盲腸の最新情報~便秘・腸内フローラ・大腸がんとの関係~ガッテン!より

盲腸は「切り取っても問題のない、重要度の低い臓器」だと思っていませんか?
私もそのように考えていたのですが、朝日新聞デジタルのある記事(http://www.asahi.com/articles/SDI201703101030.html)を読んでみると、どうやらそうとも言い切れないということがわかってきました。ある研究の結果から、「虫垂は善玉細菌の「隠れ家」になっており、虫垂切除によってその機能が失われ大腸がんになりやすくなるのではないか」という仮説が出されたというのです。
記事中でも参照されている『ガッテン!』を見てみると、毎年5万人以上が盲腸を摘出しているそうで、さらに、現時点では健康な人でも激痛を伴う虫垂炎(いわゆる病気の“盲腸”)の原因が隠れていることがあるといいます。

それでは、まずは盲腸の必要性について仮説を出した研究から見ていきましょう。

 

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盲腸は必要な臓器?

その研究は台湾で行われました。
台湾の国民は健康保険カードというものを持っており、そのカードにはいつどこでどんな治療を受けたかが記録され、さらにその記録は中央健康保険署に集められ、分析されているそうです。
そうして集められた2000万人以上の記録から、盲腸に関する事実が見えてきたといいます。

外科医の呉氏は、盲腸を手術した人の中にがんになる人が多いことに以前から気づいていました。
そこで、7万人を超える人のデータを参照してみたところ…

ガッテン!より

がんの罹患率が約2倍になっていることがわかりました。
呉氏は「(盲腸は)どうでもいいものだと思っていたので驚いた」と話していましたが、盲腸手術するとその後の3年半に大腸がんに罹る率が2.1倍になるという事実が明らかになりました。
そもそも、盲腸と大腸がんとの関係は50年も前から関連付けて研究されてはいました。議論は長く続いていたのですが、台湾で40万人近くをおよそ14年間調査して「術後3年半の間だけ」リスクが2.1倍になる、という確度の高い研究が出されたため、このように注目されているそうです。

盲腸の役割

そもそも盲腸の役割は何なのでしょうか。
まったく必要のないものならば存在しないはずですよね。
盲腸は他の動物にも存在していて、馬の盲腸はおよそ1メートルもあり、容量は30リットルにもなるそうです。草食動物である馬に大きな臓器としてあることからもわかるように、盲腸は草を消化するのに必要な臓器なのです。

一方で、人間の盲腸は大腸の一部として存在しています。
そもそも一般に「盲腸」と言われる病気は「虫垂炎」という名の病気であることをご存知でしょうか?実際に炎症を起こして激痛を引き起こすのは盲腸ではなく、その下にくっついている「虫垂」という場所だそうです。
ここが炎症を起こすと、大きく腫れて膨らんでしまいます。悪化して破裂すると虫垂の中に溜まってしまっていた膿が飛び散り、重症化すると腹膜炎を起こしたりして命を脅かすこともあるといいます。

 

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虫垂が果たしている役割

下図は、盲腸の手術の映像です。

ガッテン!より

赤いものが虫垂です。
この断面図を撮影すると下図のようになり…

ガッテン!より

さらに拡大すると…

ガッテン!より

つぶつぶが沢山あることがわかります。
これらは免疫細胞だそうです。

大腸内には腸内細菌が腸内フローラを構成して、100兆個を超えて存在しています。
なんらかの原因で腸内フローラのバランスが崩れて悪玉菌が増えてしまったとき、虫垂の免疫細胞が活躍して、良い菌が住みやすい環境に整えてくれているという仮説がたてられているそうです。
腸内フローラのバランスが崩れると体全体に悪影響が及び、がんや生活習慣病が生じると考えられているので、虫垂の切除によって病気のリスクが高まるかもしれないということなのです。

東邦大学医療センター大森病院教授の島田長人氏によると、「虫垂の中にリンパ組織があることは昔からわかっていたが、何の役割をしているのかはよくわかっていなかった。しかし、台湾の研究によって腸内細菌に影響を及ぼしていることがわかってきて、他のいろいろな病気との関係はどうなのだろう、という研究がスタートした」というのが現状だそうです。
ただ、医学的に手術をして摘出した方がいいという状態はあるそうで、たとえば虫垂が破れてお腹全体に膿が広がっているような場合は手術した方が良いそうです。

ただ、「薬で治るような虫垂は無理してとらなくても良い」そうで、薬は今の痛みが10として翌日は5くらいにまで治まり、またその翌日は半分くらいに、というふうに良くなっていくそうです。

『ガッテン!』では309人の医師に「虫垂炎は手術で治すか薬で治すか」というアンケートをとっていました。

ガッテン!より

結果、「患者の意向を尊重する」という医師が多いということがわかりました。
医師の間では既に、盲腸は必ず切り取らなければならないものではなくなっていることがわかります。
しかし、薬の治療ですと再発の問題はあり、10〜35%の確率で再発してしまうそうです。2回、3回と再発するようなら手術した方がいいという判断にもなるようです。

今回の台湾の研究で大事なポイントは、「3年半を過ぎたら切除した人としていない人の大腸がん発生のリスクは変わらない」という点です。
これは、虫垂がなくなった状態に体が適応して、どこか他の臓器か何かが元のバランスに戻してくれるためと考えられています。
まだ研究段階なのでなんとも言えない部分はありそうですが、3年半の間は便潜血検査などの大腸がん検査を必ず受けるようにした方が良さそうです。

