いま、「がん」の中でもっとも患者数が多い大腸がん。
患者数はここ30年で右肩上がりに増加しています。
健康カプセル!ゲンキの時間より
現代人にはやっかいな存在である大腸がんですが、大腸がん死亡率が日本一低い愛媛県(男性1位、女性2位)の事例を見てみると、大腸がんのリスクを下げるヒントがたくさん隠されていました。
今回は、愛媛県が誇る“4つの日本一”から食生活と大腸がんとの関係について解説していた『健康カプセル!ゲンキの時間』をまとめておきたいと思います。
日本一の産品をひとつずつ挙げながら、その健康効果を解説していきます。
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1,柑橘類
愛媛と聞いて思い浮かべるのは、やはり柑橘類ですよね。
そのイメージ通り、愛媛県は柑橘類の生産量が日本一です。
柑橘類には食物繊維が豊富に含まれているため、腸内環境を整えてくれます。
愛媛大学医学部附属病院の池田宜央医師によれば、「大腸がんの原因は動物性脂肪のとりすぎであると考えられている」そうです。胆汁が大量に分泌されて腸内細菌と結びつくことが大腸がんの原因になるというのです。
大腸がん予防には、食物繊維を摂って腸内環境を整えておくことが大事なのですね。
2,鯛
愛媛県は海に囲まれているため、魚介類に恵まれている土地でもあります。
番組が取材で訪れたスーパーにもたくさんのお魚が並んでいましたが、今回注目していたのは「鯛(たい)」です。
愛媛県は鯛の養殖生産量が日本一で、愛媛の人は日常的に鯛を召し上がるそうです。
鯛には、EPAという腸管の粘膜を修復して炎症を抑える働きがある物質が含まれています。
さらにビタミンB6も豊富に含まれており、この物質には大腸がんのリスクを低下させる効果があるという研究結果も存在するそうです。
3,麦味噌
愛媛県は「はだか麦」という大麦の生産量も日本一だそうで、このはだか麦を原材料にして作られる「麦味噌」にも、大腸がんの予防効果があります。
日本全国で一般的な味噌は米から作られた「米味噌」なのですが、愛媛では麦味噌が主流だそうです。
麦味噌は、はだか麦に麹菌を入れてから大豆や塩と混ぜて発酵させ、1〜3ヶ月熟成することで完成します。愛媛の麦味噌は麹の割合が多いため、つぶつぶがはっきりしているという特徴があるそうです。
発酵に用いる麹菌にはお腹の中で腸内環境をよくする働きがあり、一緒に含まれているアミラーゼという分解酵素にも、腸内にいるビフィズス菌などの善玉菌の活動を活発にする働きがあり、大腸がんのリスクを下げてくれます。
さらに、「βグルカン」という水溶性食物繊維も注目すべき栄養素として紹介されていました。
免疫力アップやコレステロール低減作用を持っているこの物質の含有量を、お米と比較すると…
健康カプセル!ゲンキの時間より
βグルカンも食物繊維の総量も、はだか麦の方が多く含有しています。
食物繊維は、不溶性と水溶性の2種類が存在します。
「不溶性」は消化吸収されずにそのまま排出されるので便の材料となり、「水溶性」は腸内でドロドロになるので便を柔らかくする効果をもっています。
この両者の理想的なバランスは「不溶性:水溶性=2:1」とされており、池田医師によると「不溶性は食事で取りやすいので、水溶性を意識して摂ることが大事」だそうですから、この点でも、水溶性のβグルカンを豊富に含む麦味噌は大腸がん予防に優れていると言えるのです。
番組では、「佐妻(さつま)」という愛媛の郷土料理を紹介していました。
タイやアジなどの白身魚をすりつぶして、糸こんにゃく、みかんの皮、キュウリ、ゴマなどと混ぜ、麦味噌で味付けしたものです。
この冷たい汁を、アツアツの麦ご飯にかけて食べます。
いかにも腸に良い食材がたくさん入っている汁ですが、ご飯の方が「麦ごはん」であることもポイントです。
番組では被験者3人が、普段食べている味噌汁を麦味噌にし、ご飯を麦ごはんにする実験を行っていました。
実験前と実験開始3日後の善玉菌の数の変化を見てみると…
健康カプセル!ゲンキの時間より
上段が実験前、下段が実験後の数値です。全員、善玉菌が増加していますね。
たった3日でこの違いですから、「麦」の大腸がん予防効果はとても大きいことがわかります。
ちなみに、麦味噌や麦ごはんが手に入らないときは、キウイフルーツを食べるといいそうです。
松生クリニック医院長で医学博士の松生恒夫氏によれば、「キウイフルーツは不溶性と水溶性の食物繊維が2:1の理想的なバランスで含まれている」といいますから、デザートとして取り入れてみるのもいいでしょう。
(なんと、愛媛県はキウイフルーツの生産量でも日本一だそうです。)
4,タオル体操
愛媛県は海岸部の段々畑が有名な、急傾斜地が多い土地です。
ここをよく歩いて運動になっていることも、腸にとても良い作用をもたらしていると考えられています。
松生氏によれば、「運動などで副交感神経を刺激すると、腸のぜん動運動が活発化する」そうで、運動による整腸作用が大腸がんのリスクを下げるのです。
愛媛には「今治タオル体操」という体操があります。
16年前に民謡・木山音頭に合わせてつくられたもので、現地では老若男女問わず知られており、市役所では每朝この体操をしてから業務を始めているほど有名なのだそうです。
この体操は今治の特産品であるタオルを手に持ちながら様々な動きをする体操で、その動きの中に腸をいい意味で刺激するパートがたくさん含まれているのです。
たとえば、体をひねったり倒したりする運動は、下行結腸を刺激します。
健康カプセル!ゲンキの時間より
前屈は、腸全体を刺激します。
健康カプセル!ゲンキの時間より
愛媛県の人でないとこのタオル体操はわかりませんが、「このような動きをすると、このように腸を刺激できる」ということを覚えておけば、日常の体操・運動の中で応用できると思います。
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まとめ
さいごに、松生氏は「大腸がんの血便は痔と間違えやすいので自己判断は良くない。」と指摘していました。便に血が混じっているのに気づいた時に“なんだ、痔か…”と、勝手にと思わないことが大切です。
早期発見をすれば90%以上の確率で治すことができるのが大腸がんですから、定期的に検査を受けるようにしましょう。
そして日常生活では、今回得た知識を食生活や運動に取り入れて、大腸がんのリスクを下げていくよう心がけてみてください。