前立腺がんの早期発見と対処・治療~チョイスより

先日、「チョイス」で「前立腺がん」をテーマとした特集がありました。症状が出にくい前立腺がんですが、専門の検査を受診し、早期発見すれば、いろいろな選択肢があるそうです。気になる内容をまとめておきます。

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前立腺がん

前立腺がんは、以前は欧米では多く、日本では少ないと考えられてきました。しかし、最近は日本でも前立腺がん患者が増えてきているそうで、なんと毎年10万人も前立腺がんが見つかっているということです。ここ10年間で倍増しています。

前立腺がんの大きな特徴は、男性特有のがんであること、そして症状が出にくいことです。本人が体の異変に気がついたときにはもうすでに前立腺以外の場所に転移しているなど、症状がかなり進行していることも珍しくないそうです。患者自身もまさか前立腺がんだとは予想外であったというのが第一印象というケースも少なくないのだとか。

前立腺がんを完治するには、早期に発見することと、医師と相談の上治療法のメリットデメリットをしっかりと理解した上で治療することが重要です。

前立腺がんとはいったいどんな病気なのでしょうか?

番組で紹介されていた症状の例は、

背中が痛く一人で起き上がれなかった
その痛みが1週間もつづいた

というものです。その人は近隣の整形外科を受診したものの、痛みの原因わからなかったそうです。その後、別の病院で詳細な検査を行ったところ、前立腺がんが原因であったということです。

前立腺とは、男性のみにある生殖器官で、ぼうこうのすぐ下、尿道の上にあります。主な機能は、性器を守るための前立腺液を分泌すること、排尿をコントロールすることです。

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チョイスより

前立腺がんは、文字通り前立腺の中にできる男性特有のガンです。50歳以上で発症しやすいそうで、発症時の平均年齢は70歳といわれています。

自覚症状が出にくいため、早期に発見するのはとても困難です。そのため、先ほど紹介したように、がんがかなり進行した状態で発見されることが少なくありません。

前立腺がんができますと、前立腺は大きくなり、形もいびつになっていきます。

番組で紹介された男性は、背骨に転移していたそうです。転移が起こって初めて背中に痛みを感じ、自分の体がおかしいと気づくわけです。この場合、背中の痛みは前立腺がんの転移によるもので、検査を行うと、背骨のあちこちに影が見え、既に背骨にもがんが転移していた、そして既に手術による治療はできない状態だったそうです。ここまでくるとがんの完治は望めず、主治医からは『完治できない。がんと一生付き合っていかないといけない。』と告げられたそうです。

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チョイスより

統計的には、2000年を境に急激に前立腺がんが増加してきており、2020年の東京オリンピックの頃には他のがん(胃がん、肺がん、大腸がん)を抜いて一番になると予想されています。この原因の1つが高齢化です。前立腺がんは50代から増加し、60代後半から70代がピークとなります。

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チョイスより

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前立腺がんの原因ははっきりとわかっていませんが、50代以降で急激に患者が増えることから、加齢によるホルモンバランスの変化が大きな要因の一つと考えられています。また遺伝的な要素もあり、父親や祖父が前立腺がんになっていれば息子もなりやすいと言われています。さらに、同じ日本人でも、住む場所によって発生頻度が違うという報告もあるようです。たとえばハワイに住む日本人と日本の日本人ではハワイの方が発生頻度は高いという話です。このことから、食生活を中心とした環境による要因もかなり大きいと考えられています。

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PSA検査

しかし、悪いことばかりではありません。
近年、前立腺がんの検査の精度が向上してきており、比較的早期に発見することが可能になってきたのです。そして、早期に発見できれば完治することも可能な段階に入ってきているそうです。

早期発見には検査が必須です。
この検査は地方自治体が実施しているところも多いようです。例えば、東京板橋区では前立腺がん検診が無料で受けられるしくみができています。

