今回は歯周病をテーマにしたNHKの
チョイス@病気になったとき『歯ぐきのトラブル』
のまとめです。
歯周病が厄介なのは、
自覚症状がなく進行していく
自覚症状が出た時には重症化しているケースが多い
重症化すると抜歯するしか対処法がなくなる
ということです。
重症化して抜歯しないためには早期の段階で歯科医の診察を受け、治療してもらうことです。
早期の段階とは、
冷たい物がしみる
歯磨き時に歯ぐきから出血する
ときです。
しみるからといってすべて歯周病とは限りませんが、歯周病だった場合、放置してしまうと歯周病は確実に進行していきます。明らかにおかしいと思った時にはもう手遅れということもありますから冷たいものがしみた時、歯ぐきに出血が見られる時には歯医者に行くようにしましょう。
早期であれば治療の選択肢は複数あります。
それではまとめです。
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歯ぐきのトラブル(出血・しみる・ぐらつく)
歯ぐきのトラブルの多くは歯周病が原因といわれています。歯周病菌が口の中で増えて毒素を排出、歯ぐきのみならず歯を支える骨までも溶かしてしまうのです。
初期の段階では大した自覚症状もないため放置しやすいのですが進行しているのに放置してしまうといずれは歯を失う可能性もある怖い病気です。
厄介なことに素人が一見したくらいでは全くわかりません。
番組で紹介された女性の例
番組内で紹介された女性は丈夫できれいな歯が自慢で、子供のころから虫歯ひとつしたことがなかったそうです。
ところが30代になって冷たいものを飲むとしみるようになりました。しみる以外に症状もないためそのまま放置していると、数年後に
歯ぐきが腫れる(ブヨブヨ)
歯ぐきの色が変色する(紫っぽい色)
という症状が出てきました。
さすがにおかしいということで歯医者でレントゲンを撮ってもらうと、歯を支える骨までも喪失した状態になっていたそうです。
この時の歯周ポケット(歯と歯ぐきの間にできた隙間)の深さは10mm。健康な歯ぐきであれば1~2mm程度ということですから健康な歯ぐきの10倍近い深さにまで進行していたことになります。歯医者からは総入れ歯になるかもと言われ大変ショックを受けたそうです。
結局、この女性は奥歯4本と手前2本を抜歯することになりましたが、出来るだけ多くの歯を残すためにフラップ手術を受けることになりました。
フラップ手術とは?
・歯ぐきを切り開き、歯周病菌を根から徹底的に除去
・骨の表面も削ってなめらかにし、菌が付きにくくする
このフラップ手術のおかげで女性の歯周ポケットは4mm以下になり、全てを抜歯しなくても良い状態に改善されました。
フラップ手術について
・歯の本数によるが時間は1時間以上
・入院の必要はなし
・痛みがなければ術後すぐにでも固形物を食べれる
⇒痛みは普通あるので反対側で噛むなどする
・保険適用になる
⇒3割負担で2000円弱/1本
歯周病の症状
歯周病は自覚症状があまりないと言われていますがまったくないわけではありません。以下のような症状が知られています。
・歯磨きの時に出血
⇒初期症状
・冷たいものがしみる
⇒初期症状
・口臭
⇒歯周ポケット内の歯周病菌が発する成分が原因
・口が粘つく
⇒歯周病菌が増殖している
・歯ぐきの腫れ
⇒進行している状態
・歯ぐきの色が変わる(ピンク→赤→ドス黒くなる)
⇒進行している状態
歯周病の進行
歯周病は以下のようなステップで進行していきます。初期段階のプラークがたまるレベルであれば日常の歯磨きをしっかりすることで歯周病をある程度は防ぐことができます。
しかしプラークが歯石にまでなってしまうと歯磨きでは取れません。歯医者で歯石除去の処置を受ける必要があります。
歯周病の進行ステップ
1.歯の周りにある歯周病菌と食べかすが一緒になりプラーク(歯垢)になる
2.プラークを歯磨きで取り除けないと歯石になる
⇒歯石になると歯磨きでは取り除けない
3.歯周病菌がさらに増殖し毒素を出し始める
4.歯ぐきが炎症を起こす
5.歯と歯茎の間に隙間ができる
6.隙間の奥にさらに菌が入り込む
7.大きな隙間(歯周ポケット)ができる
⇒歯周ポケットの中の歯石が悪化の要因
⇒歯ぐきの奥のことなので一見しただけではわからない
⇒歯周ポケットの深さで進行度合いがわかる
⇒プローブ(探針)という器具で測る
⇒健康な人の歯周ポケットは1~2mm
8.歯ぐきや骨を溶かす
9.歯を抜くしかない状態になる
