先日の『チョイス』では、手荒れの対策と手荒れと間違えやすい掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の治療法について、聖母病院皮膚科医の小林里実先生と日本大学医学部附属板橋病院の副病院長で皮膚科医の照井正先生が解説をしていました。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]水仕事が原因の手荒れ
番組では、フランス料理店のオーナーシェフKさん(男性:53歳)への取材を元に、水仕事が原因の手荒れについて説明をしていました。Kさんは30年間ほどシェフとして働いていて、料理の間に何度も手を洗ったり、食器を洗ったりするなど仕事中に水を使うことがとても多いです。それまでの長いキャリアの間で手が荒れたことのなかったKさんの手荒れは、2年前の9月に指1本から始まったそうです。
皮膚科での診断
最初は1本の指だけだったKさんの手荒れは、どんどん広がって痛みやかゆみを伴うようになったそうです。それで、Kさんは皮膚科を受診することにしました。皮膚科では、Kさんが思っていたとおり洗剤あれと診断され、塗り薬(ステロイドと保湿剤)が処方されました。けれども、薬を塗ってもKさんの手荒れはどんどん悪化して、洗い物が終わって手袋を外すときに、手の皮が大きくむけてしまうこともあったそうです。そのためKさんは、5箇所ほど病院を転々としましたが、同じ診断で同じ塗り薬しか処方されず手荒れは改善しませんでした。
手荒れの仕組み
番組では、健康な手の皮膚と荒れた手の皮膚の断面図を比べて、手荒れの仕組みについて解説をしていました。
健康な皮膚は、表面の皮脂膜が天然の保湿クリームとなりバリアの働きをします。そして、皮脂膜の下にあるセラミドと天然保湿因子が皮膚に十分な水分を保つのを助けるそうです。
チョイスより
皮脂膜は水で簡単に流れてしまい、復活するまでには通常2時間ほどかかるそうです。けれども、頻繁に、水仕事をする場合は、皮脂膜が通常の状態に戻る時間がなくなってしまいます。そして、皮脂膜がないとセラミドと天然保湿因子も溶けてしまい、それらの間にあった水分が蒸発して隙間ができてしまいます。そうなると、皮膚が乾燥してカサカサしてくるとのことです。さらに、外部からの刺激が加わって、手が荒れることになります。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]チョイスより
手荒れの改善策
小林先生によると、保湿クリームが皮脂膜の代わりになって、皮膚の水分の蒸発を防いでくれるそうです。
チョイスより
シェフのKさんは、ある医師から頻繁に保湿クリームを塗るようにというアドバイスを受け、洗い物が終わるたびに保湿クリームを塗るということを1年間続けました。その結果、手荒れが大分改善されたとのことでした。
小林先生によると、保湿クリームを塗る回数は、その人の状況によって違うそうです。
水仕事をしている人、
ずっと印刷物を触っている人、
一日中キーボードを打っている人など、
長い時間手が何かに触れている人は、ちょっとした隙間時間に保湿クリームを塗るようにするのが良いと小林先生は勧めていました。また、保湿クリームを皮膚に浸透させた後は、ティッシュで拭き取っても良いとのことでした。
手荒れの段階
番組では、手荒れには4つの段階があると説明がありました。
手荒れの初期は、手がカサつく、皮がむける、指紋が消えるなどの症状がでるそうです。
次の段階である進行期は、ひび割れや皮膚がごわついてかたくなる等の症状がでます。また、この段階では、急に悪化することもあるとのことでした。
そして、重症期には、指が腫れて出血したり、ひどいかゆみを感じたりします。
さらに、最重症期になると、皮膚から黄色い汁が出ることや水ぶくれになってしまうことがあるそうです。
チョイスより
アレルギー性の皮膚疾患による手荒れの場合もあるので、あまりひどくならないうちに皮膚科を受診することを小林先生は勧めていました。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]手荒れを治すためのクリームや薬の種類
番組では、手荒れを改善または防ぐためのハンドクリーム(保湿クリーム)や薬を紹介していました。炎症を抑えるためには、ステロイドを使用し、かゆみは飲み薬で抑えるそうです。そして、保湿には、ハンドクリームを使うしか方法がないとのことでした。手荒れの状態によって、どの成分を含んだハンドクリームを使用するべきかが変わってくるそうです。
チョイスより
