タンパク質~健康長寿で介護いらず~ガッテン!より

「健康長寿」に注目が集まる昨今、元気に歳を重ねていくことが多くの人の目標になっています。
そんな健康寿命を短くする原因のひとつに「低栄養」があることをご存知でしょうか?

「低栄養」とは、栄養が足りていない状態のことです。
東北大学などが行った、71歳以上の男女832人を3年間追跡した調査によると、摂取した栄養値が低い人たちは、高い人たちに比べて3年後、要介護になったり亡くなったりした割合が2.3倍も高くなっていたといいますから、健康寿命に大きな影響を与えることがわかります。

ガッテン!より

さらに、先日の『ガッテン!』によると、厚生労働省「国民健康・栄養調査」の調べから推計すると、70歳以上の3〜4人に1人(調査では1007人のうち325人)がほとんど無自覚のうちに低栄養の状態に陥っているといいます。

つまり、知らないうちに健康寿命を短くし、寝たきりになるリスクを上げている人がとても多いということです。

「だったら、お腹いっぱい食事をとればいい」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、それでは栄養状況は変えられません。
その理由をご理解いただくために、まずは、しっかりと食事をとっていたのに「低栄養」状態になってしまった方の実例を見てみましょう。

 

スポンサーリンク

 

しっかり食べているのに低栄養に

今から7年前の2010年頃から、Eさん(当時87歳)は歩いている時につまずくことが増えたと感じ始めたそうです。ついには階段から落下してしまったといい、「(落下後に)自分の力で立てなかったので驚いた」と話していました。

このとき、Eさんは大腿骨を折ってしまっていました。高齢の方だと寝たきりになってもおかしくないほどの大怪我です。

この大怪我の背景に、「低栄養」があったというのです。
Eさんの手術を担当した医師によると「手術適応になる骨折患者さんを調べたところ、ほとんどの方が低栄養の状態だった」といいます。

Eさんは食べることが大好きで1日3食しっかりと食べていたそうですが、血液検査の結果、「アルブミン」という値が正常値よりも低い2.8しかありませんでした。(4.0以下は低栄養の可能性がある数値です。)

 

スポンサーリンク

 

アルブミンについて

アルブミンの数値はタンパク質の摂取量と関係があります。

高齢者向けのお弁当を作っている会社では、2日に1回はお肉を主菜として取り入れるようにしているそうです。さらに魚や大豆、卵などのタンパク源もたっぷり摂れるように献立を工夫しているそうです。

この会社のお弁当の利用者のなかには、弱っていた体力が回復して1日1万歩あるくまで体力が回復した人もいるそうです。

お弁当をきっかけに食生活が変わったという人もいました。

「息切れしたり目眩があったりしたが、なくなった。(お弁当の献立を参考にして食生活を変える前は)肉を自分で買ってくるようなことはなかった」

と話していました。

実は、厚生労働省が定めた宅配弁当のガイドラインでも、タンパク質をしっかり摂れるような献立が推奨されているといいます。

これについて、女子栄養大学の武見ゆかり教授は

「お弁当が高齢者の暮らしを豊かにしている。お弁当が一種の教材のような役割を果たして、“こんなふうに食べればいい”と知ってもらい、健康支援につながればいい」

と話していました。

アルブミンとは、簡単に言うと血液中のタンパク質のことです。

mametisiki

※アルブミンとは

アルブミンは、肝臓で合成される血液中のたんぱく質の一種で、以下のような働きがあります。

・ 血液中のさまざまな物質を運ぶ
・ 浸透圧を保持して体液の濃度を調整する
・ pH緩衝作用
・ 各組織へアミノ酸を供給する
・ 抗酸化作用

このような働きをしているので、不足すると全身的に疾病のリスクが上がってしまいます。

参考:
ビジネスジャーナル
田辺三菱製薬ホームページ

この量が少ないということは、体にタンパク質が足りていないということです。

タンパク質や魚や卵、大豆などに含まれていますが、特に肉は体内のタンパク質を増やす効率が高いといいます。

近年、体内のタンパク質量と高齢者の健康には深い関係があることがわかってきました。
アメリカで65歳以上の人4116人を4年間追跡調査したところ、アルブミン値が低い人は高い人に比べて、男性で1.2倍、女性で2.5倍も心筋梗塞などの冠状動脈性心疾患に罹る人の数が多かったといいます。

ガッテン!より

肺炎との関係もわかってきました。
厚生労働省の呼吸器感染症の研究班が65歳以上の肺炎患者50人と肺炎でない人110人を調べてみたところ、アルブミン値が低い人はそれ以上の人たちに比べて肺炎のかかりやすさがおよそ9倍にもなることがわかったそうです。

ガッテン!より

どうしてこのような関連が現れるのでしょうか? 

