NHK『きょうの健康』で「解明進む 長寿の秘密」と題した放送がありました。誰もが気になるテーマではないでしょうか?
慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター講師の新井康通医師のチームによる、100歳以上の方を含む人たちを追跡した大規模な研究の成果が発表されました。この成果により、長寿のカギ2つがわかってきたというのです。
99歳の人を白寿と呼びますが、100歳以上の人は「百寿者」と呼んでいるそうです。実は平均寿命は発展途上国を含む世界中で延びているのですが、日本はその中でもトップレベルでさらに急増しています。
日本経済新聞より
しかしみんなが健康に長生きをしているわけではありません。日本人の「平均寿命」と、日常生活に制限なく過ごすことができる「健康寿命」の間には、男性で9年、女性で12年の差があるのです。つまり、病気などで健康的に過ごせなくなり、命を終えるまでに男女とも10年前後の期間があるわけです。
きょうの健康より
「健康寿命」をいかに延ばすか? 100歳を超えてもなお元気な方々の特徴を知ることにより、一般の人の「健康寿命」を延ばすヒントにしようと、百寿者について研究しているのです。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]わかってきた健康長寿のカギ2つ
きょうの健康より
研究の結果、健康長寿の秘訣としてわかってきたことが二つ、番組で紹介されていました。
一つ目は、全身で徐々に進行していく慢性炎症を抑えることです。これは健康長寿の最大の要因といえるのだそうです。
二つ目は長寿の家系では、染色体の先端にある「テロメア」という部分が短くなりにくいとがわかったのです。
新井康通医師のチームの研究の対象者は次のようになっています。
きょうの健康より
これだけたくさんの人たちの健康状態を詳細に長期間追跡調査した研究は、世界でも始めてだとか。
具体的な調査方法は、まず対象者が健康長寿であるかどうかを判断するため、「日常動作の自立度」(日常生活が介護なしでできるか)、「認知機能」、「病歴」、「余命」(調査した時点からどれだけ生存できたか)という4つの指標を調べました。
きょうの健康より
さらに、「健康長寿」の要因として何が重要かを知るため、血液をを調べたそうです。造血能力、慢性炎症の程度(老化や肥満などによって血管や臓器に慢性の炎症が進行する)、テロメアの長さなど5項目を分析しています。
きょうの健康より
これらを分析した結果、「慢性炎症」の程度が低いほど「健康長寿」であることがわかったのだそうです。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]さまざまな病気の原因となる「慢性炎症」とは?
私たちが炎症と聞いて思い起こす急性炎症とは違い、慢性炎症には自覚症状がないそうです。全身で序々に進行してさまざまな病気を引き起こすと考えられているといいます。
慢性炎症の原因のひとつは肥満で、内臓脂肪が蓄積してくると、TNF-αやIL-6(インターロイキン-6)といった、炎症を引き起こす物質が分泌されます。それが血管、心臓といったさまざまな臓器に運ばれて、動脈硬化や心筋梗塞、糖尿病といったさまざまな病気に影響するのです。
きょうの健康より
ここで触れられているTNF-αについて調べてみると、肥満時に増加して、糖尿病や動脈硬化といった生活習慣病のリスクを高める物質であることがわかりました(コトバンクより)。またIL-6(インターロイキン-6)は、加齢により腸に増えて慢性炎症を引き起こしたり(Medエッジより)、関節リューマチ患者の体内に大量に作り出される物質のようです(中外製薬より※音声)。内臓脂肪の蓄積が体にもたらす悪影響がよくわかります。
また、新井医師を取材した日経新聞の記事によると、
共通していえるのは、百寿者には糖尿病と動脈硬化が少ないこと。また、防御ホルモンのアディポネクチンが多く分泌されていること。そして、食べる意欲が旺盛でよく食べ、興味を持ったことに対して前向きで熱心に取り組むことなどが分かってきたという。
日本経済新聞より
「特筆すべきなのは、糖尿病が6%と大変少なかったこと。70代の糖尿病罹患(りかん)率は20%程度ですから、糖尿病にかからず長生きできている、というのは百寿者の明らかな特徴といえます」と新井さん。また、肥満の人も少ないが、極端な痩せ型もいない。「栄養状態がいいと骨折も少なく、元気に活動ができます」(新井さん)。
日本経済新聞より
ということなのだそうです。アディポネクチンは最近話題の長寿ホルモンで当サイトでも何度か取り上げています。内臓脂肪から作りだされているホルモンですが、肥満が過ぎても痩せすぎても分泌量が減ってしまうということがわかっています。糖尿病が少ないというのも、アディポネクチンが多く分泌される、肥満でもなくやせ過ぎでもない身体だからという見方もできるかもしれません。
テロメアに関しては、最近では癌やアルツハイマー病も慢性炎症と関係すると考えられているとか。
こう考えるとなんでもかんでもテロメアに原因を求めてしまいがちですが、肥満だけが慢性炎症を引き起こすわけではなく、加齢そのものも慢性炎症の原因なのだそうです。加齢による免疫の低下、そして細胞の老化が慢性炎症を引き起こすという説です。これには個人差があると、番組の中で新井医師は説明していました。
「慢性炎症」についてわかったこととは
また、高齢者のどんな年齢層でも、炎症の程度が低い方ほど余命が長いということが明らかになりました。
きょうの健康より
この結果から、「慢性炎症」が「健康長寿」のカギを握っていることがわかります。そして、慢性炎症の程度が低いほど、日常動作の自立度や認知機能も高いという結果が出たようです。これは一般の高齢者でも100歳を超えた人でも同様だということが実証されました。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]2つ目のカギ、「テロメア」とは?
