命をうばう!?鼻づまりの原因と治療法〜『チョイス@病気になったとき』より

風邪や花粉症など、様々な要因から引き起こされる鼻づまり。
たいへん身近な症状で、「いつか治るだろう」と考えて放置してしまいがちです。しかし、この鼻づまりは命にかかわるような大病の予兆であるかもしれないのです。今回はNHK『チョイス@病気になったとき』にて鼻づまりについて紹介されていましたので、まとめておきます。

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膿が引き起こす鼻づまり~副鼻腔炎

番組に登場したYさん(30代男性)は、何年も鼻づまりが続いていたそうで、鼻水は出ないのになぜかずっと詰まっているという状態だったそうです。

そのような状態でいたある日、風邪をひいてしまったYさんがのどの違和感から痰を吐くと、ふつうよりも色の濃い痰が出てきて、さらには粘り気の強いカスタードのような鼻水まで出てきたといいます。そしてしまいには、左の頬に痛みを感じるようにまでなってしまいました。

そこでYさんは耳鼻咽喉科を受診することに。
頭部のX線検査をしてみると、痛みを感じる左の頬に白い影が……。

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『チョイス@病気になったとき』より

医師によるとこの影の正体は膿で、「副鼻腔炎」という病気であると診断されました。
飲み薬だけで治療できるレベルだったので、服薬をはじめたYさん。薬を飲み始めて2〜3日ほど経過すると、なんと痛みだけでなく、鼻の通りも良くなったといいます。ずっと続いていた鼻づまりは副鼻腔にたまった膿が原因だったのですね。

副鼻腔炎とは

頭蓋骨の広い範囲には「副鼻腔」という空間があります。

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『チョイス@病気になったとき』より

副鼻腔には、鼻から吸い込んだ空気を温めて加湿してあげる役割や、頭に衝撃があった時にそれを吸収して脳への衝撃を和らげるという大事な役割がありますが、ここに鼻水や、鼻から大量に吸ってしまった水などが溜まってしまった後に炎症が起こる病気を副鼻腔炎といいます。
きっかけとして一番多いのは風邪で、体が弱り免疫機能が落ちている時に炎症を起こしてしまうのだそうです。

このような話を聞くと、人によっては「鼻うがい」も副鼻腔炎を引き起こすのでは?と心配になるかもしれません。

鼻うがいとは
鼻から専用の洗浄剤や生理食塩水を注入して、ほこり、ウイルス、うみなどの汚れを取り除く方法です。
鼻の奥にあたる上咽頭(じょういんとう。鼻の奥とのどの境界付近で、その少し前方の耳管咽頭口からは中耳とつながっています)まで洗うことができるので、鼻をかむよりすっきりとした感覚になります。
マイナビニュースより

しかし番組に登場した東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井医師によると、鼻うがいはむしろ汚れた副鼻腔を掃除できるし、アレルギーを起こす化学物質も流してくれるので心配は無用だし、むしろやるべき、と話していました。

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副鼻腔炎がさらに悪化すると……

つづいて登場したKさん(30代女性)は20歳の冬に、寒い駅のホームから急にあたたかい電車内に入ったとき、とつぜん息苦しくなり、咳込んでしまったことがあったそうです。鼻づまりも同じ時期くらいに気になり始めたので、当初は風邪かな?と思っていたそうですが、あまりにもその状態が長く続くので呼吸器科を受診すると、せきぜんそくという病気であると診断されました。

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『チョイス@病気になったとき』より

気管支に炎症が起こり、気道が狭くなった状態だったそうです。薬を処方されたので咳は止まったものの、なぜか鼻づまりだけは治らないままでした。しだいに味やにおいまでわからなくなり始め、しまいにはパティシエの仕事を辞めざるを得ない状態にまでなってしまったそうです。

そこで耳鼻咽喉科を受診し、X線画像で頭部の様子を診てみると……

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『チョイス@病気になったとき』より

副鼻腔の大部分が膿で詰まってしまっていました。この赤い部分がぜんぶ膿だそうです。
この検査結果から慢性の副鼻腔炎と診断されたKさんは、副鼻腔から膿を吸い出す手術を受けました。

