認知症の患者数が世界的に増加しているそうです。
世界保健機関(WHO)がこのほど発表した報告書「認知症:公衆衛生上に重要課題」によると、世界の認知症有病数は現在、およそ3,560万人に上る。2030年までに2倍の6,570万人、2050年までに3倍の1億1,540万に増えると予測されている。
(中略)
認知症は毎年770万人ずつ増え続けている。国連推計の2050年の世界人口は約91億人(うち60歳以上が20億人)なので、患者の割合も約1.27%に上昇する計算だ。
何等かの対策が必要とされていますが、一口に認知症といっても認知症の種類はアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭葉変性症、レビー小体病など、いくつかあります。また、他の病気と併発していたり、似てはいても別の精神疾患だったりと、一口でまとめられるほど単純な病気ではないようです。
いくつかある認知症の中で、脳血管性認知症についてテレビ東京の『主治医がみつかる診療所』が特集をしていました(「認知症徹底予防 第三弾 脳の血流アップで認知症を防ぐ」)。
この脳血管性認知症は、脳こうそくや脳卒中などの脳血管障害の後遺症として発症することがわかっています。しかし、症状の現れ方はアルツハイマー病やうつ病と似ている部分があり、医師であっても診断を間違えることがあるそうです。
テレビ東京ホームページより
上の図を見たらわかるように、脳血管性認知症は
物忘れしていること自体を本人がわかってない、
日により時間により症状の出方にムラがある
などの特徴があります。おかしな行動や言動があり、数年のうちに脳梗塞などの病気になったことがある場合はこの型の認知症を疑う必要があるようです。
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脳血管性認知症の実情
番組では11年前に脳血管性認知症を発症した65歳の男性に密着していました。この男性は54歳の時に脳血管性認知症にかかり、以後妻が介護している状況です。
まずスタッフが「こんにちは」と言うと、男性は「こんにちは」とあいさつを返しています。しかしそれからの会話は成り立たず、単語でのやり取りしかできないような状況でした。
脳血管性認知症になってから病状はどんどん進行していき、今では歩くことも困難になり、失禁などもするようになりました。運動能力は低下していないのですが、脳機能が低下しているため、歩くことが困難になってしまうようです。
妻は介護施設の集まりに月3回程夫を連れて行き、脳を刺激することを行っています。食事の際になると、妻は脳血管性認知症の夫に合わせ、とろみをつけた食事を作ります。脳血管性認知症患者は、飲み込むことも困難になるので、このような配慮が必要になってきます。そして一回食べさせるというきっかけを与えると、食事をスムーズにできるというのがこの認知症の特徴です。
自宅に帰ってきて少し経つと夫の症状は良くなり、自分の好きな相撲の話題や孫の話になるとニコニコしています。脳血管性認知症は日や日時により症状が変わるというのも特徴なのだそうです。
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脳血管性認知症の前触れ
今回紹介されている夫は、54歳で脳血管性認知症と診断されましたが、この症状になるまでに様々な前触れがありました。
この男性が48歳の頃、健康診断で高脂血症(脂質異常症)と診断されました。営業部で働いていた夫は毎日のように取引先と外食、接待を繰り返していました。仕事上仕方がないと言うことであまり気にしていなかった夫婦でしたが、翌年夫に異変が起こります。
まず気づいたのが息子でした。駅まで迎えに行った際、缶コーヒーを買って一緒に飲みました。しかし缶コーヒーを息子が男性に渡すと、なんとコーヒーの缶を開けられなかったのです。それからというもの、会社の出勤時の際、車での旋回がとても大きくなっていたりと少しづつ違和感を感じていました。
これらの変化は素人では判断しづらく、実際この夫婦も大事には見ていませんでした。しかし会社で簡単な言葉を発しづらくなったり、携帯電話をすぐ無くしたりして、あまりにおかしく思った会社の同僚が病院に連れていき、そこで診断された病名が「脳梗塞」だったのです。
この脳梗塞は発見が早かったこともあり幸い2ヶ月の投薬治療で治りました。少し言葉の障害が残ったので会社は退社し、1人でできるクリーニングの配達業を始めました。しかし脳梗塞が治ってから半年後、この男性にまた異変が襲います。仕事から帰ってくると、車に傷が増えていました。しかし男性自身はまったく覚えていなく、後日息子が発見することが多くなり、変だと思っていました。
