天井ぐるぐる~めまいのタイプと最新治療法~チョイスより

日常生活の中で、ときどき感じることがある「めまい」。くらくらしたりふらふらしたりで、嫌な感覚ですよね。
それでも「すぐに治るから」ということで、めまい程度では病院に行かないという方も多いのではないでしょうか?
しかし実は、1分以内で治る程度のめまいにも、命に関わる病気に因るものや、その後の生活に関わるような絶対に放置してはいけないめまいもあるというのです。
そこで今回は、危ないめまいを見分ける方法やカンタンな予防法、最新の治療情報まで紹介していたNHK『チョイス』をまとめておきたいと思います。

 

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目がまわる本当の原因

番組に登場したTさん(30歳主婦)は、ある朝目覚めた瞬間に激しいめまいに襲われたといいます。起き上がろうとしてもそのままバタンと前に倒れてしまい、吐き気もあったため、救急車を呼んだそうです。
搬送先の総合病院ではめまいを抑える点滴をうたれたので症状はおさまりましたが、Tさんは「次、またいつめまいに襲われるかわからない…」という不安でいっぱいになったそうです。
そこでTさんは耳鼻咽喉科を受診。
医師から「良性発作性頭位めまい症」と診断されました。

この病気の原因は「内耳」という部分にあります。
身体のバランスを保つ役割のある内耳は「三半規管」と「耳石器」で構成されており、それぞれリンパ液で満たされています。

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チョイスより

「三半規管」は中を通るリンパ液の流れを、「耳石器」は中にある耳石という石の動きを感知することで、頭の動きや傾きを脳に伝えています。

ところが、耳石の一部が刺激や老化などによって剥がれて、三半規管に入ってしまうと、頭の動きとは関係のないリンパ液の流れをつくってしまい、実際は頭が動いていなくても「頭が揺れている」という信号が脳に送られてしまいます。
すると、脳は身体のバランスを保とうとして目に信号を送るため、眼球がくるくると回転しだし、めまいが生じるのです。

奈良県立医科大学附属病院の山中敏彰氏によれば「めまいの中ではもっとも多い」という良性発作性頭位めまい症
その治療は、三半規管に入った耳石のかけらを元の耳石器に戻すことで実現します。
患者はまず、特殊なゴーグルを装着します。これにはカメラが内蔵されているので、医師はモニターを介して眼球の動きを詳しく見ることができます。
その状態で医師が患者の頭を動かすと、ある位置で眼球がピクピクと動き出します。
まさに耳石が三半規管に入った瞬間です。
三半規管は3つの半規管からなるもので、そのうちのどの半規管に入ったかで、眼球の動きが変わります。

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チョイスより

眼球の動き方を見れば、どこに耳石のかけらが入ってしまったかを特定できるというわけです。
耳石の位置がわかったら、再び頭を動かして、耳石を元の位置に戻していきます。
8〜9割の患者は、この治療方法で治るそうです。

北里大学医学部神経耳科学教授の長沼英明氏によれば、耳石の表面はつぶつぶ状になっているそうです。
(下図は模式図です)

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チョイスより

これが粒子状に剥がれていくなら問題ありませんが、塊で動くと良性発作性頭位めまい症になるといいます。
耳石は新陳代謝しているので、すこしだけ剥がれるということは誰にでもあることなのですが、剥がれた耳石が一箇所に集まって大きな塊になり、それが三半規管の中に入ってしまうと、やはりめまいが生じるそうです。

ゴーグルを用いる治療では治らない残りの2〜1割の人は、三半規管のなかにあるクプラというゼラチン状の部分に耳石がくっついてしまうことでめまいが生じているのだそうです。
今までは治すことが難しいとされていましたが、カンタンにできる治療方法が紹介されていました。
まず、壁から半歩ほど離れて壁に手をつきます

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チョイスより

耳に入った水を抜く感じで、首を傾けて、片足でジャンプします。
左右10回、1日1回以上、気づいた時に行います。(ただし転倒には十分注意してください。)

