肺炎球菌ワクチンの威力~脾臓をサポートして肺炎予防~ガッテン!より

「肺炎」は自分とは縁遠いものだと思っていませんか?
近年、肺炎の患者数が急増しており、年間の死者数は脳卒中を抜いて日本人の死因第三位になっています。

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ガッテン!『肺炎にならないぞSP』より

ある救急の現場では、一晩に救急搬送される患者の4分の1が肺炎ということもあるそうです。
そこで今回は、肺炎に関する知識や予防法等を紹介していた『ガッテン』をまとめておきたいと思います。

 

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肺炎の原因菌

肺炎はさまざまな菌が原因となって引き起こされますが、感染率・致死率のもっとも高い菌は「肺炎球菌」です。

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ガッテン!『肺炎にならないぞSP』より

菌の周りのもやもやとした部分は、肺炎球菌が身を守るためのバリアです。人間の免疫細胞である「好中球(こうちゅうきゅう)」も、このバリアがあると肺炎球菌を異物と認識することができません。

Kさん(40歳主婦)は昨年の4月に重い肺炎になり、救急車で運ばれました。
熱が出て呼吸が苦しくなり、脈も速くなったKさんは「このままいったら死んでしまう」と感じたそうです。

番組では、そんなKさん宅の排水口や掃除機の中、エアコンのフィルターや風呂場など家中で菌を採取して、どこに肺炎球菌が付着しているかを調べていましたが、肺炎球菌はどこにもいませんでした。次に街中の菌のいそうな場所(バスの吊革や用水路の水、公園で遊ぶ子の手の平など)合計30ヶ所も調べていましたが、どこからも肺炎球菌は見つかりませんでした。

一説によると、太古の昔は空気中に存在していたという肺炎球菌ですが、地球の長い歴史のうちには、温度が大きく変動するなど過酷な状況であったため、空気中には次第に存在しなくなり、常に一定の温度である“ある場所”に棲みつくようになりました。
それが人の鼻の奥の「咽頭」という場所です。

肺炎球菌はくしゃみなどによって、人の咽頭から人の咽頭へと感染していきます。番組で健康な老若男女30人の咽頭を調べてみたところ、6人の咽頭から肺炎球菌が見つかりました。率にしたら20%ですからかなりの割合です。

しかし、肺炎球菌が咽頭に存在しているだけで肺炎になるわけではありません。
風邪やインフルエンザなどで咽頭が傷つくと肺炎球菌が肺に落ちやすくなるそうで、肺に落ちていってしまった肺炎球菌が肺炎を引き起こすのです。

・肺炎球菌が引き起こす肺炎以外の病気
肺炎球菌は文字どおり、肺炎の原因になる細菌です。でもそれだけではありません。ほかにも、細菌性髄膜炎、菌血症、中耳炎といった病気をおこします。
(中略)
残念ながら小さな子どもは肺炎球菌に対する抵抗力をもっていませんので、比較的簡単に肺炎球菌に感染してしまいます。
カゼをひくと中耳炎になることがありませんか? これはカゼによって粘膜の抵抗力が落ちると、耳で感染症をおこすためです。
このように、肺炎球菌は、耳で感染症をおこすと「中耳炎」に、肺に入りこんで「肺炎」に、血の中に入りこんで「菌血症」に、脳や脊髄を覆っている髄膜の中に入りこんで「細菌性髄膜炎」を発症します。
これらの病気は、もちろんほかの細菌やウイルスが原因でおこることもありますが、肺炎球菌が主要原因であることがほとんどで、菌血症では80%[1番目]、肺炎の場合は30%[1番目]、細菌性髄膜炎では20-30%[2番目]、細菌性の中耳炎の場合は30%[2番目]で肺炎球菌が原因となっています。

ファイザー「子どもと肺炎球菌.jp」より

 

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肺炎球菌ワクチン

そんな肺炎球菌の感染を予防するためのワクチンが「肺炎球菌ワクチン」です。
日本では、50〜100%割引の費用で肺炎球菌ワクチンを接種できる補助制度があります。期限は2019年3月末までで、対象年齢は65歳から100歳までの間の年齢で70歳、75歳…と5歳きざみに設定されています。

肺炎球菌ワクチンは、インフルエンザワクチンと異なる点があります。
インフルエンザワクチンは全身の免疫細胞に働きかけて攻撃の準備をさせるものですが、肺炎球菌ワクチンは脾臓(ひぞう)でのみ作用します。

肺炎球菌ワクチンの働きを知るために、まずは脾臓について見ていきましょう。

脾臓は、空手で急所とされる場所のひとつでもある場所です。『空手バカ一代』というマンガでは「三年殺し」という名の技でうたれる場所で、ここをうつと鈍い痛みがあり、他の臓器の機能を低下させるそうです。

MRI画像でその場所を見てみましょう。

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ガッテン!『肺炎にならないぞSP』より

背中の左後ろ側で、ちょうど肝臓の反対側にあるイメージです。
大きさはこぶし大で、腎臓と同じくらいだそうです。

この脾臓が、肺炎の防止に大事な役割を果たしています。
鼻の奥に棲みついている肺炎球菌が肺に落ちてきたとき、免疫細胞である好中球だけでは肺炎球菌のもつバリアのせいで異物として察知されません。しかし脾臓でつくられる「マージナルゾーンB細胞」という特別な免疫細胞は、肺炎球菌に直接触れて“敵”であることを確認します。