この頃から、男性は自宅に引きこもるようになってしまいます。心配した妻がうつ病かもしれないということで病院に連れて行きました。病院からはうつ病と言われますが、薬を飲んでも効果がない状態でした。そして数ヶ月後、決定的な事態が起こります。以前1度だけ訪れたことがある取引先の家の呼び鈴をずっと押し続けるという奇行に走ります。さすがにこれは明らかにおかしいということで、妻がすぐ病院に連れて行くと「脳血管性認知症」と診断されました。脳血管性認知症は脳梗塞からなる事例も少なくないそうです。このような事態になる前に気付けるかが重要になってきます。
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つい見逃す初期症状
今回の男性の場合、脳血管性認知症になる前に、脳梗塞になっており、この脳梗塞が原因といっても過言ではありません。脳梗塞などの初期症状は指先の麻痺です。缶コーヒーが開けられない、シャツのボタンが閉められないというような場合は注意が必要です。すぐに病院につれて行きましょう。
そして脳血管性認知症の特徴は忘れっぽいのも特徴ですが、調子がいい日、悪い日など症状がまばらになるという特徴があります。このようなことから、うつ病とも勘違いされやすいそうです。うつ病の場合は忘れてしまったことに関して、なぜこんなに自分はダメなんだと自分を責める傾向があります。しかし脳血管性認知症の場合は、忘れたことを忘れるので、他人を責める傾向にあります。これらの初期症状を見逃さないようにしましょう。
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脳血管性認知症、脳血管性認知症予備軍(VCI)の予防
放っておくと脳血管性認知症になってしまう段階を脳血管性認知症予備軍(VCI)といいます。脳血管性認知症予備軍(VCI)の段階で発見できれば進行を予防することもできますし、番組ではVCI自体にならないように予防することも可能ということでした。
その最新の予防技術は、頸動脈のエコー検査をするということです。頸動脈の動脈硬化の具合を見ることで、脳の血管の状態を推測し、早期に対処することができます。
またこの検査は認知症全般の予防に効果的とされていて、全国に広まっています。通常の人は年1回検査することがオススメで、糖尿病やコレステロール値が高い人などは半年に1回の検査をするのが良いでしょう。さらにエコー検査ということで、自分の血管の状態を画像で見ることができます。実際に血管が詰まりかけている画像を見せるということで一般人にもわかりやすく、危機感を覚えることも多いので、効果的とされています。
簡単な予防法
脳血管性認知症を予防するためには脳の血流を良くするというのが効果的になっています。ですから普段使っていない脳細胞を働かし脳の血流をアップさせましょう。具体的にはとても簡単で、利き手ではない手を使用し、日常生活をするということです。
例えば家の鍵の戸締りを利き手ではない方で行ってみたり、料理を作る際にフライパンと菜箸の持つ手を逆にしてみたり、と日常で行われていることに変化を加えるだけでいいのです。
慣れてきたら少しづつ難易度を上げていきましょう。利き手以外で日常生活を行う難易度が上がるにつれて、脳の血管の血流はアップし、結果的に脳梗塞や脳血管性認知症の予防に役立ったりします。
さらに脳の血流をアップさせるには、絵を描いたり、楽器を弾いたりするという芸術的活動が効果的です。
しかし外出して絵を描いたり、今から楽器を覚えるということはかなり大変です。しかし誰でも手軽に行えるものを今回は紹介します。それは塗り絵です。今では書店で「大人の塗り絵」というものも発売されているので、始めやすいです。
塗り絵ではどの色でこの模様を塗ろうか、線をはみ出さないようにしようなどと考えているうちに、脳の血管の血流が効果的にアップします。
また、家族がいる方は家族内でクイズを作り、出し合うということをすることで、様々な脳細胞の活動が始まり、様々な病気の予防に効果的とされています。カラオケでタンバリンを使用してリズムを取りつつ歌うということも効果的ではないかと言われています。
まとめ
脳血管性認知症というのは、血管の詰まりから起こる認知症です。
手先の麻痺や以前と少しでも異変を感じたらすぐに病院に行きましょう。
脳血管性認知症の場合は運動能力などに異変をきたします。その症状は日に日に増していき、歩行困難や食事を飲み込みずらくなったりします。さらに失禁などの症状にもなります。そして日によって症状の浮き沈みがあるということで、分かりにくいことが特徴です。この変化に気付けるのは普段一緒に暮らしているご家族の方なので、異変は見逃さないようにしましょう。
今回紹介した頸動脈のエコー検査も行うことにより、リスクを早期に解消できます。脳血管性認知症になる前に、コレステロールのとりすぎや、不摂生、暴飲暴食などの食生活に気を配ることにより、認知症以外の病気の予防もできます。小さな変化を見逃さず、食生活を改善し、利き手ではない手を使用して生活してみるということを実施することにより、脳血管性認知症のリスクは減っていくでしょう。