現在、糖尿病の疑いのある人は約950万人もおり、さらに糖尿病の一歩手前である「予備群」の状態にある人は1000万人を超えると言われているそうです。
糖尿病は自覚症状が出にくいため、そのまま放置しておくと失明の恐れや透析治療が必要になることもり、しかも一旦悪化してしまうと元の健康な状態に戻すことはできません。
しかし、「予備群」の段階で適切に対処すれば、ちゃんと健康な状態に戻すことが可能なのだそうです。
そこで今回は、糖尿病にならないための具体的な血糖値管理法がNHK『チョイス』にて紹介されていたので、まとめておきたいと思います。
糖尿病予備群とは
「境界型」と呼ばれる糖尿病の予備群は、以下の2つを基準としています。
・「空腹時血糖値」が110以上126以下
・「負荷後2時間血糖値」(食後2時間後の血糖値)が140以上200以下
チョイスより
この境界型から悪化していくと糖尿病となり、合併症を発症してしまうのが怖いところです。
チョイスより
まず出てきやすいのが手足の神経障害です。毛細血管が傷つけられて起こる症状で、最悪の場合手足の切断につながることもあります。
さらに進むと5年ほどで目に網膜症があらわれ、失明する可能性もあります。
もっと進行して10年ほどになると腎臓に糖尿病腎症が発症し、人工透析が必要な生活になってしまいます。
糖尿病とは血管内に糖があふれている状態です。この糖が血管を内側から傷つけていくために合併症がおこるといわれています。目にしても腎臓にしても細い毛細血管が密集している臓器であるために合併症のリスクが高くなってしまうのです。
また、あまり知られていませんが、境界型の段階から動脈硬化は始まっているのだそうです。
チョイスより
悪化すると脳梗塞や心筋梗塞につながる危険性がありますから、境界型のうちから動脈硬化にならないような工夫が必要なのです。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]血糖値改善のきっかけは「ダイエット入院」
Tさん(50代女性)は、4年前の健康診断で糖尿病予備群であることが判明しました。
お父さんが糖尿病で、2度の入院や食事制限で苦労している姿を観ていたため、薬は飲みたくないなぁという思いがあったそうです。
さらに詳しい検査をうけるために訪れた新潟労災病院(http://www.niigatah.rofuku.go.jp/course/a19_01.html)で勧められた「ダイエット入院」で、Tさんは血糖値を正常の範囲に戻すことが出来たといいます。
ダイエット入院を指導している前川智医師は、
「退院後、大半の人は10キロ以上体重が減少して血糖値も改善し、その状態を維持できている」
と話していました。
ダイエット入院ではおよそ1週間の入院期間中、食生活について徹底的に学び、体験します。特に糖質制限には力が入れられ、食事の中に含まれている糖質を減らす知識をしっかりと学ぶのだそうです。
入院期間中の食事を見てみると……
チョイスより
普通の食事と変わらないボリュームに見えますが、糖質だけがしっかりと減っているのだそうです。糖質を多く含む白米やパンは1日1回昼食だけの100グラムで、おかずの方はむしろ普通より多いくらいのメニューです。
これを1週間続けて、糖質の少ない食事に身体をすこしずつ慣れさせていくのだそうです。
Tさんは1週間で3キロの減量に成功し、意識にも変化がおきたそうです。
「痩せる!食べない!という意志を持ちつづけるのは大変。それよりも“食べてもいい。その分明日は控えよう”というように、自分の食生活を意識するようになった。」
のだそうで、その意識の変化のおかげで食事管理を続けることができているのだそうです。
現在の朝食を見てみると……
チョイスより
パンは1きれだけでヨーグルトも無糖ですが、ヨーグルトに入れたバナナやリンゴなど、糖質もしっかりと含まれているように見えます。
しかしTさんは「自分に甘すぎてもいけないが、先生にも“頑張りすぎるとリバウンドが来るよ”と言われた」ため、例えば入院前は必ず2きれ食べていたパンをゼロにしてしまうのではなくて1きれだけにする、というような制限の仕方にしているのだそうです。
昼食を見てみると…
チョイスより