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『チョイス@病気になったとき』より

術後はこんなにスッキリ(黒い部分が副鼻腔)。
これで鼻づまりも改善し、味覚も戻り、咳喘息の症状もおさまってきたといいます。

それにしても、味覚は舌で感じるものなのに、どうして副鼻腔炎で感じにくくなってしまうのでしょうか。

石井医師によると、もともと嗅覚と味覚には密接な関連があって、嗅覚が悪くなると微妙な味の違いが分からなくなってしまうのだといいます。だから、臭覚が戻ったことでおのずから味覚も回復した、ということなんだそうです。

また、せきぜんそくまでよくなった理由も気になるところですが、石井医師によるとKさんは「好酸球性副鼻腔炎」という種類の副鼻腔炎だったからだそうで、この病気にはぜんそくを合併症状として出す特徴があるのだそうです。

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『チョイス@病気になったとき』より

副鼻腔炎によって出されていた炎症物質が副鼻腔炎を治したことによって無くなり、その炎症物質に影響を受けて発症していたせきぜんそくが弱まり、せきぜんそくによって発生していた炎症物質が少なくなったおかげで副鼻腔炎の悪化も抑えられ、さらに炎症物質が減少し…という好循環が生じて、せきぜんそくもおさまっていっているのだそうです。

慢性の副鼻腔炎の原因は?

石井医師によると、背景にはアレルギーがあると思われるとのこと。
アレルギー体質の方で鼻づまりが長く続いた時は“副鼻腔炎なのかも”と考えられるように、この知識を頭の片隅に置いておくのがいいかもしれません。

副鼻腔炎の手術はどのようにおこなう?

「自在吸引管」という、先っぽが自由に曲がる管を、内視鏡を使いながら鼻に入れて、頬骨の裏側くらいまで入れていって膿を吸い取るそうです。

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『チョイス@病気になったとき』より

手術中は全身麻酔をかけているので痛みはなく、費用は1週間の入院も込みで約35万円ほどとのこと。
ただの鼻づまりと思って放っておいたら35万円の手術になるかもしれない……と、少々衝撃的ですが、さらに重症化すると、もっともっと怖い事態に陥ってしまうのだそうです。

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身体の中で、カビが増殖…

Iさん(40代女性)は、子供の頃から鼻づまりに悩まされており、鼻がつまっている時は口で呼吸するしかないというほど、重い症状が出ていたそうです。
食事中には軽い呼吸困難になってしまうこともあるので、苦しみをなくすために、おかゆやパンなど、あまりかまなくてもいい質素な食事ばかりをとるようになったといいます。

そんなある日、突如異変が。
立っていられないほどのひどい頭痛が襲われ、さらに、左奥の歯まで痛み始めたといいます。あまりの痛みに歯医者を受診したIさんは、診断の結果、歯を抜くことを勧められてしまいます。

「とにかくこの激痛から解放されたい」と考えたIさんは抜くことを決断。これで歯の痛みはなくなりました。しかし、顔の左側全体の、さらに奥の方には断続的に痛みが出続けていました。

これはおかしいと思ったIさんは、久しぶりに耳鼻咽喉科を受診。画像診断をしてみると、左の副鼻腔にびっしりと膿がたまっていて、それだけでなく、「アスペルギルス」というカビの一種が、画像に黒く写っていたといいます。

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『チョイス@病気になったとき』より

膿にカビが生え、それがどんどん増殖して周囲の神経などを圧迫することで、痛みが出ていたのです。

どうして体内にカビがはえてしまったのでしょうか?

