ダイエットが招く脂肪肝&効果的な脂肪肝改善法~ガッテン!より

多くの人が挑戦するダイエット。
スタイルをよくする目的だけでなく健康目的で行われることも多いですが、実はその意図に反して、健康を害してしまうこともあるそうです。
しかも、身体に現れるその異常は、なにも自覚症状がないまま静かに進行していくといいます。
今回は、危険なダイエットの習慣や身体に現れた疾患の改善法について解説していた『ガッテン!』をまとめておきたいと思います。

ダイエットをして不健康に?

会社員のIさん(38)は20代後半に太りはじめてしまい、ダイエットを始めたそうです。決めたことは必ず実行するタイプだというIさんは、体重変化をグラフにして記録したりしながら、「キャベツダイエット」や「もずくダイエット」など様々なダイエット方法を取り入れ、取り組んでいったそうです。
その結果、1年で7キロの減量に成功し、それからは増減を繰り返しながらも「5キロくらいならいつでも減らせるようになった」そうです。

番組には他のダイエット成功者も数名登場し、それぞれの成功談を語っていました。

「ウォーキングをしたり、野菜を最初に食べたりして5キロ痩せた。」
「年間1000キロ走り、3年で10キロ痩せた。」
「踊って17キロ痩せた。」

などなど、各自のダイエットの秘訣を話した彼らの内蔵を調べてみると、多くの人に共通した異変が見つかりました。
なんと、25人中11人の肝臓がパンパンに膨らんでしまっていたというのです。

しかも、そのうち3人はとても深刻な状態にまで進行していたそうです。
そのうちの一人がIさんで、精密検査の結果「危険な状態」と診断されていました。医師によると「早めに治療しないと肝臓がんに進行するかもしれない」というレベルにまで進行していたIさんは、医師から2泊3日の検査入院を勧められていました。
Iさんは「自覚症状がなかったのでびっくり」と語っていました。

ダイエットと肝臓の関係

下図は健康な肝臓を拡大したものです。

20161030162713

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

肝臓は「肝細胞」がたくさん集まって構成されています。
これがパンパンの状態というのは…

20161030163114

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

紫の部分(肝細胞)が白いものに覆われて見えなくなっています。
この白い部分はじつは脂肪で、この状態を「脂肪肝」というそうです。

先程の検査で脂肪肝と診断されたSさん(60代男性)は、肝臓の脂肪の量が228でした。正常値は150なので1.5倍ということになります。
「ダイエットを始めて最初の4週間で10キロほど落ちたので、面白くなってずっとやっていた。」
というSさんは、4〜5キロ太ったらまたダイエットをして、というのを繰り返しているそうです。

脂肪肝と診断された2人目はMさん(50代女性)で、脂肪の量は259と、危険ラインを超えていました。「太ったら食べないようにしたり、運動を増やしたりする」というMさんも、体重の増減を繰り返しているそうです。

そして先程のIさんの肝臓の脂肪の量は、脂肪肝であると診断された3人のうちもっとも高い312という数値を叩き出していました。この5年ほどは様々なダイエットを試し、合計で10〜11回は増減を繰り返しているとのことでした。「(ダイエットは)5〜7キロくらいポンと落ちるので楽しい」と話していました。
以上でおわかりの通り、脂肪肝である3人の共通点は、急激な体重の増減を繰り返していることです。

どうして体重の増減(ダイエットの繰り返し)が脂肪肝につながるのでしょうか。
肝臓には、様々な働きがあります。たとえば、

コレステロールの分解や有害物質の解毒
アミノ酸の代謝
鉄の貯蓄…

などなど、約500種類もの役割を担っているといいます。
その役割の中に「脂肪の出し入れ」というものがあり、これがダイエットによる脂肪肝を引き起こしています。
血管の中を流れる血液には、栄養が流れています。エネルギーの元である脂肪も、正常な状態では血液中に適量存在しています。

しかし、これが多すぎると逆に邪魔になってしまうので、肝細胞は血中の脂肪が多くなっていることを察知すると、その脂肪を血液中から取り出して、一時的に肝臓にためておくことで、血中の脂肪の量を適量に保とうとしてくれます。

さて、それでは急激なダイエットを行ったとき、この肝臓の働きはどのような変化を身体に起こすでしょうか。
まず、人は「太ってきたな…」と思ったとき(つまり、目に見えて全身に脂肪が付き始めたタイミング)にダイエットを始めます。
ダイエット目的で食べる量を減らしたりすると、血液中の脂肪が、一気に無くなってしまいます。その異常を察知した身体は、血中の脂肪の量を適切に保とうとして、(たとえばお腹周りなどの目に見える部分にある)皮下脂肪として溜め込んでおいた脂肪を血液中に流し始めます。

するとお腹は凹むので、ダイエットに成功したように見えます。
このとき肝臓の肝細胞は、血液中の脂肪の量が減少したことを「飢餓状態」と思い込み、「蓄えておかねば!」ということで血中の脂肪をどんどん肝臓に溜め込んでいってしまうのです。
このタイミングで「痩せたからいっぱい食べよう!」と食事を大量にとってしまうと、肝細胞は「また飢餓状態になるかもしれないから、いまのうちに脂肪を肝臓にためておこう」ということで、どんどん溜め込んでいき、やがて肝臓は脂肪でパンパンに膨らんでしまいます。
ダイエットとリバウンドを繰り返すということは、こういうことなのです。

