不整脈の原因・症状・治療~チョイス@病気になったときより

心臓の動きが乱れる症状を「不整脈」と呼びます。
不整脈が起きると動悸やめまいなどが引き起こされ、日常生活にも影響が出てきます。
今回は、不整脈に関する情報を紹介していた「チョイス」を中心に、不整脈の特徴や治療法などをまとめていきたいと思います。

 

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心臓と不整脈

心臓の大きさは握り拳1つ大で、1日に約10万回動いています。
「不整脈」というのはこの動きが乱れた状態のことをいいますが、不整脈になっても多くの場合は健康上問題がありません。
しかし、中には深刻な病状もあり、その場合は治療が必要になりますので、今回はそういった“問題のある不整脈”を見ていきたいと思います。

心臓に問題がないのに起こる不整脈

およそ30年間も不整脈に悩まされているHさん(55歳男性)は、27歳の頃に不整脈を発症しました。「仕事中に立ちくらみや胃のむかつき、気持ち悪さが出てきて、医者に診てもらうと心臓が乱れていると言われた」そうで、「100メートルを思いきり走って心拍が早くなる感じで、このまま止まるかと思った」といいます。
すぐに救急車で病院に運ばれて検査を受けると、不整脈を起こしていたことが確認されました。

心臓を動かしているのは右心房にある洞結節(どうけっせつ)という場所で、そこから送られる弱い電気信号が心房を収縮させてから、少し遅れて心室を収縮させるという動きを繰り返して、ポンプの役割を果たしています。
何らかの原因で信号がうまく流れず、心臓のリズムが乱れてしまうと不整脈になります。

Hさんの場合、不規則な心臓の動きがときどき現れるタイプの、いわゆる“脈が飛ぶ”タイプの不整脈(期外収縮)でした。

症状が出てからは何ヶ月かに1回は救急車で運ばれるという感じで、1年間に7回も運ばれたそうですが、いつも救急車に乗ると症状が止まるため病院では医師から「いたって健康」と言われてしまっていたそうです。薬を処方されてもこの状態は改善しなかったため、Hさんはカテーテル検査を受けることにしました。

カテーテル検査は、カテーテルを静脈に挿れて心臓の中を調べる検査です。造影剤を使って心臓の形や動きを見たり、心臓の周りの冠動脈に詰まりがないかどうかを調べたりすることができます。
心臓に器具を当てて不整脈を誘発させ、問題がないかどうかを調べてもみたそうですが、Hさんはそれでも「心臓には問題がない」という診断結果になったそうです。

この結果がHさんを安心させました。
「検査をしてからは、発作が起きてもすぐには死なないと言うことがわかり、安心感につながった」というHさんは、それ以降不整脈の症状が現れなくなったそうです。

 

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不整脈について

番組には東京女子医科大学循環器内科の志賀剛氏が登場し、不整脈について説明していました。
「右心房の洞結節が“発電所”で、そこから出された電気信号で心房を収縮させる。右心房の中には房室結節(ぼうしつけっせつ)という変電所のような役割を果たしている場所もあり、そこを通って電気が心室に送られ、心室を収縮させる。これが正常な心臓の収縮。不整脈というのは、この正常な刺激以外の刺激から生じるもの、あるいは、正常な流れの途中で流れが悪くなったり、十分な刺激が出なくなったりして生じるものを総称して不整脈という。」

不整脈の要因には以下のようなものがあり、誰にでも起こる可能性があります。

チョイス@病気になったときより

「加齢」については、一般的には60歳を過ぎると出てくる可能性があるそうです。どんなに健康でも、やはり少しずつ変化は生じるようです。
「肺の病気」については、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という喫煙が原因でなる病気によるものが多いそうです。
「甲状腺の病気」については、甲状腺ホルモンが心臓に作用して不整脈を出やすくしたり交感神経を揺さぶって不整脈を誘発したりすることがあるそうです。
「糖尿病」は動脈硬化を引き起こしやすくなるため、関係があるそうです。

mametisiki※不整脈の要因に関する補足

・甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは自律神経に作用して脈を速めるなどの作用があります。
また、心筋細胞には甲状腺ホルモン受容体が多くあるため、過剰な甲状腺ホルモンの分泌は心臓疾患を誘発しやすいのです。
(甲状腺ホルモンを過剰に分泌させる病気についてはこちらをご覧ください。)

