現在、日本では成人の9割以上に虫歯があり、また、8割以上の人は歯周病になってしまっているそうです。
これらは病気が進行するまで症状に出にくいことや、「歯医者が苦手…」ということで治療を避けることが、病状の悪化につながっているといいます。
そんな虫歯や歯周病について、近年新たな事実が続々と明らかになってきています。
直近では、国立循環器病センターが「虫歯菌が脳出血に関与している」と発表。その他の研究からは心筋梗塞や認知症に虫歯菌や歯周病菌が関係している可能性が指摘されています。
そこで今回は、口内の病気と全身の疾患との関係や正しい歯磨きの方法などが紹介されていたテレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』をまとめておきたいと思います。
虫歯菌と脳出血
虫歯菌は正確には「ミュータンス菌」と呼ばれる菌で、口内で繁殖します。
「口の中の菌が脳出血に関与している」と聞いてもいまいちピンときませんが、実は虫歯菌は口内の傷などから血管内に侵入し、全身を巡ることもあるというのです。
ほとんどは白血球に退治されるのですが、一部が脳の深部へと到達するらしいことが国立循環器病センターの研究から明らかになりました。
虫歯菌は脳の血管にまで到達してしまうと、血管の内皮膜を溶かし、さらには外皮膜を形成しているコラーゲンと結合して侵食していきます。
すると白血球がその虫歯菌を攻撃するのですが、誤ってコラーゲンまで攻撃してしまうことがあり、血管は破れて「脳出血」ということになってしまうのです。
日本大学歯学部附属歯科病院の宮崎真至病院長は「虫歯菌には数種類あるが、ある特異なものがコラーゲンとくっついてしまう。その際に空いた穴を血小板で埋めようとするが、それが効かなくなる。」とも説明していました。
歯周病と心筋梗塞
虫歯菌だけではありません。歯周病菌も大病を引き起こす可能性があるといいます。その大病というのが「心筋梗塞」で、歯周病を患っていると心筋梗塞のリスクが2倍にもなるのです。
歯周病菌は歯茎を溶かし、歯茎から血管の中に入っていきます。
すると、歯周病菌の侵入を察知した白血球が歯周病菌を退治するために食べてしまいます。
このとき、キレイに食べてくれればいいのですが、どうしても歯周病菌のカスが血管中に残るそうで、これが溜まっていくと血栓になってしまうのです。
これが心臓で起きれば、血管を塞いで心筋梗塞になってしまいます。
血液がサラサラの人でも、歯周病を患っていれば血栓ができる可能性があり、心筋梗塞のリスクが高まるのです。
歯の数と認知症
歯の本数と認知症の発症には相関関係があることがわかっています。
人間の歯は全部で28本(親知らずを入れると34本)あります。
65歳以上の4425人を4年間追跡した調査によれば、歯が20本以上残っている人と、0〜9本しか残っておらず入れ歯も使ってない人を比べてみると、後者の方に認知症患者が1.85倍も多いというのです。
原因と考えられているのは噛む行為の減少です。
宮崎医師によれば歯槽骨と歯の間にはセンサーがあり、噛む際に脳に刺激を与えているそうです。その回数が少なくなれば脳への刺激が減少し、脳の機能も低下するというわけです。
ちなみに、「もう歯がほとんどなくなってしまった…」というような方でも落胆することはありません。
歯がなくなってしまっていても、歯槽骨と歯のあった場所の間にある組織さえ残っていればセンサーもまだ残っているそうなので、ものを口に入れた際によく噛む動作をすれば大丈夫なのだそうです。
歯根膜
歯は歯槽骨と呼ばれる骨に埋まっています。
歯と歯槽骨の間には歯根膜と言われる膜があり、この膜でものを噛んだ時に「硬い」「やわらかい」という信号が脳と顎に伝わり、ご飯もおいしく噛んで食べられるのです。
歯がなくなると、顎の骨のやせ細り、見た目も老けた印象になってしまいます。
スポーツ選手が練習の時に集中力を高めるためにガムを噛んだりしていると思います。あれも、歯根膜が「三叉神経」という脳の神経に繋がっていて脳の活性化をさせているのです。
ニコデンタルクリニックHPより
こんなに増える虫歯菌
番組では驚くような画像が紹介されていました。
下の黒い画像は、寝る前に歯を磨いた人の、寝る前の口内の細菌を撮影したものです。
羽鳥慎一モーニングショーより
点々とわずかに白い点(細菌)が見える程度、という状態ですね。
ところが、9時間睡眠をとった後の口内の細菌を撮影すると……
羽鳥慎一モーニングショーより
歯を磨いてから寝ても、寝ている間にこれだけ繁殖しているのです。
虫歯菌の数は約30倍にも増え、虫歯菌以外の約700種類の菌もすべて増殖しているのだそうです。
これを見てしまったら、もう歯磨きせずに寝ることは出来なくなってしまいますよね。
というわけで次は、正しい歯磨きの方法やコツなどをご紹介いたします。
正しい歯の磨き方
まず、歯ブラシを軽く水洗いをした後に、よく水を切ってから歯磨き粉をつけましょう。最初に水洗いするのはブラシ部分に菌が繁殖しているためです。
歯磨き粉は、歯ブラシの縦の幅の3分の1くらいまでにしましょう。
量が多すぎると刺激が強いために唾液が大量に分泌され、口の中で泡立ちすぎてしまい、磨く時間が減ってしまうという傾向があるからです。
磨く順番は、スタート地点とゴール地点を決めることがポイントだそうです。
これは磨き残しをなくすための工夫で、例えば「上の左奥→上の前歯→上の右奥→下の右奥→下の前歯→下の左奥」というように順を追って磨くようにするのです。
磨き終わった後のすすぎは、1回がベストだそうです。
具体的には10ccほどの水を30秒間グチュグチュとすることが勧められていました。こうすることで歯磨き粉の成分が口全体に広がり、成分が歯を守ってくれるのだそうです。
その後にマウスウォッシュをするのもいいそうです。
さらに、歯間ブラシの使用も推奨されていました。
歯と歯の間の汚れは歯ブラシではどうしてもとれないので残ってしまい、菌を繁殖させてしまいます。
ちょっと面倒ではありますが、ぜひ取り入れてみてください。
まとめ
今回は常識を覆される情報がたいへん多い特集でした。
口内の菌が身体全体に影響を及ぼすという重大なことがわかってきた今こそ、歯磨きの習慣を再チェックし、必要なら新たな習慣を追加するなどして、様々なリスクを下げていきたいものです。