ストレスがたまったときや食べ過ぎたときなど、胃に痛みや重さを感じることがあります。
胃はとても症状が出やすい臓器であるため“おしゃべりな臓器”とも呼ばれ、多くの人がその“おしゃべり”に悩まされています。
今回は、胃の不調を特集していた『健康カプセルゲンキの時間』を中心に、胃の不快感に関する情報をまとめていきたいと思います。
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あなたの胃痛の原因は?
胃の悩みは人それぞれですが、その症状や起こるタイミングでわかることもあります。
番組では胃に不調を抱えている人が3名登場し、各々の体験を話していました。
「胃の上の方が熱い。ひどい時は寝られず、途中で目覚めることも。胃もたれもある。」
・Eさん(52歳女性)
「1年ほど前から、油ものや甘い菓子パンを食べた後に胸やけが出るようになった。」
・Aさん(66歳女性)
「食後に気持ち悪くなる。胃もたれや胃痛が出ることもある。」
東京都港区にある中村麻布十番クリニックの中村光康医師は、これらの話を聞いてから、個別に検査をはじめました。
・Yさんの場合
まずは内視鏡検査を行いました。
胃の中を見てみると、胃の粘膜に赤い部分がありました。
健康カプセルゲンキの時間より
表面が出血しています。この1箇所だけでなく、胃のあちこちに同じような出血が見られました。
これは典型的な胃炎の症状の一つだそうです。
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中村氏が「食事は遅い時間に摂りますか?」と尋ねると、Yさんは「食事が始まる時間は早いが、終わるのは遅い。食事時間は6時間くらい」と答えていました。Yさんは食事から晩酌までをつなげるのが習慣だそうで、「早食いじゃないから大丈夫かな、と思っていた」と話していましたが、中村氏は「胃に絶えず食べ物が送られてくるため胃が休まらない」と、胃にとって悪い習慣であることを指摘していました。
また、中村氏はYさんの食事内容にある問題点も指摘していました。
健康カプセルゲンキの時間より
脂っぽいものが多い食事内容です。高脂肪の食事は消化に時間がかかるため、胃の負担が大きくなります。
また、Yさんが一升瓶を3日で空けるようなペースで焼酎を飲んでいることも胃痛につながると指摘していました。アルコールは胃粘膜を直接傷つけるので、アルコール度数が25%である焼酎は、胃に大きなダメージを与えます。
Yさんの胃痛は「ダラダラ飲み食い」、「高脂肪食」、「アルコール」の3つが原因となって引き起こされた炎症によるものでした。
Yさんは胃もたれも訴えていましたが、炎症によって胃の機能が低下すると消化スピードが遅くなるため、胃もたれを感じやすくなるそうです。
「胃の上部に感じる熱さ」の原因も、内視鏡でわかりました。
健康カプセルゲンキの時間より
画像はYさんの食道の出口辺り(胃につながる部分)です。赤くなっているのは逆流した胃酸によって食道の粘膜が傷付けられた結果で、この状態を「逆流性食道炎」と呼びます。胃酸は金属さえ溶かす強酸性の液体なので、胃の壁は胃粘液や胃粘膜で強力に守られています。しかし、食道の粘膜はそれほど強くないため、逆流してくると画像のように荒らされてしまうのです。
逆流する理由について、中村氏は「アルコールと脂肪は食道の括約筋を広げてしまう。締りがゆるくなる」と解説していました。
「下部食道括約筋」という食道と胃のつなぎ目にある筋肉は、正常ならばしっかりと閉じて胃酸等の逆流を防いでいます。しかし、消化しにくい脂肪分の多い食物が胃に入ってきたときに分泌される、消化を手助けするホルモンには括約筋を緩める作用もあるため、括約筋のしまりが緩くなってしまうのです。
しかも、Yさんは食後3分ほどで床につくという習慣もあるそうで、これも胃酸の逆流が起こりやすくなります。中村氏は「寝るのは食後3時間以上経ってから」とアドバイスしていました。
さらに中村氏は胃痛に共通する要因として「加齢」を挙げていました。加齢によって胃の粘膜を守る粘液の分泌が少なくなるため荒れやすくなるのです。
39歳以下を100%とした場合、40〜50代は91%、60歳以上は84%の分泌量に落ちてしまいます。
また、胃粘膜の血流量が減ることも消化能力の低下につながります。
これらに対処するためには、食事に気をつける必要があります。例えば、キャベツやブロッコリーに豊富に含まれる「ビタミンU」は、傷ついた胃粘膜の修復を促進してくれるそうです。
・Eさん、Aさんの場合
Eさんの訴えた症状はYさんと似ていましたが、内視鏡で見てみると…
健康カプセルゲンキの時間より
食道下部はきれいで、逆流性食道炎ではないことがわかりました。Aさんも同じく荒れておらず、胃にも出血などの不調はありませんでした。
内視鏡検査の結果だけでは胃痛の原因がわかりませんでしたが、中村氏が問診を進めていると、二人の胃の症状が出始めた時期に共通点が見つかりました。
Aさんは当時、左目に不調が出たため病院へ行くと「白内障」と診断されたそうで、「日常生活にも不便を感じることが多くなった」と話していました。
Eさんは当時、お母さんが病気で入院することになったため、仕事をしながら家事をすべて引き受けることになり、生活が非常に不規則になっていたそうです。
つまり、2人ともに急激なストレスが発生していたのです。
