脱水、切り傷、ハチ刺され~アウトドアのトラブル対処法~チョイス@病気になったときより

夏休みに入ると、外で遊ぶ機会が増えますよね。
いつもとは違う環境の中なので、普段なら遭わないようなトラブルに見舞われることも想定しなければいけません。
今回は、アウトドアにおけるトラブル対処法を紹介していた『チョイス@病気になったとき』を中心に、応急処置に使える情報をまとめていきたいと思います。

 

スポンサーリンク

 

アウトドアでのトラブル

キャンプなど、屋外で遊んでいると、以下のようなトラブルに見舞われることがあります。
それぞれ、最悪の場合には死につながることもあります。

・切り傷   →失血死や感染症
・やけど   →感染症や壊死
・虫刺され →ショック死や感染症
・熱中症  →意識障害

帝京大学医学部附属病院救命救急センター長の三宅康史氏は、アウトドアにおけるトラブルについて「アウトドアのトラブルは、すぐに医療機関にかかることができない。さらに衛生環境が悪い場合が多いので、応急処置が重要」と指摘していました。
次節からは、トラブルにあった際の対処法についてご紹介していきます。

 

スポンサーリンク

 

切り傷

Mさん(28歳男性)は以前、キャンプで刃物を扱っている際に指を深く切ってしましました。「あまり痛みはなかったが中の肉が見えたので、浅い傷ではないなと思った」というMさんはまず、傷口を心臓より高い位置に上げました。それから水道水で流し、消毒液をつけました。その後、包帯で圧迫して止血し、病院に行くまでずっと圧迫していたそうです。

この処置を聞いた三宅氏は「消毒液を使うことはよくない」と指摘していました。消毒液を傷口に直接かけると、傷を治そうとしている白血球なども殺してしまうので、かえって治りが悪くなるそうです。(現在では、消毒液は手術前にお腹を拭くなど、傷口でない場所を滅菌することのほうが多いそうです。)

切り傷を負った際の正しい対処は、以下のような手順です。

チョイス@病気になったときより

切り傷を負ってしまった際は、水道水でよく洗うことのほうが重要ですが、近くに水道水が無い場合もありますよね。
そういうときには未開封の飲料水をつかって洗うのが一番いいのですが、それもなければ未開封のお茶などを使うようにします。それもなければ川の水などになりますが、やはり、なるべく清潔な水で洗うべきであるということを覚えておきましょう。(口の中も雑菌まみれなので、舐めるのはよくありません。)

圧迫止血は、最低でも10分くらいはしっかりとおさえておく必要があるそうです。
10分経っても止まらない場合は急いで医療機関へ行くようにしましょう。傷がひどいと最悪の場合には壊死を起こす可能性もあるそうです。

三宅氏は、「高齢者で血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は、病院に行くまでずっと圧迫しておいたほうが安全」と指摘していました。

ねんざ

Mさんは、ハイキングでデコボコの道を歩いていたときにも「ねんざ」のトラブルに遭ったそうです。
そのときはまず、近くにあった岩に腰を掛けて、足の状態を確かめるために足首を回し、痛みの確認をしたそうです。それから水筒の中の氷で患部を冷やし、手ぬぐいで足首と足を動かないように固定して、ハイキングを再開したそうです。

これを聞いた三宅氏は「痛みの確認はやらなくてよかった。安静にして痛みを加えないほうがいい」と指摘していました。整形外科医が診察の際に痛みを確認するのは問題ありませんが、現場でここまでやる必要はないそうです。

ねんざの正しい応急処置は、安静にして冷やすことです。冷やす時間は10〜15分が目安になります。
それから患部を軽く圧迫しながら固定して、捻挫した場所を心臓より高い場所に上げます。(圧迫は怪我のあとに腫れてくるのをおさえるのが目的なので、サポーターと同程度の圧迫で十分、とのことでした。)

