水虫の意外な感染ルート~ガッテン!より

日本人のおよそ5人に1人が「水虫」になっていると言われます。

この記事をお読みの方は、「自分は水虫かもしれない…」という自覚をお持ちかもしれませんが、実は水虫は「自覚症状があまり出ない」という特徴をもった病気です。

水虫について紹介していた先日の『ガッテン!』(NHK)では、「水虫になったことがない」という35人の男女を集めて、足の検査をしていました。

検査を担当した順天堂大学特任教授の比留間政太郎氏が被験者の足の皮膚を採取して顕微鏡で調べると、8人の足から水虫菌が見つかりました。

その方たちに話を伺うと、「自覚症状がなかった」「痛みも痒みもない」と口を揃えて話していました。

比留間氏によると「水虫だから100%痒くなるということはない」そうで、痒みが出る人は20〜30人に1人ほどだそうです。

“痒くなる水虫”は、少数派だったのです。

今回は、無自覚に進行していく可能性が高い水虫について、その意外な感染ルートと対策法なども含めてご紹介していきたいと思います。

 

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水虫について

痒みなどの自覚がなくても、水虫になると以下のような症状が現れます。

・ 指の間の皮が向ける
・ 水疱ができる
・ かかとがカサカサになる
・ 爪が変色する

このような変化は生じますが、比留間氏によると「症状がないと苦しみがないので、知らずにほっといてしまう」という人がほとんどだそうです。

痒くならない理由

水虫菌への感染は、床に落ちている水虫菌を踏むことで起こります。

菌が皮膚の表面に着くと「角質層」に侵入してきます。角質層というのは皮膚の表面にあって肌を守るバリアの役割を果たしており、死んだ細胞で構成されています。

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※角質層について
角質層は0.02~0.03㎜というとても薄い層で、(体の部位や環境などによって異なりますが)10~20層ほどの「角層細胞」が、セラミドなどから成る「細胞間脂質」をはさんで重なってできています。

この角層細胞の内部に「ケラチン」という線維状のタンパク質を大量に抱えているので、それをエサにして水虫菌が繁殖する可能性があるのです。

参考:
角層の細胞間脂質(花王スキンケアナビ)
肌の構造とその役割(スキンケア大学)

この角質層で菌が激しく活動すると免疫細胞が攻撃して痒みが生じるのですが、水虫菌は角質層の中で静かに暮らす場合もあります。その場合は角質層がぶ厚くなるなど見た目は悪くなりますが、かゆみは起きません。

また、角質層で菌が激しく活動しても、免疫細胞がどの程度活動するかは個人差があるので、痒みが出るかどうかは運次第なのです。

比留間氏によると「人間の細胞と水虫菌の細胞は似ている。だから、ちょっと着いてもそんなには強い反応は起こさない」といいます。

ちなみに、かかとのカサカサの半分は水虫であると言われているそうです。

 

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水虫を繰り返してしまう理由

水虫の治療の極意は「薬をぬり続けること」です。見た目がきれいになったからといって自己判断で薬をぬるのを止めると、再発する可能性が高まります。

しかし、番組には以下のような投稿が寄せられていました。

・ 「理由もわからず何度も水虫が再発してしまう」(70代男性)
…この男性は医師から指示された通りに薬を塗り続けて、さらに医師からの指示で1ヶ月薬をしっかりと塗り続けたにも関わらず、その後2度も再発したそうです。

塗り薬や飲み薬は効果的な新薬も出ているのに、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
さらに、以下のような投稿もありました。

・ 「まったく身に覚えがないのに、最近、水虫になってしまった」(50代女性)
…この女性は、銭湯やサウナ、プールなどにも行っておらず、毎日足を優しく洗って乾燥させているにも関わらず、水虫になってしまったそうです。

上記2つの事例のように、徹底的な対策をとっても水虫になる理由は何なのでしょうか。

 

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重要な感染源

日本皮膚科学会の専門医である野口博光氏は、水虫を研究して30年という専門家で、1日平均200人以上の水虫患者を診ているそうです。

500人分の患者の皮をサンプルとして保存し、様々な菌を培養して観察するなど日頃から研究を続けている野口氏は、水虫患者の方に必ず「家族はいますか?」と訊くようにしているそうです。

野口氏のこの質問の背景には、水虫に感染する重要なポイントがあります。

2000人の皮膚科専門医が約2万人の患者を対象に実施したアンケート調査をもとに、統計学で水虫になる危険度を計算した結果…

ガッテン!より

この指標は、数値が1を超えるほど水虫になる危険度が高くなることを示します。
裸足になる「プール」や、炎天下で靴を履き続ける「ゴルフ」、「1日に靴を8時間はき続ける生活習慣」など、水虫になりそうな行動はこのような結果になっていますが、「家族に水虫の人がいる」人は…

ガッテン!より

プールなどに比べても圧倒的に危険度が高いことがわかりました。
意外な感じもしますが、比留間氏は「銭湯やプールなどは、そんなに長時間いるわけじゃない。そこでうつった人もいないわけではないが、確率から言えば少ないだろう」と話していました。

