がん治療に新たな希望!「免疫療法」で、がん治療が変わる〜『クローズアップ現代』より

日本人の死亡原因の約30%を占める病気、がん。
そんながんを治療する、画期的な薬が登場したといいます。
その名も「免疫チェックポイント阻害剤」。
これまでの抗がん剤の仕組みとは違う、まったく新しい薬なんだそうです。
“根本からがん治療を変えるかもしれない”と、世界中から注目を集める新薬の期待と課題がNHK『クローズアップ現代』にて紹介されていましたので、まとめておきます。

 

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がん治療の“第4の柱”に

いま注目を集めているのは、免疫細胞の本来持つ攻撃力を引き出す効果が確認されたという「免疫チェックポイント阻害剤」。

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クローズアップ現代より

これまでのがん治療は主に「手術」「抗がん剤」「放射線」の3つが柱となっていましたが、新薬の登場によって「免疫療法」という第4の治療方法が確立されるとも言われているそうです。

これまでの3つの方法はがん細胞に直接アプローチする手法でしたが、「免疫療法」では患者の免疫細胞の力を引き出すという独創的な手法なんだそうです。

免疫細胞をサポートする新薬

Sさん(70代男性)は、ふくらはぎにほくろのようなものが見つかったので病院で診察を受けたところ、「皮膚がん」と診断されたそうです。いわゆるメラノーマです。すでに筋肉の中にまで転移し、手術だけでは取りきれない状態だったといい、医師には「もっと早くくればよかったのに」「もう手遅れだよ」などと言われてしまったとのこと。

そこでSさんは、がんの専門病院を受診。
手術を受けた後にすすめられたのが、「免疫チェックポイント阻害剤」を用いた治療だったといいます。
いざ治療をはじめてみると、あちこちに転移していたがんがみるみるうちに小さくなっていき、今では数週間に1度の点滴だけで日常生活を送ることができているとのこと!

こんな奇跡のような治療を実現する新薬は、どんな仕組みではたらくのでしょうか?

 

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免疫チェックポイント阻害剤のしくみ

番組によると、がん細胞は免疫細胞から攻撃を受けると、免疫細胞にあるブレーキボタンのようなものを押して、無理矢理攻撃を止めてしまうのだそうです。

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クローズアップ現代より

そうして攻撃を止めたあとにどんどん増殖していくことでがんが進行していくという仕組みらしいのですが、免疫チェックポイント阻害剤は、ブレーキを押すがん細胞の腕を外し、ブレーキを守ることによって、免疫細胞に引き続きがん細胞の攻撃を続けさせて、がん細胞を小さくしていくことを促すのだそうです。

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クローズアップ現代より

国立がん研究センター中央病院の山崎直也医師は「薬でがんを本当に治せる、克服できる時代が来た」と語っていました。

新薬を生み出した日本人研究者の発想

そんなすごい新薬の開発のきっかけを作ったのは、日本人でした。
京都大学大学院医学研究科の本庶佑(ほんじょたすく)客員教授は約20年前、免疫細胞がもつPD-1という役割が不明なタンパク質を発見。
マウス実験等からこれが免疫細胞のブレーキ役であることをつきとめた本庶氏は、これを応用して新しいがんの治療薬をつくることを思いつきました。
そこで、いくつもの製薬会社に共同研究を提案したのですが、どこにもまったく相手にしてくれなかったそうです。
のちに、本庶氏の研究結果に注目したアメリカの研究者やベンチャー企業と協力することでようやく研究がはじまり、新薬は開発されました。

我が国では、大学等で発見された新しい創薬ターゲットなどの、基礎研究の成果が革新的医薬品の創出に結びついていないのが現状です。このアカデミア発創薬が停滞している一番の原因として、「大学等で生み出された研究成果のインキュベーションを担うバイオベンチャーが育っていないこと」が指摘されています。基礎研究の成果を確実に実用化につなげるためには、創薬標的の選択から前臨床試験に至るまでの「応用研究」への支援を切れ目なく行うことが必要です。製薬協ホームページより

抗がん剤など既存の治療法ではがんが治らなかった人にも2割〜4割の確率で効果を発揮するという素晴らしい新薬は、こうした紆余曲折を経てようやく誕生したのですね。

新薬のネガティブな面

そんな素晴らしい新薬でも、お薬となると副作用が気になるところ。
やはり、この新薬にも副作用の可能性はあるそうです。
免疫細胞のブレーキを外すことで効果を発揮させる薬なので、ブレーキが外れた免疫細胞が暴走してしまい、肺や大腸に炎症を起こしてしまうこともあるそうなのです。
現状、新薬治療を行った皮膚がん(メラノーマ)患者の約10人に1人に重篤な副作用があらわれてしまっているといいます。
また、以下の画像のように効きやすいがんとそうでないがんもあるそうなので、新薬も万能とはいえないようです。

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クローズアップ現代より

番組では、ホジキンリンパ腫という病気には約9割もの人に効果があり、皮膚がん(メラノーマ)、肺がん、腎臓がんの場合だと2割~4割程度ということでした。2割~4割という数値を見るとその程度かと思う人もいるかもしれませんが、他の治療法で効果が出ない状態での2割~4割というのは劇的ともいえる効果なのだそうです。

 

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がん細胞の正体が見えてきた

しかし、がんの種類によって新薬の効きやすさが違うというこの結果から、がん細胞に関する新たな事実もわかりつつあるようです。

Jさん(20代女性)はステージ4の進行がん、しかも新薬が効きにくいとされる大腸がんになってしまいました。さまざまな治療を試みるもまったく治癒しなかったため、藁をもつかむ思いで免疫チェックポイント阻害剤の臨床実験に参加。
すると、なんとわずか1年でがんが60%も小さくなり、今ではひとりで外出できるまでに回復したといいます。

新薬が効きにくいとされる大腸がんでなぜ?と思ってしまうのですが、Jさんが「リンチ症候群」というがんになりやすい遺伝性の病気であることが、この劇的な回復と関係があるそうです。

リンチ症候群は大腸がんや子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、腎盂・尿管がんなどの発症リスクが高まる疾患です。全大腸がんの2-5%程度がリンチ症候群と考えられ、最も頻度が高い遺伝性腫瘍の一つとされています。

マイクロサテライト不安定性(MSI)検査のホームページより

一般的な大腸がんはがん細胞の遺伝子変異が少ないことが知られていたそうで、そのようながん細胞は免疫細胞に異物として認識されにくい、つまり攻撃されにくいために新薬が効きにくいのですが、最新の研究によると、リンチ症候群の人のがん細胞は普通の人よりも遺伝子の変異が大きいそうで、そのために免疫細胞に発見されやすく、新薬の効果も出やすい、ということがわかってきたそうです。

 

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これからの課題

以上のような臨床実験も含めて、免疫チェックポイント阻害剤の効果を最大限に引き出すために、遺伝子の研究が世界中で進められています。

番組では、山口大学医学部教授の玉田耕治氏が「がん細胞は免疫細胞からの攻撃を上手にすり抜けて大きくなるもの。このメカニズムをさらにはっきり解明することで免疫治療をよりよいものにしていくことができる」と語っていました。

遺伝子解析やがんのメカニズムの研究が進むことで、新薬の効果を発揮しやすい人を事前に選びつつなるべく副作用が出ないようにするような、さらなる治療法の確立が期待されています。

私たちも最新情報を常にフォローしていくのが大切であることがよくわかりました。


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