これらの話から、中村氏は「Aさんはストレスによる機能性ディスペプシアが疑われる」と診断し、Eさんに関しては「軽度の逆流性食道炎と、ストレスなどで食道が知覚過敏を起こす非びらん性胃食道逆流症が疑われる」と診断しました。
「機能性ディスペプシア(FD)」は、胃痛や胃もたれがあるにも関わらず内視鏡で見ても異常が見つからない病気です。ストレスやピロリ菌など様々な原因によって引き起こされます。
「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」は、胸やけ(特に空腹時や夜間)などが引き起こされる病気で、胃酸が食道に逆流することが原因で発症します。
症状の一部は似ていますが、NERDは胸の上部(食道)に不快感が生じ、FDはおなかの中心あたり(胃)やみぞおちに不快感が生じるという違いがあります。
どちらも薬物療法と生活習慣の改善で緩和・治療することができますが、ストレスが原因である場合も多いので、それを除去するのは現実的には難しいところがあります。
中村氏は「ストレスはみんな抱えているので、なくそうとするのは難しい。発散する方法を考えるべき」とアドバイスしていました。
参照:
機能性ディスペプシア(FD)
おなかの健康
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胃痛と思いきや…
本人は胃の痛みだと思っていても、実は別の臓器に大きな病気があり、痛みを発している可能性もあります。
Tさん(68歳男性)は2年前のある日、食後に体を動かしたときに胃痛を感じました。市販の胃薬で対処していましたが、1週間後、経験したことのない耐え難い激痛が出てきました。
病院で胃の内視鏡検査を受けたところでは所見がありませんでしたが、痛みが特徴的だったことから医師は心臓の病気を疑いました。心電図をとった結果、「狭心症」であることが発覚しました。
狭心症は、心臓の冠動脈が動脈硬化などで狭まって血流量が少なくなる病気です。
健康カプセルゲンキの時間より
悪化すると心筋梗塞を招き、突然死することもある病気です。
突発的に胸のあたりが締め付けられる激痛が特徴なのですが、心臓と胃が近くにあるため、患者が「激しい胃痛」だと勘違いすることも多いそうです。
中村氏によると、「他にも急性膵炎や胆石、虫垂炎なども患部が胃と近いところにあるので、よく勘違いされる」といいますから、異常な痛みを覚えた場合は病院で診てもらうようにしましょう。
“虫”が引き起こす胃痛
アニサキスという、日本近海の約160種類の魚介類にひそむ、体調2〜3cmの寄生虫がおり、これが人間の胃で激痛を引き起こすこともあります。
魚の内蔵などに棲みついているのですが、魚が死ぬと、人間が食する身の部分に移動してきます。
刺し身などで人間がアニサキスごと食べてしまうと、胃壁に頭を突き刺し、「アニサキス症」という激しい胃痛や嘔吐などを伴う症状を引き起こします。
健康カプセルゲンキの時間より
アニサキス症になったことがある人にインタビューをすると、
「朝まで寝ていられない」
「死んでしまうのではないかという痛み」
「胃をギューとねじられているような痛み。出産の時より痛かった」
などと話していました。
アニサキス症の激痛の原因は、アニサキスが胃壁を刺した際に起きるアレルギー反応です。アレルギー反応ですので、たとえば花粉症などと同じで、人によって症状の程度が変わります。アニサキスが胃壁を刺してもまったく何の症状も出ないまま、という人もいます。(症状がない場合は、アニサキスは数日で胃から離れて便と一緒に排出されます。)
アニサキスは加熱や24時間以上の冷凍で死滅しますが、生で食べる刺し身には注意が必要になります。
鮮魚店では、安全性を高めるために検査装置に身を入れて確認するなどの工夫をしているところもあるそうですが、一般家庭でこういった検査をすることはできません。
家庭でできることとしては、魚のお腹周りを特に気をつけて見ることが重要です。
健康カプセルゲンキの時間より
色合いが周りと違う部分があるとアニサキスが潜んでいる可能性があります。
黒っぽかったり、黄色く濁っていたりします。
白身魚やイカなどは、身を光に透かして見ると確認できます。
食べる際にもよく噛むようにすることで、アニサキスを死滅させる可能性が高まるそうです。
アニサキス症は、ここ10年で患者数が20倍近く増えています。
しかし、番組で魚屋の店長さんに取材をしてみると「この仕事を40年やっているが、数が増えているという感じはない」と答えていました。
これについて、国立感染症研究所の杉山広氏は、「(アニサキス症の患者数急増の)大きな原因は2012年末に法令が改正されたこと。アニサキス症を食中毒として保健所への報告が義務化されたことが原因だろう」と話していました。
つまり、これまではデータとして表面化していなかっただけで、アニサキス症のリスクが上がっているわけではないそうです。
中村氏のクリニックにも1年間に5人くらいのアニサキス症患者が来院するそうですが、リスクが上がっているわけではないので、気をつけて食べればそんなに気にしなくても大丈夫ではあるようです。
まとめ
炎症からストレス、そして虫まで、様々な原因によって痛みが出る胃は、まさに“おしゃべりな臓器”です。
今回ご紹介した情報を参考に、「脂っぽいものを食べすぎない」とか「食後すぐに横にならない」ことなどを生活の中で意識して、胃のトラブルのリスクを下げるようにしましょう。