「隠れ貧血」を知っていますか?
老化や認知症ではないのに物忘れがひどくなる、慢性の頭痛など、さまざまな体の不調が起こるのが隠れ貧血。厄介なことに隠れ貧血は、通常の健康診断では発見されない病気なのです。
先日の『その原因、Xにあり!』では、隠れ貧血の特集をしていました。推定1000万人もの日本人女性が抱えている隠れ貧血。その症状や原因、対策方法を脳神経外科医の工藤千秋先生(くどうちあき脳神経外科クリニック院長)が解説していました。
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人間の体に鉄分が必要な理由
血液中で酸素と結びつき、全身に運ぶという役割がある「鉄」。鉄が足りなくなり、酸素が十分に運ばれなくなると、脳や内臓にさまざまな不調が起こるのです。
人間の体は鉄を作り出すことはできません。ですから、食べ物から鉄分を摂取する必要があります。
フェリチンの鉄不足―隠れ貧血とは?
鉄不足が原因の病気として広く知られているのが「(鉄欠乏性)貧血」。今回紹介するのは、通常の健康診断では分からない「隠れ貧血」です。
食べ物から摂取した鉄は、まず血液中の「ヘモグロビン」に運ばれ、残りは肝臓にあるタンパク質の一種で「鉄の貯蔵庫」と呼ばれる「フェリチン」に運ばれます。健康診断で貧血と診断されるのは、フェリチンではなく、ヘモグロビンの鉄不足なのです。
鉄を十分に摂取しないとヘモグロビンの鉄が足りなくなります。すると、フェリチンから鉄が運ばれ、フェリチンの鉄が減ってしまいます。さらに鉄不足が進むと、フェリチンは、ヘモグロビンに供給する鉄の量を自動的に減らしてしまいます。その結果、体内に運ばれる酸素の量が少なくなり、酸素不足になった臓器が不調を起こすとのことです。
フェリチンの鉄の量が通常の8割から3割しかない状態が隠れ貧血で、3割より少なくなると貧血と診断されると工藤先生が説明をしていました。
その原因、Xにあり!より
厚生労働省がまとめた「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書によると、1日に推奨する鉄の摂取量は、成人男性で7.0mgから7.5mg、月経なしの成人女性が6.0mgから6.5mg、月経ありの女性が10.5mgとのことです。
(数値は、報告書のP335の表より)
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隠れ貧血が健康診断で見つからない理由
隠れ貧血は、健康診断や人間ドックでは見つかりません。通常の健康診断や人間ドックの血液検査では、フェリチン検査はせず、血液中の鉄(ヘモグロビン)の数値しか診断されないためです。
ヘモグロビンが正常でも、フェリチンの鉄が不足しているケースはたくさんあります。日本人女性の1000万人以上が隠れ貧血だと考えられているのです。今回、隠れ貧血の経験者として番組で紹介されていたHさん(46歳女性)も、通常の健康診断で貧血と診断されたことは一度もなかったそうです。
フェリチンの鉄の量は、通常の血液検査の検査項目には入っていませんが、病院で依頼をすれば血液検査で調べてもらうことができると工藤先生が説明をしていました。
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隠れ貧血の症状
隠れ貧血の初期症状には、物忘れ、頭痛、疲労感、肩こり、冷え性などがあります。
Hさんは、まず頭痛が頻繁に起こり、疲れがとれにくくなりました。また風邪を引きやすくなったり、けがをしたりすることも増えたそうです。健康診断で異常のなかったHさんは、これらの症状を疲れやストレスと考えていました。
その後、物忘れがひどくなり、言葉がすっと出なくなってしまいました。また、物忘れの症状がある人は、認知症を疑う場合もあります。Hさんも若年性アルツハイマーを疑って、医療機関でMRI検査を受けたそうです。
隠れ貧血の人が、認知症と診断され薬を処方されても、隠れ貧血は治らないので注意が必要になります。
隠れ貧血が進行すると、爪に水虫ができるなど手足にカビが生えたり、足がムズムズして眠れなくなったりすることもあるそうです。また、異食症(氷、チョーク、土など食べ物ではないものを食べる病気)が発症することも。工藤先生によると、頻繁に子供が学校に忘れ物をしてくる場合は、貧血の可能性があると説明していました。
貧血の予防には「アサリの水煮缶」がオススメ!
鉄は食べ物から摂取するしかないので、鉄不足の解消には食生活の改善が重要。Hさんも隠れ貧血を治療するために、鉄分を多く含んだ食事と鉄のサプリメントを摂取したとのことです。
管理栄養士の小川浩子さんによると、貧血の予防には、鉄分を豊富に含むあさりがオススメだそうです。小川さんは、生のアサリよりも手軽に購入できる水煮缶を勧めていました。
あさりの水煮缶100gに含まれる鉄の量は29.7mg。これは、豚レバー(13.0mg)や鶏レバー(9.0mg)よりもかなり多いのです。
その原因、Xにあり!より
また、あさりの水煮缶は、買い置きができ、生のアサリよりも値段が安いことも、貧血予防にあさりの水煮缶を勧める理由だと小川さんが説明をしていました。
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鉄分たっぷり!アサリの水煮缶を使った「クラムチャウダー」
鉄分だけを摂取しても、鉄分はきちんと体に吸収されません。鉄分の吸収を高めるには、タンパク質やビタミンCが必要です。そこで、番組では、鉄分と鉄分の吸収を高める成分を豊富に含む「クラムチャウダー」のレシピを紹介していました。
クラムチャウダーには、タンパク質を含む牛乳が入っています。また、あさりの水煮缶の汁には、ヘモグロビンを作るのに必要なB12が豊富に入っているそうです。さらに、ビタミンCとタンパク質が豊富な枝豆を加えることで、鉄の摂取に最適な1品となるわけです。
<材料(2人分)>
あさりの水煮缶 …1缶(汁も使う)
バター …15g
にんにく …1片
じゃがいも …1/2個
人参 …1/2個
玉ねぎ …1/2個
ベーコン …2枚
枝豆 …適量
小麦粉 …大さじ2
牛乳 …400mg
スープの素 …小さじ2
<作り方>
1.鍋でバターとにんにくを熱します。
2.香りがついたら、一口大に切った野菜とベーコンをいためます。
3.野菜とベーコンに火が通ったら、小麦粉、牛乳、スープの素を入れて味を調えます。
4.あさりの水煮缶の汁を加えます。
5.あさりの身を入れます。
6.最後に枝豆を入れて完成です。
鉄分不足にならないために、食事の管理はしっかりしたいですよね。貧血の予防や改善に役立つレシピ本には、レシピだけではなく食生活の管理方法の説明もあります。
最新版 貧血の人の基本の食事 (まいにちの健康レシピ)
検見崎 聡美
まとめ
日本人の女性の多くが隠れ貧血だと考えられています。とくに40代から50代の女性で、頭痛や物忘れが気になる場合は、隠れ貧血を疑ったほうが良さそうですね。隠れ貧血が体調に与える影響は大きいです。日常から鉄分の摂取量など食事のバランスには気をつけるようにしましょう。