腎臓病の早期発見と予防法~チョイス@病気になったときより

腎臓病は、罹っている人が身近にいないと、いまいちピンとこない病気かもしれません。
しかし、メタボリックシンドロームがきっかけで腎臓がわるくなることもあるそうで(http://www.asahi.com/articles/ASJ9R4DMHJ9RUBQU00L.html)、日本人の8人に1人は慢性腎臓病になっており、その数も年々増加しているそうです。
慢性腎臓病が進行すると人工透析や腎臓移植が必要になり、脳卒中や心筋梗塞などのリスクも高まってしまうそうです。
腎臓病はふたつの点でタチが悪く、一度悪くなってしまうと元に戻ることがない上に、発症するまで自覚症状がないという特徴があります。

 

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腎臓とは

腎臓は、そら豆のような形をしていて、色はあずき色をしています。
大きさは大人の握りこぶし1つ分程度で、背中側の腰より少し上あたりにあるそうです。
体内の老廃物を尿として排出する役割を担っており、1日に150リットルもの血液をろ過しています。

気づいたときにはもう…

腎臓病について特集していた『チョイス』ではIさん(61歳女性)の事例を紹介していました。
Iさんの腎臓はすでにまったく機能しておらず、22歳の頃から週3回の人工透析を欠かさずに続けているそうです。
「人工透析」とは、血液の中の不純物を取り除く治療で、体格や年齢にもよりますが1回最低でも4時間はかかるといいます。
腎臓病の最初の兆候は高校生の頃にあったそうで、検尿の際に「タンパク尿で、赤血球が出ている」と言われたそうです。

タンパク尿とは、過分にタンパク質が含まれている尿のことをいいます。
正常な腎臓は、血液を濾過して老廃物を体外に排出しつつ、体に必要なタンパク質は血液中に戻すというはたらきをしているのですが、腎臓が損傷していると濾過機能が低下し、タンパク質まで尿に漏れ出てしまうので、タンパク尿になってしまいます。

しかし、Iさんはその検査結果を受けても、自覚症状もなかったため腎臓が悪いとは思わず放置してしまったそうです。それから数年して短大を卒業し、就職して半年が経った頃、足がむくむことが多くなりだるさも続いたIさんは詳しい検査を受けました。
その結果「慢性腎臓病」と診断され、即入院となりました。その後は2年ほど入退院を繰り返し、22歳の時に透析治療に入ったそうです。

Iさんは、タンパク尿とわかっていながら放置したことを今でも後悔していました。
「腎臓に対する恐怖はなかった。自覚症状がないのが一番大きな原因で、自分だけは大丈夫という気持ち」だったそうです。

 

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人工透析について

国立熊本医療センターの富田正郎氏によると、慢性腎臓病が発病してもすぐに透析が必要になるということではないそうです。5年から10年、長い人では20年や30年経って腎臓の働きが弱ってくると、(腎臓移植をしない限り)透析を受ける必要が出てくるのです。
仮に、人工透析が必要な人が透析を受けないと、「尿毒症」という病気を併発してしまいます。尿毒症になるとまず尿が出なくなり、体内に水が溜まって5〜10キロ体重が増えてしまいます。お腹だけでなく肺にも水がたまることがあり、自分の水で“溺れる”ような状態になって最悪の場合死亡してしまいます。また、尿毒素が体内にたまっていくのでアルコール中毒のようにムカムカした感じがして食事が取れなくなったり、嘔吐したりして次第に昏睡状態に陥ります。他にも意識障害やけいれんなど様々な症状が現れるので、人工透析は必ず受けなければいけません。

もちろん、人工透析を受けなければならない状態にならないことが一番で、そのためには腎臓の異常を少しでも早く見つける必要があります。
その方法として真っ先に挙げられるのが「尿検査」でしょう。

・尿検査
尿をしらべてタンパク尿が出ていないかを調べます。
ただし、例えば激しい運動をしたあとや、風邪を引いて熱が出たときなどには健康でもタンパク尿が出ることがあるので、再検査をして何回も繰り返しタンパク尿が出続ける場合には慢性腎臓病が疑われます。
タンパク尿は年齢問わず突然なることがあるため、学校でも検尿が実施されているのです。その機会に異常が見つかり早期治療が施された結果、透析を避けられた人も多いといいます。

さらに、血液検査でも腎臓の異常を見つけることができます。

血液検査

続いて登場したUさん(70代男性)は、腎臓病の悪化を食い止めているといいます。
腎臓の異常を知ったのは7年前の血液検査でした。「クレアチニン」という検査項目に異常が出たそうです。
腎臓が正常な働きをしていれば、クレアチニンという老廃物を血液中にほとんど戻すことなく排尿してくれます。しかし腎臓の機能が落ちていると濾過機能の低下によって血液の中に再び流れていってしまうそうです。
このクレアチニン検査は一般の健康診断には入っていないそうですが、Uさんの居住している熊本市では8年前から腎臓病対策に力を入れていたそうで、Uさんはクレアチニンの異常を知ることが出来ました。

熊本市は透析患者数の増加が問題になっていました。
そこで健康診断にクレアチニン検査を取り入れたところ、患者数が着実に低下していったそうです。


(ちなみに、熊本で透析患者が多い理由はよくわかっていないそうです。)

