今や、日本で死ぬ人の3人に1人はがんが原因なのだそうです。がん治療になると必ず出てくるのが抗がん剤治療。副作用がきつくて明るいイメージがないという人が多いと思われますが、最近ではこの抗がん剤治療を真っ向から否定する医師が出てきて話題になっています。
近藤誠医師が有名ですね。
番組ではこの抗がん剤治療についてゲストの医師たちが考えをコメントしていました。
【ゲスト医師】
医療ジャーナリスト・医学博士 森田豊氏
近畿大学医学部講師 榎木英介氏
産婦人科医 富坂美織氏
産婦人科医 丸田佳奈氏
事例
番組で設定された事例では、2年前にがんで母親をなくした47歳の女性が夫の抗がん剤治療に疑問を持ち、『本当に抗がん剤治療をしても良いのだろうか?』と悩む内容でした。
夫のがんは転移の危険性があり、医者は抗がん剤治療をすすめますが、かつて、女性の母親は効きが悪くなる度により強い抗がん剤に切り替えるという治療を繰り返し、副作用に苦しんだ末に亡くなりました。
がん細胞だけでなく正常な細胞までも傷つける抗がん剤治療は、結局寿命を縮めただけではないのかという疑念がぬぐえず、また、最近では抗がん剤は効かない、がんとはたたかわない方が良いという内容の本も多くなっていることで、より悩んでしまう、、、というものです。
番組MCの黒田さんも
『”抗がん”なのでがんを倒すと思うが進行をゆっくりさせるだけらしい』
『進行がゆっくりだと副作用と闘いながらの苦しい闘病期間が延びるだけ?』
といった疑問を呈しておられました。やはり抗がん剤に対する疑問はみなさんいろいろ持っているようです。
榎木英介氏の意見
『効くがんなら受けるべき』
榎木医師によると、一口にがんと言ってもその種類や状態は千差万別で、ひとくくりにはできないのだそうです。そして、今は遺伝子レベルで抗がん剤が効くのかどうかがわかるようになりつつあり、患者さんのがんに合った抗がん剤治療をすれば効く場合も十分にあるということでした。
どんながんでどの程度効くかは病院に聞けば教えてくれるのでまずは調べましょうということでした。
森田豊氏の意見
基本的には受けた方がいい
森田医師によると、抗がん剤はがんの種類によって効く効かないが大きく異なるそうです。たとえば、卵巣がんや白血病は7割~8割の患者さんに抗がん剤が効くけど消化器系のがんだと1割~2割程度しか効かないそうです。また、副作用についても大体何パーセントくらいの確率でどの程度の副作用が起こるのかといったこともわかっているので、とにかく数字で教えてもらうようにすることが大事とのことでした。
一番良くないのは医者の『抗がん剤しましょう』の一言で決断してしまうこと。抗がん剤にはいろいろな種類がありますから、医者任せにせず、具体的な数値による説明を求めてくださいということでした。
医者との意思疎通が大事ということです。
また、日本の新薬承認の問題についても言及がありました。
最初に使う抗がん剤のことをファーストラインと言うそうですが、それが効かなくなったらセカンドライン、セカンドラインも効かなくなったらサードラインといった具合に、良くならなければ月々抗がん剤を変えていったりするそうです。しかし、そうやって抗がん剤を変えていっても、よくならなければいずれは手詰まりになります。すると、次の段階では海外の薬を検討したりもするそうです。
日本の場合は海外の薬が承認されるまでに5年、10年とかかってしまうドラッグラグの問題があります。海外で広く使われているような薬が、なぜか日本ではいまだに未承認なんていうこともあるそうです。
そこで、海外の薬でよさそうなものを個人輸入し、医者の責任で治療するという選択肢が出てきます。個人輸入するのは患者か医師かですが、いずれにしても、この場合の治療費は全額自己負担になるため、結局お金を持っている人だけがそういう治療を受けることができるという状況があります。それはおかしいのではないかという話でした。
丸田佳奈氏の見解
『患者本人が選べるべき』
丸田医師によると、抗がん剤は5年生存率を基準に選ばれていて、ガイドラインも設定されているそうです。つまり、ガイドラインに沿った形で、推奨される順番が決まっているということです。
また、抗がん剤=副作用がつらいというイメージがあります。脱毛、吐き気、手足のしびれなど、様々な副作用が抗がん剤の暗いイメージを作っていますが、今は副作用を軽減するための薬もあるそうです。
ただ、副作用がない抗がん剤はないわけで、結局のところ、副作用が受け入れられるかどうかは患者さん自身の判断にゆだねるほかないということです。たとえば、
・寿命が短くなっても副作用が少ないものを選ぶか
・苦しくてもできるだけ長く家族と過ごすか
これは患者の価値観によって判断が変わってきます。
富坂美織氏の見解
『最近の抗がん剤は劇的に効くものもある』
富坂医師によると、抗がん剤が入院してつらいだけという時代は終わっているとのことでした。確かに、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を考えると抗がん剤で寿命が伸びないかもしれないし、医者の中にも、『もし自分が末期がんになったら抗がん剤ではなく遊んで最期はモルヒネを打って死ぬ。』という人もいるそうです。
しかし、今は劇的に効く抗がん剤もあるし、内服薬で外来で対処できるものもあるということでした。
外来で抗がん剤治療ができるというのは経済的にも精神的にもかなりの負担軽減になるのではないでしょうか。
「がんは治療してはいけない」という最近の風潮はどう思う?
森田豊氏
「がんは治療してはいけない」とか「手術してはいけない」とか「がん検診してはいけない」とか、そういうことを言ってるヤツは異端児。
早期に見つかればがんは退治できる。
榎木英介氏
高齢者には強いがん治療はしない方がいいという意見はある。
しかしマスコミで治療するなというと治る可能性がある人まで誤解する。
高齢者はがんを持ったまま亡くなる天寿がんという(考え方)もがある。
天寿がん
さしたる苦痛もなく,あたかも天寿を全うしたように人を死に導く超高齢者(男性83歳、女性90歳以上)のガン
というわけで、やはり抗がん剤をはなから避けるというのはやめるべきという点で皆さん同じだったようです。