自覚がない水虫患者が家族にいると…

冒頭の調査の結果、はじめて水虫であることが判明したTさん(60代男性)のお宅を、帝京大学の山田剛氏と石島早苗氏が詳しく調べに行っていました。

家の中でのTさんの日々の行動を聞き取りながら、バスマットやカーペット、キッチンマットなど家中の80箇所で強力なテープを用いてホコリを採取し、それを培地に置きます。

この結果、書斎から9箇所、台所では3箇所、お風呂の周辺で10箇所、そしてリビングからは2箇所、水虫菌が発見されました。

つまり、水虫になっているという本人の自覚症状がなくても、皮膚のかけらと一緒に菌を撒き散らしてしまうのです。

番組では水虫菌の生態を見るために、日本大学の加納塁氏の監修のもと、培養した水虫菌を人の髪の毛に感染させる実験を行っていました。髪の毛は、爪や皮膚の角質と同じ「ケラチン」という物質でできています。

水虫菌の大好物を主成分にしてできているので、足に感染した水虫菌の様子を擬似的に観察することができます。

感染させてから3週間が経過すると…

ガッテン!より

白い部分がすべて水虫菌です。3週間でこんなに繁殖してしまいます。

ピンセットでこの髪の毛を引っ張ってみると、髪の毛が簡単に崩れていました。普通なら簡単には切れない髪の毛の組織が、すでにボロボロになってしまっています。

水虫が感染した皮膚も同じような状態なのでもろくなり、床などにポロポロと落ちてしまうのです。

しかし、水虫は真菌(カビ)なので、感染力自体はそんなに強くはありません。

その一方で、生命力が強いという特徴があります。こぼれ落ちた皮膚の中でも半年から1年ほど生き続けます。

水虫菌のこのような特徴から、水虫の人と長いあいだ同じ空間に居ることが、最も水虫感染の危険度が高くなるのです。

水虫は年齢が上がるにつれてかかりやすくなりますが、子どもでもなることがあります。比留間氏によると「お子さんで水虫の人は、水虫の人が家族内に必ずいる」といいます。

以上のような理由から、家族の足に水虫のような症状があれば、その人も一緒に検査を受けるべきです。一人だけ水虫を治しても、家族に感染者がいたらまた再発する可能性が高くなってしまいます。

水虫に有効な対策

・掃除機がけ
水虫菌は皮膚のかけらの中にいるので、掃除機で吸い取ることができます。フローリングなら、モップがけなどの拭き掃除も有効です。

・スリッパを履く
靴下やストッキングでは対策になりません。菌は網目を通り抜けてしまうためです。
その心配をなくすためにはスリッパが有効です。感染者がばらまくことの予防にもなります。

・洗濯
やはり、バスマットには菌が多くなりがちです。
水虫菌は一般的な洗濯洗剤に弱いので、ふつうに洗濯をすれば感染が広がる心配は低くなります。

・足を優しく洗う
水虫菌は感染力が弱いので、足についただけでは角質の中に侵入できません。
1日1回、お風呂で優しく洗うことが十分な対策になります。
注意点としては、かかとなどを強くゴシゴシ洗うことは逆効果になるということです。皮膚が傷つくと、そこから水虫菌が入りやすくなってしまいます。

・ペット
ペットも水虫になることがあります。
猫の水虫菌は稀に人にも感染し、皮膚が赤くなったり痒みが出たりするそうです。
犬やうさぎ、ハリネズミなど、様々なペットにも感染する可能性があるので、ペットに触れた後にこういう症状が出たら水虫を疑い、ペットは獣医に、症状が出た方は皮膚科に行って診てもらうようにしてください。

 

ペットの水虫感染について

動物の水虫感染は、第一三共ヘルスケアの河村典利氏によると「免疫力の落ちた動物、高齢・若年の動物がかかりやすい傾向にある」といいます。

症状は人間とは異なり、脱毛やフケの発生などが多く見られます。

白癬菌にはさまざまな種類があって人間に感染しやすい菌と動物に感染しやすい菌は異なるのですが、河村氏によると「一部の白癬菌には動物にも人間にも共通して感染するものがあり、人獣共通感染症として知られている」そうです。

そのため、飼い主からペットへ、あるいはペットから飼い主へと感染することもあるのです。
ペットの水虫が飼い主の頭に感染して脱毛の原因になることも増えているそうですから、注意しましょう。

参考:
人間の水虫は動物にもうつる?(エキサイトニュース)
頭の水虫で毛が抜ける(毎日新聞医療プレミア)

 

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まとめ

多くの人が出入りする空間よりも、水虫の人と同じ空間に居続けることのほうがはるかに感染の可能性が高いということは、あまり知られていません。
足の状態を見て少しでも水虫の疑いがある場合は皮膚科へ行き、家の掃除や家族への注意喚起など、有効な対策をとるようにしましょう。


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