先日の『あさイチ』では、「貧血」について特集していました。
ヘモグロビンが不足する鉄欠乏性貧血、貧血がサインの病気、隠れ鉄不足(フェリチンの不足)の原因や改善方法などについて紹介していました。
・貧血の治療をしているのに、なかなか改善しない
・抗うつ剤を服用しても、うつ病が改善しない
という方に必見の内容だったので、まとめておきます。
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貧血の原因と診断基準
貧血の原因は、体内の鉄分不足とのことです。ヘモグロビン(血液の中にあるたんぱく質)を作るには鉄が必要です。鉄が不足すると、ヘモグロビンが減少します。それで、鉄欠乏性貧血の診断には、血液検査の血色素量(ヘモグロビン値)が使われるそうです。
あさイチより
検査機関によって、ヘモグロビンの基準値にはばらつきがあります。ちなみに、世界保健機関(WHO)は、成人女性のヘモグロビンの基準値を12g/dlと定めています。この値より低いと貧血だということです。
世界保健機関(WHO)は国際連合(UN)の組織で、世界中の人を病気から守り、健康を維持することを目的に設立されました。WHOは健康に関する世界基準を作成し、各国への技術援助などを行っています。
世界保健機関(http://www.who.int/en/)
*WHOの公式ウェブサイトの言語は、国連の公用語であるアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語です。
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貧血の症状
番組では、鉄欠乏性貧血のおもな症状と原因を、血液内科医の久住英二先生(ナビタスクリニック代表)が解説していました。
めまい・ふらつき・立ちくらみ
ヘモグロビンには、体内に酸素を運ぶ役目があります。貧血でヘモグロビンが不足すると酸欠状態になりめまい、ふらつき、立ちくらみが起こるそうです。
匙状爪(さじじょうつめ)
体内の鉄分が不足すると、爪がスプーンのようにへこんでしまいます。このような状態を「匙状爪」というそうです。
あさイチより
鉄分には細胞を作る働きがあります。特に爪は細胞の入れ替わりが激しいので、鉄分が不足すると、爪は健康的には伸びなくなってしまうというわけです。
氷食症
久住先生によると、鉄欠乏性貧血の14%に氷食症が見られるそうです。氷食症は、無性に氷が食べたくなる病気で、本来は食べるべきではないもの(土、粘土、髪の毛など)を食べてしまう異食症の一種です。なぜ、氷食症が鉄欠乏性貧血の人に多くみられるかは、まだ解明されていません。
のどの粘膜の障害
貧血が悪化すると、のどの粘膜にひだができて食べ物や飲み物を飲み込んだり、吐きだしたりするのが難しくなります。そのため、飲食物がのどに詰まってしまい、呼吸困難になることもあるとのことです。
貧血には、これらの症状以外にも、疲れが取れない、口内炎や口角炎が頻繁にできる、抜け毛が増えるなどの症状があるそうです。
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貧血の治療
貧血の治療では、不足している鉄分を補うために鉄剤を服用します。
あさイチより
20%から30%の人は、鉄剤を飲むと気持ちが悪くなる、胃が痛くなる、便秘、下痢といった副作用が出るとのことです。実際のところ、鉄欠乏になる人は胃腸が弱い人が多いそうです。胃に問題がある場合は、先に胃の治療をしてから鉄剤を服用するようにすると、90%ぐらいの人の貧血が改善すると久住先生は説明していました。
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貧血の症状がサインとなる病気
鉄剤を服用しても貧血が改善されない場合は、貧血が他の病気による出血が原因の場合があるそうです。
あさイチより
子宮筋腫
貧血の専門医の濱木珠恵先生によると、特に、30代後半から40代の女性で貧血の症状があり、月経のときにひどい腹痛があったり、出血の量が増えたりすると、子宮筋腫の場合があるとのことです。
濱木先生は、2か月間鉄剤を服用しても貧血の症状が改善しなかったので、婦人科を受診しました。婦人科を受診するまでの間に、生理が重くなり出血量が増え、仕事中もベッドに横にならなくてはいけないほど症状が悪化しまったそうです。婦人科を受診したところ、子宮に大きな腫瘍ができる子宮筋腫と診断されました。
あさイチより
子宮筋腫になると、月経の出血が止まりにくくなります。それで、鉄分を補給しても血液と一緒に体外に排出されてしまい、ヘモグロビンが不足して貧血になるとのことです。
濱木先生の場合、手術で腫瘍を取り除くと貧血も改善されました。
子宮筋腫以外の子宮の病気
貧血は、子宮筋腫以外にも、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症などの子宮の病気のサインの場合があります。年代に関係なく、貧血の症状があり、月経のときに激しい腹痛がある人や、昔よりも月経が重くなった人は、これらの病気の検査を受けたほうが良いと久住先生は説明していました。
消化器系のがん
特に50代以上の場合、貧血が、胃がんや大腸がんなどの消化器系のがんのサインの場合もあるそうです。消化器系のがんは、潰瘍から出血がありますが、便の色には表れません。それで、貧血の症状をきっかけに、がんが発見されることもあるとのことです。久住先生は、40代以上の貧血患者には、まず大腸がんの検査(便潜血検査など)や胃の検査(ピロリ菌の検査や胃カメラなど)を受けてもらうそうです。それらの検査の結果を診断してから、適切な治療を開始すると説明していました。
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貧血予備軍「隠れ鉄不足」の原因:フェリチンとは?