パスタは麺類なので糖質をたくさん含んでいますが「お昼には好きなものを食べる」と決めていて、その分、夕食では糖質を摂らないというのがTさんなりのルールで、退院後の2年間守り続けているそうです。
その結果、退院後半年で体重が72キロから51キロに激減し、血糖値も正常値へ改善したのだそうです。
ダイエット入院の効果
ダイエット入院した人と、入院せずに外来だけで済ませた人の、来院後1年間の血糖値を見てみると…
チョイスより
赤いグラフが外来で済ませた人たちの平均で、オレンジはダイエット入院をした人たちの平均です。ダイエット入院をした人たちの方がより血糖値が低くなって、上昇する気配すら見せていないことがわかります。
ダイエット入院では知識を得るだけでなく、体重の減少や血糖値の低下を実体験できるため、その成功体験が患者に自信を与え、退院後の食事管理の継続を助けるのです。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]食習慣を見直す秘策
新潟県魚沼市にある小出検診センターは、地域の住民や職場で働く人が人間ドックや健康診断を受けるために訪れる施設です。この施設では、検査の中で糖尿病予備群の人を見つけた場合、その人の生活状況を細かくチェックした上でその人に合った栄養指導を行っているそうです。
センターで用いられているチェックシートでは、1日の食事内容を間食やお酒の種類、量に至るまで細かくチェックします。
さらに「酒を呑む時によく食べているかどうか」や「麺のスープを半分以上飲むか」など、食の習慣・好みを17の項目に分けてチェックします。
こうして得たデータから、食べ過ぎているものや不足しているものを可視化することで問題を発見し、その人にあった指導をすることができるのです。
センターの栄養士の方によると、最近は特に不規則な食生活の人が多くなっているといいます。
例として、ある40代男性会社員のチェックシートを見てみると…
チョイスより
朝食はまったく抜きで、夕食時には…
チョイスより
お酒を飲みながらおかずを3種類食べ、ご飯の量も多めということがわかりました。
栄養士さんはこの男性に対し、夕食が多すぎるせいで朝食が食べられない点や空腹を感じた時に清涼飲料水を飲んでしまう点を悪い点として指摘した上で、改善指導を行ったそうです。
このように細かくチェックすることで適切な指導をすることができるのですが、現実的に、すべての人がこのようなチェックを受けることは難しいでしょう。
ということで番組では、このセンターの栄養士の方がどのように指導しているのか、どうすれば効果が出るのかという具体的なアドバイスが3パターン紹介されていました。
1、「満足するまで食べないと気がすまない人」へのアドバイス
改善のポイントは、野菜を最初に食べるということです。
さらに、葉物の野菜と一緒にキュウリやブロッコリーなどの歯応えのある野菜を入れれば、満腹中枢が刺激されて満腹感を得るまでの食事量を減らすことができるそうです。
2、「間食をやめられない人」へのアドバイス
“前倒し後ろ倒し間食”にするとよいそうです。
朝食や昼食の後にデザートを食べることが習慣になっている人はそれを切り離して、デザートを間食として間食の時間に回してしまえば、トータルの糖質摂取量が減るので改善につながるそうです。
それが難しいなら、毎日食べている間食の回数を減らして1日おきにするなどの工夫をするとよいそうです。
一回減らしたりやめたりすることによって、次第に「この量が必要かな?」と感じるようになる人も多いようです。というのも、アルコールやタバコなどと同じように「糖質中毒」というものが存在するので、糖質をとると脳内物質が出て多幸感を感じるような体質になってしまっている人もかなり多いというのです。
こういう方は急にデザートや間食をなくすことは出来ないでしょうから、回数を減らすようにしていくのが現実的です。
糖質の中毒性
白砂糖や炭水化物を摂ると脳のA10神経系というところが刺激されます。すると、ドーパミンという物質が分泌されて、強い快感をもたらします。このメカニズムは、コカインなどのドラッグを服用したときとまったく同じです。糖質の摂取時とコカイン摂取時で脳の同じ回路が使われていると考えれば、その中毒性の恐ろしさがわかっていただけるのではないでしょうか。
