死ぬまで健康に生きる方法~健康長寿はCRPでチェック~ガッテン!より

近年、寿命が伸びている先進国を中心に「健康長寿」が重視されるようになっています。
健康寿命について特集していた先日の『ガッテン!』には92歳のAさん(男性)が登場し、現在でも趣味のジョギングを継続していることなどについて話していました。これといった病気もしたことがなく、マラソンに関するギネス世界記録を2つ(「最高齢ペア161歳(Aさん83歳、奥様78歳)でフルマラソン完走」と「家族三世代でフルマラソンを完走した合計最高齢」)も持っているAさんですが、そのような健康体でいつまでもいるための研究が、世界中で進められています。

 

スポンサーリンク

 

健康寿命を縮める原因

アメリカ合衆国ミネソタ州のメイヨークリニックという病院は最先端の医療研究機関を併せ持っており、健康寿命に関する研究も進められています。そこに所属するヴァン・デューセン博士は、サイエンス誌で画期的な研究に与えられる「年間ブレイクスルー」を2016年に受賞しました。

博士の研究によると、(人間で言うと)80歳のマウスの「慢性炎症」を止めることで100歳を超えても元気なまま生きたといいます。

ガッテン!より

右は普通に老化した(人間で言うと)80歳のマウスです。背中が曲がっていて、この撮影後すぐに死亡したそうですが、左のマウスはたしかに背筋が伸びていて若く見えます。

博士によると「慢性炎症を止めれば健康長寿を得られる」といいます。慢性炎症を止めれば腎臓や心臓の機能がよくなり、がんのリスクも減るー。つまり、より健康に年齢を重ねていくことができるというのです。

慢性炎症とは

炎症は、基本的には怪我や病気があって生じるものです。肌が腫れたり赤くなったり、熱をもったり、痛みを持ったりするものとイメージするとわかりやすいでしょう。

一方、慢性炎症は腫れなどが出ず、本人にも自覚症状がない弱さで長く続く炎症です。

続いているうちに周囲の臓器や血管を痛めてしまい、いずれ動脈硬化やがんなどが引き起こされるという特徴があります。

原因は肥満や過度の飲酒、ストレス、喫煙、高血糖、加齢などで、たとえばタバコは体のいろいろな場所に傷がつくので慢性炎症を引き起こすそうです。年齢が高い人ほど炎症は強くなり、大きな病気になる可能性が高まります。

この「慢性炎症」の有無を知るために、血液検査の項目に含まれる「CRP」が用いられます。

 

スポンサーリンク

 

CRPとは

CRPは血液検査の項目としてポピュラーになりつつあるもので、数値は0.30以下が適正とされています。

番組で救急センターを取材していると、食事で喉をつまらせて意識を失った高齢の女性が搬送されてきて、血液を採取してみるとCRPの値が5.4まで上がっていました。その結果も踏まえて医師は肺炎であると診断していました。

このことからもわかるように、CRPは炎症の指標として使われているそうです。約20年前から使われており、高い値が出ると重症の感染症である可能性が高いということになります。

CRPは「C-Reactive Protein」の略で、体内で炎症が生じた際に肝臓から出されるタンパク質という意味だそうです。

高感度CRPの登場

0.3以下が基準とされていますが、「高感度CRP」という機械が誕生して以来0.3以下の数値まで詳しく調べられるようになり、小さな慢性炎症でも見つけることができるようになりました。(もし血液検査の結果が少数点第2位まで表示されていれば高感度CRPによる検査だそうです。人間ドックの血液検査ではほとんどの施設で実施されており、健康診断を行う施設では約5割が高感度CRPを導入しているそうです。)

番組では、20〜70代の男女60人を集め、炎症や捻挫などの有無を確認してから血液を採取して、CRPを調べていました。

結果、20代は「0.01」という感じで皆さん低い数値しか検出されていませんでしたが、40代になると「0.1〜」など少し高めの人が増え、なかには基準値を超えている人も現れました。(ちなみに冒頭でご紹介した90代のAさんはCRP0.02だったそうです。)

全体の結果は、以下の図のように分布していました。

ガッテン!より

このうち、青で表示されている人は肥満の人(体脂肪率が男性なら25%以上、女性なら30%以上)で、肥満でない人に比べて総じて高くなっていることがわかりました。肥満の人たちは現状の数値が高いだけでなく、今後数値が上昇する可能性が高いそうです。

肥満と慢性炎症の関係

脂肪細胞を研究している大阪大学生命機能研究科の石井優教授は肥満と慢性炎症の関係について、
「肥満になってくると脂肪細胞がどんどん大きくなって、じわじわと炎症が続き、慢性炎症が起こる」
と説明していました。