番組では、通常の血液検査では分からない、「隠れ鉄不足」について説明していました。隠れ鉄不足は、肝臓の中にあるフェリチンという物質が不足していることをいいます。
フェリチンは鉄を溜めておくことができる水溶性のタンパク質で、「鉄の貯蔵庫」とも呼ばれているそうです。
体内の鉄分が足りなくなると、フェリチンは溜めていた鉄をヘモグロビンへ送ります。ヘモグロビンは、フェリチンから受け取った鉄で生成されて血液の中を流れるというわけです。
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フェリチン不足は「貧血予備軍」
ヘモグロビンは、フェリチンから鉄を十分に補給してもらえば、血液検査で正常値を示します。体の中に十分なヘモグロビンはあるけれども、出血や栄養不足が原因で体内の鉄が減少し、フェリチンに十分な鉄が蓄えられていない状態が「貧血予備軍」です。
そして、鉄不足が進むと、フェリチンからヘモグロビンに十分な鉄を送ることができなくなってしまいます。すると、ヘモグロビンが生成できなくなってしまうので、鉄欠乏性貧血になってしまうのです。
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鉄のサプリメントで貧血予防
久住先生によると、市販の鉄のサプリメントの服用は、貧血の予防策としては有効だそうです。
けれども、貧血の鉄不足はサプリメントでは補えないとのことです。例えば、鉄のサプリメント1粒に含まれる鉄の含有量は2mgから4mgですが、貧血の治療では、1度に2,000mgの鉄分を注射するそうです。
サプリメントは、あくまでも補助的な役割ということですね。
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フェリチン不足が原因の「うつ病」
フェリチン不足は貧血予備軍だということだけではなく、最近では、「うつ病」の原因になることもわかっているそうです。
精神科医の廣瀬久益先生(廣瀬クリニック院長)は、抗うつ剤だけに頼らないうつ病の治療を行っています。
廣瀬先生によると、フェリチン不足が原因のうつ病は、鉄剤を服用することで改善するとのことです。Nさん(女性)は、心療内科でうつ病と診断され、2年間抗うつ剤を服用しました。けれども、うつの症状が改善しなかったので廣瀬先生を受診しました。
Nさんのフェリチン値は廣瀬先生の治療を受ける前は、目標値が50mg/ml以上のところ6mg/mlしかありませんでした。この数値は、100人に数人というほど深刻なフェリチン不足だそうです。Nさんは、鉄剤の服用を2年間続けた結果、フェリチンが75mg/mlまで回復しました。そして、うつの症状も改善したそうです。
フェリチン不足がうつ病を発症させる理由
鉄分を摂取すると、鉄は血液中のヘモグロビンと肝臓の中にあるフェリチンへ運ばれます。
あさイチより
フェリチンには、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」や「ドーパミン」を作る働きがあります。ですから、フェリチンが不足するとセロトニンやドーパミンが少なくなってしまいます。
あさイチより
廣瀬先生によると、うつの症状は、セロトニンとドーパミンが減少することで発症するそうです。セロトニンには気分をコントロールする役割があります。うつの症状で大きな悲しみを感じたり、怒りの感情強くなったりするのは、セロトニンが少ないからとのことです。
フェチリン不足が原因のうつ病のことをさらも詳しく知りたい方、抗うつ剤を飲んでもうつ病の症状が改善しない方には、廣瀬先生の著書がお勧めです。
完全復職率9割の医師が教える うつが治る食べ方、考え方、すごし方
廣瀬久益
うつ病の原因はフェリチン不足だけではない
うつ病とフェリチンの関係に詳しい功刀浩先生(国立精神・神経医療研究センター 精神科医師)によると、うつ病にはさまざまな原因があるので、うつ病患者全員がフェリチン不足というわけではないそうです。また、すべてのフェリチン不足の人が重度のうつ病を発症するということでもないとのことです。