番組で紹介された男性の例
番組ではまた別の男性の事例が紹介されていました。この男性は約5年前に歯ぐきの出血・腫れといった不快感、そして起床時に奥さんから『生ごみのようなすごい口臭』』を指摘され歯医者を受診しました。
診察結果は歯周病。歯周ポケットの深さは6mmもあったそうです。
この男性はスケーリング&ルートプレーニングという治療を受けました。これは歯周病治療の基本ともいえる治療法です。
・スケーリング治療
目的:細菌を除去すること
⇒細い針で歯周ポケットの最近を食べかすごと掻き出す
⇒歯石も超音波で粉砕
・ルートプレーニング治療
目的:食べかすや細菌が溜まりにくくする
⇒歯の根元を削って滑らかにする
この治療を行った結果、治療前には48か所以上もあった要治療箇所が2か所に激減しました。ちなみに要治療箇所とは4mm以上の歯周ポケットで、1本の歯の周辺に最大で6か所もあったようです。男性はこうした治療をすることで歯周病を克服、口臭もなくなりました。
口臭の一番の原因は歯周病
上の男性のように、口臭の一番の原因は歯周病です。もちろん、歯周病以外にも虫歯や胃などの内臓不調が原因の場合もあります。しかし、生臭い口臭といった場合には歯周病がまず疑われるようです。
歯周病由来の口臭の場合、歯周ポケットに溜った歯周病菌が発する成分が口臭の原因となります。就寝中に歯周病菌が活発になるため、起床時にはひどい口臭になっているわけです。こうした口臭を防ぐためには寝る前に歯磨きで口の中を清潔にすることが重要です。ブラッシングを丁寧にするのはもちろん、歯間ブラシをつかって歯ブラシでは磨ききれない歯と歯の間もこまめに磨いていきましょう。
ただ、悲しいことに、すでに歯周ポケットが深くなっているとブラッシングしても届きません。意識してポケット内にブラシを入れるようにしても2mmが限度なのです。こうした通常のブラッシングでは届かない部分の歯石を取るのがスケーリング治療になりますので、生臭いような口臭が気になれば歯医者に行って診てもらいましょう。
歯周病の治療費用について
歯周病は珍しい病気ではなく、治療も一般的です。なので歯ぐきに腫れや出血があれば健康保険適用となります。
歯周病の治療費用
・歯周病の状態を見る検査は歯周基本検査という
⇒600円程度(自己負担3割)
・歯石を取るスケーリング治療
⇒800円程度(自己負担3割)
・表面を滑らかにするルートプレーニング治療
⇒1本につき200円程度(自己負担3割)
・歯磨き指導
⇒240円程度(自己負担3割)
知覚過敏(歯周病の段階のうちの一つ)
番組ではもう一人、中国人女性の方の事例が紹介されていました。この女性も冷たいものがしみて痛いといった症状に悩まされています。
元々、歯を構成する象牙質部分には微小な空洞(象牙細管)がたくさん走っています。歯ぐきより上の部分は象牙質のさらに上からエナメル質が覆いかぶさっていて空洞をふさいでいますが、歯ぐきの根元部分はエナメル質で覆われていません。
歯周病で歯周ポケットが深くなると、エナメル質で覆われてない、象牙質むき出し、象牙細管むき出しの歯根部分が露出することになり、そこから冷たい物などが象牙細管に入り込み、歯の神経を刺激することでしみたりズキンという痛みが起こったりします。
歯周ポケットがそれほど深くなくても知覚過敏になることはあり、番組では3mm程度でもなりうると解説されていました。
この女性にはコーティング治療が行われました。
コーティング治療とは、その名の通り歯の表面をコーティング剤で覆う治療のことで、歯周病が進行して歯周ポケットが深くなった場合でも採用される治療法です。細管を覆ってしまいますから知覚過敏はすぐに収まります。
ただし、このコーティング剤は3か月程度で取れてしまいます。知覚過敏が再発するようだと再びコーティング治療をする必要があるのですが、歯周病治療などで歯周ポケットがふさがれば知覚過敏は収まりますし、生きた歯は外部刺激を避けるために新たに象牙質を作って細管をふさいでしまうこともあるそうです。人間の身体はよくできたものです。
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以上です。
自分で気を付けて歯や歯ぐきをケアすることはもちろん、ちょっと異常を感じたら早くに受診することも非常に大切です。特に最近の歯医者は治療だけでなく歯石除去などのケアも定期的にやってくれますから3か月に1回くらいは通院するようにしておけば安心です。