血糖値を下げる骨ホルモンの効果~ガッテン!より

骨は、体を支えているだけのもの思っている人は多いかもしれません。けれども、骨には体を支える以外にも、大きな役割があることが最新の研究でわかったそうです。
先日の『ガッテン』では、「骨ホルモン」の特集をしていました。骨に全身の臓器を活性化させる働きがあるなど、一般的に知られている骨の常識を覆す驚きの内容でした。骨粗しょう症研究の第一人者、太田博明教授(国際医療福祉大学・山王メディカルセンター女性医療センター長)が解説をしていました。

 

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骨粗しょう症の治療と血糖値

骨は、主にカルシウムでできています。健康な骨は硬くて丈夫です。けれども、骨粗しょう症になり骨密度が低くなると、少しの衝撃でも折れてしまいます。最悪の場合は、骨が体を支える役割を果たせなくなり、寝たきりの状態になることも…。骨粗しょう症の予防には、骨を作る女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンを含む食品(納豆など)を食べると良いというのは広く知られています。

Hさん(64歳、男性)はスポーツ万能で体力には自信があったのですが、3年前に背骨に骨粗しょう症を発症してしまいました。薬で治療し、骨密度は回復しました。

ガッテン!より

そして、骨粗しょう症が治ると、治療前は10.2と正常値を大きく上回っていた血糖値(HbA1c)が6.8まで下がりました。
太田教授によると、骨粗しょう症の治療をすると、血糖値が下がるケースはあるそうです。血糖値が下がる理由は、骨の体を支えるというのとは別な働きが関係しているそうです。

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骨粗しょう症は、カルシウム不足で骨がスカスカになって折れやすくなる病気で、とくに女性に多く、加齢によって患者が増えていきます。若い女性がダイエットのしすぎで発症するケースもあります。
また、骨密度には異常がなくても、高血糖や糖尿病などが原因で骨が折れやすくなる(とくに背骨に発症することが多い)病気を、新型骨粗しょう症と呼ぶこともあります。

 

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骨の仕組み

一般的に「骨」は白くて硬いものだというイメージがあります。けれども、実際の骨は白ではありません。
下の画像は、ツキノワグマの上腕骨です。骨の中にはたくさんの血管があるので、実際の骨は血のような色をしています。

ガッテン!より

骨が血のような色をしているのは、ツキノワグマだけではありません。人間を含む脊椎動物は、骨の表面(1㎝ぐらい)は硬いのですが、中には血管や髄液、細胞が詰まっているそうです。


(画像はツキノワグマの骨を半分に切ったもの)

ガッテン!より

骨の中を通る血管は、すい臓とつながっています。それで、Hさんが骨粗しょう症の治療をして骨が健康になったことが、血糖値の改善につながったとのことです。

オステオカルシン(骨ホルモン)の働き

骨は長い間、生き物の体を支える硬い無機質のものと考えられていました。けれども、2007年にアメリカ・コロンビア大学遺伝発達学部門のジェラルド・カーセンティ教授の発見によって、それまでの医学界の骨に対する常識は覆ったのです。
40年以上骨の研究をしているカーセンティ教授は、骨は動かないもの、単なる体のパーツという常識のもとに研究をしていました。当時、骨にあるタンパク質の一種オステオカルシン(日本語では骨ホルモン)の研究をしていました。けれども、結果はカーセンティ教授の予想どおりにならず悩んでいたそうです。カーセンティ教授は、オステオカルシンは骨を作る働きをしていると考えていたのですが、オステオカルシンがなくても骨は正常だということがわかったのです。
そして、糖尿病のマウスにオステオカルシンを注射したところ、たった1度の注射で糖尿病が改善。その後の研究で、オステオカルシンは、すい臓の働き良くし、インシュリンの働きを活性化させることが明らかになったそうです。また、筋肉が糖を吸収しやすくする役割があることもわかりました。骨は無機質のものではなかったという発見は、その後の世界の医学の発展に大きな影響を与えたそうです。
2007年にオステオカルシンの働きが判明してから、研究はさらに進みました。そして、近年、人間のオステオカルシンにも同じ働きがあることや、すい臓以外の臓器も活性化させることがわかったとのことです。
カーセンティ教授の研究は、骨がただ体を支えているのではなく、ホルモン・生理活性物質を出す内分泌臓器だと認識させる、ものすごい発見だったのですね。

オステオカルシンによって活性化する臓器

すい臓以外の臓器にオステオカルシンなどの骨ホルモンが、どのように働くのかをまとめておきます。

・脳 …神経細胞の結合を維持させて、記憶や認知機能を改善する働きがあります。

・心臓 …動脈硬化を防いで、心臓病を予防します。

・肝臓 …肝細胞の代謝が良くなり、肝機能を向上させると考えられています。

・腸 …小腸で糖などの栄養吸収を促します。

・精巣 …男性ホルモンを増やして、生殖能力を高めます。

・腎臓 …骨が作るFGF23ホルモンが、血液をきれいにするなど腎臓の働きを向上させます。

オステオカルシンは病気の治療に使われているのではなく、骨が健康になると相乗効果として体の各機能が良くなると太田教授は説明しました。胃や肺については研究中で、まだオステオカルシンとの関係性はわかっていないとのことです。