ただ、長い間、抗うつ剤を服用してもうつ病が改善しない人は、血液検査を受けてフェリチンを調べてもらうと良いそうです。フェリチンは、通常の血液検査の検査項目には入っていないので、追加で調べてもらうようにお願いをしなくてはいけません。貧血と診断されている人は、保険が適用されるので追加料金は数百円とのことです。それ以外の人は、保険適用外なので1,000円程度です。
日本人女性の半分はフェリチン不足⁉
ある病院が11歳から90歳の日本人女性3,000人を調査したところ、その半分がフェリチン不足だったそうです。フェリチン不足の原因には、食生活の欧米化、極端なダイエット、貧血がサインの病気などがあります。2分の1の確率ということは、自分だけは大丈夫という意識は捨てたほうが良さそうですね。
貧血の予防には食事が大切
日本人女性の鉄の摂取量は、1975年をピークに減少しています。国では、1日に約11mgの鉄を摂取することを推奨していますが、2014年の調査では、日本人女性は1日に平均7mgしか鉄を摂取していないということが明らかになっています。
あさイチより
毎日の食事で手軽に鉄を摂取する方法
多くのトップアスリートに食事を提供してきた管理栄養士の石川三知さんによると、鉄を含む食材を一度にたくさん食べるのではなく、毎回の食事で少しずつ摂取するのが良いそうです。
番組では、石川さんお勧めの鉄分を多く含む「ちょい足し」食材を紹介していました。(カッコ)内は、10mgあたりの鉄の含有量です。
・切り干し大根(0.31mg)
・高野豆腐(0.75mg)
・きな粉(0.8mg)
・小麦胚芽(0.94mg)
・あさり佃煮(1.88mg)
・ドライフルーツ(0.23mg)
・ごま(0.99mg)
あさイチより
これらの食材は、昔から日本でよく食べられていたものですね。食生活の変化が、現代人の鉄の摂取量を減らしてしまったというわけです。
石川さんは、スポーツ選手のためのレシピ本や、アンチエイジング用のレシピ本など健康のことを考えた料理本を多数執筆しています。
最新版 スポーツ選手のための食事 400レシピ: 小学生・中高生・大学生~プロスポーツ選手まで (GAKKEN SPORTS BOOKS)
石川 三知
Dr.クロワッサンハンディBOOK 体に効く簡単レシピ5 老化を遅らせる食べ方 (Dr.クロワッサンハンディBOOK―体に効く簡単レシピ)
石川 三知
鉄の摂取量を増やす工夫
久住先生が、鉄を多く含む食材を食べる以外にできる、鉄の摂取量を増やす方法を紹介していました。
鉄の調理器具で鉄分増加
昔は、ひじき100gあたり58mgの鉄が含まれていて、鉄分が多い食材として広く認識されていました。けれども、現在は、ひじき100gあたり6mgしか鉄が含まれていないということが2015年の食品成分表改定でわかったそうです。ひじきには、鉄分がたくさん含まれていると思って食べていたのに驚きですね。
久住先生によると、以前は鉄なべでひじきを煮てから干していたのが、今はステンレスの鍋で煮るようになったのが、鉄分が減ってしまった原因だそうです。ですから、自宅でひじきを調理するときに鉄の調理器具を使うと、ひじきの鉄分が増えるとのことです。また、鉄のやかんで沸かしたお湯を飲むことも、鉄分の補給になると番組では紹介していました。
鉄の吸収力アップにはビタミンC
また、鉄はビタミンCと一緒に取ると吸収が良くなるそうです。ビタミンCは、赤や黄のパプリカ、パセリ、ゆず、レモンなどに多く含まれています。鉄をビタミンCのサプリメントと一緒に摂取するのも、ビタミンCを含む食材を食べるのと同じく鉄の吸収を促進するとのことです。
まとめ
ヘモグロビンやフェリチンが不足すると貧血だけではなく、さまざまな症状を引き起こすのですね。貧血は、適切な治療を受ければ改善する病気とのことです。「貧血の症状があるけど、病院で検査するほどでも・・・」と思っている方も、血液検査を受けてみてくださいね。そして、血液検査の際には、フェリチンの検査もお願いしてみましょう。