足首の簡単な固定法には添え木などがありますが、折り畳み傘や空の2リットルのペットボトルなどを使うこともできます。

チョイス@病気になったときより

足をタオルなどで巻いてからペットボトルに入れて、それから包帯を巻くと圧迫にもなっていいそうです。

やけど

Sさん(27歳女性)はキャンプで飯盒(はんごう)を使ってご飯を炊いている際に、やけどを負ってしまいました。炊けているかどうかを確認しようと飯盒の蓋を開けると熱い蒸気が一気に出てきたそうで、それが軍手と長袖の間の腕の内側に当たってしまいました。

Sさんはすぐに水で冷やしたそうですが、三宅氏はこれを「正しい応急処置である」と指摘していました。

チョイス@病気になったときより

Sさんのように軽いやけどは赤くなるだけなので簡単に水で冷やせますが、中程度の火傷になると水ぶくれができてしまい、水を直接当てると水ぶくれが破けてしまう可能性もあるため、ポリ袋などをかぶせて患部を保護しながら冷やすなどの工夫が必要になります。

顔や体幹部にやけどを負ってしまった場合は水を直接かけることが難しいので、保冷剤や氷水をビニール袋に入れて当てるようにしましょう。
服を着たまま火傷をした場合は、服を脱がす際に皮膚を痛める可能性があるので、脱がさないほうが安全だそうです。そのまま氷嚢などをあてて冷やすようにしましょう。

冷やす時間は10〜15分が目安で、中程度以上の場合は必ず医療機関へ行くようにしましょう。

ハチに刺されてしまった場合

Sさんはハチに刺されたこともあるそうです。ハイキング中にハチの巣に触れてしまい、わっと出てきたハチの大群に取り囲まれて逃げましたが、首の後ろ側を刺されてしまいました。

Sさんの当日の服装は黒いシャツで、さらに甘い花の香りがする制汗剤を使っていました。これらの要素もハチを刺激したと考えられるそうです。

たかがハチと侮ることはできません。ハチに刺されることで年間20人前後の死者が出ているのです。
ハチに刺されることで起こる現象について岡恵子医師が解説していた話によると、1度ハチに刺されるとその毒に対して体内で抗体ができるそうです。その後にまたハチに刺されるとアレルギー反応が起き、蕁麻疹や手足のしびれ、血圧の低下、さらには意識がなくなることもあるといい、最悪の場合は気道がつまって窒息死をすることもあるといいます。

これらの反応を「アナフィラキシーショック」といいます。重篤な場合は15分以内にこの反応が起こるそうで、人によっては5分以内に亡くなるということもあるそうです。

最初の1回でショックを引き起こす人もいれば2回目に刺された時にショックが起こる人もいるなど体質により様々なので、何度刺されてもショックが起きない人もいるそうです。

ショックが起きたときはむやみに動こうとせずに安静にしているのが一番で、足を高くして横になると更にいいそうです。そのときは何ともないからと油断してはダメで、すぐに救急車を呼ぶことも忘れないようにしましょう。

 

・刺された場合の応急処置

ハチに刺されたらまず、患部に毒針が残っているかどうかを確認し、残っていたら取り除きます。
市販の毒抜き器を使って、刺された直後にやることが重要です。

チョイス@病気になったときより

血が出るくらいまで何度も吸う必要があります。
刺された直後にこれくらいの強さでやらないと毒が体に回ってしまうので、意味がないそうです。口で毒を吸うのはよくありません。口内に傷があればそこから毒が入ってしまうリスクもあります。
毒を抜いたあとは、患部を冷やします。血管を収縮させてなるべく毒を回さないようにするためです。

ちなみに、虫除けスプレーは蚊などの吸血する昆虫には効果がありますが、ハチには効果がないそうです。ハチに刺されないようにするには、ハチの巣に近づかないことがいちばんです。

アナフィラキシーショック

ハチの他にもアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があるものはあります。

・その他の昆虫

スズメバチが有名ですが、アシナガバチなど他のハチでもショックを起こす人はいて、ムカデに刺されてもなることがあります。

最近では外来種の「ヒアリ」も話題になっていますが、これもアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。(とは言っても、アメリカの統計では、ヒアリが侵入した地域ではだいたい住民の9割くらいが一生のうち1回は刺され、1年間に住民の半分から三分の一くらいが1回刺されているといいますから、刺されても死ぬようなショックが起こることは稀であるようです。九州大学准教授の村上貴弘氏によると、全米で約1000万人が刺され、10万人がアナフィラキシーショックを起こし、100人が亡くなっているそうです。つまり、ヒアリに刺されたことで死に至る確率は0.001%ということになります。