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FGF23は骨細胞で作られるホルモンで、血液を介して腎臓へ運ばれます。FGFはFibroblast growth factorで、日本語では線維芽細胞増殖因子と呼ばれています。
参考:FGF23 によるミネラル代謝調節機構とその異常

オステオカルシンと血糖値の関係

番組では、40歳から70歳の男女80人の血中オステオカルシン濃度を測定しました。参加者のオステオカルシン値(ucOC)の平均は4.3。80人のうち、数値が平均の半分以下だった人が6人いました。ただ、この6人の骨密度は全員正常。けれども、血糖値(HbA1c=ヘモグロビンA1c :5.5以下が望ましい)は全員6.0を超えていて、糖尿予備軍であることが判明しました。
骨密度とオステオカルシンの量には関係がないそうです。ですから、骨密度が上がっても、オステオカルシンがたくさん分泌されるとは限らないと太田先生は説明していました。
※オステオカルシン濃度は血液検査で測定できますが、現在は甲状腺や副甲状腺異常の疑いがある場合にしか検査をしてもらえないとのことです。

オステオカルシンをサプリメントにする研究

平田雅人教授(九州大学大学院歯学研究院長)は、人間の腸でオステオカルシンが働くことによって、血糖を下げる仕組みを発見しました。骨の成分が腸に効くというのは教授にとっては驚きだったそうです。平田教授は、オステオカルシンのサプリメントを作る研究を進めているとのことです。

骨の細胞の仕組み

中島友紀教授(東京医科歯科大学分子情報伝達学)は、培養した骨の細胞にさまざまな働きかけをして、その反応を研究しています。番組では、中島教授から骨細胞の映像を見せてもらい、その仕組みについて解説してもらいました。

ガッテン!より

中島教授によると、骨細胞は長い突起で細胞同士が連結して情報伝達をしているそうです。この仕組みは、脳の神経細胞の仕組みに似ています。ですから、一か所を刺激することで、全身の骨が活性化して、オステオカルシンの分泌が増えるそうです。

骨ホルモンの分泌を増やす「かかと落とし」

太田教授は、全身の骨に振動をあたえて刺激する方法として「かかと落とし」を紹介していました。ジャンプをしても、全身の骨に刺激を与えることができますが、ひざをいためる心配があるそうです。確かに、とくに高齢者にとっては、ジャンプをするのは危険ですよね。

番組では、下河内洋平准教授(大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科)に、最新の測定器を使い軽くジャンプをしたときと、かかと落としをしたときの骨にかかる衝撃を測定してもらいました。
軽くジャンプをしたときは、270kg(2656N)で体重の4倍の衝撃が骨にかかりました。かかと落としの場合は、190kg(1863 N)で体重の約3倍の衝撃。かかと落としのような簡単な動作でも、骨には十分な刺激が与えられるのです。

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Nは「ニュートン」といい国際単位系(SI)で定められた力を表す単位。
1N=0.1019716212977 kgf(重量キログラム)

「かかと落とし」のやり方

かかと落としのやり方は、とても簡単です。ゆっくり大きく伸びあがって、一気にかかとを落とせばいいそうです。このときに、頭のてっぺんに「ビーン」と振動がくれば、全身の骨に衝撃が伝わっているということです。
高齢者や体力に自信がない人は、何かにつかまりながら行ってください。隙間時間や通勤電車の中でなど気軽にできます。1日合計30回以上(連続ではなく、空いた時間に少しづつでよい)すると効果が出やすいそうです。
かかと落としはウォーキングなどに比べても、オステオカルシンを分泌させるのに効果的だと太田教授は説明していました。骨粗しょう症の予防や改善にも良いそうです。

 

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骨ホルモンを増やす「かかと落とし」の効果は?

番組では、オステオカルシンの測定で数値が平均の半分以下で、血糖値が正常値よりも高かった6人に、かかと落とし1日30回を1週間続けてもらいました。その結果、ほとんどの人のオステオカルシンの値が増え、血糖値が下がりました。
太田先生によると1週間という短期間ではなく、長期間続けることでさらに効果が得られるとのことです。とくに高血糖で悩んでいる人に、かかと落としを勧めていました。

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太田先生は、骨粗しょう症の予防・改善法など、骨を若返らせる方法をまとめた本を執筆しています。

骨は若返る! ―骨粗しょう症は防げる! 治る!
太田 博明

まとめ

骨に他の臓器を活性化させる働きがあるということに驚きました。普段から骨粗しょう症にならないように、カルシウムやイソフラボンを摂取している人は多いかもしれません。けれども、骨ホルモンのことを考えて生活をしていた人は少ないのではないでしょうか?これからは、骨ホルモンの分泌を促す「かかと落とし」を骨粗しょう症の予防のため、そして全身の健康のために習慣にしましょう。


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