原因は、免疫機能の低下。

Iさんは呼吸の苦しさから食事を質素にしていたので、栄養不足に陥り、免疫機能が低下してしまいました。このために、本来は吸い込んでも体内で駆除されるはずのカビが、そのまま繁殖してしまったのです。
膿やカビを内視鏡で吸い出す手術をおこなった今では鼻づまりも解消し、しっかりと噛む食事を楽しめているそうです。

身体の中にカビが生えるなんて、考えただけでも鳥肌がたってしまいますね。
石井医師によると、カビの増殖は、抗生剤を飲み続けていたり、糖尿病などで免疫機能が低下している場合などに注意が必要なのだそうです。
カビがはえたまま進行していくと、急激に視力が落ちたり、さらに悪い場合は髄膜炎という病気になって死に至ることもあるそうです。

髄膜炎とは
髄膜(脳および脊髄を覆う保護膜)に炎症が生じた状態。炎症はウイルスや細菌をはじめとする微生物感染に起因し、薬品が原因となることもある。髄膜炎は炎症部位と脳や脊髄との近接度合いによっては生命の危険があるため、救急疾患に分類される。
最もよくみられる髄膜炎の症状は頭痛、項部硬直であり、発熱や錯乱、変性意識状態、嘔吐、光を嫌がる(羞明)、騒音に耐えられなくなる(音恐怖)などといった症状を伴う。

ウィキペディアより

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副鼻腔炎の気づき方

においを発するようになって、周りの人に指摘されることではじめて気づくというパターンはよく聞きますね。他人が感じるくらいなのだから自分でもにおいそうなものですが、鼻が麻痺してしまって、自分では感じられないことも多いそうです。

家族や親しい友人に異変を感じたら、早めに指摘してあげるのが大事です。

さて、様々な副鼻腔炎のケースを紹介してきましたが、鼻づまりの原因になるのは副鼻腔炎だけではありません。番組ではこんな症状も紹介されていました。

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鼻そのものが……

Hさん(50代女性)は40年以上鼻づまりに悩まされていました。寝ている時も苦しくて、熟睡できずに疲れが取れなかったといいます。

そんなHさんは、耳鼻咽喉科にて様々な治療を受けました。
はじめに受けたのはレーザー治療。これは鼻の中の粘膜を焼く治療で、効果はありましたが、粘膜は数年で元通りに再生するので、再び鼻づまりに悩まされるようになってしましました。

次に挑戦したのは、市販の点鼻薬。1日2,3回までと書いてありますが、鼻が通ると気持ちがいいので、6,7回は使ってしまっていたといいます。これが鼻づまりを悪化させることに。薬の使いすぎによって粘膜が大きく広がってしまい、鼻の穴を閉じてしまう「肥厚性鼻炎」という病気になってしまいました。

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『チョイス@病気になったとき』より

もう治療するすべはないのか……。
悲嘆に暮れたHさんでしたが、画像検査によって根本原因がわかったといます。それは意外にも、鼻の奥にある軟骨。左右の鼻の穴を仕切っている軟骨がS字状に湾曲することで空気の通り道を狭くしてしまっていました。

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『チョイス@病気になったとき』より

これは「鼻中隔湾曲症」という病気で、これがそもそもの鼻づまりの原因だったのです。

そこでHさんは鼻中隔湾曲症を治す手術を受けることに。曲がっている軟骨の一部を切り取り、まっすぐにするという手術です。

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『チョイス@病気になったとき』より

これで空気の通りが良くなり、鼻づまりは根本から解決しました。すべて鼻の中での手術なので手術跡なども残らないそうです。

ちなみに、この鼻中隔湾曲症は、われわれの遠い祖先である猿人や原人には少ない現象なのだそうです。大脳が発達して前頭葉が大きくなった結果、鼻の軟骨が下方に押されて湾曲してしまう人が増えてしまったのだそうです。
こういった“進化の代償”としての鼻づまりもあるのですね。

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まとめ

副鼻腔炎と鼻中隔湾曲症という鼻づまりの2大要因を見てきたことで、鼻づまりが起きたときにどうすればよいかがわかってきました。
それは、自己診断でお茶を濁さずに耳鼻咽喉科を受診して「鼻づまりの原因を調べて欲しい」と伝えることです。
耳鼻咽喉科では医師が目で鼻の中を診察したり、わかりにくい場合はX線写真をとって根本原因を調べてくれます。
この診断にもとづいて適切な治療をおこなえば誰でも快適な日常を取り戻すことができますから、鼻づまりが長引ときは耳鼻咽喉科を受診しましょう。


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