細胞の中の核の、さらにその中に染色体があるのですが、染色体の末端ではDNAの同じ配列が複数繰り返されています。この部分を「テロメア」というのだそうです。
きょうの健康より
ウィキペディアより
テロメアには遺伝子としての働きはないのですが、DNAの末端を保護して安定に保つ働きをしているのだそうです。
新井医師の説明によると、テロメアは細胞が分裂をするごとに短くなっていくのですが、ある限界まで短くなると細胞の分裂が止まり、それ以上分裂しなくなるそうで、それが細胞の老化だと考えられています。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]テロメアについてわかったこと
100歳までは、年齢が高くなるほどテロメアが短くなることがわかりました。そうなると、100歳を超えるとテロメアはますます短くなると予想されますが、実際に百寿者のテロメアを測ってみると、予想よりかなり長かったのだそう。さらに、100歳よりも105歳のほうがテロメアが長かったというのです!
きょうの健康より
これは、テロメアが年齢とともに長くなったわけではなく、100歳を超えて生きる人は、テロメアが元々長いうえに、短くなる速度も非常に遅いからたくさんあるように見えるのではないかとのことでした。
さらに、百寿者の子どものテロメアを調べてみると、一般の人と比べて長いことがわかったのでした。80代でも一般の方の60代に匹敵するテロメアの長さがあるそうなのです。このように、「長寿の家系」と言われる人たちはテロメアがかなり関係している可能性があるとのことです。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]きょうの健康より
今、私たちができることは?
では、慢性炎症を抑え、テロメアの長さを保つため、私たちはどうすればいいのか、気になってきます。これまでの研究から参考になることをまとめると、慢性炎症を抑えるには次のことを気をつけるとよさそうだと、新井医師は言います。
-中年のころから腹八分目
なお、研究の結果は、長寿を目的とした慢性炎症を抑える薬の開発に生かされていくようです。
新井医師によるまとめとしては、
『加齢は誰にも避けられないが、そのスピードを抑えることで、心身ともに元気なままで亡くなることが可能になるかも知れない。そしてそのカギとして慢性炎症の影響がはっきりしてきたので、健康長寿への新しい道が開けることを期待したい。』
とのことでした。
が、世界に目を向けるとさらにその上を目指している研究者もいます。
老化を止める物質「TAM-818」がついに製品化! テロメアを修復、不老不死への道が開かれる!?
テロメアとは、染色体の先端に存在するキャップのようなもの。螺旋状になっている大切な遺伝子情報を保護する役目がある。
~中略~
人体にある数十兆の細胞は、絶えず分裂活動をすることで人間の生命を維持している。が、細胞が分裂する際、テロメアも短くなってしまう。その結果、身体に老化現象が起こってくるというわけだ。
exciteニュースより
ここまではすでにみてきたとおりです。
通常、人体にあるテロメアは短くなる。ただし、幹細胞、生殖細胞、ガン細胞の3つにあるテロメアは短くならない。それは、テロメラーゼという酵素が働くからだ。
このヒトテロメラーゼを最初に発見したのが、ウィリアム・アンドリュース博士である。
つまり、テロメアといってもいろいろあって、私たちの身体の中には短くならない特殊なテロメアもあるわけです。そして、短くならないテロメアにはテロメラーゼという酵素が影響していることがウィリアム・アンドリュース博士によって発見されたのです。
この博士は不老不死について研究している有名な博士だそうで、このたび、テロメラーゼと同じ働きをする「TAM-818」という合成物質を配合した化粧品「defytime cream」を発売するのだとか。
化粧品ということで、その効果はシワがなくなるといった美容面にあるそうですが、こうした研究が進んでいくと、本当に不老不死なんていうことも可能になってくるのかもしれません。