歯が伸びた?しみる、隙間ができた~歯周病の治療~きょうの健康より

先日の『きょうの健康』では、歯周病の治療について特集されていました。歯周病の症状やなりやすい人、そして予防についても詳しく伝えられていました。
解説をするのは、歯科医で歯周病の治療と診断が専門の、東京医科歯科大学大学院の和泉雄一教授です。

歯が自慢でも要注意

50歳女性のAさんは、昔から歯が丈夫で、虫歯にもなったことがありませんでした。ところが40代から次のような症状が出るようになったそうです。

―口の中がねばつく
―冷たいものを飲むと歯にしみる
―歯みがきで出血する

また最近では奥歯がぐらつくようになったので受診したところ、歯周病が進行しており、歯を3本抜かないといけないと診断されたといいます。歯が自慢でも、歯を3本も失うことになったのは、歯周病が「歯の病気」ではなく「歯ぐきの病気」だからなのです。

 

スポンサーリンク

 

「歯ぐきの病気」歯周病

健康な場合、歯ぐきの中の歯槽骨がしっかりしているので、歯は歯ぐきによってしっかりと支えられています。

20160630092629

きょうの健康より

しかし、歯と歯ぐきの境目に磨き残しがあると、それが蓄積して「プラーク」(歯垢)となり、歯周病菌の温床となってしまうそうです。

20160630093059

きょうの健康より

こうなると、歯ぐきに炎症ができて腫れ、「歯肉炎」となります。歯肉炎が進行すると歯から歯ぐきが離れ、「歯周ポケット」というすきまができます。

20160630093136

きょうの健康より

歯周病菌は空気に触れない場所を好むため、歯周ポケットの中でさらに増殖するのだそうです。そして炎症がさらにひどくなると、「破骨(はこつ)細胞」が歯槽骨を破壊し、「歯周炎」となります。これが進行すると歯槽骨がなくなるので歯を支えるものがなくなり、歯が抜け落ちることになるのだそうです!

20160630093226

きょうの健康より

和泉教授は、
「15歳以上の約7割が歯周病になっているという報告がある」
と解説します。こんな高率で歯周病になってしまうとは、とても他人事とは思えませんね!

歯周病の症状チェック

次の4項目のうちひとつでも該当すれば、歯周病の疑いがあるそうです

①歯ぐきがむずがゆい
②歯みがきで出血する
③口の中がよくネバつく
④口臭が気になる

さらに、上の4項目「全部」と、次の⑤~⑧のうちのひとつでも該当すれば、「歯周病になっていると考えたほうがよい」とのことです。

⑤歯ぐきが縮み、歯が長くなった気がする
⑥飲食時に歯がしみる
⑦歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
⑧触るとグラグラする歯がある

 

スポンサーリンク

 

歯肉炎 VS 歯周炎

和泉教授は、
「①~④が『歯肉炎』の症状。⑤~⑧は歯槽骨がなくなってしまった『歯周炎』の症状。歯肉炎の場合には歯ぐきの表面に炎症があるものの、歯槽骨はあまり溶けていない。一方歯周炎では歯槽骨がなくなっている」
とコメントします。

さらに
「歯周炎になると歯が伸び上がって長くなってしまうので、冷たいものがしみたり、歯と歯の間があいてくるので食べ物がはさまりやすくなってくる。⑤~⑧の症状がある場合はすぐに歯科に行って治療を始めることが大事」
だとしました。

 

スポンサーリンク

 

歯周病の治療

まず、歯や歯ぐきの状態を見る「歯周検査」を行う

一番の原因であるプラークを確実に取り除くための「歯みがき指導」

磨き残しが石灰化し、歯みがきでは取れなくなってしまっている歯石を、歯科で専門的な器具(スケーラー)を使って取り除く「スケーリング」、及びスケーリング後の歯の表面を滑らかにしてプラークがつきにくくする「ルートプレーニング」を行う

かみ合わせの調整=歯と歯が強くかみ合うと歯周組織がダメージを受けるので、それを改善するためかみ合わせを調整し、均等にかめるようにする

必要に応じて歯周外科手術

フラップ手術

歯周外科手術で代表的なものは「フラップ手術」で、歯ぐきの表面に麻酔をし、メスを使って歯と歯ぐきの間を切開します。内側に取りきれない歯石がずいぶんついていることがわかります。この歯石を取り除く手術です。

