手指のしびれを引き起こす病気~主治医が見つかる診療所より

手足にしびれを感じることがありますよね。
たいていの場合はすぐに治まるので放置することも多いのですが、しびれは歩行困難や寝たきりになる可能性のある病気の兆候であることもあるといいます。
しかし、こちらの記事(しびれの原因 隠れた病気?)によれば痺れを引き起こす原因は「骨の変形から脳卒中までさまざま」だそうなので、病気を特定するのは難しいという特徴もあるようです。
それでも、そのしびれが危険かどうかを判断する方法が『主治医が見つかる診療所』にて紹介されていましたので、それも交えながら、しびれについてまとめてみたいと思います。

 

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首に原因があるしびれ

現在70歳のOさんは、62歳のときに初めてしびれを感じました。新聞を読んでいた時に、左手の人差し指と中指にくすぐったいような違和感が出たそうです。
日常生活に支障が生じるほどではなかったので放置していると、次第に強い肩コリが出てきたそうです。1年経つと親指までしびれるようになり、袖のボタンがとめられなくなったり湯呑みを取ろうとして落としてしまったりなど、生活に支障が出てくるまでになってしまいました。
そこで総合病院へ行き、MRI検査を受けてみると、「頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)」であることがわかりました。

頚椎症性脊髄症は、首の骨の中を通っている神経に問題が起こる病気です。
加齢などで変形した骨や軟骨が脊髄を圧迫して、しびれや痛み、麻痺などを引き起こします。
健康な状態では下図のようになっているのですが…

主治医が見つかる診療所より

頚椎症性脊髄症の人は…

主治医が見つかる診療所より

神経が圧迫されて、神経がつながっている先にある手などにしびれが出たり、歩行困難が引き起こされたりします。

検査の結果しびれの原因が特定できても、Oさんは手術に恐怖を感じて断ってしまったそうです。
そのため症状は悪化していき、しびれは右手にも広がっていきました。字を書くことにも不自由になってきた頃ようやく手術を決心したOさんでしたが、手術の2〜3日前に急にしびれがとれてきたそうで、手術をキャンセルしてしまいました。
すると今度は、まっすぐ歩くことができなくなってしまったそうです。まっすぐ歩いているつもりなのに左に寄っていってしまったり、わずかな段差で躓いたりするようになってしまったので、ようやく覚悟を決めて手術を受けました。

もし、Oさんのように首の神経が圧迫されている状態で転倒をしていたら、非常に危険だったそうです。
Oさんを担当した国際医療福祉大学塩谷病院の福井康之氏によると、「おでこを強打して首を反るような場合は、神経が挟まって麻痺する」ことになっていたといいます。そうなると痺れにとどまらず麻痺が生じ、最悪の場合は車椅子や寝たきりの生活になってしまうそうです。福井氏は「一回麻痺すると治らないので、手が動かしにくいとか、歩きにくいとかいう症状が出た場合は早く病院を受診するように」と話していました。

番組に登場した医師の「しびれ」に関する見解

秋津嘉男医師は「正座したときの足のしびれなど、まったく心配のないしびれもあるが、実は非常に重篤な病気だったということもあるので、軽視してはいけない」と指摘していました。
南雲吉則医師は麻痺としびれの違いについて、「麻痺としびれは同時に出ないことが多い。正座をしているときは麻痺するが、痛みも感じなくなる。足を伸ばして血流が回復してくるとビリビリと痺れるようになる。そして、痺れが出ているときには治りかけていることも多い。しかし、急に何も痛みを感じなくなってしまったということは麻痺が進んでいるという事なので、重篤な病気のサインであるという場合もある」と指摘していました。
しびれ外来を25年前に開設した橘滋國医師は、「しびれの原因は多岐にわたっているので、診断しようとしたら30分はかかるが、それだけかけてくれる先生はいない。専門家があまりいないということが(しびれの原因が正確に特定されづらい)ひとつの原因」と話していました。