マウスを使った実験でも、糖度10%の砂糖水を与えると、摂取量がどんどん増えることが確認されています。摂取量を増やさないと気が済まなくなるのです。糖度10%といえば、炭酸飲料やスポーツドリンクとほぼ同じ。これらの飲料を日常的に飲まないと気が済まない人は、すでに立派な中毒症状だと自覚すべきです。
甘い食品によく使われるコーンシロップには果糖が多く含まれており、これも同様の作用をおよぼすことが明らかになっています。
また、最近の研究では、現在、米国で栽培されている品種改良種の小麦に含まれるエクソルフィンという成分も中毒性を持ち、脳の働きを鈍化させることがわかっています。この点からも、小麦は避けるべきです。
3、「晩酌をやめられない人」へのアドバイス
食べている量を自覚することが大切なのだそうです。
例えばジョッキビール1杯とご飯1杯はほぼ同じカロリーなので、「とりあえずビール」の後に頼んだ定食のご飯は、実質ご飯2杯目分になるのです。そういった自覚なく食べてしまっていることが大変よくないのだそうです。
「お酒をおかわりしたらご飯をおかわりしているのと同じ」であることを自覚して、食事やおつまみからの糖質の摂取を抑えるようにするのがポイントです。
それでもダメなら…
Hさん(50代女性)は、10年前の健康診断で糖尿病予備群であると診断されました。Hさんの父親は糖尿病で、その苦しむ姿を見ていたためとても不安だったそうです。
予備群とわかってからはゴルフや登山などのスポーツに挑戦しましたが、思うように改善しなかったといいます。
しかし幸運なことに、Hさんの自宅には「血糖値測定器」がありました。お父さんが使っていたものだそうです。血糖値測定器は指先から僅かな量の血を採取することで血糖値を計測することができる手のひらサイズの器具です。
Hさんは生活の中でこの数値をこまめにチェックするようにしてから、食べ過ぎを意識できるようになったといいます。
たとえば、Hさんは起床後すぐに「空腹時血糖値」を測定。この段階では84mg/dlと正常値(100mg/dl以下)を示していました。
「たくさん食べたなとか飲んだなと気になる時に自分で測るようにしている」と言うHさんは、昼食でラーメンを食べた2時間後に血糖値をチェックすると、食後2時間の正常値(140mg/dl)を超える146mg/dlを計測してしまいました。これは注意が必要な値です。
この日は夜にお友達との宴会があるなど、糖質を過剰に摂りやすい1日でしたが、その後1週間かけて食べる量を減らし、血糖値を正常な範囲内に戻していました。
このように血糖値を可視化できていれば血糖値管理を長いスパンで捉えることができ、無理なく正確に続けていくことができるのです。
この自己管理法のおかげで血糖値は正常値を維持し、体重は10キロも減ったそうです。
血糖値の基準
食後1時間血糖値が180 mg/dl、食後2時間血糖値が140 mg/dlを超えていると予備群や糖尿病の可能性があるため、専門医院で診てもらうべきだそうです。
下図は、重い糖尿病の人と予備群の人、そして健康な人の1日の血糖値のイメージを示したグラフです。
チョイスより
予備群の人は、食後に上がった血糖値が下がりにくいことがわかります。
予備群の基準として食後2時間血糖値が140である理由としては、空腹時との差が大きいからだそうです。これだけ急激に上がると脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなるのです。
健康な人はどれだけ呑んだり食べたりしても140を超えることはないそうですので、計測してみて140を超えていたら予備群であると自覚して病院を受診しましょう。
まとめ
前川医師によれば、血糖値が上がる人の大半は同時に体重も増加していて、痩せれば血糖値も良くなるのだそうです。
若いころの健康体重に戻るためには、糖質をつねに意識して、摂取量にも注意することが必要ですから、今回ご紹介した体重や血糖の測定が有効になるのです。
可視化することによって「こんなに体重が増えても、こんなに血糖値が上がっても、自分はこれを食べたいのか?と問いかけることが出来る」といいます。
糖尿病対策の第一歩として、気楽に始めてみてはいかがでしょうか。