誤診かも?認知症の見きわめ方〜『あさイチ』より

物忘れ、気分の落ち込み、徘徊。
こういった症状のある患者が認知症ではないのに認知症と誤認診断される事例が増えてきています。“認知症でない認知症患者”を見たことがあるという認知症専門医は約8割にものぼり、誤診された患者は去年1年間で最低でも3500人はいるといわれています。

逆に、認知症なのに別の病気と診断されてしまい、薬の副作用に悩まされる人も増えているそうです。

なぜこのようなことが起こるのか。そして、自分や家族が認知症のような症状が出た時にはどうすればよいのか。
NHK『あさイチ』で認知症について特集していましたので、まとめておきます。

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認知症ではないのに認知症と診断される

番組に登場した70代の女性は、2年前に認知症と診断されました。
発端はめまいと吐き気で、内科を受診したといいます。MRI検査を受けてみると脳に萎縮が見つかり、アルツハイマー型の認知症と診断されました。

認知症と診断するためには、

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・問診
・認知機能のテスト
・画像検査

あさイチより

この3つを組み合わせた診察を経て、診断を下すことになります。

「問診」は家族や本人から症状や病歴を聞き取るもの。
「認知機能のテスト」は記憶力などを調べるテストで、
「画像検査」はMRIで撮影した画像から脳の状態を確かめる検査です。

女性が当時の診察の様子を振り返ると、問診は短い時間で済まされてしまい、医師は全然顔も見てくれずに、質問もしてくれなかったそうです。
そんな診察で「認知症」と言い渡された女性ですが、認知症であると信じて治療薬を1年半にわたり飲み続けました。
すると次第に、異常なほどイライラしてきたり手が痙攣したりするなど、薬の副作用と思われる症状が出てきました。

そこではじめて認知症の専門医に診てもらったのですが、その診断結果はなんと「認知症ではない」というものでした。
専門医によると脳の萎縮は年相応のものであって、認知症ではないとのこと。

この女性の例は、画像検査に重きを置きすぎて問診を軽視した結果の誤診でしたが、必要な検査をすべてしっかりと受けたにも関わらず誤診を受けた人も番組に登場していました。

80代の男性は、昨年重い認知症と診断されました。そのきっかけは、心不全で入院した時に現れたある異変。
まず現れたのは「幻聴」でした。夜中に子供の歩く音が聞こえたりしたそうです。
さらに退院後には上着の袖に足を通そうとしたり、スボンを2枚重ね履きしたりなど、症状が立て続けに、急激に出てきたといいます。
そこで男性は、認知症かどうかを診断するための3つの検査をすべて受けました。
その検査において、男性はその日の日付すら正確に答えられなかったこともあって重い「アルツハイマー型認知症」と診断されたのです。

しかし、男性の奥様は納得できませんでした。というのも、奥様の母親が認知症だったのだそうですが、その症状と男性の症状があまりにも違ったからです。
その疑問に基づき、男性の長女が本やネットで調べたところ、「せん妄状態」という症状に行き着きました。
「せん妄状態」というのは、薬の副作用や環境の変化の影響による意識の混乱で、高齢者によく起こる症状だといいます。この症状の存在を知った家族は、男性が認知症ではないと確信しました。
男性は心不全になった時に、1日8種類もの薬を服用していたのです。

このことを心臓病の医師に相談したところ、薬が変更されて、異常な症状は改善したといいます。
2ヶ月後にあらためて認知テストを受けたところ結果は満点。医師は誤診であったことを認めました。

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認知症に間違われやすい病気は?

認知症と誤診されやすい病気や症状として、番組では以下のものが挙げられていました。

・うつ病
・加齢による衰え
・せん妄

しかし、いくら似ているとはいえ、どうしてプロの医師が誤った判断をしてしまうのでしょうか?この点について順天堂大学大学院教授の新井平伊氏は

「これらの症状と認知症の鑑別は非常に難しい。それなのに専門医の数が絶対的に少ない。認知症の患者数460万人に対して専門医は2000人弱。それを補っているのが専門医ではないかかりつけ医なので、その中では誤診も起きてしまう。」

と述べていました。

家族は問診の際に何を伝えるべきか

誤診を減らすために私たちがまず知っておくべきなのは、認知症では急に症状が出現するということはないということです。
急激な変化があった際は他の病気である可能性が高いので、医師に伝えるべきです。また新井氏によると「怒りっぽくなった」という点も医師に伝えるべきだそうです。本当は認知症ではないのに認知症の薬を飲んでいると、こういった症状がでることがあるためです。

