プリン体といえば痛風。痛風は、プリン体を摂りすぎることで尿酸が増加し、増加した尿酸が結晶化して関節に溜まることで引き起こされる病気です。
つまり、プリン体の摂りすぎは痛風を引き起こすので怖いというのが今までの通説でした。
しかし、最新の研究ではプリン体の摂りすぎは痛風だけに収まらないことがわかってきているそうです。
それが、尿酸は血管を老化させるという事実です。血管を錆びさせるのはコレステロールや中性脂肪だけではないということです。
現代の日本では、尿酸値が基準値を超えた“高尿酸血症”の人は500万人以上と言われているそうです。一般的には男性に多い症状と思われがちですが、実は高尿酸血症は閉経後の女性にも多くみられる症状です。なぜなら、女性の尿酸値が低いのは女性ホルモンの働きによるものであるため、閉経後、女性ホルモンの分泌が減少すると、それと反比例するように尿酸値は上がりやすくなってしまうからです。
つまり、尿酸値は男性であっても女性であっても一定の年齢以上になれば同等にリスクがあるものという認識が必要なわけです。そして、尿酸値が高い状態で放置していると後々大きなしっぺ返しを食らうことにもなりかねません。
高い尿酸値のまま放置してしまった事例
事例1 田中さん(男性)のケース
田中さんは8年前(当時41歳)、尿酸値が7.5と基準値を若干オーバーする検診結果をもらいました。しかし尿酸値以外、コレステロールや中性脂肪の値は正常だったのと、会社の同僚の中には尿酸値が8とか9などもっと高い値の人もいたので再検査の指示を無視して放置してしまいました。
それから4か月たったある朝、右足の親指付け根に激痛が走り、田中さんは痛風を発症します。検査の結果、尿酸値は8.7まで上昇していました。すぐに薬を処方され、食事制限とアルコール制限を言い渡されます。
何よりも食べることが大好きだった田中さんですが、病気とあっては致し方ありません。しぶしぶ了承し、医師の指導のもと、野菜中心のプリン体を抑えた食事に切り替えました。付き合いの飲み会もウーロン茶で我慢します。
その甲斐あって2か月後の検査では尿酸値は6.2まで下がっていました。ほっと一安心した田中さんですが、尿酸値が下がったことで気が緩んでしまいます。同僚からの飲みの誘いについつい乗ってしまい、『少しくらい大丈夫か』『1杯だけなら大丈夫』といいながらついつい痛風発症前の食事に戻ってしまっていたのです。奥さんの目があるので自宅では大人しく食事制限しますが、一旦外に出ると食べ過ぎ、飲み過ぎ状態に逆戻りです。そして2か月後の血液検査では、再び7.5の基準値オーバーの結果が出てしまいます。
しかし、この時の田中さんは少しずる賢く考えるようになっていました。医師から状態を警告されたにも関わらず、痛風発症時の8.7という数値を自分の基準に考えてしまい、『自分は7.5くらいなら大丈夫』という独自基準を作ってしまったのです。こうして田中さんの食事制限は自己流になっていきました。あれこれ工夫しながら尿酸値は7.5付近をキープするようにし、コレステロールや中性脂肪もちょっとだけ基準値をオーバーする状態を維持する術を身に付けていきました。
痛風発作から5年立ったある日、胸全体が熱くなり締め付けられるような痛みが襲ってきました。この時は2~3分程度で収まったのですが、そのさらに3日後、今度は胸に激しい痛みが突然襲ってきました。その傷みはまるで鉄アレイを落とされたような猛烈な痛みです。
この時の田中さんの血管の写真
血が通っているべきところで詰まっています。
田中さんは心筋梗塞でした。
心筋梗塞は、冠動脈が詰まることで血液が心臓に届かなくなり、結果、心臓の筋肉である心筋が壊死する病気です。原因は動脈硬化で、これこそが血管の老化です。老化によってしなやかさを失った血管壁にコレステロールなどが付着、蓄積し、何等かの衝撃でその塊が破れてしまうとその破れた箇所を修復しようと血小板が集まります。集まった血小板は血栓となり、あっという間に血管をふさいでしまうのです。
