厚生労働省によると、近年、精神疾患を患っている患者さんは大幅に増加しつつあり300万人を超えてます。中でもうつ病や認知症は”著しい増加”となっているそうで、昔のように珍しい病ではなくなりつつあるのかもしれません。
TBSの『駆け込みドクター!』でうつ病について詳しく取り上げていましたのでまとめておきます。
うつ病クイズ
まずは、うつ病を予防するための健康クイズが紹介されていました。
2. うつ病の予防には○○を食べると効果的
3. ○○を我慢するとうつ病のリスクを高める
提示されたのは上記の3問です。
1つ目の正解は“メタボ”の人はうつ病のリスクが高まる、のだそうです。
九州大学は、10年以上にわたって福岡県久山町の住民を調査しました。すると、メタボの人はうつ病になるリスクが3倍も高いことがわかりました。メタボになると、血液中の脂質が増え、血管がつまりやすくなります。これによって症状が出ないほどの小さな脳梗塞が引き起こされ、うつ病につながると考えられています。
2つ目、うつ病の予防には“納豆”を食べると効果的、です。
精神を安定させるのに役立つとされるのが、脳内物質のセロトニンです。このセロトニンを作る成分であるトリプトファンが納豆に多く含まれています。そのため、納豆を食べるとセロトニンが増え、うつ病の予防に良いのです。納豆以外にも、DHAやEPAを含む青魚を食べているとうつ病を発症しにくいとも言われているようです。
最後は“涙”を我慢するとうつ病のリスクを高める、とのことです。
アメリカの研究によると、感情によって流れる涙はストレスの原因物質を排出する役割があるそうです。涙を我慢するとストレスが溜まる一方となってしまい、うつ病の発症リスクを高めてしまいます。
そもそもうつ病とは
うつ病(うつびょう、鬱病、欝病、英語: Clinical Depression)は、気分障害の一種であり、抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥(しょうそう)、食欲低下、不眠、持続する悲しみ・不安などを特徴とした精神障害である。
ウィキペディアより
厚生労働省による調査では、うつ病の患者数は70万人を越え、調査を始めた平成8年からはおよそ3倍以上も増加しているとのことです。
駆け込みドクター!より
うつ病の特徴的な症状は、
・不安感
・やる気の低下
・思考力の低下
の3つです。
不安感とは自分が将来どうなるのか、周りからどうみられているのか、と不安になる症状です。やる気の低下に関しては、全ての行動が億劫になり、楽しかった趣味にも興味が持てなくなるようであれば要注意です。思考力の低下に陥ると、頭がぼーっとして考えるのが嫌になる、判断力が鈍り自分の行動に自信が持てなくなります。
また、うつ病は胃が痛い、頭が痛い、便秘、吐き気、何を食べても味がしない、小さな音でも騒音に感じるなどの症状を引き起こします。
杏林大学医学部付属病院の古賀良彦院長は、うつ病は脳の病気と考えられている、と言います。うつ病では、意欲や判断を司る左側の前頭葉の血流が低下していることが明らかとなっており、これはやる気の低下を招きます。また、脳の深い部分、海馬や扁桃体などは情緒や記憶を司る部分であり、ここが障害されると感情が上手くコントロールできなくなってしまうのだそうです。
また、うつ病では生活のモチベーションが下がるため、運動や食事、睡眠に悪影響を及ぼし、心筋梗塞や脳卒中といった血管にトラブルが起こりやすい状況が続いてしまいます。
うつ病の診断基準
うつ病の診断の際に使われるチェックリストが以下の7項目となります。
2. やる気が出ない
3. 頭が回らない
4. 食欲の低下、またが食べ過ぎてしまう
5. 不眠、または眠りすぎてしまう
6. 自分が貧乏だと思い込んでしまう
7. 重い病気にかかっていると思い込んでしまう
このチェックリストでは、1つでも2週間以上続くと、うつ病の可能性あり、ということになるそうです。実際の病院では、このような項目をもとに専門医が問診を行い、診断します。
うつ病のキッカケとは
実は、うつ病の原因は未だよくわかっておらず、ストレスや病気、環境の変化などさまざまな要因が重なって発症するとされていることです。
そのきっかけはさまざまであり、まさかこんなことが!?と思うことがうつ病のきっかけになることもあるそうです。うつ病治療の専門医である古賀先生が実際に体験したうつ病の4つのキッカケが紹介されていました。
ケース①サンドイッチ型
これは、上司と部下の間で板挟みとなり、極度のストレスから、うつ病を発症してしまうケースだそうです。
ケース②スマホ型
こちらは大学生が真夜中でもスマートフォンを操作し、常に連絡をとれるようにしていたことで、うつ病になってしまったケースです。多い時では1日20回以上起こされ、1日3時間程度しか眠れない不眠症になってしまったのです。1日4時間半以下の睡眠を5日間続けると、うつ病のリスクが高まるという研究結果も出ているそうです。
ケース③引っ越し型
新築に引っ越したことで、常にきれいでいないと気が済まなくなり少しの傷や汚れでもイライラしてしまう、慣れない土地で知り合いも少なく孤独感に苛まれてしまうことが要因となるそうです。これは主婦の方に多く、引っ越しうつ病という言葉もあるくらい、頻度の高いことだそうです。
ケース④空の巣型
子供が自立し、家を出たことでうつ病に陥ってしまうケースです。どんなにうれしいことでも、身内が自分から離れていくという喪失体験はうつ病を招いてしまうとのことです。
このように、うつ病になるキッカケは日常のさまざまな場面に潜んでいるのだそうです。
うつ病危険度チェック
また、番組内では出演者の日常行動からうつ病になりやすい危険度を探りました。
