体臭が気になることはありますか?
NHK『あしたも晴れ!人生レシピ』が番組でとったアンケート(40歳以上の1427人を対象に実施)では、ちょうど半分の人が「体臭が気になる」と回答していました。
気になる臭いとしては「汗」や「加齢臭」、「足の臭い」などが挙げられていましたが、「疲れた時に体が臭う」という悩みも多くありました。
これは「疲労臭」と呼ばれる体臭で、体に疲労が蓄積すると出てくるそうです。厄介なことにこの臭いはシャワーなどを浴びても落とせないそうです。
今回は、この疲労臭の原因や対策法などをまとめていきたいと思います。
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誰でも出してしまうかもしれない「疲労臭」
3年ほど前から体臭が気になりはじめたMさん(52歳主婦)は、ある日長女から「今日お母さん臭いよ」と言われてしまったそうです。
におうのは毎日ではないそうですが、Mさんによると「足は特ににおう」そうで、においの特徴としては「ツーンとしたにおい」がするそうです。
これに気づいて以来、Mさんは人と会う前には必ずシャワーを浴びるようにしたり、玄関に香水を置いて必ずつけるようにしたりなどの対策をとるようにしたそうで、カバンの中にも香水を常備し、気になるときにはいつでもつけられるようにしているそうです。
それでも、娘さんから指摘されることがあると話していました。
そこで、体臭専門のクリニックで診てもらうことになりました。
今回担当したのは、30年以上体臭に悩む人を診察してきた五味常明医師です。
まずは問診を行います。「午前と午後で匂いが違う?」という質問にMさんは「午前中は脂っぽいにおいで、午後はツンとくる感じ」と答えていました。
こうした臭いの特徴や、足のむくみが出ていることなどから五味氏は「疲労臭」と診断しました。
体が疲れてくると全身からアンモニアのツンとした臭いが出て来るのが疲労臭の特徴です。一般的な汗のにおいや加齢臭は、汗や皮脂が皮膚の上の雑菌と混ざることで臭いますが、疲労臭は血液中のアンモニアが増加し、体内からガスとして直接放出されるために臭うという違いがあります。
疲労が原因で臭いが出始めたということについて、Mさんには思い当たるふしがありました。5年ほど前から近所に住む認知症の母の家事を週に3,4日行うようになっていたそうで、その頃から疲れが取れにくくなっていたそうです。
こうしたストレスも疲労臭の原因になります。五味氏は「生活のストレスに加えて、自分で自分のにおいを気にしすぎるとそれもまたストレスになり、疲労臭の原因になる」と指摘していました。
さらに、五味氏は問診で食生活についても訪ねていました。
Mさんは「肉が大好き」と答えていましたが、肉は腸内で分解される時にアンモニアを発生させるので、これも疲労臭の原因になります。
「便秘」であることも疲労臭の原因になっていることがわかりました。腸内環境が悪化すると、たまったアンモニアを上手に排出できなくなってしまうのです。
以上のような諸々の要因から、疲労臭が出てしまっていたのです。
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疲労臭と病気
体臭と病気の関係を研究している東海大学理学部の関根嘉香氏によると「体が疲れると臭うというのは経験的には昔から知られていたが、正体がわかったのはここ15年くらい」なのだそうです。
番組では、Mさんからどれだけのアンモニアが発せられているかを、関根氏が測定していました。
銀色の容器の中にアンモニアをくっつける特殊な紙が入っています。
あしたも晴れ!人生レシピより
これを皮膚の上にのっけて、固定します。
あしたも晴れ!人生レシピより
アンモニアが出ていると紙が吸着するので、その紙を溶液に漬けてアンモニアの量を測定できます。
Mさんは足の裏を測定しました。
その結果は…
あしたも晴れ!人生レシピより
疲れを感じた時は1メートル離れていてもアンモニアの臭いがするほどの量が発せられていることがわかりました。
しかし関根氏によれば、このくらいの量は疲れていたら誰でも出しているそうで、肝臓が悪い人は2〜3千という数値になることもあるそうです。
ちなみに、こうした検査器具が無い場合に、自分で自分の臭いを自覚するというのは、どうしても難しいところがありますよね。
