きょうの健康 心不全 最新情報「これって心不全?」より

心不全というのは病名ではなく状態を指す言葉なのだそうです。心臓の機能不全ということですから心臓病が原因になっているケースが多いのでしょうが、細かく見ていくと生活習慣病の蔓延や高齢化社会など、現代社会の特徴とも相まった側面があるようです。

番組では、国立循環器病研究センター 安斉俊久氏が心不全について解説されていました。

心不全の症状

・坂道や階段で息切れする
・手足が冷たい
・日中のトイレの回数や量が減少
・だるい
・1週間で2キロ~3キロ太る
・むくむ
・夜間に息苦しくなる
・咳が出る
・食欲不振
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ほとんどが中年以降になるとよく聞く珍しくもない症状ですね。しかし、これらの症状が少しずつ進行すると慢性化の経過をたどるものもあるそうで注意が必要です。

先生によると、心不全で新規入院する患者さんは年間21万人、外来合わせると160万人以上にもなるそうです。しかも、心不全は軽症のうちは症状がでないので受診してない人も多いそうです。つまり、実際の患者数はもっと多いと考えられるということです。

心臓の働き

心臓は例えて言うなら高性能なポンプなのだそうです。血液を送り出し、取り込むという作業を一日に10万回繰り返しているとのことです。大変な回数ですね。何十年も生きていればそりゃ疲弊もするだろうって思う向きも少なくないのではないでしょうか?

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そして、送り出す働きや取り込む働きが悪くなるのが心不全です。心不全は大きく二つ分けることができて、

 ・送り出す働きをする左心室の収縮機能が低下するのが収縮不全
 ・取り込む拡張期に心臓が十分広がらないのが拡張不全

といいます。

以前は収縮不全が心不全のメイン症状だと考えられていました。しかし、最近では研究による解明がすすみ、拡張不全も全体の4割にも達してることがわかっています。安斉先生によると、この拡張不全は年々増加傾向にあるそうです。また、高齢者の方には、心不全の症状があっても収縮機能が正常であるために見逃されやすいケースもあり注意が必要とのことでした。この場合は拡張不全だと思われます。

心臓の機能と心不全の症状とのかかわり

心不全の症状のうち、

『坂道などでの息切れ、手足が冷たい、日中のトイレが減少、だるい』

といった症状は”血液を十分に送り出せない”状態が招いているそうです。血液が十分に送り出せないために血液が各器官にまで行き渡らないために現れる症状ということです。

また一方、

『体重増、むくむ、食欲不振、夜間の息苦しさや咳』

といった症状は、心臓に血液が戻らず停滞することが原因で現れる症状です。スムースに血液が流れないために水分がたまりやすくなることが原因とのことでした。

胃腸の粘膜や肝臓がむくむと食欲不振になりますし、肺に血液がたまってしまうと、肺うっ血から肺水腫という、肺に水がたまった状態になってしまいます。息苦しくなるのはこのためだそうです。

心不全の重症度合い

息切れという症状を例にとると、

Ⅰ 日常生活で症状なし
Ⅱ 比較的強めの動作で症状がでる(階段での息切れなど)
Ⅲ 軽い動作でも症状が出る(平地歩行で息切れ)
Ⅳ 安静時にも症状が出る(洗顔時やトイレでも息切れ)

ということです。洗顔時やトイレの時に息切れするまでになるとさすがに症状としてはわかりやすいですが、Ⅱの”階段での息切れ”といった場合はほとんどの人が異常とは気づきません。そのため、受診せずに放置するケースが多いようです。潜在的な患者数は160万人以上といわれるゆえんです。

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心不全が進行するパターン

心臓が血液を取り込んだり送りだしたりするポンプの役目を十分果たしているうちは良いですが、心臓機能が低下してくると、機能が低下した分を他の動きで落ち込みを補おうとするそうです。たとえば心拍数を上げて血液を送り出す量を増やそうとしたり、心臓そのものを大きくして取り込む量を増やそうとしてみたりといった具合です。

しかし、そういった動きは結局のところ心臓へさらなる負担を強いることになりますので、心機能がさらに低下することなります。するとさら負荷をかけて低下した心機能を補おうとし、、という感じで悪循環し、症状が悪化していくとのことでした。

早期発見のためには?

やはり、心不全を早い段階で治療するには検査を受けることが大事です。安斉先生によると、人間ドッグなどの健康診断以外に、心不全専用の検査があるそうです。

検査項目
・胸部X線
・心電図
・心エコー
・血液検査(BNP検査)

上記は先生が『最低限やってほしい検査』として列挙したものです。

胸部x線
肺の病気の有無、肺に水がたまってないか、心臓が肥大していないかを調べる

心電図
心筋梗塞などの病気がないか、不整脈や心臓肥大の有無を調べる

心エコー
心臓の大きさや形、壁の厚みや収縮機能、拡張機能などを調べる
拡張不全の検査では大変重要な検査

血液検査(BNP検査)
心臓に負担がかかると分泌されるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の血中濃度を調べる

心不全は治療で治るのか?

安斉先生いわく、

『悪循環に陥った状態が長く続くと完治は難しいが早い段階で検知し治療できればつらい症状がでないまま生活できるようになる。』
『進行した場合でも、適切な治療を受けることでベッドから起き上がるのがやっとだった人が普通に生活できるようになったりもする。』

ということです。やはり早期発見早期治療が大切なんですが、心不全は一度発症すると、治療で症状がなくなっても心機能が低下した状態のままというケースがあります。慢性心不全と呼ばれる状態ですが、この状態だといつ不整脈などで突然死が起きてもおかしくないのだそうです。なので、症状がないので治ったと勝手に通院をやめたり薬を飲まなくなるのは良くありません。
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また、時間の経過とともに急性増悪という症状が出た場合は気をつけないと何度も急性増悪を繰り返すうちに心不全が重症化していくそうです。いかにして急性増悪を防ぐかが重要だとおっしゃっていました。

心不全が悪化する主な原因

治療をしているにもかかわらず、心不全が悪化してしまうのには、いくつか主だった原因があるそうです。

【心不全が悪化する原因】
塩分・水分制限を守らない
感染症(風邪など)
治療薬服用を守らない
不整脈・過度のストレス

心不全になりやすい人

心不全になりやすい人というのは、心臓病を患っている人や高血圧の人ですが、心不全の中でも特に拡張不全になると、高齢者の他に、肥満、糖尿病、心房細動、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などを患っている人に多いそうです。いわゆる生活習慣病や高齢化といった現代の特徴的な側面が反映されて拡張不全は増加しているとのことでした。


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