【板橋区の前立腺がん検診】
受診できるのは、55-75歳までの5歳刻みの節目の男性で、受診年齢に到達すると区役所から前立腺がん検診のお知らせが届きます。
平成25年度に行われた前立腺がん検査の受診者は4409人で、その中で精密検査が必要であると診断された人数は390人でした。そして、精密検査の結果、なんと57人に前立腺がんが見つかったのです。多くの前立腺がんを早期発見できたので、板橋区はたくさんの人に受診してほしいと考えているそうです。
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チョイスより

ここで行われる検査とはPSA(前立腺特異抗原)検査です。前立腺にがんがあると、血液の中にPSAが多く流れるようになるそうで、この性質を利用して、PSA検査は血液中のPSA濃度を測定し、前立腺がんを発見するのです。

PSAとは、前立腺から分泌されるタンパク質です。通常血液中に流れ出ることはほとんどありません。しかし、がんができると、PSAが血液に大量に流れ出てきます。

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チョイスより

PSAの基準値は4.0ng/mlです。それ以下なら正常ですがそれ以上の場合前立腺がんの可能性が出てきます。

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チョイスより

検査が面倒くさいと思う人もいるかもしれませんが、検査で早期に異常値を発見できれば予後は良好です。
番組で紹介されたTさんは、検査時のPSA値が9.33 ng/mlでしたが、その後の治療の結果、0.09 ng/mlと大幅に減少していました。早期に発見すれば、治療を続けながら、普通通りの生活を送ることが可能になる良い例です。Tさんは、前立腺がんは症状が出ないのでわからないですが、PSA検査制度のおかげで助かり感謝しているそうです。

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ng/ml の単位は1000分の1リットル中に10億分の1グラムあるという意味です。

PSA検査は前立腺がんを発見できる確率が非常に高いので、これだけ受けていればまず発見できることは間違いないと言われています。50歳を過ぎたらぜひ一度受診しましょう。

ただし、PSA検査において値が高いという結果になったからと言って必ず前立腺がんであるということではありません。なぜならば、PSA値の高い病気として、

前立腺肥大症
前立腺炎

といったもののように、前立腺の組織が壊れて、タンパク質が血液に漏れ出るような病気も含まれるからです。

PSA検査で値が高い場合、精密検査を受けます。精密検査でよくやる検査は、

直腸から手を入れてしこりがないかどうか調べる検査
エコーや超音波を使い前立腺のようすを調べる検査
お尻から針を刺して行う前立腺針生検

などがあります。最終的に前立腺の組織を顕微鏡で見て前立腺がんが発見されたら初めて前立腺がんと診断されます。

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前立腺がんの治療

前立腺がんの治療には手術、放射線という2大治療法の他、ホルモン療法や経過観察といった対応があります。それぞれにメリットやリスクがあるため、医師と相談の上どの方法にするかを決めなければなりません。

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チョイスより

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前立腺がんの治療~手術

前立腺がんの治療方法は大きく分けて3つあります。1つは手術です。
手術とは、前立腺がん細胞を切って取り除き、膀胱-尿道をつなぐものです。メリットは完治することです。デメリットは前立腺のすぐそばに尿道がありますので、これに傷がつくと尿失禁が起こります。また、神経もありますので、性機能障害(勃起障害、ED)が起こる場合もあるそうです。ただし、手術の技術も進歩しており、神経を温存する方法を採用すれば7割くらいの確率でEDを回避できるようにはなってきているそうです。

なお、手術費用は100万円-200万円です。手術が行えるのはがんが前立腺にとどまっている状態のときのみです。つまり、早期発見時のみ手術できます。

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前立腺がんの治療~放射線治療

次に、放射線治療があります。
放射線治療とは、放射線を体外あるいは体内から放射線をあてるというものです。

放射線治療のメリットは、

手術に比べて体に負担をかけない
完治する確率が非常に高い

という2点に集約されるようです。

一方、デメリットは

体外から放射線を照射する場合長期間の通院が必要になる
膀胱に放射線が当たってしまうと膀胱炎や直腸炎になる可能性がある

ということです。

他にも

頻便・排便痛
頻尿・排尿痛

といった症状が出ることがあり、1~2年症状が続くこともあるそうです。

体外から放射線を照射する場合、週5日(土日休み)x1~2カ月のペースで治療します。放射線の照射時間は1回10~20分と短いです。この時間以外は、普通に生活することができます。放射線治療も手術と同様で、まだがんが前立腺にとどまっている状態のときに行えます。治療費用は手術と同程度で、100万円~200万円です。

