先日の『きょうの健康』のテーマは「ウイルス性肝炎」の治療でした。ウイルス性肝炎や肝がんの診断と治療が専門の泉並木先生(武蔵野赤十字病院 消化器科部長)が最新のB型肝炎とC型肝炎の治療法と治療の注意点について説明していました。
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B型肝炎の治療
肝炎ウイルス検査でウイルス感染が分かったからといって、すぐに治療をしなくてはいけないというわけではないそうです。定期健診で経過観察をして、炎症が起こっていたら治療を開始すると泉先生は説明をしていました。
きょうの健康より
B型肝炎の治療には、抗ウイルス薬(核酸アナログ)の内服とインターフェロン治療があります。インターフェロン治療では、肝炎になると不足するインターフェロン(ウイルスの増殖を抑える働きのある体内で生成されるたんぱく質)を補うためにインターフェロンを注射します。現在は、抗ウイルス薬の服用が治療の第一選択だそうです。
B型肝炎の抗ウイルス薬
B型肝炎ウイルスは強力なので、ウイルスを完全に死滅させる抗ウイルス薬はないそうです。抗ウイルス薬の役割は、ウイルスをおとなしくさせ、増えないようすることです。抗ウイルス薬を服用してから、2、3週間から半年でウイルスが減少して、肝機能が正常に戻るそうです。
B型肝炎の抗ウイルス薬は4種類あるとのことです。第一選択薬としては薬剤耐性が出にくい「エンテカビル」と「テノホビル」が使われることが多いそうです。その他には、「ラミブジン」と「アデホビル」という抗ウイルス薬があります。
きょうの健康より
抗ウイルス薬は、数年から10年以上継続して服用する必要があります。それは、抗ウイルス薬は肝炎ウイルスの活動を停止させているだけなので、薬の服用を止めるとまた活動を再開するからです。また、薬の服用を止めることで、薬剤耐性ウイルスが出てきてしまうこともあるので、自己判断で止めることなく、医師の指示に従って服用を続けることが大切だと泉先生は説明していました。
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C型肝炎の治療
2014年以降、C型肝炎の治療のための新しい抗ウイルス薬が、次々と使えるようになったそうです。そのため、現在は、約95%のC型肝炎が抗ウイルス薬で完治するとのことです。B型肝炎ウイルスとは違い、C型肝炎ウイルスは、適切な治療を受ければ、肝臓から完全に排除することができます。
きょうの健康より
C型肝炎ウイルスには、4つの遺伝子型(1a、1b、2a、2b)があります。治療に使われる薬は、ウイルスの遺伝子型によって決められます。日本人のC型肝炎の約7割がインターフェロンの効きにくい1b型だそうです。新しい抗ウイルス薬のおかげで、以前は治すことが出来なかった人も完治できるようになったとのことです。
遺伝子型別の抗ウイルス薬
2014年に使用開始
・アスナプレビル(スンペブラ)+ダクラタスビル(ダクルインザ)=1b型に使用
2015年に使用開始
・レジパスビル・ソホスブビル(合剤)(ハーボニー)=1a、1b型に使用
・パリタプレビル・オムビタスビル(合剤)=1b型に使用
・ソホスブビル(ソバルディ)+リバビリン=2a、2b型に使用
きょうの健康より
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C型肝炎の抗ウイルス薬を選ぶ際の注意点
C型肝炎の治療には、新しい抗ウイルス薬がいくつも使えるようになりました。けれども、使用する薬の選択は、かなり慎重に行われなければいけないとのことです。
泉先生によると、適切な抗ウイルス薬を服用しなければ、薬剤耐性ウイルスが出現して、他の抗ウイルス薬も効かなくなってしまうそうです。ですから、抗ウイルス薬を使用する前には、肝臓専門医のいる病院で精密な遺伝子検査を行って、耐性ウイルスの有無を確認することが大切です。全国の肝臓専門医のいる病院は、日本肝臓学会のホームページ(http://www.jsh.or.jp/medical/specialists/specialists_list)で調べることができるとのことです。
また、肝硬変が進んでいる人は、安全性が確認されていないので抗ウイルス薬での治療はできません。そして、抗ウイルス薬の使用には、腎機能は正常かどうかも確認する必要があります。それは、レジパスビルとソホスブビルの合剤は、腎機能が低下している人には使用ができないからです。また、糖尿病、高血圧、不整脈、脂質異常症、うつ病などの薬を服用している場合は、抗ウイルス薬を併用することで、心不全や肺水腫のような重い副作用が出る場合があるとのことです。ですから、肝炎以外にも持病がある人は、かかりつけの医師に「お薬手帳」を見せるなどして、自分が服用している薬を正しく伝えることが重要だと泉先生は話していました。
泉先生は最新の肝炎や肝がんなどの肝臓の病気の治療法についての本を執筆しています。
治療が大きく変わった! C型肝炎・B型肝炎・脂肪肝・肝硬変・肝がん (別冊NHKきょうの健康)
泉 並木
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まとめ
日本には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していることを知らずに生活している人が、とても多いそうです。肝がんの原因の約80%がB型肝炎とC型肝炎です。一度の血液検査で、B型肝炎とC型肝炎ウイルスの検査ができるそうです。肝がん予防のためにも肝炎ウイルス検査を受けてみましょう。