しびれが関係している病気はたくさんあります。

主治医が見つかる診療所より

これでもまだまだ一部で、実際は100種類以上もあるそうです。
しびれの原因を特定する難しさの原因について、丁宗鐵氏は「実際の臨床の現場ではいくつもの病気が重なっていることもある。混合した症状も多く、診断が遅れるということもある」と説明していました。
秋津氏は「しびれという言葉自体が曖昧で人によってイメージが違うので、医師にそれを伝えるのが難しい」ことも、診断の難しさのひとつであると話していました。

頚椎症性脊髄症について、橘氏は「人間は立って歩くようになったので、頭のような重いものを首の骨が支えることになった。(そのため)首の骨が押しつぶされて不安定になる。これを骨で固めようとするが、過剰防衛で神経に触ってしまう(ことがあって発症する)」と説明していました。
人間の頭部は成人で約5キロもあるそうです。
それを支える首の骨は加齢などで変形することがあり、これを支えるために骨が再生して、さらに変形するそうです。この変形した骨が、神経を刺激することがあるのです。

番組では、この病気によるしびれであるかどうかを判断するためのセルフチェック法が紹介されていました。

頚椎症性脊髄症のセルフチェック法

紹介されていたのは「10秒テスト」です。
手をまっすぐ前に伸ばして、指をしっかり曲げて伸ばす(グーパーを繰り返す)動きを10秒間行います。指を完全に伸ばしてから(パー),しっかり握る(グー)ことがポイントで、これを20回前後繰り返すことができれば正常です。回数が落ちていると頚椎症性脊髄症の可能性があるそうです。

 

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加齢が原因となり、しびれを引き起こす病気

・坐骨神経痛
…足にしびれが生じる病気です。

・腰部脊柱管狭窄症
…腰から足にかけての痺れや脱力感が生じる病気です。

・神経根症
…首から腕にかけて痺れや痛みを感じる病気です。

など。
先述の通り、痺れを引き起こす病気はたくさんあるので書ききれませんが、調べてみると加齢に伴う病気がたくさんあったので、中高年の方は特に注意が必要でしょう。

手首に原因があるしびれ

Sさん(87歳女性)は49歳のときにしびれを発症し、33年もの間しびれの原因がわからず苦しんだそうです。
当時、いつものように食事の準備をしていると、右手に電気が流れるような痛みを伴うしびれが生じました。小指以外の指がしびれたそうです。日常生活には支障がなかったので放置していると、数カ月後には腕までしびれが広がっていったそうです。
かかりつけの医者や接骨院、鍼治療や整形外科など様々なところで診てもらったそうですが原因はわからず、治療できないまま20年以上も過ごしたそうです。さらに、70歳を超えた頃には痛みを伴いはじめ、夜眠ることも難しくなってしまいました。

この状態が10年以上続いて治すことを諦めていたある日、娘さんが「近くの病院にしびれ科ができた」という情報を聞きつけて受診してみたところ、しびれを引き起こしていた病気の名が「手根管症候群」であるとわかりました。

主治医が見つかる診療所より

手根管症候群は、手首にある手根管という神経の通り道がなんらかの原因で狭くなり、中の神経が圧迫されることで、しびれが生じる病気です。進行すると親指の付け根の筋肉が痩せて、ものがつかめなくなることまであるそうです。

手の神経は、親指から薬指の半分につながる「正中神経」と、薬指の半分と小指につながる「尺骨神経」があります。

主治医が見つかる診療所より

手根管は手首の使いすぎや女性ホルモンの乱れなどで狭くなることがあるため、手根管症候群の患者は妊娠中や40歳以上の女性が多いそうです。

Sさんは手根管を切開して神経の通り道を広げる6分程度の手術で、完治しました。

・手根管症候群のチェック法1
爪楊枝で指を軽く刺激してみて、小指とそれ以外の指の刺激が違って感じる場合は手根管症候群である可能性があります。

・手根管症候群のチェック法2
手首を圧迫してしびれを起こしやすくする「ファーレンテスト」と呼ばれる方法もあります。
胸の前で両手の甲をつけたまま20秒間、軽く押し続けます。