甲状腺ホルモンと病気~バセドウ病や甲状腺機能低下症~チョイス@病気になったときより

・糖尿病による動脈硬化
糖尿病が動脈硬化を引き起こすのは、以下のような要因からであることがわかってきているそうです。
1, 高血糖
2, インスリンが働きにくい状態(インスリン抵抗性)
3, インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症
4, 肥満(特に内蔵脂肪肥満)
現代の生活習慣から、本人も自覚のないまま“糖尿病予備群”となっている人も増えているので、注意しましょう。
(糖尿病予備群についてはこちらをご参考にしてください。)
糖尿病境界型予備群は完治可能!

参考:
長崎甲状腺クリニック
メディカルノート『甲状腺とは』
循環器病情報サービス

Hさんはなぜ不整脈が起きたか

志賀氏はHさんの不整脈の原因について「Hさんは当時結婚したばかりで、これから仕事を頑張ろうという意識で日々激務をこなしている状況だった。ストレスが自律神経を揺さぶって不整脈を引き起こしたとみられる」と解説していました。

不整脈には以下のようなパターンあります。

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飛ぶタイプの期外収縮
心臓の動きの中に弱い動きが混じるため、飛ぶように感じます。

頻脈
早くなるタイプの不整脈は、1分間に100回以上も脈打ちます。(正常なら安静時は60〜80回ほど。)
「心房細動」という電気信号が1分間に300〜500回発せられて、心室が痙攣することにより引き起こされる頻脈もあります。こうなると心臓はポンプの役割を果たせず全身に血液を送り出せなくなり、失神して倒れてしまうこともあるそうです。ごくまれに心臓にも血流が十分に回らなくなることがあり、その場合は突然死をしてしまうそうです。

徐脈
脈拍が遅くなる不整脈は「徐脈」と呼ばれます。人によっては1分間に30回くらいしか動かなくなることがあるそうです。寝ている分にはいいのですが、頭を起こすと十分な血液が頭にいかなくなるため、息切れやだるさが引き起こされ、時には失神してしまうこともあります。

不整脈の検査について

・ 12誘導心電図検査
不整脈の一般的な検査方法です。心臓の興奮を12の方向から見て、乱れの有無などを調べます。

・運動負荷心電図検査
ランニングマシンなどで運動をしながら不整脈が現れるかどうかを調べる方法です。狭心症などが隠れていないかを調べることができます。

・心臓超音波検査
心臓の動きを調べて基礎疾患を見つける基本的な検査です。ホルター心電図を24時間装着し、心拍を調べます。寝ている間や食事の間などに生じる変化などを見つけることができ、普段症状が出ていなくても不整脈を見つけることができる検査です。

以上の方法を用いて不整脈の原因を見つけていきます。
さらに、甲状腺の病気や糖尿病、腎臓の疾患の有無などを調べるために血液検査も併せて行われます。

ちなみに、Hさんはカテーテル検査を受けていましたが、志賀氏によれば「全員がカテーテル検査を受ける必要があるとは限らない」といいます。Hさんは期外収縮の連発があったため危険な不整脈に移行する可能性を考慮し、カテーテル検査が行われたそうです。
このように、その人の症状によって受ける検査が変わるようです。

・セルフチェック法
自分で脈をとることも有効です。
手首の辺りにある橈骨動脈(とうこつどうみゃく)を人差し指、中指、薬指の3本で触れ、15秒間の脈拍数を測ります。

チョイス@病気になったときより

この回数に4をかけると1分あたりの回数がわかります。

いつやるべきか等に特別定まったものはありませんが、血圧を測るついでに行ったり、気になる症状が出たときに行ったりするとよいでしょう。
不整脈だと脈のリズムにも異常が出ることがあります。志賀氏によれば、医師としても脈のリズムを言葉で伝えてもらえると診断しやすいそうです。

不整脈がきっかけで見つかる病気

Nさん(84歳男性)は68歳までコンビニエンスストアを経営しており、当時はアルバイトさんが休むと一昼夜働くこともよくあったそうです。異変に気づいたのは仕事を辞めて数年経ったときでした。階段の上り下りだけで息が切れて苦しくなったため、病院を受診すると不整脈と診断されたそうです。