良性発作性頭位めまい症は、寝相がいい人や50代以上の女性に多いそうです。
寝相が良いと、寝ている間に耳石が耳の一番低い方に溜まってしまうので、塊を作りやすいというわけです。
50代以上の女性に多いのは、骨粗しょう症によるカルシウム不足で耳石が剥がれやすくなるためだそうです。

良性発作性頭位めまい症の再発率は20〜30%という高い確率になっているので、予防を意識する必要があります。
長沼氏は「要はたまらなければいい。分散させておくことが予防になる」と指摘していました。
それでは予防法を具体的に見ていきましょう。

 

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良性発作性頭位めまい症の予防法

長沼氏によれば「寝返り運動」が予防につながるそうです。

頭を枕にのせて、仰向けに寝ます。
そのまま10秒数えたら右を向いて10秒。
仰向けに戻って10秒。
つぎは左向きで10秒キープし、また仰向けに戻ります。
これを朝晩10セット行うだけで、耳石のかけらが1箇所にたまりにくくなるそうです。

長沼氏は、首が痛くならない程度に枕を少し高くすることも推奨していました。
カルシウムとビタミンD、ビタミンKを意識的に摂取することも効果的だそうです。

 

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メニエール病

Sさん(42歳男性)は3年ほど前、右耳に違和感をおぼえました。
「飛行機にのったときや登山に行ったときのような耳が詰まる感じ」だったそうですが、唾を飲んでも改善しなかったそうです。違和感は残りましたが、生活に支障をきたすほどではないので様子を見ることにしたSさんでしたが、4日後の朝、ベッドから起き上がろうとしたときに激しいめまいに襲われました。
「頭痛じゃないけど、経験したことのないような身体の変化だった」といいますが、Sさんは仕事へ向かいました。
しかし、低音の聞こえが悪くなって電話にも苦労するなど、業務にも支障が出始めてしまいました。
それからはみるみる悪化していき、立って移動することすらできなくなってしまったそうです。
めまいは10分ほどで治まる時もあれば、2時間〜半日ほど続くこともあり、嘔吐の症状も出始めたそうです。

1週間後、大学病院で「メニエール病」と診断されました。
この病気は、内耳の蝸牛という部分に異常が生じることによって発症します。
蝸牛の中は「内リンパ液」と「外リンパ液」で満たされている器官で、耳から入ってきた音を液体の振動に変えて脳に伝える、いわば音のセンサー役を務めています。
しかし、なんらかの理由で内リンパ液の方だけが溜まり過ぎることがあるそうで、その状態になるとメニエール病を発症することになります。
下図は健康な人の蝸牛の断面図です。赤い部分が内リンパ液です。

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チョイスより

しかし、メニエール病の人の断面図を見てみると…

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チョイスより

内リンパ液の部分が大きく膨らんでいるのがわかります。
本質的な原因はまだわかっていませんが、ストレスが誘引と考えられているそうです。強いストレスがかかった期間の後ほど発症しやすいそうです。

良性発作性頭位めまい症は数分でめまいがおさまりますが、メニエール病の場合はめまいの継続時間が長いことに特徴があります。
その他の特徴としては

・ 耳鳴り
・ 耳が詰まった感じ
・ 耳の聞こえが悪い

これらが挙げられます。

こういった症状がある場合はメニエール病が疑われますから、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
メニエール病は進行性の病気なので、早期発見が重要です。治療を受けずにめまいを繰り返していると、聴力が戻らなくなってしまうそうです。
(※耳の専門家を調べたいときには、日本めまい平衡医学会http://www.memai.jp/のホームページで検索しましょう。)

メニエール病の治療は、利尿剤などで内耳の水ぶくれを治す薬物治療や、ストレスをためないような生活習慣の改善指導によっておこなわれます。
長沼氏によれば、「悩みごとは、5分考えても結果が出ないようなときには、思考を停止して楽しいことを考えるようにするといい」そうです。考え続けてしまうと、その間ずっとメニエール病の発作が起きやすくなってしまうからです。

