歯を失う原因として歯周病に次ぐ第二位となっているのが「虫歯」です。
虫歯の治療には「歯をドリルで削る」というようなイメージがあって歯科受診を嫌厭する人も多いと思いますが、最近ではコンピューターで詰め物や被せ物を設計したり顕微鏡を使ったりなどをして、簡易かつ確実に治療を行うことができるようになってきているそうです。
今回は、虫歯に関する知識や最新治療について紹介していた『きょうの健康』を中心に、虫歯に関する情報をまとめていきたいと思います。
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近年の傾向
日本大学歯学部附属歯科病院の病院長である宮崎真至氏によると、子供の虫歯は近年減少傾向にあるといいます。
その一方で、大人の虫歯には以前よりも注意が必要になっているそうです。55歳以上で虫歯が起こりやすくなり、寝たきりや病気、要介護などが重なると口腔ケアが不十分になり、虫歯になりやすくなってしまいます。
虫歯の原因
虫歯は「プラーク(歯に付着したネバネバしたもの)」が原因になって起こります。プラークは口内細菌とその代謝物の固まりで、プラークの中の虫歯菌が酸を出すと、歯が溶けてしまい、虫歯になります。
プラークは糖分を摂取し過ぎたときや歯磨きなどのケアが不十分な場合に増えていくので、歯並びが悪い人などは虫歯になりやすくなります。
宮崎氏によると、虫歯になりやすい箇所は以下の3箇所だそうです。
・歯と歯の間
・歯の根元
…表面がデコボコしているためプラークが付きやすいそうです。加齢によって歯茎が下がってきて、歯茎に守られていた弱い部分が虫歯になりやすくなります。
・過去に治療した箇所
…詰め物には寿命があります。時間が経つとすり減ったり、欠けたり、縮んだり、膨らんだりするので、その隙間から菌が入り、虫歯になります。
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早期の虫歯の治療
早期の虫歯は削らずに治療することができます。
虫歯の前段階である「ホワイトスポット」という、歯からカルシウムイオンが溶け出した状態もあるのですが、これも削らずに治療をします。
きょうの健康より
このまま放置しておくと虫歯になってしまいますが、溶け出した箇所にカルシウムを取り込ませるような薬を塗ることで歯を回復させることができるそうです。
歯を削らなければならない場合
歯を削る治療では、以下のような治療が施されます。
- 歯磨きの指導
- (虫歯が小さい場合)「コンポジットレジン」の詰め物をする
- (神経まで到達している場合)神経を取る
- (欠損が大きい場合)ブリッジ・入れ歯・インプラントなど
コンポジットレジンについて
コンポジットレジンというのは、特殊なプラスチックのことです。
虫歯を削り取って、接着剤とともに詰めていきます。
きょうの健康より
その後に特殊な光を当てると、コンポジットレジンが固まります。
最後に表面をきれいに整えると、見た目には詰め物をしているようには見えなくなります。
きょうの健康より
10〜30分程度で治療することができるそうです。
詰め物をコンピューターでつくる
CAD/CAMと呼ばれる装置で、詰め物を設計することができます。
きょうの健康より
デザインは5〜10分で完了し10分前後で削り出されるそうなので、1日で被せ物まで完了させることができます。
素材や歯の部位によっては保険適応されるそうです。
神経をとる
最近では、正確に行うために「マイクロスコープ」という歯科用顕微鏡を使って神経を取るそうです。
きょうの健康より
マイクロスコープで歯の根っこを見ます。画像は神経が通っていた管です。
奥まで見ることができるので、神経の取り残しがない確実な治療が可能になります。
一部は保険の対象になるので、歯科医に相談してみてください。
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虫歯の予防
虫歯の予防は、日常生活の中でできることが大切になります。
正しい歯磨きがもっとも有効なので、フロスなども使ってしっかりとプラークを落とすようにしましょう。
宮崎氏は「歯ブラシ、歯磨き粉の特徴を活かす磨き方を」とアドバイスしていました。
甘いものや酸性のものをダラダラと食べないことも予防につながります。
柑橘類や炭酸飲料、酢の物などの酸性のものは、「酸蝕歯」を誘発させます。
きょうの健康より
歯の角が溶けている事がわかると思います。歯は酸に晒され続けると薄くなったりすり減ったりするのです。
酸蝕歯は虫歯、歯周病に続く第三の疾患として注目されており、拒食症や過食症など、胃液に歯が晒されやすい人もなりやすいそうです。
歯が欠けたり黄色っぽく見えたり、透けて見えたり、しみたりなどの症状が重なっていたら歯科を受診するようにしましょう。
宮崎氏は「食べ方が大切。ダラダラ食べるのがよくない。(酸性のものが)長く口内にあると溶ける傾向にある」と指摘していました。
間食が多い人は、食べた後に口をゆすぐなどの予防を心がけましょう。
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フッ化物洗口
有効な虫歯予防法として「フッ化物洗口」という方法もあります。
フッ化ナトリウム溶液でうがいをする方法で、永久歯のむし歯予防手段として注目されています。
多くの自治体の保育園・幼稚園、小中学校で集団実施されていますが、成人が個人的に家庭で行うこともできますので、新潟県が示している基準などをもとにその手順を簡単にご紹介します。
- 口に含んでブクブクとうがいすることができる量のフッ化物溶液を準備する。
- すべての歯に溶液が行き渡るようなイメージで1分間ブクブクとうがいをし、吐き出す。
- その後30分間は、うがいをしたり飲食物を摂ったりしないようにする。
※ 溶液の量の目安は、保育園児・幼稚園児で5〜7ml、それ以上なら10ml。
※ 行う頻度は保育園児・幼稚園児で週5回、それ以上で週1回とされていますが、厚生労働省は「家庭では毎日行う」と指針を示しています。
※ タイミングは就寝前の歯磨き後がいいようです。
フッ化物洗口の効果
フッ化物洗口を児童に集団実施させているのは、子どもの歯の虫歯に対する抵抗性が未成熟であるためです。(第一大臼歯の萌出時期に合わせて開始し長期継続することで約30~80%の虫歯予防効果があることが報告されています。)
その一方で、大人にも効果があります。
18~35歳(平均年齢21.5歳)の陸上自衛隊員を、フッ化物洗口を行う91人と行わない84人に分けて2年間の経過を見た実験では、38.2〜47.5%の虫歯予防率が確認されたそうですから、習慣として普段の歯磨きの後に行うようにすると良いでしょう。(歯磨きをしないと歯周病のリスクが上がってしまいます。)
安全性について
微量のフッ化物が口腔内に残ることを懸念する声もありますが、たとえば園児が週5回洗口を行う場合では口腔内残留率は約10%で、約0.2mgのフッ化物が口腔内に残っています。これはお茶をコップ1~1.5杯飲んだときに摂取するフッ化物の量と同等なので心配ありません。
また、仮に1回分の洗口液を誤ってすべて飲み込んでしまったとしても、急性中毒の心配はありません。
参考:
フッ素化物洗口の実施方法
フッ化物洗口
まとめ
宮崎氏は最後に、定期的な検診を推奨していました。
口内を完璧に綺麗に維持するのはほぼ不可能なので、クリーニングや検診を定期的に受けるようにすべきです。
すでに虫歯になってしまった場合で歯医者にかかることを避けている方は、ご紹介したように治療法が進化していますので、1日でも早く診てもらうようにしてください。