肺炎球菌を異物であると確認したマージナルゾーンB細胞は、抗体を肺炎球菌にふりかけます。すると、抗体がふりかけられた肺炎球菌は好中球にも“敵”であると認識されるようになり、肺炎球菌が肺の中で増殖して肺炎を引き起こす前に退治されるようになります。

このように、肺炎球菌による肺炎の予防に大切な役割を果たしている脾臓ですが、実は脾臓は年齢を重ねると臓器自体が小さく萎んでいってしまうというのです。

下図は、20代と60代の脾臓をMRIで見比べたものです。

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ガッテン!『肺炎にならないぞSP』より

赤い部分が脾臓です。全く大きさが違うことがわかります。
下図は脾臓の重さを示したグラフです。

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ガッテン!『肺炎にならないぞSP』より

40代から60代までの期間に一気に脾臓が小さくなることがわかります。
脾臓が小さいほどそこに含まれるマージナルゾーンB細胞の絶対数が少なくなりますから、肺炎にかかりやすくなってしまいます。

そこで、肺炎球菌ワクチンが役に立ちます。

ワクチン接種の前後で血液の成分を測定してみたものが、下のグラフです。

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ガッテン!『肺炎にならないぞSP』より

接種後には血液中の抗体が10倍以上に活性化しています。つまり、脾臓が小さくなっていても、これなら、いつ肺炎球菌が肺の中に入ってきても抗体がくっついて、好中球が退治してくれるような状態です。

肺炎球菌ワクチンは接種後5年間も効果が持続する優秀なものですが、生物なのでずっと使えるというわけでなく、また、輸入しているものでもあるためワクチンの量には限りがあります。そのため、肺炎にかかるリスクが高くて、ワクチンの重要性が活かされる65歳以上の人を対象にして、接種費用の補助が行われているそうです。

ところが、割引前でも約8000円で受けることができるにもかかわらず、アメリカやイギリスでは7割くらいの方が接種しているのに対し日本では3〜4割ほどの人しか接種していないというのです。
下掲の情報も参考にして、対象年齢になっている方はぜひ接種を検討してみてください。

・肺炎球菌ワクチンの副作用
ワクチンを接種した後にみられる主な副反応には、接種部位の症状(痛み、赤み、腫れ、接種した腕の動きの制限など)や、筋肉痛、疲労、頭痛などがあります。

・肺炎球菌ワクチンを摂取するタイミングについて
肺炎球菌感染症は、季節に関係なく発症する可能性がありますので、65歳以上の方はなるべく早めに検討することが大切です。
例えば冬などでは、インフルエンザにかかってしまった方は、肺炎球菌による感染症にもかかる可能性が高くなります。しかし元気な状態でも、65歳以上になると加齢による免疫力の低下を避けられないため、肺炎球菌感染症にかかってしまう危険性が高まります。それは季節に関係ありません。季節の変わり目などの日中と夜間の温度差が大きい時期や、暑さで体力が弱ってしまう真夏などにも注意が必要です。予防できるものは、早めに予防することが大切です。

ファイザー「おとなの肺炎球菌感染症.jp」より

 

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肺炎球菌を地球上から撲滅する動き

世界各国で肺炎球菌を撲滅する計画が始まっています。
日本でも2013年から、赤ちゃんへの肺炎球菌ワクチンが定期接種になっています(合計4回)。
これは大人用とは違う新しいワクチンで、肺炎球菌を鼻の奥に棲めなくするワクチンです。このワクチンの効果によって少しずつ保菌者が減っていけば、世の中から肺炎球菌が減っていくと考えられています。
世界に先駆けてこのワクチン接種を始めたアメリカでは、肺炎球菌による重症感染が76%も減少したといいます。

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ガッテン!『肺炎にならないぞSP』より

現在、子供用のワクチン(PCV13)は子どもへの接種が義務付けられていますが、肺炎リスクの高い65歳以上の大人も接種することができます(ただし大人がうつ場合は任意接種なので約10000円の費用が必要になります)。

一口に肺炎球菌といっても日本では30種類ほどの種が存在します。
大人用ワクチン(PPSV23)は対応する菌が23種類なのに対し、新しい子供用ワクチンは13種類にしか対応していません。感染比率の高い種類の菌から順に対応しているのでかなりの感染を防ぐことができますが、すべてをカバーしているわけではないため、ワクチンを接種したからといって絶対に肺炎球菌による肺炎にかからなくなるというわけではないようです。
大人用と子供用の両方を接種してもよいのですが、間を1年開けて接種する必要があるそうです。筑波大学元教授の寺本信嗣氏によると「アメリカでは先に子供用をうつ」といいますが、医師とよく相談して決めるように、とのことでした。

日常生活の中での肺炎予防

加齢によってむせやすくなった人は、誤嚥性肺炎にかかるリスクが高まります。
そのような方は、少しだけ頭を高く上げて寝るとリスクを下げることができるそうです。

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ガッテン!『肺炎にならないぞSP』より

布団の下に座布団やクッションを敷くこの方法は、病院でも行われている方法だそうです。(ベッドの場合は、枕の下に大きめのクッションを敷いて、肩から上を上げるだけでもいいそうです。)
唾液を咽頭にためず飲みやすくなるので、寝ている間に唾液が肺に入るのを防ぐことができます。
くれぐれも無理はせず、気持ちよく眠れる範囲で行うようにしましょう。

 

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まとめ

今回の特集のなかで、日本人の肺炎に対する意識がまだまだ低いことが挙げられていました。今回を機に、「自分は大丈夫」と思っていた方もワクチン接種を検討してみてはいかがでしょうか。


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