チョイス@病気になったときより

検査を受けた際のUさんのクレアチニンの値は「1.1」でした。
この数値からは、以下の表を用いると腎臓の機能を詳しく知ることができます。

チョイス@病気になったときより

横が年齢を、縦がクレアチニンの数値を示しています。
それを結んだところにある数値を見るのですが、黄色の部分は“黄色信号”で、下の赤い方に行くに連れて腎臓が悪くなっている、ということを表しているそうです。
この表で見てみると、当時のUさんの濾過能力は51.3でした。
腎臓の濾過能力を示すこの数値は「eGFR」と呼ばれ、Uさんは健康な人の半分まで落ちてしまっていました。
eGFRからわかる腎臓の状態は以下の通りです。

チョイス@病気になったときより

60未満はステージ3に該当し、この状態が長く続くと慢性腎臓病と診断されます。放置するとどんどん落ちていくのですが、30以下になっても症状がない人が多く、出てもむくみ程度なんだそうです。15以下でも症状が出ない人はいて、それでも10以下に落ちると人工透析が必要になってしまいます。
さらに、ステージ3からは食事で取るタンパク質の量にも制限が加わり、ステージ4からはカリウムの量にも制限が加わるといい、野菜や果物まで控えなければならなくなるつらい生活が待っています。

これらの事実を知ったUさんは、3ヶ月に1回クレアチニン検査を受けるようにしました。
その後6年間のUさんの検査数値を見てみると…

チョイス@病気になったときより

クレアチニン値もeGFRもともに横ばい(現状維持)となっています。年齢に伴って低下していっても仕方ないところを、しっかりと維持しています。かかりつけの医師も「大きな問題なく過ごせるのではないか」と話していました。

Uさんが腎機能を維持している秘訣はなんなのでしょうか?
番組ではUさんが行うようにした日常生活での習慣も紹介していました。

腎臓機能を維持する習慣

Uさんは「減塩」を心がけるようにしたそうです。
味噌汁は具だくさんにして飽きないようにした上で、自分の分だけお湯を加えて薄めたそうです。これで塩分を0.3%(0.45g)ほどに抑えることができ、「飲む量は多くても1日2杯まで」にしたそうです。
サラダのドレッシングも、トマトを黒酢で漬けたものの汁に変えるなどして、1日の塩分摂取量を6グラム以下に抑えました。

減塩をした理由には、Uさんが高血圧であることも関係があります。
血液をろ過するのは、腎臓の中の細い血管が集まる「糸球体」という場所です。

チョイス@病気になったときより

血圧が高くなると糸球体の血管の壁に圧力がかかり、傷がついて濾過機能が低下してしまうので、腎臓病が悪化してしまいます。
減塩実施後は…

チョイス@病気になったときより

数値もキープできています。
慣れた味を変えるのはつらそうですが、Uさんは「1年したらもう慣れた」と話していました。

慢性腎臓病を引き起こす要因

以下のような要因で慢性腎臓病は引き起こされます。

・ 高血圧
・ 喫煙
・ 糖尿病
・ 肥満
・ 脂質異常症

さらに「高齢者」や「家族歴」なども要因となりますが、特に注目すべきは箇条書した5つです。
これらには「血管を傷つける」という共通点があります。

ちなみに、富田氏によると透析の一番の原因はダントツで糖尿病だそうです。
腎臓が悪くなると運動も制限せざるを得ず、糖尿病の治療自体も難しくなります。
これらにつながる行為や習慣はなくすようにしましょう。

・塩分量の目安
慢性腎臓病や高血圧の人は1日6g未満が目安です。
たとえばカップ麺は、ナトリウム量が大体2〜3グラムであることが多いそうです。
ナトリウム1g=塩分2.54gなので、カップ麺ひとつには塩分がおよそ5〜8g入っているということになります。
日本人の1日の平均塩分摂取量は、男性10.9g、女性9.2gなのですが、これは摂り過ぎです。
理想は健康な人でも男性8g未満、女性7g未満とされています。
高血圧やクレアチニン値に異常がある人は6g未満に抑えるべきだそうです。

さまざまな食品の塩分含有量を調べてみると…

・ パン(ロールパン、クロワッサンなど) …1.3g
・ ざるそば …4.5g
・ カレーライス一人前 …3.3g
・ 乾燥わかめ10g …2.4g
・ 梅干し13g …2.9g
・ アジの開き小1枚(60g)   …1.2g

「この食べ物にも塩分が!?」というような食品や、「意外に少ないな…」と感じる食品など、調べてみるとたくさんの発見があります。
自分で思っているよりも食塩を摂りすぎているかもしれませんので、食事の記録をとって塩分摂取量を把握するとよいでしょう。

減塩のコツ

塩分量は画像の定食で約4.2gになります。

チョイス@病気になったときより

これを減塩してみましょう。
肉は、焼く前に片栗粉をまぶせば少ない調味料で済むので、1g減塩できます。
酢の物は大きく切って表面積を広くすれば0.5g減塩することができます。

チョイス@病気になったときより

味噌汁の具は、塩を使わずにごま油で炒めた野菜にし、具のかさを増やして汁を減らしてみると、0.6gの減塩になります。
このように工夫をするだけで、トータル2.1gの減塩ができるのです。

他の料理でも塩分量に注目して、減塩を考えてみましょう。

 

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まとめ

番組の中で富田氏は、体脂肪計がついている体重計や血圧計を用いて現状を把握することを勧めていました。
その上で尿検査やクレアチニン検査を受けて早期発見を心がけるようにすれば、腎臓病を見逃してしまうことはまずないでしょう。

※40歳未満であれは年1回の尿検査で大丈夫ですが、それ以上であれば1度は血液検査でクレアチニンも調べるほうが確実とのことでした。
クレアチニン検査は、すべての自治体の血液検査に含まれているわけではないので事前の確認が必要です。人間ドックを受ける場合は必ず含まれているそうですが、自由診療になると5000〜10000円程度の検査費用がかかるようです。


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