと思います。

 

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仕事による疲労

厚労省の調査によれば、就労人口8000万人の約4割である3000万人が、6ヶ月以上継続して疲れを感じているといいます。
これだけの人が、慢性的に疲れが抜けない状況に陥っているのです。

会社員男性のYさんも、2年前から疲労に悩まされていました。
責任感が強いYさんはその頃多くの仕事を任されるようになり、朝は始発で出社し、昼の休憩もまともにとらず、終電には間に合わないのでタクシーで帰宅する、というような生活を送っていました。学生時代は陸上部だったため体力には自信があったそうですが、疲れは日に日に溜まっていったそうです。しかもYさんの睡眠時間は「3〜4時間で、夜中に何回も目がさめていたから、疲れが取れなかった」そうです。
次第に集中力がなくなり、仕事の効率も悪くなっていきました。そのため残業が増加し、さらに睡眠時間が削られていくという悪循環の中で疲労はどんどん蓄積していきました。つらいときには栄養ドリンクを飲んでみたりしましたが効果は得られず、眠気も治まらなかったそうです。その結果ミスが増えてしまい、心の余裕もなくなっていってしまいました。Yさんは仕事が嫌だな、会社に行くのが嫌だなと思うようになっていき、動悸がして心が落ち着かないなどの身体的な変化も出てきました。

関西福祉科学大学の倉恒弘彦氏は疲労について以下のように話していました。
「人間は活動していると、細胞レベルではタンパク質に傷がついている。それに気付かずに動き続けると細胞が壊れて大きな病気になってしまうから、それを避ける目的で身体は疲労感という“アラーム”を発している。それを解消するようにするなど、うまく疲労感と付き合っていくのが大切。」
倉恒氏によれば、さまざまなストレスが疲労の原因になるといいます。

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チョイス@病気になったときより

特に仕事の場合、身体的なストレスと精神的なストレスで疲労を感じるそうです。

疲れたときに栄養ドリンクを飲むという方も多いと思います。
倉恒氏によると、「健康な人がどうしても仕事を仕上げなければいけないときに栄養ドリンクを飲んでしのぎ、その後に十分な休養を取れるのということであれば、栄養ドリンクを飲むことは間違いではない。しかし、Yさんのように長期間にわたって疲弊している状態でカフェインなどを取ると体内のゆがみは大きくなってしまうので、避けた方がいい」ということでした。

栄養ドリンクが有効なのは時と場合によるわけです。

また、仕事などで成果を出した直後などに、それまでの疲れが一瞬で取れるような感じがありますが、あれは疲労感が紛れているだけで疲れがとれているわけではないそうです。そのあとにしっかりと睡眠をとれたりすればいいですが、紛らわしているだけではいけません。

 

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疲労専門外来

さすがにつらくなったYさんは「疲労専門外来」を受診しました。疲労専門外来を置くナカトミファティーグケアクリニックの中富康仁氏は、問診などでYさんの心と体の疲れの原因を突き止めました。診断の結果は「過労による睡眠障害」となり、Yさんは1ヶ月間の自宅療養を指示されました。

睡眠もとれないような生活を送った結果このような病気になってしまったYさんですが、なぜ睡眠をとらないと疲労がたまってしまうのでしょうか。

疲労に関係しているのは脳にある自律神経の中枢です。ここから心臓の動きや呼吸、体温などを調整する指令が出ているそうです。この中枢の細胞は日中の活動によって発生する活性酸素によって傷ついていき、この傷が疲れの原因となります。
傷が増えると疲れを感じさせる「疲労因子FF」というタンパク質が増加し、脳内で「疲れた」というアラームを出して、身体に休息を求めます。この細胞の傷を回復させるのが「疲労回復因子FR」というタンパク質で、これは睡眠中にもっとも増加するのですが、十分に睡眠をとれないと増加せず、傷が修復されないので、疲れのアラームはなりっぱなしということになってしまうのです。

中富氏はY氏に対して「規則正しい生活で体内時計を整えること」「睡眠時間を最低7時間程度はとること」と指導しました。また、朝まで眠れるように睡眠薬も処方しました。

その結果、Yさんは「1週間睡眠を確保しただけで心と体がすっと軽くなった」そうです。1ヶ月後には仕事に復帰し、現在は仕事の量をセーブしながら働いているため、夜も眠れるようになりました。Yさんは「趣味の時間も確保できるので心身ともに安定している」と話していました。

倉恒氏は「会社のためと無理をしてしまう人も多いが、その結果長期療養が必要となると逆に会社に迷惑をかけることにもなる。早めに上司などに相談するように」と指摘していました。

疲労が続くと脳卒中、心筋梗塞、狭心症などのリスクが高まります。さらにはメンタルヘルス障害で長期療養を余儀なくされることもあり得るといいます。

また、倉恒氏は「疲労が重なると感覚神経の歪みは出ないが、自律神経の歪みが出てくる。それをなくすには毎日の睡眠が必要」と指摘していました。ですので、週末にする「寝だめ」は全然寝ないよりは意味があっても、やはり毎日しっかりと睡眠をとる必要があるそうです。

健康な人の疲れなら2〜3日の休養で回復しますが、2〜3週間疲れがとれないようなら「おかしいな」と考えるべきです。さらにそれが1ヶ月以上続くようであれば、医療機関で診てもらうべきとのことでした。

 

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疲労度を測る

医療機関で使える疲労度計というものがあるそうです。

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チョイス@病気になったときより

自律神経の状態を計測することで、疲れ具合を数値化できる機械です。家庭用の疲労度計も開発中なので、近い将来自宅で測ることができるようになるかもしれません。

現時点で簡単に疲労度を知る方法としては、20項目の疲労度セルフチェックがあります。以下の項目について、”全く感じないなら0点、非常に強く感じるなら4点”という要領でチェックしていってみてください。