たんぱく質が体に与える影響

肉を食べると、タンパク質はまず胃でバラバラに分解されます。分解されると「アミノ酸」になり、それがさらにいろんな形のタンパク質に変化して、体の様々な場所で使われるようになります。
タンパク質は身体の中だけで50万種類も存在しているそうです。

ガッテン!より

大きさは10万分の1ミリほどしかない体内のタンパク質ですが、ごくごく小さな物質を撮影できる放射光の施設「Spring-8」なら撮影できるということで、番組では実際に撮影していました。

たとえば…

ミオシン

ガッテン!より

コラーゲン

ガッテン!より

フェリチン

ガッテン!より

このように、さまざまな形をしています。

理化学研究所の山本雅貴氏はタンパク質について「生命の働きを司るマシーンとして重要な物質」と説明していました。

「タンパク質は筋肉になる」というイメージがありますが、「タンパク質は筋肉を動かすパーツとして存在している」とイメージするとより正確だそうで、タンパク質の種類によって使える部位も変わってくるそうです。

たとえば、肺炎は肺炎球菌が原因で発症しますが、体内にタンパク質が十分あれば、特定のタンパク質が肺炎球菌にくっついて目立たせることで、白血球の一種であるマクロファージがその菌に気づくことができるようになり、退治することができます。しかしタンパク質が不足するとマクロファージが菌の存在を見逃してしまい、肺炎が発症するリスクが高まるということになるそうです。

心筋梗塞に関しては、血管を丈夫にするタンパク質の存在が発症を予防してくれているのですが、不足すると血管はすぐにボロボロになってしまうので、心筋梗塞のリスクが上がってしまうというわけです。

肉を食事に取り入れる工夫

高齢の方のなかには、「肉は硬い」「脂っこい」などの理由で避ける人も多いかもしれません。
Eさんは、肉好きだったご主人が亡くなったことをきっかけに肉を食べる量が減ったと話していました。一人暮らしになってからは野菜が中心で卵もめったに食べないので1日1回の魚しかタンパク源がない食事になってしまっていました。

こういった方でも自然とタンパク質を摂りたくなる方法として秋田県大仙市で実践されている「10食品群チェックシート」が紹介されていました。

ガッテン!より

シートには寝たきりを防ぐのに必要な10食品が並んでいます。その半分がタンパク質を含む食材で、残りがタンパク質を効率よく動かすための栄養素が含まれている食材です。

量は気にせず、食べたものにチェックしていきます。
大仙市ではこれを取り入れて以後、低栄養の恐れのある人が大きく減ったそうです。

ガッテン!より

東京都健康長寿医療センターの熊谷修氏はチェックシートについて、

「毎日7〜8つ丸がつくように努力すると、相当身体の弱りは減ってくる」

と話していました。

高齢の方になるとやはり「肉」の項目に丸がつきにくくなるそうで、自身がそれに自覚的になることも大切なことだそうです。

毎日チェックしていると「埋めないと」という心理になることも、タンパク質の摂取量を増やすことにつながるようです。

東京都健康長寿医療センターが行った調査によると、低栄養の人124人中112人が一人暮らし、もしくは高齢者夫婦だったそうです。

ガッテン!より

一人暮らしだと「今日はいいや…」「面倒くさい…」などの理由で食事を軽くしたりするので、どうしても低栄養になりがちです。

熊谷氏は「歳をとるほど間食の意義は重要になる」とアドバイスしていました。「食べる量が少ないときは間食でチーズなど食べ、タンパク質を補給した方がいい」とのことでした。

ただし、腎機能が落ちている人がタンパク質を多めに摂ると腎臓に悪い影響が及ぶこともあるので、かかりつけ医と相談の上、食事をしっかりと管理していく必要があります。

低栄養を防ぐアドバイス

ご自分でお弁当などを買う際には、主食、主菜、副菜が整ったお弁当を選ぶようにしましょう。

ガッテン!より

幕の内弁当などは10食品を取りやすいので理想的だそうです。牛乳やヨーグルトを加えるとよりいいかもしれません。

ただし、メタボが気になる人はカロリーにも注意してください。

チェックシートは番組ホームページからダウンロードできるそうですから、ぜひ利用してみましょう。
チェックシート

 

スポンサーリンク

 

まとめ

最後に、熊谷氏は「人生の後半は栄養失調と戦わなければならない」と指摘していました。

歳をとると自然と身体が縮んでいきます。骨や筋肉が弱くなるというのは「タンパク質が少なくなっていく変化」とも言えますから、タンパク質の摂取が重要になっていきます。

高齢者に低栄養が増えている理由には「栄養の摂取に気をつけるのは子どもに対して」という意識や、食が細くなることなどもあると思います。

今回の特集で得た知識を活かして、ご自身の食事を見返してみたり、身近な人にアドバイスしてあげたりしてみてください。


スポンサーリンク

コメントは受け付けていません。