さて、ここまでは「認知症ではないのに認知症と診断された」ケースを見てきました。
つづいて番組では、その逆のパターンも紹介されていました。

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認知症なのに、別の病気と診断されたケース

Hさん(50代女性)は11年前にうつ病と診断されましたが、一転、3年前に認知症と診断されました。

仕事をしながら二人の子を育てていた30代後半のある日、不眠の症状や頭が割れるような頭痛が毎日現れるようになったといいます。
倦怠感もひどかったので病院に行くと、うつ病と診断されたのだそうです。

しかし、その後も激しいめまいが続いて日常生活もままならなくなってきた女性は、うつ病の薬のせいではないかと考えて、医師に症状を訴えたのですが聞いてもらえず、それどころか、言えば言うほど薬が増えていったそうです。
担当の医師が変わる度に訴え続けても聞き入れてもらえず、初診から6年経った頃に、ようやく抗うつ剤を中止することができました。

すると女性はどんどん元気になっていったので、「うつが治った!」と安心していたそうですが、今度は、自律神経の異常や睡眠時の行動障害、そして「幻視」に悩むようになってしまいました。
たとえば、新聞を読んでいると目の前に小さな虫が飛んでくるのがはっきりと見えて、それが突然ふっと消える、といったような現象で、他はまったく正常な状態の時に幻視が出てきてしまうのだそうです。

これが本当の病名を知るきっかけに。
あらためて病院で診てもらうと「レビー小体型認知症」という病気であることが明らかになりました。
この種類の認知症は物忘れを伴わないのですが幻視が代表的な症状としてあるのだそうです。抗うつ剤によるめまいなども、レビー小体型認知症の特徴のひとつである「薬への過敏性」によるものだったのだそうです。

このようなつらい体験から、Hさんは「医師の言うことを鵜呑みにするのではなくて、医師と一緒に勉強して、一緒に考えて、どうしたらよりよい医療になるかということを見つけていくのが大切」と語っていました。

・認知症の種類
認知症には以下の種類があります。

アルツハイマー型
脳血管性
前頭側頭型
レビー小体型

そして、認知症によって症状も様々です。

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あさイチより

なので、誤診が起こりやすいのですね。
Hさんは「誤った診断は起こりうることであると肝に銘じるべき」とも語っていました。

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自分の身に降かかったとき、どうすればいいか

それでは、自分や家族に認知症と思われる症状が出た時にとるべき行動はどのようなものなのでしょうか。

まずは「情報収集」です。
病症の知識をつけると、診察の際に医師としっかりと話し合うことができます。番組では薬剤師に薬の副作用について質問しておくのもいいという話が出ていました。たしかに、出ている症状とその副作用が似ていたら認知症ではないのでは?などと自分で疑うことができるので、大事なことかもしれません。

そして、「詳細な記録をつける」ことも大切です。先に登場した男性患者の奥様は、日付とその日の症状をすべて手帳に残していて、後から経過を辿れるようにしておいたといいます。

医師の診断に疑問がある時は「情報」と「記録」をもった上で、「認知症では無いのでは?」と訴えましょう。“証拠”を揃えることで、医師が方針を改めたり誤診を認めたりする可能性も高まります。

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まとめ

困ったときの相談先として、番組では以下の2つが紹介されていました。

家族会
地域のどこに専門医がいてどういう治療を得意にしているか、などを教えてくれるそうなので、探して相談してみるとよいでしょう。

家族会
北海道・東北
北海道支部青森県支部岩手県支部宮城県支部秋田県支部山形県支部
福島県支部

関東
茨城県支部栃木県支部群馬県支部埼玉県支部千葉県支部東京都支部神奈川県支部

北陸
新潟県支部富山県支部石川県支部福井県支部

東海
山梨県支部長野県支部岐阜県支部静岡県支部愛知県支部三重県支部

近畿
滋賀県支部京都府支部大阪府支部兵庫県支部奈良県支部和歌山県支部

中国
鳥取県支部島根県支部岡山県支部広島県支部山口県支部

四国
徳島県支部香川県支部愛媛県支部高知県支部

九州・沖縄
福岡県支部佐賀県支部長崎県支部熊本県支部大分県支部宮崎県支部沖縄県支部鹿児島県支部

 

地域包括支援センター
近くに家族会などがない場合はこちらのセンターで相談するのが良いそうです。以下のように自治体が設置しています。

平成18年4月、介護保険法が改正になり、各市町村では地域包括支援センターを設置しました。
地域包括支援センターとは、地域住民の心身の健康の維持、生活の安定、保健・福祉・医療の向上と増進のため必要な援助、支援を包括的に担う地域の中核機関です。

千葉県HPより

情報を一人で集めることもとても重要ですが抱え込んでしまうと大変ですから、経験者やプロに適切なアドバイスを求めて適切な治療を受けられるようにしましょう。

 


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