出演者の方々の中で、一番うつ病の危険度が高かったのは、パンサーの尾形さんでした。この回のゲストは以下の通りです。
実験では、自分の頼んだ飲み物と違う飲み物を持ってこられても、自分からは言い出せない尾形さん。相手のこと、今後のことを気遣って間違いを指摘することはしないそうです。
このような徹底した気遣いというのは、うつ病になりやすい特徴的な性格なのだそうです。また、待ち時間には意味もなく周囲をうろうろと歩いてしまっていました。これは、歩いていると何も考えなくてよい、座っていると不安になってしまうという気持ちの現れであり、これもうつ病になりやすい特徴なのだそうです。
続いて、30枚の性格カードを用いて、うつ病の傾向度をチェックしました。
駆け込みドクター!より
こちらの30枚のカードから自分の性格に当てはまるカードをいくつでも良いので選んでいきます。この性格カード選びでも、うつ病のリスクが高かったのは、パンサーの尾形さんでした。
なんとこのカード、選んだ数が多いほど、うつ病のリスクが高まるのだそうです。たくさんカードを選んだ人ほど、自分を分かってほしいという気持ちが強く、分かってもらえないことに対するストレスがうつ病リスクを高めてしまうのです。うつ病になりやすい人の特徴は、真面目・几帳面・人に気を遣うといった、とても良い性格であることなのだそうです。
この性格カード選びで尾形さんが選んだのは、30枚中17枚ものカードでした。
うつ病の客観的指標、PEA
うつ病というものは、現在はベテラン医師によってあくまでも臨床的な症状をもとに診断がつけられるものです。しかし、このうつ病の診断を助けてくれる客観的な目印があるそうなのです。
それが、血液の検査だというのです。
番組によると、PEA(リン酸エタノールアミン)という血液中に含まれる神経物質が、うつ病の人だけ少なくなっていることがわかっているのだそうです。このPEAの基準値は1.5〜3であり、1.5以下ではうつ病の可能性が高まります。
実際にこの血液検査を行ったのは、過去にうつ病のリスクが高いと診断されたことのあるオードリーの春日さんと、日常行動・性格カードの検査がうつ病の危険度が高かったパンサーの尾形さんです。
この2人のPEAの値は、春日さんが1.52、尾形さんが1.48と、尾形さんは基準値である1.5を下回っていました。この値だけで、うつ病の診断がつけられるわけではなく、尾形さんの現状を見るとうつ病ではないようですが、将来的にうつ病になりやすい環境にあるとのことでした。
真面目な性格の人が、うつ病にならないために気をつけることは、人に気を遣いすぎずに自分のペースで生活をしていくことが大切なのだそうです。
うつと食事の意外な関係
食事とうつにも深い関係があると番組は言います。偏った食事によって栄養不足になると、神経伝達のもととなる物質が減少して脳の働きが鈍ります。これによってうつ病のような状態になると考えられているのだそうです。
食事とうつ病の関係を研究している溝口徹医師によると、食事でうつ病になる人のタイプは多く4つにわけられるそうです。
タイプ①食べない型
カロリーを気にして、1日2食であったり、食事内容が貧弱であったり、必要な栄養がまったく足りていないタイプのことです。
タイプ②糖質依存型
米や麺類などの糖質ばかりを食べる人が当てはまるタイプです。
タイプ③ドカ食い型
決まった時間に食事をとらず、一度に大量に食べるタイプの人です。
タイプ④単品食い型
健康を意識過ぎるあまり、野菜だけ、果物だけなどの偏った食べ方をしている人が当てはまるそうです。
この中でもタイプ②の糖質依存型に当てはまる人は、食後すぐに散歩などの運動をすることが有効だそうです。食後すぐに歩くことで、筋肉が糖を分解し、血糖値を安定させてくれる効果があります。歩く時間は10分程度で良いとのことです。
心が不安定だなと思ったら心療内科へ
心療内科は精神科と内科の中間に位置しており、密接に関係しあう心と体の両方からアプローチして症状を改善してくれるのだそうです。
心療内科では精神科に行くほどじゃない、と思っている方のちょっとした心の不調をケアしてくれます。入試や昇級、クラス替えなど、ちょっとストレスを感じたときに、気軽に受診してくれるようになってほしいと心療内科の医師は言っていました。
うつ病の最新治療
最後に、番組では最新のうつ病の治療法を紹介しています。
まずは、磁気刺激療法というものです。これは、脳に磁気的刺激を与えて、不安や悲しみといった感情を抑えます。これは投薬による治療と比べてほとんど副作用がなく、アメリカでは8000人のうつ病患者の約40%に効果が見られたのだそうです。磁気刺激の最新マシンはとても怖く感じますが、本人は痛くも何ともないとのことです。
駆け込みドクター!より
続いては、愛知県で行われている、自然豊かな環境で自然治癒力を増幅させることでうつ病を改善されるという治療法です。治療は週2日の農作業を行い、共同作業によるコミュニケーションや土に触れる、太陽光を浴びるといったことが好影響をもたらすそうです。
また、うつ病患者の復職を支援するプログラムも行われていました。うつ病は職場復帰後も再発しやすく、再休職が多い病気です。治りかけの時が危なく、復帰のタイミングを誤ると悪化の原因にもなってしまううつ病、その対策として本物の職場に近い環境を再現して実践的なリハビリを行っているのだそうです。パソコン作業やプレゼンの練習もしており、あえて、病気の原因と似たストレスを与えることもあるとのことでした。
このようにうつ病治療は今も、最新の研究がすすめられているのだそうです。うつ病の特徴をよく知り、うつ病になりにくい生活を心がけましょう。