自分のにおいを自分で確かめるには、1日着たシャツや靴下を袋に入れて密閉し、しばらくしてからそれを自分で嗅ぐとわかるそうです。自分の鼻は自分のにおいに慣れているので、外などに一旦出てリフレッシュしてからその袋のにおいを嗅ぐようにしましょう。
体臭と病気の関係
現在、見つけにくいがんを体臭で早期発見するという研究も進められているそうです。これまでは微量のにおいを測定することは難しかったそうですが、技術の進歩で可能になるかもしれないそうです。
今は健康診断も血液検査が主流ですが、皮膚ガスなら装置を置いておくだけでできるので、実現すればわれわれの負担が少ない検査方法で行えるようになるかもしれません。
アンモニアについて
アンモニアは、タンパク質をエネルギーへと変換する際や、古くなった細胞が分解される際などに、体のさまざまな場所で生成されます。
人体にとっては「疲労」のもとになる有害な物質で、たとえば「中枢神経の機能低下」や「筋肉中の乳酸の生成促進」などの悪影響を及ぼす(乳酸が増えると組織や血液が酸性に傾いて細胞の活動が低下するため、疲労につながる)ため、肝臓で尿素に変換されたり、「グルタミン合成酵素」というものが働いてグルタミンという物質に変換されたりすることで無毒化されます。
「グルタミン」をサプリで摂取する人は、タイミングに注意が必要
トレーニングをする人の中には、筋肉の分解を抑制する目的でグルタミンのサプリを摂取している人もいます。
グルタミン自体は非必須アミノ酸(体内で産生できる物質)なのですが、疲労が多かったりストレスが溜まっていたりすると体内で作るグルタミンだけでは不足してしまうことがあるので、運動強度の高い人やストレスが強い人などに有効なサプリではあるのですが、グルタミンが肝臓に運ばれると、グルタミナーゼという酵素の働きによって、グルタミン酸とアンモニアに分解され、腸管内にアンモニアが増えることになります。
運動中に疲労物質が増えるとよくありませんなから、グルタミンを経口摂取する際には運動前や運動中ではなく、運動後に摂取するようにしましょう。
参考:
疲労の原因と回復のメカニズム(つくばアソティックフーズ)
コンディションUPのためのサプリメント
肝臓と疲労の意外な関係(オルニチン研究会)
疲労臭を少なくするレシピ
疲労臭はその特性上、体の中から改善していかないと臭いは消えません。
たとえば腸内でつくられたアンモニアは、腸内環境が整っていれば吸収される前に尿として排出することができます。
番組では管理栄養士の堀知佐子氏が肝機能を向上させるレシピを紹介していました。
最初に取り上げた食材が「しじみ」です。
しじみには肝臓の働きを助けるオルニチンが含まれているのですが、調理前に冷凍することでその量が増えるそうです。
しじみを一晩水につけて砂抜きしてから水気を拭き取り、密閉袋に入れます。
あしたも晴れ!人生レシピより
空気を抜いて密閉したら、冷凍庫で1日ほど冷凍します。
たったこれだけで、オルニチンの量が5〜8倍にも増えます。
このしじみを用いたレシピの例として、2品紹介されていました。
しじみの炊き込みご飯
まず、凍ったしじみを凍ったまま鍋に入れます。
あしたも晴れ!人生レシピより
昆布を入れて味が広がるようにし、アクをとりながら煮ます。
このだし汁を使って、米を炊きます。
殻から外したしじみの身と千切りにした生姜を入れて、酒と醤油で味を整えてから、炊飯器のスイッチを押します。
あしたも晴れ!人生レシピより
炊き上がったら、お好みで出汁に使った昆布を刻んでのっけて、完成です。
堀氏は「お味噌汁だと、しじみの身は面倒くさくて食べないという人もいるが、身を外して入れることで、汁に出ていない栄養素もきちんと摂ることができるので、しじみの良さを丸ごと取り込むことができる」と話していました。
しじみと野菜のピリ辛炒め
あしたも晴れ!人生レシピより
あらかじめ、野菜はさいの目に切っておきます。生姜とネギはみじん切りにしておきます。
まず、胡麻油をフライパンに敷き、臭み消しの豆板醤を炒めます。そこに、凍ったままのしじみを入れて、パプリカとナス、トマトを入れて炒めます。
ポイントは強火で一気に炒めることで、しじみの殻が開いたら酒と醤油を加えます。
最後に生姜とネギを入れて、サッと合わせれば完成です。
次に、腸内環境を整えるレシピも紹介されていました。
発酵ドレッシング