セラミドやヘパリン類似物質を含んだクリームは、どの段階の手荒れにも使用できるそうです。尿素系のクリームは、硬くなった皮膚を柔らかくする働きがありますが、ひび割れに塗るとしみることがあるとのことです。ワセリンはひび割れた皮膚を守る働きをします。小林先生は、市販のクリームを購入する際は、表示を確認したり、薬局で相談してみたりすることを勧めていました。
番組では、ハンドクリームの具体的な商品名は紹介されていなかったので、こちらに市販のハンドクリームで人気の高い商品を成分別にまとめておきます。
「セラミド入りクリーム」
ロコベース リペア クリーム 30g
ロコベース
リンク: http://www.amazon.co.jp/dp/B005SNN7EU
「尿素入りクリーム」
尿素10% クリーム 100g
資生堂
固定リンク: http://www.amazon.co.jp/dp/B000FQNQ6Y
「ワセリン入りクリーム」
さらさらワセリン、香りハンドクリーム ベタガードW(手荒れ/手湿疹/リップ用) 10mL 【Wベタガード非対象】
武蔵野ワークス
固定リンク: http://www.amazon.co.jp/dp/B00B22DLBU
皮膚のターンオーバー
小林先生によると皮膚が自然に再生することを皮膚のターンオーバーと言うそうです。手の皮膚の角層は、体の他の部分の角層よりも厚いので再生には数ヶ月から半年かかります。ですから、正常な皮膚に戻る前に保湿をやめてしまうと、また手が荒れてしまうとのことでした。
また、剥がれてきた皮膚は絶対に自分で剥いてはいけないそうです。本当に皮膚が浮いている部分は、切っても良いそうですが、剥いてしまうと皮膚に段差ができてしまい、いつまでも治らないと小林先生から説明がありました。
正しいハンドクリームの塗り方
番組では、正しいハンドクリームの塗り方が紹介されました。
一度に塗るハンドクリームの量は、人差し指の第一関節×2
を目安にすると良いそうです。塗るときは、クリームを手全体にのばし、指先に塗る時には、もう片方の手で密封するようにして押し入れるのが良いと小林先生は説明していました。
ハンドクリームを塗った後で、手がまだカサついている場合は、クリームの量が足りないというサインです。多すぎればティッシュで拭いてもいいので、皮膚が潤う量を塗るのが大切とのことでした。また、手の皮膚が乾燥した時にいつでも塗れる場所にハンドクリームを置いておくと良いというアドバイスが小林先生からありました。
手荒れと間違えやすい病気
番組では、手荒れについての説明の後に、手荒れと間違えやすい病気が紹介されました。
手白癬は水虫菌が手につくことで発症します。素人では手荒れとの違いは判断できないので、皮膚科で顕微鏡を使って調べてもらう必要があるそうです。また、ステロイドを塗ると悪化するので、医師の適切な診断が必要です。
若い女性に増えている梅毒や慢性の皮膚炎の乾癬も手荒れと紛らわしい病気として紹介されていました。
チョイスより
どの病気も早期に発見をして、適切な治療を受けることが大切とのことです。ハンドクリームを正しく使用しても手荒れが改善しない場合は、自己判断をせずに皮膚科を受診することを小林先生は強く勧めていました。
手荒れに隠れた「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」
番組の後半では、手荒れと紛らわしい病気の一つである掌蹠膿疱症の原因と治療法について照井先生と小林先生から説明がありました。掌蹠膿疱症とは、手と足の裏に無菌性の膿を持った水ぶくれがたくさんできる病気だそうです。
チョイスより
掌蹠膿疱症は、悪化すると水ぶくれがかさぶたになり、皮膚が剥けたり、ひび割れしたりして、痛みやかゆみを伴うとのことでした。
重症化すると胸が痛くなることもあると照井先生から説明がありました。
掌蹠膿疱症の進行過程
番組では、長い期間、掌蹠膿疱症で苦しんでいた会社員のSさん(男性:52歳)に取材をしていました。
ある時、Sさんの左手の手のひらの皮膚(1円玉ぐらいの大きさ)が剥けたそうです。かゆみや痛みはありませんでしたが、1ヶ月ほどで皮膚が剥けてくる範囲が徐々に大きくなっていったとのことでした。それで、Sさんは皮膚科を受診しましたが、病名はわからなかったそうです。その後、症状は悪化していき、最初は左手だけだったのが、右手にも症状が広がっていきました。
Sさんは、内臓の病気の信号が手に出ているのかと考え、かかりつけの内科医で詳しい検査を受けたところ掌蹠膿疱症と診断されたそうです。そして、Sさんはステロイドを中心とした塗り薬による治療を受けることになりました。けれども、症状は良くならず、Sさんは効果があると聞いたものを次々と試したそうです。