他にも、有酸素運動(散歩やランニングなど)が効果的と言われているそうですし、「水分摂取療法」という治療法もあるそうです。

メニエール病の原因として、最近注目されているのが脱水です。
体内の水分量が減ると、脳からバソプレッシンというホルモンが分泌され、水分が体外に出て行かないようにためこもうとするのですが、メニエール病の患者は何らかの理由によって内耳でホルモンが働き過ぎてしまい、ここに水分が溜まりやすくなってしまうのだそうです。
そこで、普段から多めに水分を摂取することでバソプレッシンが働き過ぎないようにするのが「水分摂取療法」です。Sさんもこれを実施したところ、1年半くらい経ったあたりから症状が出なくなったそうです。
ただし、この治療法を自己判断で行ってはいけません。
心臓と腎臓に負担をかける可能性がある治療法なので、心臓や腎臓が正常に働くかを専門医に調べてもらってから、指導を受けながら行うようにしましょう。

長沼氏はプールでの水中運動も勧めていました。
「中耳炎がなければ」という条件付きで可能になる治療法です。
プールに入ると、水圧によって、静脈から心臓に戻っていく血の量が増えます。そのときに心臓がちゃんと収縮すると耳の血流も良くなるので、メニエール病の治療に効果があるのだそうです。

このように様々な治療法があるメニエール病ですが、2年ほど経過を見ながらじっくりと治療を進めていくそうです。
すると、95%の患者で症状を抑制することができ、8〜9割の患者で聴力低下を防ぐことができるそうです。

内耳が原因で起こるめまいには他に、聴力が急激に落ちる「突発性難聴」や、めまいが長時間続く「前庭神経炎」もあるそうです。

 

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首に原因があるめまい

Mさん(60代男性)は25年前、電車で寝ていて目を覚ましたときにめまいを感じました。「雲の上にのっているような感じで、ふわふわして気持ち悪かった」というそのめまいも帰宅後には治まりましたが、「下を向くとグラグラ、寝て横を向くとグラグラ」という状態はずっと続いたといいます。
そこで翌日、耳鼻咽喉科を受診しましたが、原因はわかりませんでした。
4年後には脳神経外科を受診してCTやMRI検査まで受けたそうですが、それでも異常は見つかりませんでした。
原因がわからないまま症状はどんどんと悪化していき、しまいには仕事をすることもままならなくなってしまったそうです。
コルセットで首を固定して頭部が揺れないようにするなど、苦しみ続けて19年。
ある病院へ行ったときに、Mさんの首にめまいの原因があることがわかりました。

首には椎骨動脈という血管が通っています。

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チョイスより

この血管は、身体のバランスを司っている「小脳」と「脳幹」という部分に血液を運んでいるのですが、曲がってしまったり動脈硬化などが原因で血管が狭くなってしまったりすると、血流が減ってめまいが起こりやすくなると考えられているそうです。
正常な首の骨は前に緩やかなカーブを描いていますが、Mさんは設計の仕事でうつむき姿勢を続けていたため、首の骨の湾曲が逆になってしまっていました。

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チョイスより

診断後は抗めまい薬を服用しながらコリをほぐす体操や首に負担をかけない生活を送るようにしたところ、症状は改善したそうです。

 

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脳に原因があるめまい

耳や首だけでなく、脳にめまいの原因がある場合もあります。
脳の病気を疑うべきなのは、めまいに加えて以下の現象が見られるときだそうです。


・顔や手足のしびれや麻痺
・ろれつがまわらない
・ものが二重に見える
・立てない、歩けない

これらがある場合は脳出血や脳腫瘍、脳梗塞が疑われるそうですから、すぐに救急車を呼んでください。
脳神経外科や神経内科を受診することになるそうです。

 

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まとめ

今回紹介された病気以外にも、心臓の不調や不整脈などでもめまいは生じうるそうで、「起立性調節障害」という、立ち上がった時などに血圧を保てなくなる病気などもあるということでした。
それぞれの原因部位によって違うめまいの特徴を踏まえて、適切と思われる医科を判断し、放置することなく医師の診断を仰ぐようにしましょう。


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