・ゴム製品

天然ゴムを使ったゴム製品(風船や絆創膏、ゴム手袋など)でかゆみや赤み、じんましんなどが起きる「ラテックスアレルギー」というものもあるそうです。
異常が出た際はゴム製品も疑ってみる必要があるでしょう。

・刺された時に備えて

アナフィラキシーの危険性のある人は事前に医師に相談して、アレルギー反応をおさえる「エピペン」というアドレナリン自己注射キットを持参するようにするとよいでしょう。
重度の症状が出始めた時点で使用すると効果的だそうです。

参考:
ホウドウキョク
ゴムアレルギーと果物の危険な関係

アウトドアに持っていくべきもの

アウトドアのレジャーを楽しむ際に持っていくべきものとして、三宅氏は以下のようなものを挙げていました。

チョイス@病気になったときより

ガーゼ、ハサミ、包帯、絆創膏、ピンセット、綿棒です。

ガーゼと絆創膏は清潔なまま保持するよう心がけます。例えば切り傷を負ってしまった際は水で洗った後にガーゼの清潔な面でギュッと止血します。しばらくして血が止まったら、絆創膏を貼るようにします。
包帯は、伸縮性のあるものを選んだ方がいいそうです。包帯を上手に巻く技術がなくても、伸縮性のある包帯なら簡単に圧迫感のある巻き方ができるためです。

 

スポンサーリンク

 

熱中症

ウォーキング歴5年のSさん(62歳)は、友人からの誘いで初めて登山に挑戦することになりました。夏の日差しが残る9月8日に、標高1300mの山の頂上を目指しました。
午前9時に登山を開始しましたが、10時を過ぎた頃に原因不明のだるさを感じ始めました。登ろうとしても足がついていかず、暑いはずなのに汗が出ません。にも関わらず、顔は冷や汗だらけでした。

三宅氏はこれを「熱中症の症状と考えられる」と話していました。
人間の息には水分が含まれているので、山登りの重装備で登山をしているだけでも、体からは多くの水分が出ていってしまいます。

さらに、女性であるSさんはトイレの心配もあって、水分を控えていたことも熱中症を誘発させる一因になりました。

 

・熱中症になってしまったら

患者に意識があれば、水分と塩分を補給させるのがまず基本になります。

このときに、介助者が飲ませるのはよくありません。もし患者の意識が朦朧としている時に水分を飲ませてしまうと、誤嚥や窒息の可能性がありますから、必ず自分で飲んでもらうようにするのがポイントになります。

本人が水も飲めないというときは、体を冷やしてあげるようにします。涼しい日陰やクーラーの効いた場所などに移動して、氷嚢などを当てて冷やします。首筋と脇の下、鼠径部(そけいぶ。足の付根の前面)などに当ててあげましょう。
それから速やかに、救急車を呼びます。自分で水が飲めないような、意識が朦朧としている状態のときは、必ず救急車を呼ぶようにしましょう。

 

・動けなくなった人を運ぶ方法

意識を失った大人を日陰まで運ぶのは大変です。
そういう時はちょっと工夫をして、二人がかりで運んであげるようにします。
まず、一人が動けない人の背中側に周り、片腕を胸側に折りたたんで、下から両手を差し込んで、腕をつかみます。

チョイス@病気になったときより

もう一人は足を担当します。足を膝のところでまとめて、下から抱えます。

チョイス@病気になったときより

それから速やかに、救急車を呼ぶようにしましょう。

 

スポンサーリンク

 

まとめ

アウトドアでのトラブルのリスクを下げるコツとして、三宅氏は「一人で計画をたてず、無理なく余裕のある計画にするように心がけること」と、「グループでの行動を心がけること」を挙げていました。
これらに加えて、三宅氏が勧めていた応急処置グッズや毒抜き器などを事前に購入して持っていくようにすると、より安心してレジャーを楽しむことができるでしょう。


スポンサーリンク

コメントは受け付けていません。