高齢者の多すぎる薬と副作用~控えたい薬~きょうの健康より

先日の『きょうの健康』のテーマは、高齢者の「多すぎる薬と副作用」でした。高齢者がたくさんの種類の薬を服用しているために起こる副作用とその改善方法を、老齢病の治療と研究が専門の東京大学大学院教授の秋下雅弘先生が解説していました。

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今回の番組は、秋下先生が代表研究者を務めた「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」をもとに構成したとのことです。

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
日本老年医学会

秋下先生は、このガイドラインの他にも高齢者が薬を服用するときの注意点などを一般の人にもわかりやすく説明した本を執筆しています。

薬は5種類まで 中高年の賢い薬の飲み方 (PHP新書)
秋下 雅弘

高齢者が多くの種類の薬を併用している理由

番組では、1人の患者が1ヶ月に何種類の薬を受け取っているかを年齢別に調査した結果が紹介されました。

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きょうの健康より

グラフを見ると、7種類以上の薬をもらっている人は、75歳以上で26%と40歳から64歳までの10%、65歳から74歳までの15%に比べてかなり多くなっていることがわかります。これは、年齢が上がると持病が増えるからです。秋下先生によると高齢者は平均3から4種類の持病を持っているそうです。

番組では、秋下先生の患者のAさん(70代、男性)の例が紹介されました。Aさんは、ふらつきや物忘れの症状を心配して秋下先生を受診しました。Aさんは、秋下先生の診療を受ける前は、高血圧、脳梗塞、不眠症と腰痛の治療のために7種類の薬を服用していました。

 

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薬の数と副作用の関係

秋下先生によると、服用する薬の数によって副作用を起こす割合が変わるそうです。

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きょうの健康より

グラフをみると、薬の種類が6種類以上になると副作用を起こす割合が増えることがわかります。このことから、薬は5種類までにするようにと秋下先生は勧めていました。
秋下先生の診察で、Aさんのふらつきと物忘れの症状が薬の副作用だということがわかったとのことです。また、高血圧の薬が多すぎて血圧が下がりすぎたことも、ふらつきの原因だったそうです。

 

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高齢者の薬の副作用と年齢による薬の効き方の変化

高齢者の薬の主な副作用は、ふらつき・転倒、物忘れ、うつ、せん妄、食欲低下、便秘、排泄障害などがあるそうです。ふらつきや転倒で骨折をして寝たきりになってしまう場合があるので、特に注意が必要とのことです。また、物忘れ、うつ、せん妄などの精神的な症状は、認知症と間違えられる場合もあるそうです。

長い間同じ種類の薬を服用していても副作用がなかったのに、副作用が出るようになってしまう原因は、年齢によって薬の効き方が変わるからだそうです。薬は胃や小腸で吸収されて、血液に混ざって全身を循環して必要な臓器に分布されることで効果が出ます。その後、肝臓で代謝・分解されたり腎臓で排泄されたりして、少しずつ効果が消えていきます。けれども、高齢になると各臓器の機能が低下するので、薬の代謝・分解、排泄が遅くなり薬が効きすぎることがあるとのことです。

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きょうの健康より

また、薬は体内の水分や脂肪に溶けたり、たんぱく質と結びついたりして分布しますが、高齢になると体内の水分や脂肪の量が減るので薬の分布がうまくいかなくなると秋下先生は説明していました。
さらに、多くの薬を服用していると、薬の飲み合わせが影響して副作用が出ることもあるので、服用する薬が増えれば増えるほど、副作用を予測するのが難しくなるとのことです。

 

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高齢者の薬を減らすポイント

高齢者の薬による副作用を改善するのに重要なのは、薬の種類と量を減らすことだそうです。医師が高齢者の薬を減らす時に考えるべきことは、薬の優先順位とのことです。本当にその薬を服用する必要があるのか、副作用が出やすいので控えたほうが良い薬を服用していないかを知る必要があると説明がありました。また生活習慣の改善によって、薬の量を少しずつ減らしていくことも大切だとのことです。高齢者が1回に服用する薬の量は、一般の成人の半分程度で良いそうです。

Aさんの場合は、高血圧の薬を3種類服用し血圧が下がりすぎていたので、ふらつき・物忘れの副作用が出やすい1つの薬の使用を中止したそうです。また、生活習慣の改善(眠くないのに早い時間から寝床に入るのをやめる、日中によく運動する)をして不眠症の薬の量を徐々に減らしていきました。それから、腰痛は以前よりも症状が軽くなっていたので使用をやめたそうです。Aさんは、これらの薬の服用をやめても病気の悪化はなく、ふらつき、物忘れもなくなり以前よりも元気になったとのことです。

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きょうの健康より

薬を減らすために高齢者自身ができること

薬を減らすために、高齢者自身がむやみに薬をほしがらないこと、自分の体が若い頃とは違うということを理解することが重要だそうです。高齢になると持病を完治させるのは無理ですが、薬を正しく使用すれば症状の改善や生活の質の向上が望めます。ですから、処方された薬は用法を正しく守って服用することと自己判断で薬の服用をやめないことが大切だと秋下先生が説明をしていました。また、薬が多すぎると思ったら、医師に相談するように秋下先生は勧めていました。
医師の診療を受けるときは、他に使っている薬を伝えることで薬の重複や増えすぎを増やすことができます。お薬手帳を1冊にまとめておくこと、かかりつけの薬局をきめておくことも薬の飲み過ぎの予防に役立つとのことです。

 

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まとめ

持病の症状を抑えるために薬を服用しているはずなのに、薬の種類が多すぎたり、量が適量ではなかったりするために副作用で苦しむのは本末転倒です。もし身近にいる高齢者が一度に多種類の薬を服用していて番組で紹介されていた症状があれば、医師に相談するように勧めたいですね。


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