田中さんの場合は、尿酸値が高めであったにもかかわらず基準値以下を維持する努力を怠り、7.5という自己基準を作ってしまったことが血管の老化を進めた大きな要因だったと考えられます。
最近の研究で、プリン体を尿酸に分解する際に発生する活性酸素が血管のしなやかさを保つ物質の働きを悪くすることがわかってきているそうです。
更に悪いことに、尿酸そのものも血管に取り込まれ、炎症を起こして血管を硬くすることがわかってきています。
つまり、尿酸は血管の老化に大きな影響を与えているわけです。
番組では、尿酸値が1上がるのは、血圧なら10、総コレステロール値なら20上がるのとほぼ同じだと紹介されていました。それだけ動脈硬化が進行するリスクをはらんでいるということです。
虎ノ門病院循環器センター 桑原政成医師の話
『尿酸値が高い状態が続くと動脈硬化を起こし血管の老化に関係することがわかってきている。』
『女性は女性ホルモンが尿酸値を下げる働きをしているので男性より低い傾向にあるが、閉経後は女性ホルモンが下がるので尿酸値が上がりやすくなる。』
『尿酸値を下げれば血管のしなやかさが向上するので血管の老化予防の効果が期待できる。』
尿酸値対策のポイント
尿酸値対策のポイントは食事にあるそうで、積極的に摂った方が良い物、極力摂らない方が良い物の2パターンあるそうです。
【摂りすぎに注意したいもの】
1.プリン体を多く含む食べ物
鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう肝酒蒸し
豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物etc
食品中プリン体含有量
アルコール飲料中のプリン体含有量
プリン体は一日400mg以下ということで、一覧表をパッと見ただけではそれほど無理な数値とは思わないかもしれませんが、一覧表の数値は100g中(飲料は100ml中)の含有量です。定食屋で出てくる大盛りサイズのご飯だとそれだけで50mg、2食だと100mg、3食なら150mgです。そのほかに肉類や魚介類などでいわゆる居酒屋メニュー的なものを何品か食べると400mgはオーバーしてしまいます。
もう一点気をつけなければならないことは、プリン体をビール以上に多く含む食品が意外にたくさんあるということです。特にカツオブシやニボシ、干しシイタケといった、いわゆる和食のダシに使われるようなものも多くプリン体を含んでいます。ダシですから一度に100gも摂取することはないでしょうが、それでも気を付けておいた方が良いですね。昆布ダシであればプリン体はグッと減るようです。
2.アルコール全般
アルコーでもプリン体カットなら飲んでも良いと思われがちですが、アルコールが分解される際に尿酸が生み出されます。つまり、アルコールを摂ること自体が尿酸値を上げることに直結しているので、プリン体カットのアルコールであっても、また、焼酎などのプリン体を含まないものであっても良くはないようです。
3.清涼飲料水
甘み成分である果糖が尿酸値を上げるそうです。
4.総カロリー
カロリーを摂りすぎて肥満になっても尿酸値が上がるそうです。
【積極的に摂った方が良いもの】
1.水分
尿の量が増えるので尿酸が結晶化しにくくなりますし、脱水による腎機能低下も防げるため、尿酸の排出がスムーズになるそうです。目安は1日2リットルだそうです。やってみるとわかりますが、これは意識しないと摂れない量です。
2.アルカリ性食品
野菜類、きのこ類、豆類、果物類、海藻類などがアルカリ性食品に該当します。これらアルカリ性食品は尿を中性化する働きがあります。尿が中性化すると尿酸が尿に溶けやすくなります。もし尿酸が尿に溶けなければ、最悪結晶化してしまい結石となって激痛を引き起こしますが、それを予防する働きがあるわけです。