さらに、横浜市立大学の中島淳教授はダイエットと肝臓の関係について、「身体には基礎代謝というものがあって寝ているときも代謝しているのだが、痩せると筋肉量が落ちてしまい、それに伴って代謝も落ちてしまう。その分脂肪が肝臓に溜まりやすくなる」とも指摘していました。

昔は、脂肪肝はお酒を飲む方の病気でした。それから次第に肥満の人が増えてきて、そういう人たちに脂肪肝が増えてきたそうです。
そして最近では、太っていない人にも脂肪肝が増えていることがわかってきており、人口の約25%が脂肪肝だとまで言われているそうです。
飢餓状態に備えて脂肪肝になるわけですから、拒食症の人なども脂肪肝になる可能性が高いそうです。

中島氏がダイエットをする際に注意すべき点として挙げていたのは、「徐々に痩せていくようにすること」でした。
「ダイエットに成功すると、欲でもっと痩せようとしてしまう。それを我慢して徐々に痩せていくようにするようにするべき。短期間に10キロ痩せるのが良くない。最低でも半年。1ヶ月で多くても2〜3キロまで」とのことでした。

脂肪肝を放っておくと

健康な人とそうでない人の食後血糖値を見比べてみると、わかることがあります。

20161030165002

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

脂肪肝の人は、食後に血糖値が急上昇しています。「隠れ糖尿病」とも呼ばれる糖尿病予備群の状態になってしまっています。
肝臓は、食後に血液中の血糖をためておく臓器でもあるのですが、肝臓に脂肪がたくさん溜まっているとそれを引き受ける余裕がなくなってしまうので、血液中に糖が必要以上にあふれるようになってしまうそうです。
また、血糖は筋肉にも蓄えられるのだそうですが、ダイエットをしてやせ細ると筋肉が減ってしまうので、そこにもためておけません。

中島氏によると、血液検査でALTの数値が40を超えていたら要注意だそうです。ウイルス性の肝炎の場合もありますが、脂肪肝の場合もあるそうです。
数値が高くても「自覚症状がないから」という理由で放置していると、年月をかけて肝硬変や肝臓がんに進行してしまうかもしれません。

肝臓の脂肪を減らす方法

もし脂肪肝になってしまっても、治すことはできます。
肝細胞は他の臓器の細胞と違って、急速に分裂して増える再生能力をもっているのです。
下図は、生体肝移植で肝臓を提供した人の肝臓の画像です。
手術で肝臓の6割ほどを切り取られた時点では…

20161030165254

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

2ヶ月経つと…

20161030165508

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

そして、3ヶ月後には…

20161030165432

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

ほぼ元通りの大きさにまで再生しています。
この能力を活かして、脂肪肝から回復させるのです。
中島氏によると「ダイエットではリバウンドしないようにするのが大切。そうすれば痩せていく過程で、脂肪肝も治ってゆく」
「運動と食事をあわせたダイエットで、1年くらいの時間をかけて、体重の7%から10%の減量をしていくようにする。現在痩せている人は、いまの体重をキープするようなダイエットが望ましい」
ということです。

脂肪肝を改善するためには、以下の3点が重要だそうです。

・ご飯(白米)を少しだけ減らす
・運動(1日30分のウォーキングでも十分)
・夜更かしせずに十分な睡眠をとる

脂肪肝の被験者がこれを3週間続けると、肝臓の脂肪が12%ダウンしていました。
もう一人の被験者は、体重は1キロしか落ちなかったにも関わらず肝臓の脂肪は30%もダウンしていました。

中島氏によると、肝臓には「睡眠」が特によいそうです。
ある双子に夜間まったく別のことをしてもらう実験では、夜更かしをしたほうと睡眠をとったほうの脂肪の消費量に差が出ていました。

20161030165726

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

寝た人のほうが脂肪の消費量が多かったのです。
中島氏は「夜の食事を早めにして、ゆっくり寝るようにするとよい。寝ている間に、肝臓にたまった脂肪が脂肪組織や筋肉や心臓で使われる」と解説していました。
ですから、忙しくて睡眠時間が短い人や、睡眠時無呼吸症候群の人にも脂肪肝が多いそうです。
「夜遅くの食事ですぐに寝る」という行為でも、肝臓に脂肪がたまってしまうそうですから注意しましょう。

ちなみに、人間は昼夜でモードが切り替わっているそうです。
昼は脳が活発に働いており糖を脳の栄養として使っていますが、夜寝ているときの脳ではほんの少ししか糖が使われないので、身体全体として脂肪を使うモードに切り替わるそうです。

肝臓の最新治療

横浜市立大学の谷口英樹氏は、新しい肝臓をゼロから作る研究をしています。
肝臓のもとになるiPS細胞を容器の中に入れると…

20161030170119

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

それが次第に自分で形を作っていき、“ミニ肝臓”へと成長します。

20161030170206

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

その内部では、肝臓特有の複雑な血管構造が見られます。

20161030170252

ガッテン!『まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』より

谷口氏によると「刺激を加えるのではなく細胞の力でつくる」ことを目指していて、既にマウス体内では機能しだしているそうです。
「3年後、患者に投与することを目指している」といいますから、研究の進展が楽しみです。

まとめ

今回の特集で、間違ったダイエットは身体を“飢餓状態に陥らせること”であることがわかりました。
中島氏によれば「人類の歴史の99.9%はいつ食べられるかとの闘いだった。だからちょっとでも食べられればそのときに全て脂肪として蓄えておいて、それをできるだけ使わないようにする」という特徴が人間の身体にはあるということです。
その仕組みを知った上で、急激な体重の増減をしないようなダイエットを心がけましょう。


スポンサーリンク

コメントは受け付けていません。