先日の『きょうの健康』は、うつ病の治療法の1つである認知行動療法がテーマでした。
番組では、うつ病の人の偏った物事の捉え方とその偏った捉え方をどのように認知行動療法で修正するのかについて、うつ病の治療と診断が専門の菊地俊暁先生(杏林大学講師、精神神経科医)が解説をしていました。
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認知=物事の捉え方
認知とは、物事の捉え方のことだそうです。物事の捉え方は、その時の状況や人によっても変わります。例えば、飲みかけのお茶のペットボトルを見て「まだこれだけ入っている」と思うか、「もうこれしか入ってない」と思うかは、その人が置かれている状況や性格などによっても変わるとのことです。そして、どのように認知するかによって、行動や気分も変わると菊地先生は説明をしていました。
きょうの健康より
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うつ病の人の物事の捉え方
うつ病の人は、物事の捉え方(認知)が否定的なほうに偏ってしまいがちだそうです。番組では、うつ病の人の偏った物事の捉え方の代表的な4パターン紹介していました。
きょうの健康より
1.根拠のない決めつけ
根拠のない決めつけとは、証拠がないのに否定的な結論を出すことだそうです。例えば、友人が電話に出なかったことを、「無視された」とか「嫌われている」と決めつけてしまうことを言います。このように決めつけてしまうと気持ちが沈んでしまいますよね。
2.0か100か思考
0か100かの思考の人は、白黒をはっきりさせなくては気が済まなく、物事を極端に分類してしまうそうです。例えば、テストは100点でなければ0点と同じと考え、80点を取ったときでも自分はダメだと思い詰めてしまうそうです。このような考え方が、次へのモチベーションになれば良いですが、自分を追い詰めてやる気がなくなることがあると菊地先生は説明をしていました。
3.過度の一般化
過度の一般化は、1つの出来事から直接関係のないたくさんの事に結論を出してしまうことだそうです。例えば、会社の昇進試験に合格できなかったときに、自分は企画能力もない、営業もできない、部下の教育もできない、上司にも嫌われているなど仕事に関係する全てのことにおいて自分はダメだと思い込み酷く落ち込んでしまうというようなことです。
4.自己非難
自己非難をする人は、自分に関係のないことでも自分のせいと決めつけたり、本当は少ししか自分に関係のないことでも極端に自分に関連付けてしまったりするそうです。例えば、営業の成績が落ちた原因には、部下、同僚、上司の能力、取引先の経営状況などいろいろな要因があるにも関わらず、それらの原因は無視して自分のせいだと思い込んでしまうというようなことです。
きょうの健康より
これらの4つの例のように、うつ病の人は物事を悪い方に、悪い方に考えてしまう傾向があるそうです。
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認知行動療法とは?
認知行動療法は、うつ病の人の悲観的なほうに偏った捉え方を修正して、現実的かつ中立的な物事の捉え方ができるようにする治療だそうです。治療では気になる出来事を紙に書いて、医師と治療者が話をするとのことです。
番組では、昇進試験に不合格になったことで、自分の仕事に関する全てのことを否定的に捉えてしまった人を例に、認知行動療法がどのように行われるかを紹介していました。
治療者が昇進試験に落ちて、最初に浮かんだ考えは、自分は企画も営業も部下の教育もできなくて、上司にも嫌われているというものでした。このときの治療者の気分はショックが95%、絶望が90%でした。認知行動療法では、治療者の考えが本当のことなのかを検証して、代わりとなる現実的な捉え方を見つけます。この例では、治療者は仕事で自分の企画が採用されたことも大口の営業を取った事もありました。また、昇進している部下に感謝されたこともありましたし、家庭の相談に乗ってくれる上司もいました。そして、今回の昇進試験は不合格者が多かったことや昇進試験は来年もあるということも、認知行動療法で確認することができました。このように物事の捉え方を変えたことで、治療者は昇進試験に落ちたことのショックが60%と絶望が30%になり、最初よりも心理的なダメージが軽減されました。
きょうの健康より
うつ病の人は認知行動療法を何度も繰り返す事で、自分の物事の捉え方の癖とどのように捉え方を変化させてば良いのかが理解できると菊地先生は説明をしていました。
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認知行動療法と薬物療法の効果
認知行動療法は、特にうつ病の中等症の人に効果が高い治療法だそうです。軽症でも明らかに考え方が偏っている場合には使われるとのことです。
きょうの健康より
海外のグループの研究結果では認知行動療法と薬物療法を併用したほうが、どちらかの治療だけを行うよりも治療効果が高いことがわかっているそうです。
きょうの健康より
菊地先生のグループが日本で行った研究でも同様の結果が出ているとのことです。これは、2つの治療法が、脳の別な部分に作用して、それぞれの治療が補い合って良い結果になっていると菊地先生は説明していました。
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認知行動療法を受けるには・・・
認知行動療法は、専門性の高い治療法なので受けられる医療機関が限られています。ただ、2016年4月からは専門医に加えて研修を受けた看護師も医師の指導のもとに認知行動療法を行えるようになりました。そのため、今後、この治療を受けることができる医療機関は増えると考えられているそうです。認知行動療法を希望する場合は、主治医または地域の精神保険福祉センターに相談すると良いとのことです。
うつ病の治療の1つである認知行動療法は、うつ病ではなくても考え方に偏りのある人の心の不安やストレスを軽減してくれるもののようです。うつ病の方は専門の医師や看護師に治療を行ってもらわなくてはいけませんが、そうではない人は、自分で本を読んで試してみるのがお勧めです。
図解 やさしくわかる認知行動療法
貝谷 久宣
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まとめ
番組で紹介されていた物事の捉え方については、うつ病を患っていなくても参考になる部分がたくさんあると思います。悲観的になってしまったときに、認知行動療法を思い出して、不安な気持ちや悲しい気持ちを軽減できれば良いですね。