主治医が見つかる診療所より

腕の高さは肩と同じくらいにして行い、親指から薬指にかけてしびれが起きなければ、手根管症候群の心配はないということになります。

・手根管症候群のチェック法3
手首が痛くてファーレンテストが行えない方は、手のひらを上にして、手首の内側を反対の手の人差し指でトントンと叩いてみましょう。
これでしびれが生じるようだと、手根管症候群ということになります。

 

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胸のあたりに原因があるしびれ

Aさん(66歳男性)は59歳のある朝、顔を洗おうと冷たい水に触れた瞬間、左手の指先に電気が流れるようなしびれを感じました。「腕全体が引っ張られるような感覚」もあったそうですが、普通に動かす分には問題がなかったので半年ほど放置してしまったそうです。
本人に思い当たる節があったことも、放置につながりました。Aさんは飲酒や喫煙、暴飲暴食、偏食などを重ねていたので、しびれは生活習慣の乱れが原因で出た“ちょっとした体の不調”だろうと考えてしまったのです。さらに、Aさんは高血圧でもありました。高血圧の基準は上が140、下が90を超える状態とされていますが、Aさんは上が230を超えるときもあったそうで、「血圧を下げればしびれも治まるだろう」と考えてしまったそうです。
しかし、しびれは悪化するばかりだったためかかりつけの病院で相談してみると、医師からいつもは計測していない左腕でも血圧を測定することを勧められたといいます。言う通り行ってみたところ、右腕の血圧は上152,下73だったのに対し左腕は上96、下48と、左右の腕の血圧に大きな差があることがわかったのです。
それから紹介された総合病院でCT検査を受けてみると、「鎖骨下動脈狭窄症(さこつかどうみゃくきょうさくしょう)」であることがわかりました。

鎖骨下動脈は鎖骨の下を通っていて、心臓から腕へ血液を送る動脈です。
そこに動脈硬化などが生じて狭まってしまい、血流が減ることによってしびれなどが起きます。
下図はAさんの胸のCT画像です。

主治医が見つかる診療所より

一部が急激に狭くなっていることがわかります。
この病気は、放っておくと手が腐敗して切断しなければならないこともある怖い病気です。

南和友医師によると、「(鎖骨下動脈狭窄症は)はじめはしびれから来ることが多く、そのうちに痛みが出て来る。血圧が高いということは狭くなっているところへ血液を送るために血圧をどんどん上げているということなので、この病気のひとつのサインになる。左右の血圧に差があるときは気をつけなくてはいけないと話していました。
さらに、動脈硬化が起きているケースでは足の方で症状が出ることも多いといいます。太ももの動脈が狭くなっていると足の先がしびれることもあるそうで、この場合も腕と同様に、左右の足の血圧に差が生じているそうです。

Aさんは、人工血管をつないで腕への血流を回復させるバイパス手術を受けたところ、しびれが解消したそうです。

・鎖骨下動脈狭窄症のセルフチェック法
Aさんがやったように、いつもとは違う方の腕でも血圧を測ってみましょう。
左右で30mmHg以上の差がある場合は、病院へ行ってください。

・セルフチェック法2
足の血圧を確認する方法もあります。
足の甲にある「足背動脈」に触れて、入浴時などに確認する習慣をつけると良いかもしれません。
両手の指で、左右の足の脈の強さに違いがないか確かめます。

主治医が見つかる診療所より

違いが強く感じられる場合はすぐに病院へ行きましょう。

まとめ

番組の中で中山久徳医師は「変化のあるしびれに注意」と指摘していました。日々しびれの程度が強まっていく場合は、生活に支障が出ていない段階でも病院へ行くようにしましょう。
姫野友美医師は「筋力の低下が見られたら危険」と指摘していました。握力に左右差が出るなどした際は、病院を受診するようにしましょう。(しびれ外来が近所にない場合は、神経内科や整形外科、脳神経外科などで診てもらってください。)
この記事を読んでいる方の中には「最近しびれが出ていて気になっている」という方も多いと思います。今回紹介したセルフチェックを実行して、異常があればすぐに病院へ行くようにしましょう。


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