放射線治療にはいろいろありますが、最近注目を浴びている治療法が小線源です。小線源とは、わずか5mm程度の大きさのカプセル(チタン製)を50から100個程度前立腺全体に埋め込むというものです。埋め込む場所は事前にコンピューターを使った数値シミュレーションを行って決めます。できるだけ他の臓器に放射線が当たらないように、しかしがんは確実に除去できるように位置と数を決めていきます。PSA値 11.21ng/ml だった人が 0.06ng/ml まで大幅にダウンしたという例もあります。最近は、技術的な進歩を遂げ、以前はカプセル1個1個埋めていたものが、溶けてなくなる管を使ってまとめていっぺんに入れることができるようになり、手術時間も大幅に短くなっています。1回の手術時間はおおよそ1時間です。入院期間は3-4日です。治療費は150万円で、保険が効き、3割負担だと50万円、医療制度をうまく利用するとさらに少なくなる可能性もあります。この治療法は、がんが前立腺の内側にとどまっている、がんの悪性度が低い、早期のものである場合に適用可能です。カプセルは体内に入れたままで問題ありません。放射性物質の半減期はおおよそ2カ月で、1年たつとほとんど放射線出さなくなります。手術そのものも、肛門からエコーをあてながら、埋め込む位置を確認しながら針を通してカプセルを埋め込みますので、安全なものです。デメリットはどうしても癒着が起こるため、小線源ががん除去に効果がなかった場合手術して除去できないこと、またカプセルを埋め込んだ直後は小さなお子さんを抱っこするなど直接前立腺付近を押すような行為は控える必要があることです。

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前立腺がんの治療~ホルモン療法

次はホルモン療法です。ホルモン療法は、前立腺がんは男性ホルモンによって増殖するため、男性ホルモンを抑えることで治療につなげようというものです。

ホルモン治療とは3カ月に1度注射を打つ、あるいは飲み薬を飲むことにより、男性ホルモンの働きを抑え除去し、がんを小さくしていきます。
メリットは通院で治療できることですが、デメリットは骨が弱くなり骨粗しょう症になる、ぽっちゃりと丸みを帯びてくる、乳房が出てくる、ほてり・手のこわばりがおこるといった女性の更年期障害に似た症状が起こる場合があります。また、性機能障害(性欲低下・勃起障害)が起こることもあります。

1回のホルモン治療は手術や放射線治療に比べて安いですが、ずっと継続する必要があるため、トータルでは高くなることもあります。

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前立腺がんの治療~観察治療

最後は、観察治療です。最近の研究で、全ての前立腺がんが本当に治療しなければいけないがんではないかもしれないということがわかってきました。というのも、ここまで紹介したどの治療法も患者さんの体に負担をかけるものですし、生活にも影響を与えるものです。高齢である、がんの悪性度が低い、他へ転移する確率も低い、成長も遅いものであれば、初めは定期的な検査を実施し、命を縮める可能性が出てきてから、治療を開始するというものでも良いことが分かってきたのです。これが観察治療です。

例えば、PSA 9.24ng/ml といった、ごく初期の前立腺がんがみつかった場合には、3~4カ月に1度程度。PSA検査、エコーを用いた検査、触診、MRIを用いた検査、前立腺針生検の検査(前立腺から針を刺し12か所の組織を取り出して行う検査)を受け、どれくらいがんが進行しているか調べるといったものがあります。

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前立腺がんは、最初のがんができてから、40年くらいかけて健康に悪影響を与えるようながんに変貌していくと言われています。つまりかなり進行が遅いわけです。観察治療という概念があるのも、この進行速度の遅さゆえなのかもしれません。

まとめ

やはりPSA検査、これにつきます。この検査さえしておけばかなりの確率で前立腺がんを発見できるわけですし、進行スピードがかなり遅いということですから定期的に検査さえしておけばそれほど恐れることもないのかもしれません。


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