20160630093550

きょうの健康より

歯石を取り除いたら、歯ぐきを戻して糸で縫います。1~2週間で抜糸をし、健康な状態になったら治療終了とのことです。

周組織再生治療

歯周組織を再生させるため、壊れた歯槽骨を生体内で吸収する人工の膜で覆い、再生を促す方法もあるそうです。

また、溶けてなくなった歯の根元に、再生を促す特殊なたんぱく質を塗ると、たんぱく質の影響で歯槽骨が戻ってくることもあるとのことです。
歯周組織再生治療では、半年から1年で徐々に再生してくるとのことです。
この他にも、歯の表面をレーザーを使って無菌化し、歯周組織を元気な状態に戻すという治療も紹介されました。

ここまでは、まだ歯を失っていない人が行える治療法ですが、すでに歯を失っている場合には「ブリッジ」や入れ歯、「インプラント」などの義歯で補うということが行われます。

 

スポンサーリンク

 

歯周病の予防

歯周病の予防としては、次の4点が挙げられました。

―正しい歯みがき
―定期的な歯科検診
―専門的な歯のクリーニング
―歯周病になりやすい要因の改善

正しい歯みがきのポイント

―自分に合った方法で歯みがきをする 自分に合った歯ブラシ(歯ブラシ、電動歯ブラシ)
―デンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯の間のケア
―必要によって「ワンタフトブラシ」などを活用する

和泉教授が正しい歯ブラシの使い方2種類を伝授しました。

スクラッビング法

歯の外側の部分に歯ブラシを水平に当て、20~30往復ぐらいの振動を与えます。

20160630095017

きょうの健康より

歯の内側に関しては、歯ブラシを45℃の角度で当てて、同様に振動を与えて磨きます。

20160630095109

きょうの健康より

 

スポンサーリンク

 

バス法

少し歯周病が進んで歯周ポケットができている人に有効な磨き方だそうです。歯周ポケットの中に歯ブラシの毛先を入れるようにして、歯の内側・外側ともに歯ブラシを45℃の角度で当てて細かく振動を与えます。

歯周病の人が歯磨きで気をつけるべき点について和泉教授は、
「歯周病の人は歯ぐきの炎症が強くなっており、硬いブラシでゴシゴシと強く磨くと出血も起きるし歯ぐきも傷つける。そのため歯ブラシは柔らかめのものを選び、あまり強く磨かないこと。
また『ワンタフトブラシ』という毛先が一束になっている歯ブラシを使って歯と歯の間や歯と歯ぐきの間、そして一番奥の部分(一番奥の奥歯の向こう側)をしっかりと磨くことが必要である」

と指摘しました。

定期的な歯科検診と専門的な歯のクリーニングの必要性

歯科検診と専門的なクリーニングについて和泉教授は、
「年に1回程度は必ず歯科を受診し、汚れ(プラーク)の付きぐあいや歯ぐきの炎症を定期的にチェックすることが必要だ。また日頃の歯磨きで自分で汚れを100%取り除くことは無理なので、3ヶ月~半年に1回、歯科医や歯科衛生士による専門的な歯のクリーニングを受けるのが理想だ」
と語りました。

歯周病になりやすい要因とは

主に3つの要因に分けられるとのことです。

生活習慣
甘いものや間食、喫煙で汚れがつきやすい ストレスがかかる生活=免疫機能が低下するので歯周病になりやすい

歯の状況
歯並びの悪さ、詰め物や義歯が多い、歯ぎしりをする人は歯周病になりやすい

持病
糖尿病=歯周病になりやすく、また歯周病があると糖尿病も悪化しやすい 更年期障害やカルシウム拮抗薬を使用することでも歯周病になりやすい

 

スポンサーリンク

 

まとめ

歯周病に関して気をつけたほうがよいことについて和泉教授は、
「歯周病は歯の周りについた汚れが第一の原因なので、それをきちんと取り除くこと。また歯周病は動脈硬化や糖尿病を悪化させるなど、全身にもさまざまな影響を及ぼすので、全身の健康管理は口から始めることが大切だ」
と提起していました。

歯周病は大切な歯を失ってしまう恐ろしい病気で、しかも成人の大半がかかっていることがわかりました。また歯周病が原因で全身の健康にも害が出るとのことなので、歯磨きを基本としてきちんと対策したいものですね!

mametisiki

歯周病が全身の健康に与える影響について、詳しく調べてみました。こちらのページ(http://kenkouiji.info/?p=4395)の内容をまとめると、歯周病等になると発生する「サイトカイン」という物質が血管内に入ると、全身を巡って心臓病や糖尿病などのリスクになるとのことです。
この他にも歯周病菌が原因で細菌性肺炎、細菌性心内膜症になったり、歯周病が誘引となるものとして糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞のほかにバージャー病(血管の病気)や早産・低体重児出産などがあることが指摘されています。
歯周病は単に歯ぐきだけの病気というだけでなく、全身に関わりがあることがわかります。


スポンサーリンク

コメントは受け付けていません。