【検証実験】
番組では、食事による尿酸値対策を行うことでどのような効果が表れるかを実験していました。
参加者青木さん
・お酒もあまり飲まずやせ形
・健康診断では尿酸値だけがひっかかる
・痩せの大食いで肉や魚が好き
・野菜はあまり食べない
<検証前の数値>
<1日のメニュー>
<食事対策のポイント>
・夕食のプリン体量を100mgに減らす
・アルカリ性食品(野菜類)を酸性食品(肉魚)の2倍摂る
<奥薗壽子さん考案レシピ>
小松菜のクリームスパゲティ
材料
プリン体は100mg以下
・スパゲティはご飯よりプリン体が少ない
・しめじと小松菜でボリューム感を出す
・牛乳の代わりにアルカリ度の高い豆乳を使う(牛乳は中性)
レンコンのお好み焼き
材料
プリン体100mg以下
・レンコンはポリ袋に入れて食感が残る程度まで叩く
・叩いたレンコンを生地に加える
・酸性食品である小麦粉を減らしてアルカリ性のレンコンを使う
その他
・大根おろしをたっぷりすり込んだすいとん(プリン体92.9mg)
・トマトを1個丸ごと使ったじゃじゃ麺(プリン体99.5mg)
・白菜のポン酢あんかけ丼(プリン体96.4mg)
・カボチャのドリア(プリン体99.5mg)
・豚汁うどん(プリン体98.3mg)
<結果>
奥薗さんの尿酸値対策食を一週間食べ続けた結果がこちら。
一気に落ちてますね。
さらに、血管のしなやかさを表す数値も改善しています。
番組で紹介された料理のレシピはこちら
>>奥薗流 尿酸値オフレシピ7品
朝食効果で血管をふけさせない方法
1.必ず朝食を摂ること
事例:斎藤さんのケース
斎藤さんが病に気づいたのは7年前で、それ以来、毎朝欠かさず4種類の薬を飲み続けているそうです。斎藤さんは朝食をないがしろにしていたそうで、『朝食でこんなに具合が悪くなるとは驚きだった』そうです。
その昔、大手自動車会社の営業マンだった斎藤さんは、バランスのとれた和食メインの朝食をとっていました。しかし、ヘッドハンティングによる転職を機に生活が一変。新たな職場で残業続きのため、朝の時間が睡眠にとられるようになりました。必然的に朝食がおろそかになります。ごく簡単にすませたり、パンを買って手早く簡単に済ませたりということを繰り返すようになりました。2~3分で終わらせることも珍しくなかったようです。
しかし、斎藤さんは外回りの営業で毎日のように1万歩前後歩いていることもあり、健康には全く不安がなかったといいます。自分は中年太りやメタボとは無縁と思っていたのです。
その後も仕事は多忙を極め、35歳くらいから週のうち半分は朝食を食べなくなっていたそうです。そして朝食を食べないことが当たり前になって10年経った45歳ごろ、異常に喉が渇くようになります。奥さんがビックリして受診をすすめるくらいにたくさんのお茶を飲むようになっていったのです。
しかし、念のためにと検診を受けてもコレステロールや中性脂肪、血糖値など検査項目の数値に異常はありません。異常が見つからないからとそのまま放置して数か月後、今度は激しい倦怠感が斎藤さんを襲うようになります。再び受診したところ、医師は健康診断では行われない特殊な血液診断を行いました。その結果、血糖値に異常がみつかり、糖尿病を発症していることがわかったのです。
斎藤さんは通常の健康診断では調べない特定の時間の血糖値に異変が起きていました。それは食後2時間の血糖値です。なんと食後2時間で342まで上昇していました。
通常、人は食事をすると血糖値が120くらいまで上昇します。しかしすい臓がインスリンを分泌することで糖分をエネルギーに変えますので、血糖値は食後2時間程度で正常な状態まで戻るのが普通です。