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チョイス@病気になったときより

評価は以下のようになります。

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チョイス@病気になったときより

安全ゾーンならいまの状態を維持するようにしましょう。
危険ゾーンに該当して実感としても疲れが続くようなら、医師に相談するといいそうです。

 

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疲労解消法

倉恒氏が紹介していた疲労解消に有効な食事や行為は、以下の通りです。

・鶏胸肉
イミダゾールジペプチドという疲労回復物質が多く含まれており、抗酸化力が高まるそうです。

・赤身魚
マグロやカツオなどにもイミダゾールジペプチドが含まれているそうです。赤い部分に多く含まれているそうです。

・クエン酸
倉恒氏によると「人の身体のエネルギーはブドウ糖や脂肪を燃焼し、クエン酸にして、これを二酸化炭素や水に燃やしてエネルギーを作っている」といいます。クエン酸はエネルギーをつくるのに必要な物質なので、疲労回復に効果的なのです。

・お風呂
身体を温めることで血液の流れが良くなります。ぬるめの温度で10〜15分つかるようにしましょう。

・森林浴
緑の香りによるリラックス効果で自律神経が休まるそうです。緑のある場所に行けない人は、緑茶の香りを嗅ぐだけでもいいそうです。ただし、緑茶ににもカフェインが含まれるので、飲むのは朝にしましょう。

これらを紹介したあと、倉恒氏は「疲労を感じたときは休息をとること。休息をとっても疲れが取れないというときは、次のことを考える必要がある」と話していました。

休息をとっても疲れがとれないというケースを見ていきましょう。

 

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「休んでも疲れが取れない」理由

Hさん(39歳男性・開業医)は3年前の開業当初から10ヶ月間ほど続けて、かなり疲れていたそうです。当時は「気づかいの蓄積なんじゃないかと考えていた」そうですが、それなりに睡眠時間を確保しても疲れが取れなかったため、血液検査をすることにしました。
結果、TSHFreeT4(FT4)という甲状腺機能を見ることができる数値に異常が見られました。

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チョイス@病気になったときより

甲状腺ホルモンは身体が活動するのに必要なエネルギーを作り出すホルモンで、甲状腺でつくられています。TSHは甲状腺ホルモンを出すための指令が脳からどのくらい出ているかを示し、FT4は血液中の甲状腺ホルモンの量を示す数値です。

HさんのTSHは健康な人の40倍も出てしまっていたにも関わらずFT4は基準値以下でした。これは「甲状腺ホルモンの量が少ないために脳から大量に指令が出ているにも関わらずホルモンが出ていない」という状態であることを示しています。
この結果から「甲状腺機能低下症」と診断されました。
甲状腺機能低下症の症状には、以下のものがあります。

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チョイス@病気になったときより

この中に倦怠感・疲労感があります。Hさんがしっかり睡眠をとっても疲れが取れない原因はこの病気だったのです。
甲状腺ホルモン剤を飲み、体内の甲状腺ホルモン量を適切に戻すことで疲労がなくなったそうです。

倉恒氏によると、Hさんのように休んでも疲れが取れなくなったときには「まずは普段診てもらっている内科のお医者さんに診てもらうように」してほしいそうです。そこで原因がわかれば専門医を紹介してもらい、わからない場合には総合外来を紹介してもらって、そこで身体のゆがみを見つけてから専門医にかかるといった順序で進んでいけば良いそうです。

 

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慢性疲労の原因は脳幹にあり?

激しい疲労のために日常生活に支障が出る状態が半年以上つづく「慢性疲労症候群」という病気もあります。

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チョイス@病気になったときより

症状は激しい疲労の他にも頭痛や微熱、首のリンパ節の腫れなど多岐にわたり、患者数は24〜36万人と推測されているそうです。

この病気は、「筋痛性脳脊髄炎」という病気との共通点が多いことが以前からわかっていたそうです。これは筋肉に痛みを感じる病気なので脳や脊髄系に問題があるのではと考えられていましたが、90年代から現在まで通常の検査では炎症を証明できなかったそうです。
ところが近年、徐々にその実態が明らかになってくると同時に、慢性疲労症候群との関連も見えてきたといいます。下図は慢性疲労症候群の患者の脳の写真です。

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チョイス@病気になったときより

脳幹に炎症が起こっています。疲労が大きくなったり思考力や集中力が大きく低下したりすると、このように脳幹の炎症が強くなることがわかっているそうです。

倉恒氏の話によれば、近い将来にも、がん検診を受けられるような一般的な機関で、身体の症状と脳の炎症に関係があるかどうかを調べることができるようになるそうです。

アメリカでは昨年、「この病気(慢性疲労症候群)は脳神経の疾患であり、複雑で深刻な病気であることを理解して診断・治療する必要がある」という声明が発表されました。日本でも診断・治療法を確立すべく研究を進められているそうです。また、脳の炎症を抑える薬も開発中とのことでした。

慢性疲労症候群の治療法

現在は免疫力を回復させるアプローチがとられています。
ひとつは漢方薬です。「補中益気湯」と「十全大補湯」という漢方には免疫力を回復させる効果があることがわかっているので、処方されるそうです。

これに加えて規則正しい生活にするための指導も行われます。
そして、「酸化ストレス」が悪さをしていることもわかっているため、それを抑えるような健康補助食品(ビタミンCやE、イミダゾールジペプチド、コエンザイムキューテンなど)の摂取も勧められているそうです。

まとめ

疲れは異常を知らせるアラームです。なんとなくごまかすのではなく、しっかりとコンスタントに休養を取るようにするなど上手に付き合っていくことで、大病に発展してしまうことを防いでいきましょう。


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