多くの人を悩ませるウイルス性肝炎。
C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスに感染している人はおよそ370万人もいるそうですが、感染していても自覚症状がほとんどないため放置しがちで、気づいたときには慢性肝炎や肝硬変、最悪の場合は肝臓がんにまでなってしまうことがあるといいます。(肝臓がんの原因のおよそ8割は肝炎ウイルスによるといいます。)
しかし、ウイルス性肝炎に関する知識や最新の治療法・予防法などを知っておけば、最悪のケースを避けることができるはずです。
ということで今回は、ウイルス性肝炎の対策法などを詳しく紹介していた『チョイス』をまとめておきたいと思います。
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肝臓について
肝臓はアルコールや薬を解毒したり、身体に必要な栄養をつくったり、つくった栄養を必要なときに備えてためておいたりなど、様々な役割を果たしている臓器です。
再生能力が高いという特徴もあって、手術などで全体の7割を切除したとしても、短い期間で再生するといいます。
しかし、あまりよくない特徴として、病気にかかって深刻な病状にまで進行しても自覚症状がほとんど出ないという性質もあって、「沈黙の臓器」と呼ばれていたりします。「発覚したときはもう手遅れだった」とならないためには事前の検査が重要であるのはこのためです。
それでは、番組で紹介されていた肝炎ウイルスに感染してしまった人の実例を見ていきましょう。
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C型肝炎の新しい治療法
Oさん(63歳女性)は23年前、子育てが落ち着いたタイミングで市の健康診断を受けました。健康に不安はなかったというOさんでしたが、血液検査の「HCV抗体」という項目で陽性が出ました。これはC型肝炎ウイルスに感染している可能性を示すものです。
主に血液を介して感染するC型肝炎ウイルスは、感染力はそれほど高くないそうですが、感染すると肝炎に進行することがあります。
その後、Oさんは詳しい検査でC型肝炎ウイルスに感染していることがはっきりとわかったそうですがまだ自覚症状がなく、肝機能数値にも異常がなかったので、半年に一度血液検査をして様子を見ることになりました。
しかし13年前、肝機能数値に異常が出てしまいました。慢性肝炎の疑いを見るための「ZTT」という値が基準範囲を超えていたそうです。
ウイルスが肝臓に入ってくると、免疫細胞がウイルスの増殖を抑える目的で肝臓の細胞を破壊していきます。その後、再生能力が高い肝臓の細胞は自然と再生していくのですが、Oさんの肝臓ではウイルスの数が増えていたため、免疫細胞の活動が追いつかない状態になっていました。
慢性肝炎や肝硬変、肝臓がんに進行していく可能性があることを知ったOさんは不安感に襲われたまま、インターフェロンという薬で免疫力を高める治療をはじめました。
インターフェロンは免疫細胞の働きを高めるタンパク質の一種です。免疫力が高まるため、ウイルスが増えてもしっかりと対策することができるそうです。
インターフェロンの注射は週に1度を計48週行う必要があるため、まずは2週間入院し、インターフェロン治療を受けることになりました。しかし、治療開始後から37度の微熱状態が続き、口内炎ができて食事が取れなくなり、吐き気も24時間続くような状態が続いたため、ほとんど寝たきりになってしまったそうです。
これらのつらい副作用から、インターフェロンによる治療は中断されました。
つらい状態が続いていましたが、2015年11月に新しい抗ウイルス薬が登場し、それを1日1錠、3ヶ月間飲み続けたところ、C型肝炎ウイルスが肝臓からいなくなったそうです。
抗ウイルス薬は副作用が少なく、ウイルスを排除する効果が高い薬です。ウイルスはタンパク質を使って増殖するのですが、抗ウイルス薬は増殖に必要なタンパク質の作用を抑え、増殖を防ぐそうです。
また、薬によって肝臓の細胞が破壊されることがないため、副作用が少ないそうです。
抗ウイルス薬には成分の配合が違う数種類の薬があります。
佐賀大学医学部附属病院の江口有一郎氏によると、遺伝子RMAウイルスであるC型肝炎ウイルスには数種類の型があるため、感染しているウイルスの型によって薬を使い分けたり、他の病気で服用している薬との飲み合わせも考慮して主治医が判断したりするそうです。
3〜6ヶ月継続して飲み続けることでウイルスを減らして、その後は月1回の血液検査で経過観察をしていき、肝炎ウイルスが検出されなければ「治った」と診断されるそうです。
ただ、傷んだ肝臓は時間をかけて戻っていくので、その後も病院へ行く必要はあるそうです。
ちなみに、新しい抗ウイルス薬が登場した今でも、抗ウイルス薬に対する耐性ウイルスができてしまった場合などにはインターフェロンを用いるそうです。また、前掲の図の一番下にある「ソホスブビル」と「リバビリン」が配合された薬を使えない人で腎臓病がある場合などにもインターフェロンが使われるそうです。