ところが、朝食を1食抜くと、次の昼食後には血糖値は140くらいにまで急上昇してしまいます。なぜかというと、朝を抜くと前日の夕食から10時間以上も栄養が補給されない状態が続くため、体が一種の飢餓状態となり、次の昼食時にはいつも以上に多くの糖分を吸収してしまうからです。
こうなると血液中には糖分があふれかえることになり、すい臓もインスリンを大量に分泌してしまいます。たまになら大丈夫ですが、これが習慣になると、すい臓も疲弊し、やがては十分な量のインスリンを分泌できなくなり、糖尿病を発症してしまうと考えられるのです。
斎藤さんがまさにこのパターンであり、通常の健康診断で発見されなかったのは空腹時の正常な血糖値しか測ってなかったからでした。
斎藤さんの身体は朝食を抜くことで糖分を貪欲に吸収する体質になっていたわけです。若いころのようにバランスのとれた朝食をきちんと摂っていれば糖尿病の発症は避けられたかもしれません。それくらい朝食は必要不可欠なものなのです。
2.朝食時に野菜から食べる
朝食の時、野菜から食べると昼食後の血糖値の上昇まで抑えられるそうです。これはセカンドミール効果と呼ばれるもので、朝食時に摂った野菜の食物繊維が、朝食後はもちろん昼食後の血糖値の上昇まで抑えてくれるというものです。
ポイントは小腸にあります。普段は食べ物から栄養分を吸収する小腸ですが、最初に糖分を摂ってしまうとその糖分を真っ先に吸収してしまい、結果、血糖値が上がりやすい状態になります。
しかし、野菜を先に食べると食物繊維が小腸にとどまり、後からきた糖分の吸収を邪魔するのです。結果、糖分の吸収がゆっくりになり、血糖値の急上昇を抑えてくれるわけです。血糖値の上昇がゆるやかであればすい臓もインスリンをゆっくり分泌すればよいということになり、負担が軽くて済みます。
また、食物繊維は朝食のあと、4時間経っても5時間経っても小腸にとどまっていることがわかっています。つまり、朝食時の食物繊維が昼食時の糖分の吸収まで緩やかにしてくれるわけです。
<検証実験>
持続血糖モニターをつけて5分毎の血糖値を24時間連続して測定。
参加者仙石さん(女性)
〇肥満体型
身長162cm
体重89.5kg
〇ご飯など炭水化物が好物
うどんと炊き込みご飯
ラーメンライス etc
普段の食事
朝食
ベーコンエッグ丼
野菜ゼロです。
食後の血糖値の推移
糖尿病とまではいかない水準ですが、予備軍の域には入っています。
昼食
エビチリ丼
野菜は上に乗ったネギだけです。
食後の血糖値の推移
またしても血糖値は糖尿病予備軍ラインを超えています。
野菜から食べる朝食効果実践
普段の状態を知ったのち、1週間の予定で、野菜から食べる朝食を実践しました。
朝食 ベーコンエッグ+千切りキャベツ30g
仙石さんが食べた野菜は千切りキャベツを30グラムほどでしたが、血糖値の上昇は実践前とくらべてずいぶんとなだらかになりました。
昼食 焼き鳥丼
昼食は実践前同様、野菜がネギだけでしたが、血糖値は基準値の範囲内で収まっています。
しかし2日目にはまた違った展開を示します。原因は前日寝る直前に食べた夜食(ご飯+キムチ+明太子)でした。
朝食
野菜をしっかりと摂っていますが、、、
血糖値は基準値をオーバー。
昼食
こちらも血糖値は大きく基準値を超えてしまっています。
その後、気持ちを入れ替えて検証実験に取り組んだ仙石さんの数値は以下の通り。
食べた野菜 | 昼食後の血糖値最高(検証前) | 昼食後血糖値(検証後) |
トマト、きゅうり、水菜のサラダ | 145 | 128 |
キャベツの味噌汁 | 145 | 135 |
切干大根 | 145 | 140 |
キャベツ、レタス、ミニトマトのサラダ | 145 | 123 |
この検証結果から見て、どんな野菜であっても、少し食べるだけで昼食後の血糖値まで抑えることが明白に検証されたわけです。少しの野菜でも良いというところがすごいですね。