虫垂炎を引き起こすモノ

「スイカの種を食べると盲腸になる」という話もありますが、平塚胃腸病院の佐藤健氏によると「海外の報告も含めてほとんどない」そうで、「迷信に近い俗説」と断じていました。(スイカを急いで食べるとお腹が冷えて痛めるので、それを防ぐための言い伝えではないかと考えられます。)

しかし、あるものを飲み込むと、本当に盲腸になることがあるといいます。
中部労災病院の藤原玄氏は盲腸の手術をした時、お腹の中から約1センチの「歯」を見つけました。

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これが虫垂をつまらせていたそうです。
盲腸と虫垂の間は直径3ミリほどの穴でつながっていて、虫垂は袋状になっています。硬いものが大腸を流れていって排泄されることなくその穴にハマってしまうと、虫垂の中に炎症が生じ、虫垂炎になってしまうというわけです。

この患者さんは幼いときに誤って乳歯を飲み込んだそうです。これが盲腸にとどまり続け、20年経って突然虫垂をつまらせました。過去の研究を調べてみると、つまらせるものとして魚の骨や義歯などの実例があったそうです。
消化液で消化できないものを飲み込むことで虫垂炎を発症することもある、ということなので、「飲み込んじゃっても排泄されるからいいや!」という意識は捨てるようにしたほうが良さそうです。

番組では、虫垂炎の経験がない男女10人が東邦大学医療センター大森病院の丸山憲一氏のもとを訪ね、超音波検査を受けていました。
下図が虫垂を映した映像です。

ガッテン!より

この方は「今の時点では心配ない」とのことでした。
しかし…

ガッテン!より

この方の虫垂の中には、白い影が確認できます。これは、なにか塊に近いものがあることを示しているそうです。
なんと、今回の検査では健康な人10人のうち4人に白い影が見られたそうです。

この白い影は何なのでしょうか?
虫垂炎の原因になるもの(穴を塞ぐもの)はさまざまあります。

ガッテン!より

この中で一番多い原因が「うんち」で、今回白い影が見つかった人の中には「30年くらい便秘で…」と話している人もいました。
大便が「糞石」と呼ばれる硬い状態になってしまい、穴を塞いでしまうのです。
下図は、島田氏の患者さんのエコー写真です。

ガッテン!より

この方は急性虫垂炎になってしまった方で、お腹が急に痛くなって病院に運ばれ、緊急で超音波検査を実施した際の画像だそうです。
黄色く色づけされた部分が糞石で、その先はすべて膿が溜まってしまっています。
しかし、エコー検査を行うために虫垂の辺りを押さえていたら、糞石が穴からスコンと抜けてしまったそうです。
すると、わずか5分で…

ガッテン!より

すっかりよくなって、そのままご自分でご帰宅されたそうです。
穴を塞ぎさえしなければ、盲腸にならなくて済むのです。

他にもある!虫垂炎を引き起こすモノ

・バリウム
バリウム検査を受けてから2か月間は虫垂炎のリスクが9.72倍になるという研究結果が出ているそうです。※1

・リンパ組織の過形成
小児や若年成人で多く見られるそうです。※2

リンパ組織の過形成はどうしようもありませんが、バリウム検査を受ける際はそのリスクを承知して、検査後にはお腹に優しい食事を摂るなどの気を使うといいのかもしれません。

※1:メドレーより
※2:マイナビウーマンより

虫垂炎のリスクを下げる食事

便との関係から、食物繊維をたくさん取ると虫垂炎になりにくいという研究結果もあるそうです。

ガッテン!より

虫垂炎になった人もなっていない人も、お腹に優しい食生活が大事であることがわかりますね。
福田真嗣氏は腸内細菌研究の第一人者で、Natureにも論文が掲載されたことがあるという著名な学者さんです。そんな福田氏によると、ひじきなどに含まれる「水溶性食物繊維」は腸内細菌を元気に育てるのに役立つそうです。また、味噌汁やぬか漬けなどの発酵食品を用いた食品も「微生物の力でつくられたいろいろな栄養素を取り入れることができる」ため有効と話していました。
こういうものは長く続けることが重要ですから、食習慣として続けられるものを摂るようにするとよいでしょう。
下図は虫垂炎のリスクを下げてくれる食品の例です。

ガッテン!より

参考にして食生活を見直してみてください。

虫垂炎の早期発見法

いざ盲腸になったら、すぐに病院に行くことが重要です。
そこで、いざというときにお腹の痛みが盲腸であると気づくために、番組では373人の盲腸経験者に「どんな痛みでしたか?」というアンケートをとっていました。
すると、「お腹全体を痛みが移動する。グルーっと、日ごとに移動していった」など、半分近くの人は「痛みが移動した」と答えたそうです。共通したのは、「最初はお腹全体が痛み、次に右下腹部が痛む」という感覚だそうです。
虫垂には鈍い神経と鋭い神経のふたつが通っているそうで、炎症が起きるとまず鈍い方の神経で異常を感じるので、お腹あたりがぼんやりと痛みはじめます。次に鋭い神経が反応し、虫垂が患部であるとわかり痛みが局所的になるので、痛みが移動するように感じるのです。
このような痛みの出方なら、虫垂炎を疑いましょう。

まとめ

現段階ではまだ仮説ではありますが、盲腸の常識を覆す研究結果が出たことは知識として知っておくべきことだと思いました。
今回紹介された予防法などは他の病気の予防にも役立ちますから、体全体のことも考えて、食生活の見直しなどを実行してみると良いのではないでしょうか。


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