腸内環境を整える効果を期待して、味噌、ヨーグルト、甘酒という3種類の発酵食品でつくるドレッシングも紹介されていました。
と言っても、甘酒:ヨーグルト:味噌を1:2:2の割合で混ぜるだけの簡単なドレッシングです。かき混ぜてなめらかになったら完成です。
発酵食品は毎日摂ることが重要なので、ドレッシングにすると摂りやすいというメリットがあります。
鮭としめじの発酵ソースパスタ
この発酵ドレッシングを使ったパスタが紹介されていました。
鮭にはアスタキサンチンという抗酸化作用が強い物質が含まれており疲れをとる効果などがあるので、その点でも疲労臭の対策に有効です。しめじは食物繊維が豊富に含まれているので、腸内環境にプラスに作用します。
まず、油を敷く前のフライパンにしめじを入れて炒めます。
あしたも晴れ!人生レシピより
きのこが汗をかいてきたらオリーブオイルを入れて、ぶつ切りにした鮭を入れ、弱火で焼いていきます。
鮭に火が通ったら茹でたパスタを入れて、発酵ドレッシングを加えて混ぜていきます。
あしたも晴れ!人生レシピより
最後にパセリを散らして完成です。
発酵ドレッシングは冷蔵庫で1週間ほどもつそうなので、常備すると良いでしょう。
これらのレシピを見た関根氏は、「アンモニアは肝臓で尿素に変換されて解毒される。この反応に関与するのがオルニチン。オルニチンをたくさん取れば解毒作用が進んでいく。オルニチンを摂取すると疲労臭が減るという研究報告もある」と話し、摂取を推奨していました。
ストレスや疲労の蓄積を抑える方法
関根氏は「毎晩湯船に浸かること」を推奨していました。
就寝前に、気持ちいいと感じる温度のお湯に10〜20分入浴するといいそうです。
その効果は以下の3つです。
1, リラックスできる…ストレスの軽減につながります。
2, 血行が促進される…アンモニアが尿素に変換されたあと、腎臓で濾過されて尿に排出されますが、腎臓を20回通過するよりも30回通過した方が濾過の効率が良くなるため、疲労臭の原因であるアンモニアの排出が早くなります。
3, 寝付きが良くなる…睡眠不足は疲れの原因なので、疲労臭を増やしてしまいます。これを失くすためにも寝付きを良くすることは重要です。
Mさんは発酵ドレッシングの使用と、湯船に浸かることを1週間続けてみました。
その結果、4日無いこともざらにあったというお通じも2日に1回は来るようになり、さらに、湯船に浸かることで朝までゆっくり眠れるようにもなって、娘さんからは「ここ1週間臭っていない」と言われたそうです。
即効性のある対策法
五味氏によると「みょうばん水」が効果的だそうです。「みょうばんは水に溶けると酸性になる。疲労臭の原因であるアンモニアはアルカリ性なので中和され、消臭される」と解説していました。
空のペットボトルにみょうばん16gを入れて水400mlを注ぎ、よくふるだけです。
溶けにくい時は1日置いておくと、だんだん溶けていきます。最初は白く濁っていても1日置けば透明になり、使える状態になります。これをスプレー容器に入れかえて、吹きかけて使います。
五味氏によると「全体的に気になる場合は衣類にスプレーして、乾かしてから着ると、衣類が防臭服になる。疲労臭は非常に揮発性が強い。衣類に消臭機能をもたせると他人には伝わらない」といいます。
さらに、レモン水を数滴入れておくと臭いをマスキングする効果も加わるため、効果が強まります。
ちなみに、みょうばんというのは漬物をつける時に使う塩の一種です。薬局や大きいスーパーに行けば売っているそうですから、探してみましょう。
疲労臭がとても気になる人は、足に直接噴霧したり、タオルに染み込ませて首筋を吹きかけたりなどしてもよいそうです。
ただし、人によって合う、合わないがあるかもしれないので、最初は2〜3倍に薄めてから使う方がいいとのことでした。
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まとめ
今回は最近注目されている新しい体臭である「疲労臭」についてご紹介してまいりましたが、体臭が全くないという人はいませんから、あまり気にしすぎることもよくありません。
疲労臭が気になる方は体の中から変える必要があるので、まずは即効性のあるみょうばん水で対策を取りながら、今回ご紹介した食品や入浴を習慣化して、問題を根本から解決することを目指しましょう。