それから半年を過ぎても、症状は悪化の一途をたどりました。Sさんの手は下の画像のように赤く腫れ上がって、皮もめくれていました。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]チョイスより
日常生活への影響
掌蹠膿疱症はSさんの日常生活にも悪影響を及ぼしたそうです。例えば、Sさんは、温めると痒くなるので万歳をしながら入浴をしたとのことでした。また、家族に同じお風呂に入らせたくないと考えたり、患部の見た目が悪いことから、仕事中も人の目が気になり、白い手袋をつけて仕事をしたりするなど、精神的な負担も大きくなっていったそうです。趣味の料理を楽しむこともできなくなってしまいました。
3つ目に受診した病院の医者から、治るまでに7、8年かかると言われSさんは愕然とし、これでは精神的にもボロボロになってしまうと考えました。
掌蹠膿疱症の原因
照井先生によると掌蹠膿疱症の原因は免疫細胞の暴走とのことです。遺伝や体質でこの病気になりやすい場合もあるそうです。中年女性に多い病気で、その80%から90%は喫煙者とのことでした。タバコに含まれるニコチンが免疫を暴走させる原因の一つです。
また、体の他の部分にある病巣が免疫細胞を暴走させ、そのサインが出やすいのが手と足の裏なので掌蹠膿疱症の症状は手と足の裏にでるとの説明がありました。
Sさんの掌蹠膿疱症の原因
Sさんはあきらめずに病気の治療について調べていたところ、小林先生が働く病院の掌蹠膿疱症専門外来を見つけて、受診をすることになりました。そこで、小林先生から病巣を特定するために歯科でX線撮影をするように指示されました。Sさんは半信半疑で歯科を受診したところ、差し歯の根っこに炎症があることがわかり、差し歯を抜いて炎症の治療をしたそうです。
その2ヶ月後Sさんの症状は改善して、Sさんも歯の炎症が病気の原因だったことに納得したとのことでした。
掌蹠膿疱症の原因の分布
小林先生の病院で掌蹠膿疱症の原因を集計した結果、病巣の半分近くは歯にあることがわかりました。その次に多かったのは、扁桃の病巣でした。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]チョイスより
病巣が原因の掌蹠膿疱症の治療法
先ほど紹介された掌蹠膿疱症の原因の集計結果からもわかるように、掌蹠膿疱症の大半は、歯や扁桃の慢性的な炎症が原因です。ですから、どこが病巣になっているのかを突き止めて、治療することが重要だと小林先生は説明していました。
小林先生によると掌蹠膿疱症の患者さんには、まず、歯科、耳鼻咽喉科の受診と血液検査をしてもらって病巣の場所を特定するそうです。病巣が特定されない場合には、病気が治るまでに7年から8年、長ければ10年ぐらいかかることもあるとのことでした。
掌蹠膿疱症の原因が、甲状腺の病気であるバセドー病や橋本病の場合もあり、血液検査を受けることで、これらの病気が発見されることもあるそうです。
体質が原因の掌蹠膿疱症の治療法
照井先生によると、病巣が原因ではなく体質が原因で掌蹠膿疱症の症状がでることがあるそうです。この場合の治療には、炎症を抑える塗り薬、暴走した細胞を殺す紫外線治療(週1回以上)、皮膚の角質化を抑える飲み薬が使用されるとのことでした。重症化した場合は、免疫を抑制するための飲み薬(保険適用外、治療費:1ヶ月約1万円)を服用するそうです。
チョイスより
近年は、多くの病院が連携をするようにしているので、遠くに住んでいる人も小林先生の病院に相談すれば、近くの歯科やかかりつけの皮膚科を受診するためのアドバイス等を受けることができるとのことでした。
さらに掌蹠膿疱症について詳しく知りたい人のために、この病気についての治療法などが書かれた本が出版されています。
信じてもらうための挑戦―掌蹠膿疱症は「治る」病気です
前橋 賢
固定リンク: http://www.amazon.co.jp/dp/4773375310
まとめ
手荒れのケアがハンドクリームを頻繁に塗ることと意外に簡単だったということに驚きました。自分の気に入ったハンドクリームを見つけると、頻繁にクリームを塗る習慣をつけることが楽にできそうです。また、Sさんの掌蹠膿疱症の発症から治療の過程を知って、専門の医師からの適切な治療を受けることの大切さがわかりました。病気の症状が改善しない場合は、一人の医師にこだわらず、正しい診断をしてくれる医師が見つかるまであきらめないことが大切ですね。