脂肪細胞が膨れ上がると免疫細胞は脂肪細胞を“いらないもの”と判断して攻撃を始めるそうで、それが炎症を引き起こすのです。

ガッテン!より

左が通常の脂肪細胞、右は肥満の脂肪細胞です。緑色に染色された免疫細胞が集まっているのが確認できます。

九州大学と東京医科歯科大学で教授を務める小川佳宏氏によると、
「皮膚の上からつまめるような脂肪は炎症をあまり起こさない。腸管の周りについている内臓脂肪は非常に炎症を起こしやすい」
といいます。特に中年の男性は注意が必要だそうで、お腹周りがぷくっと膨れている人は要注意だそうです。

ちなみに、今回の番組の調査の中でCRPが異常な数値を示した人のなかには肥満でない人もいたそうですが、その人は歯周病にかかっていたそうです。歯周病菌が血管に入ることでも炎症は引き起こされるので、CRPの数値が高くなります。

ダイエットをすればCRPも下がる

今回の調査でCRPの数値が若干高めであった40〜60代の男女3人(それぞれ数値が0.24,0.25、0.14と、基準内だが高め)がダイエットに挑戦し、CRPの数値も低下するかどうかを調べていました。

体脂肪率が30%を超えていた3人は、ウォーキングや毎日のジム通いなどの運動や、食事の野菜を多めにして間食もしないなどの工夫を生活に取り入れました。

3週間後、3人の体脂肪率を調べると全員の数値が低下していました。

それに伴って、CRPの数値も低下しました。

ガッテン!より

一人だけ増えているのは、この方は検査の日に風邪をひいていたためだそうです。

小川氏は
「基準範囲内で比較的高いからと言って過剰に心配する必要はない」
としつつ、
「ちょっと飲みすぎているかな、など思い当たる節がある人は生活習慣を見直してみるといいのでは」
とアドバイスしていました。

食事

慢性炎症を食事の面から改善する研究も進んでいます。
自治医科大学の早田邦康氏によると、豆やきのこ類には「ポリアミン」という物質がたくさん含まれており、たくさん食べると炎症を抑えるように働く可能性があることがわかったそうです。
下の画像は、ポリアミンをたくさん摂取したマウスです。

ガッテン!より

毛並みもよく長生きしたそうですが、その他同じ条件でポリアミンを与えなかったマウスは…

ガッテン!より

毛並みが悪いことがわかります。
現在、人間にも同じような効果があるかどうかを研究中だそうです。

 

スポンサーリンク

 

慢性炎症を抑える方法

・運動後に乳製品を摂る
信州大学の能勢博氏は、インターバル速歩(ゆっくり歩くことと早めに歩くことを等間隔で繰り返すウォーキング)を6ヶ月以上実施して筋力向上や生活習慣病の症状改善効果が頭打ちになった高齢女性37人(平均66歳)を対象に、運動後に乳製品を摂る実験を行いました。

5ヶ月後、乳製品を多く摂取したグループの人は、炎症反応を引き起こすのに中心的な役割を果たすとされているNFKB1、NFKB2遺伝子のメチル化がトレーニング前に比べそれぞれ平均29%、44%増加しましたが、インターバル速歩のみのグループでは変化せず、少量の乳製品摂取のグループはその中間の増加量だったそうです。

炎症促進遺伝子がメチル化されて本来の働きをしなくなると慢性炎症は起きなくなるので、乳製品をより多く摂ることは健康寿命を伸ばすことに有効であるようです。(この実験で「より多い乳製品摂取のグループ」が摂取した乳製品の内容は、市販の6Pプロセスチーズ1個+4個パックヨーグルト2個で、総カロリー171kcal、たんぱく質12.3g、炭水化物9.4g、脂質9.4gほどだったそうです。)

この理由は、運動直後に乳製品のようなアミノ酸を多く含んだ食品を摂取すると効率よく筋線維が合成され、筋肉が太くなることにあると考えられているようです。新しい筋肉内には新しいミトコンドリアができるため、炎症を引き起こす活性酸素を出さず、慢性炎症が抑えられるというわけです。

・テロメアの長さを維持する「地中海型」の食事
染色体の末端部にある「テロメア」が長いほど慢性炎症の程度が低く細胞が老化しにくいことがわかっているそうです。
テロメアの短長は生活習慣に左右されることがわかっており、記事中で野菜ソムリエの丸田みわ子氏が紹介していた米ブリガム・アンド・ウィミンズ病院とハーバード大学の研究報告によると、「地中海型ダイエット」と呼ばれる食事法(野菜、果物、豆類、未精製の穀類、オリーブ油、ほどほどの魚と飲酒を中心に摂取する)を実施している女性は、そうでない女性に比べてテロメアが長く、慢性疾患の罹患リスクや死亡率も低いということがわかっているそうです。

 

スポンサーリンク

 

まとめ

慢性炎症は肥満が大きな原因となっていることをはじめて知ったという方も多いかもしれません。
健康寿命に注目が集まる今だからこそ、慢性炎症を意識した生活習慣の改善を試みてみるといいかもしれません。


スポンサーリンク

コメントは受け付けていません。