ホルター心電図で24時間の心臓の動きを調べると1日に40,000回も不整脈が起きていたそうです。カテーテル検査でさらに詳しく調べると、心臓を取り巻く血管の一部が詰まって、その先に血液が届かなくなっていました。

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心筋梗塞になっていたのです。

Nさんは不整脈がきっかけで心筋梗塞を見つけることができたため、命の危険にまで至る前に薬の治療に入ることができました。
志賀氏は「心筋梗塞を放置していると心不全になったり、同じ不整脈でも危険なタイプの不整脈になるきっかけになったりするので、それらを未然に防げたという意味で良かった」と話していました。

その他にも不整脈の原因になる心臓の病気はいくつかあります。

・ 心筋症
・ 心臓弁膜症

「心筋症」は心臓の筋肉の病気です。心臓の壁が薄くなって大きくなったり、逆に筋肉が厚くなっていったりする病気です。
「心臓弁膜症」は、心臓にある4つの部屋を仕切る弁の閉まりが悪くなったり硬くなったりする病気です。
これらは自覚症状が無いこともあるため、不整脈によって見つかることも決して珍しくないそうです。

ちなみに、疾患がなくても不整脈を引き起こしやすい遺伝背景を持っているケースもあるので注意が必要です。45歳未満で突然亡くなった方が家族にいる場合は検査を受けるようにしましょう。

不整脈の治療法

Fさん(59歳女性)は約9年前に突然、運動もしていないのに心臓が躍るような感じになったそうです。それ以来、「いつどこで発作が起こるか不安なので外出も減ってしまった」というFさんが病院で検査を受けると心房細動であることが分かりました。

心房細動は心房が細く震えるように動く不整脈です。心房の中で血液が淀んでしまうため固まりやすくなり、血栓ができるリスクが高まります。この血栓が心臓から流れ出て、脳の動脈に詰まると脳梗塞になってしまいます。
心房細動自体は命に関わらないのですが、心房細動のない人に比べると脳梗塞が約5倍、心不全が約4倍起こりやすいことがわかっているそうです。

Fさんは抗不整脈薬という飲み薬を処方されました。心臓内の不要な電気信号を抑えることで不整脈を起こしにくくする薬です。
Fさんは「朝晩一錠ずつ飲むだけでこれだけ良くなるのが信じられない」と、その治療効果について話していました。

同じ心房細動でもまったく別の治療方法をとった人もいます。
Sさん(70歳男性) は、子供の頃からサッカーを続けており、今でも毎年海外旅行に出かけるなどとてもアクティブな方ですが、心房細動になってしまいました。異常が出たのは定年間近の60歳のときで、すぐに薬による治療が始まりました。

しかし、症状は山あり谷ありで、温度差や気候の変化などで度々不整脈が出ていたそうです。
治療開始から4年ほど経ったころ、海外旅行の1週間前から急に体調が悪くなってしまいました。Sさんは旅行をキャンセルして病院へ行き「カテーテルアブレーション」という治療を受けたそうです。

「カテーテルアブレーション」とは、足の付け根の静脈からカテーテルを挿入して心房まで送り込み、高周波電流を流して、異常な電気信号が発生する場所を焼く治療法です。

Sさんの術後は良好で、今では薬の治療も必要なくなるまで改善し、サッカーも再開したそうです。

・カテーテルアブレーションについて
肺から心房につながっている4本の肺静脈があります。その肺静脈で発生した異常な電気信号が心房の中に伝わらないようにするために、肺静脈の出口周辺を丸くカテーテルで焼きます。

チョイス@病気になったときより

発作性心房細動の場合は成功率が80〜90%と高いですが、数日の入院が必要になります。また、合併症のリスクがゼロではありません。

一方、薬で治療する場合の成功率は約70%と言われています。
これらをメリット・デメリットを考慮して、どの治療法を採るかを決めていきます。

 

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まとめ

不整脈は様々な原因で引き起こされ、それが治療を必要とするものかどうかも種類によって様々です。
最後に志賀氏は「その不整脈が治療の必要があるかどうかを医師に診てもらうことがもっとも重要」と指摘した上で、「治療法は自分の希望に合うものを選ぶように」とアドバイスしていました。
1人で悩んでいるとそれ自体が不整脈を起こすこともあるので、異常を感じている方は1日でも早く検査を受けるようにしましょう。


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