先日の『羽鳥慎一モーニングショー』では、「副作用のない抗がん剤治療」について特集していました。抗がん剤を「ナノマシン」と呼ばれるカプセルに包むことで、健康な細胞を痛めることなくがん細胞にだけ働きかけるので、副作用が劇的に軽減するとのことです。
その仕組みや実用化までどれぐらいかということが伝えられていました。
なぜ抗がん剤治療で副作用が起こるのか?
「がん治療前に気がかりだったことは?」という調査があり、「病状」についで「治療による副作用」に関係する事柄が気になる人が多いという結果だったそうです。みんな、抗がん剤治療の副作用が気になるようです。
なぜ抗がん剤治療で副作用が起こるのか?それは、従来の抗がん剤治療では、「正常な細胞まで傷つけてしまっているから」です。抗がん剤は細胞の分裂を障害する薬ですが、正常な細胞とがん細胞を区別することなく障害してしまうのです。よって毛根や骨髄といったところに副作用が出るのだそうです。
吐き気に関しても、細胞が「毒だ」と認識したものは外に出されてしまうので起こるという説明です。
副作用のない抗がん剤治療ができつつある!
抗がん剤をカプセルで包んだ「ナノマシン」というものができつつあるといいます。どういうものなのでしょうか?
ナノマシンを研究開発しているのは東京大学工学部の片岡一則教授です。 医学博士ではなく、工学博士です。
「ナノマシン」は、 マシンと言っても 機械でできているわけではありません。薬剤の機能が「機械のように作用するから」、こう呼ばれているようです。片岡教授が開発したのは「抗がん剤を極小のカプセルで包んだ薬剤」です。ナノマシンに入っている抗がん剤自体は新薬というわけではなく、従来からあるもので、それをカプセルに包んだということです。
その大きさは、インフルエンザウィルスより 一回り小さい100ナノメートル以下です。この粉は何千万個のナノマシンの集合体で、特殊なポリマー(カプセル)でコーティングされているということです。
羽鳥慎一モーニングショーより
このナノマシンは、「血管の穴の大きさ」 を利用してがん細胞に集中的に抗がん剤を届けることができ、これまでの 抗がん剤より 副作用を少なく出来るというのです!
[sc:アドセンスレスポンシブ ]ナノマシンの機能
①がん細胞に栄養を届ける血管の特性を利用して、がん細胞に選択的に入り込む
がんに栄養を届ける血管には穴があいているそうです。がん細胞は 栄養を必要とする為、 血管を引き寄せるのですが、急ごしらえな雑な血管なので穴が開いているといいます。その穴の大きさが丁度ナノマシンが入れる大きさなので、 ナノマシンはその穴を通ってガン組織に選択的に侵入することができるのです。
羽鳥慎一モーニングショーより
通常の血管の穴は小さいのですが 抗がん剤のような分子が小さい薬はその穴をも通ってしまうので、健康な細胞組織にも届いてしまい、副作用を起こします。 画像では、従来の抗がん剤では血管の外に 薬剤が漏れだしていることが確認できます。
羽鳥慎一モーニングショーより
血管から癌細胞に入った ナノマシンは、核に近づきます。核に近づくほど、酸性になっているそうです。
羽鳥慎一モーニングショーより
②酸性になるとカプセルが壊れ、 薬剤が放出される特性
ナノマシンは、酸性になるとカプセルが壊れるようにできているので、核に近づいて初めて、薬剤が放出されるます。こうしてナノマシンががん細胞ひとつひとつを撃破するしくみです。
実際の臨床試験では?
今、とある病院でこのナノマシンの臨床試験が行われているそうです。 専門家はその効果について、
『大変よく効いている患者さんがいらっしゃるのは事実。しかしこれは一般の抗がん剤でも 時々見られることなので、臨床におけるフェーズⅢ(最終段階の試験)の結果を待たないと明確なことは言えない。ただ予想として、今の標準治療と同等かよりよい延命効果が得られることは考えられる』
と、説明します。
副作用については、
『この薬剤の一番の特徴と言えるが、脱毛、吐き気、腎臓・神経の毒性など、あらゆる副作用が軽いという事実がある』
と語ります。
脱毛に関しても、従来の抗がん剤ではすべて抜け落ちていたものが、ナノマシンでは脱毛の頻度・程度が少なくなっているとのことです。
現在、 ナノマシンは5つの薬が臨床試験の段階で、中でも肺がんなどの抗がん剤と乳がんの抗がん剤は、最終段階の試験まで進んでいます。最終段階の試験とは、進行したがん患者に用いて、本当に延命効果が出ているのかを見極めるもので、それが確認できれば当局への承認申請という運びになります。実用化の一歩手前ということです!
羽鳥慎一モーニングショーより
当局への承認申請はそんなに遠くないようです。
今後どのような治療に使えるようになるか
片岡教授は、
『がんの怖さは転移することだが、ナノマシンは診断ではわからない小さな転移まで見つけて行ってくれる。なので手術後に仮に小さな転移があっても見つけて治療してくれる、すなわち転移で再発する可能性が下がる』
と語ります。
「目には見えないほど小さなナノカプセルでがんを直撃」という報道が、日経ビジネスオンラインでされています。つまり、片岡教授が研究しているナノマシンのことですね。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/082500002/?rt=nocnt
これによると、ナノカプセルで「患部にだけ」薬剤を送ることができれば、がん治療だけでなく、「脳疾患治療などにも広がる可能性がある」とあります。さらに「最終目標は予防から早期発見、治療まで実行する『体内病院』だ。」とのことで、ナノマシンは無限の可能性を秘めた新しい治療法であることがわかります。
研究の深まり。広がりを期待したいですね!
松村医師は、がん細胞の表面にある特有の目印に、ナノカプセルがくっつくしくみを研究されているそうです。それが実現すれば、よりがんにだけに選択的に効くようになるので、さらに副作用は軽減されそうです。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]副作用軽減の例
「シスプラチン」という肺がんや胃がん、食道がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がんなどに適応する抗がん剤の場合ですが、吐き気や嘔吐、そして腎臓機能への障害という副作用があります。しかしナノマシンでくるんだ場合には、どちらの副作用も大幅に軽減したとのことです。特に腎臓機能への障害は重い副作用だったため、その軽減は注目に値すると言います。
従来のシスプラチン治療では、腎臓への障害を抑えるため、大量の水分を摂取し、尿の量を多くして毒性を軽減することが必要だそうです。そのため、1日3リットルもの点滴を3日間行うため、入院しないといけません。
これがナノマシンの場合には、ナノマシン投与の前に1リットル、投与後に500ミリリットルの点滴で済み、点滴にかかる時間も合計で3時間なので、入院することなく通院で治療可能になるとのことです。
まとめ
ナノマシンが実用化すれば、副作用がきつすぎるために、治療を途中であきらめるという人も減ってきそうですね!今までの抗がん剤治療が持つ「副作用がきつい」というイメージを覆してくれる画期的な研究に、期待したいですね。