昭和60年頃までに手術や輸血などの医療行為を受けた人、血液製剤を使った人など(年齢で言うと45歳以上が目安)は、肝炎ウイルスに感染している可能性があるそうです。以前は学校の予防接種などでも針を使いまわしていたそうですから、多くの人が検査を受けるべきです。(現在は針を使い回すことはないので、医療行為で感染することは基本的にないと考えてよいそうです。)
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B型肝炎
感染力が強いB型肝炎には、増殖を抑える「核酸アナログ」という薬はあっても、C型肝炎ウイルスのようにウイルスを死滅させる薬は登場していません。
よって、B型肝炎は特に「予防が大切」ということになります。
有効な予防策として確立されているのが「B型肝炎ワクチン」です。
あらかじめB型肝炎ウイルスの一部を注射することで体内に抗体を作ります。半年の間に計3回接種して抗体を作っていくのですが、3回で抗体ができない場合はできるまで接種していきます。
これまでは1回に5000〜8000円の費用が必要でしたが、2016年10月から0歳児には定期接種となり、無料で受けられるようになりました。
WHO(世界保健機関)では出生後すぐにB型肝炎ワクチンをうつことを推奨していました。ワクチン接種の結果、世界各国で子どもの肝臓病が減ったという報告があったため、日本でもこのような動きになったそうです。
B型肝炎ワクチンは、大人なら内科、子どもなら小児科へ行くとだいたいどこでも受けられるそうです。(事前に問い合わせると確実でしょう。)
4歳頃までにB型肝炎ウイルスに感染すると肝炎が慢性化しやすいといわれているそうで、ワクチン接種後は20年以上抗体が続くと考えられているそうですから、できるだけ早いうちに接種するようにしましょう。(20年近く経って抗体がなくなってしまっても体は覚えていて、また1本うてばすぐに十分な量の抗体ができるそうですから、早く接種するに越したことはありません。)
近年、海外から新しいB型肝炎ウイルスが入ってきていて、そのウイルスは性交渉で感染する場合があるそうですから、その意味でもワクチン接種の必要性は高まっています。
・B型肝炎の治療
インターフェロンを用いた治療では、多く発熱や倦怠感などを伴います。
核酸アナログは増殖を防ぐ薬ですが、胎児へ影響する可能性もあるので誰にでも使えるというわけではありません。
副作用にも耐えられるような若い人でウイルスを減らしておきたい場合はインターフェロンを使う、などというように、人によって使う薬を変えていくそうです。
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肝炎ウイルス検査
先述の通り肝炎は症状がないので、肝炎ウイルス検査を一度は受けるべきです。
江口氏は「国民全員が一度は受けて」と話していました。
血液検査で見るべき項目としては以下のとおりです。
HBs抗原…B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを見る項目
HCV抗体…C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを見る項目
これらは人間ドックなどでは検査項目としてだいたい盛り込まれているそうですが、自治体等の健康診断では含まれていないこともあるかもしれないそうですから、医師に肝炎ウイルス検査を目的としていることを伝えて検査を受けると確実だそうです。
また、健康診断の各項目の意味を知っていないと陽性が出ても症状がないということでそのまま放置してしまう人もいるそうなので、最近血液検査を受けた方はあらためて検査結果の紙を見返してみるとよいのではないでしょうか。
・佐賀県での取り組み
佐賀県は肝臓がんの死亡率が17年連続で1位となってしまっているそうです。
そこで、佐賀大学と協力してお祭りなどで無料血液検査を実施し、陽性の場合は精密検査の費用を一部助成するなどの施策を講じました。
その結果…
徐々に患者数が減少しています。
他にも、肝炎に関する相談にのる専門職である「肝炎コーディネーター」を用意して、患者さんのケアを手厚くするなどもしているそうです。
肝臓がんは「西高東低」と言われ、西日本に多い傾向があります。また、高齢者に感染者が多いという傾向もあります。日本全体では患者数が減っていってはいるのですが、やはり検査が重要であることに変わりありません。
確実に検査を受けるためには、まずはお住まいの自治体に問い合わせて、検査を受けるようにしましょう。
検査で陽性が出てしまったら
江口氏によると、まずは専門医に相談するとよいそうです。
自分に適した治療を決めて、次に進んでいきます。
全国には「肝疾患診療連携拠点病院」という、厚生労働省が認めた70の医療機関がありますので、こちらのサイト
(http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/060/hosp.html)
で最寄りの拠点病院を探して受診すると良いでしょう。
まとめ
今回の特集を見て、肝炎ウイルスの検査を受けることの重要性がよくわかりました。
検査を受けて陽性が出ても、医師から説明を受けて展望が見えれば恐怖心が小さくなることも重要な点です。
検査を受けられていない大人の方も、機会を作って検査を受けるようにしましょう。