肺炎予防と初期症状~高齢者は誤嚥にも要注意~チョイスより

肺炎について詳しく知っていますか?
咳が出たり熱が出たりするイメージのある病気ですが、詳しいことはあまり知られていないかもしれません。
肺炎は日本人の死亡原因第3位となっており、年間約12万人が命を落としている怖い病気です。
今回は、肺炎の基礎知識や予防法などを紹介していた『チョイス』をまとめておきたいと思います。

 

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風邪から肺炎に

肺炎が原因で亡くなる人の97%が65歳以上の高齢者だそうです。特に、風邪にかかって免疫力が落ち、体力が落ちているときに肺炎にかかってしまうと大変です。
Oさん(73歳男性)は12年前にはじめたスキューバダイビングを趣味にしており、毎日10キロ歩くなどしているので体力に自信を持っていましたが、去年の夏にひいた風邪がきっかけで肺炎にかかってしまったといいます。
「咳が止まらず息苦しくなって、呼吸が困難になった」というOさんですが、風邪だろうしすぐに治ると考えたそうです。ところが咳は一向に止まらず、しまいには咳のあまりの激しさに「(料理をする時に)包丁が持てなくなってしまった」そうです。
たまらず病院に駆け込んだOさんが検査を受けたところ、肺炎であることが判明しました。
下図はOさんの胸部のX線写真です。

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チョイス@病気になったとき「高齢者は要注意!肺炎」より

丸の部分にもやがかかっているのがわかります。
肺炎について、池袋大谷クリニックの大谷義夫医師は「喉の下は気管、気管支、肺胞と分かれていて、肺胞に炎症が起きてしまうのが肺炎」と説明していました。ふつうの風邪は細菌やウイルスが鼻や喉の奥(声帯より上の「上気道」と呼ばれる場所)で炎症を起こした状態なので、場所が異なるのです。
原因は細菌が主ですが、ウイルスやカビであることもあるそうです。

体力に自信のあったOさんが肺炎になってしまったのは何故でしょうか。
喉と肺を結ぶ気管には繊毛細胞という毛の形をした細胞があります。繊毛細胞は細菌などが肺に入らないように働いていますが、風邪によってその繊毛細胞が壊れると機能が果たせなくなり、細菌が肺に到達してしまうそうです。
さらに、Oさんの当時の生活にも原因がありました。
夏休み中のため泊まりに来ていたお孫さんをOさんは毎日遊びに連れて行っていたため疲れがたまっており、睡眠不足も重なっていたそうです。
大谷氏は「睡眠を7時間はとること。風邪、肺炎の予防になる」と話していました。

幸いOさんは早期の状態だったので抗菌薬で完治しました。
今では規則正しい生活を心がけているそうです。

 

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肺炎とは

肺炎について、国立病院機構東京病院呼吸器センター部長の永井英明氏は「肺は酸素と二酸化炭素を交換する場所。そこで炎症が起こるとガス交換が起こらなくなるので息苦しさが出て来る。重症化しやすい」と話していました。
必ずしも風邪がきっかけとは限らないそうで、病原体が直接肺に到達して発症することもあるそうです。

かぜとの症状の違いには以下のようなものがあります。

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チョイス@病気になったとき「高齢者は要注意!肺炎」より

発生部位の違いから肺炎では鼻水が出ないなどの違いがありますが、全体的に肺炎の方が激しい症状であることがわかります。
これだけ見れば違いがわかりやすそうですが、高齢者が肺炎にかかると軽い症状から出ることも多く、風邪との見分けがつきにくいそうです。軽い症状というのは例えば咳や息切れ、体のだるさ、食欲のなさ、微熱など、ほとんど風邪と変わらない症状ばかりです。急激に体調がわるくなることもあるそうなので、様子を注意深く見る必要があります。

また、永井氏によると「インフルエンザから重い肺炎になることのほうがより危険性が高い」といいます。特に高齢者はインフルエンザにかかってから二次性の肺炎にかかって亡くなるケースが多いそうですから、注意しましょう。
若い人でも、基礎疾患や持病がある人、免疫力を抑える薬を飲んでいる人などは注意が必要です。

肺炎の検査と治療

肺炎かどうかはX線検査で判断し、肺炎であることが発覚し次第、抗菌薬による治療が始まるそうです。
その後、X線検査と同時に行った痰の検査や血液検査の結果が出て、どの種類の薬が一番効果的かわかった時点で薬を変えたりしながら、治療を進めていくそうです。

 

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肺炎球菌による肺炎にかかった人

肺炎を引き起こす病原菌はとても多く、代表的なものには肺炎球菌黄色ブドウ球菌マイコプラズマなどがあるそうです。
Tさん(74歳女性)は、その中でもっとも多い肺炎球菌による肺炎に、71歳の時にかかってしまったそうです。Tさんによると「夜9時頃に救急車を呼ぼうかと思うくらい胸が痛くなった」といい、咳はなかったが全身にだるさを感じたそうです。「今までの風邪のだるさじゃないなと。身体に細い鉛が入ったようなズンっという重さ、だるさ。」と話していました。
Nさん(68歳男性)も昨年5月に肺炎球菌による肺炎になってしまいました。38度以上の高熱に加え、激しい咳で胸が苦しく、眠れない日が続いたそうです。

肺炎球菌による肺炎は、悪化すると細菌が毒素を出して激しい炎症を起こすため、重症化しやすいといわれています。炎症が広い範囲に広がると肺が機能しなくなり、最悪の場合死に至る危険もあるそうです。

肺炎球菌は厄介で、永井氏によると「肺炎球菌は周りに膜を持っていてそれが鎧の役割をしており、白血球の攻撃をブロックする」そうです。膜があるので排除されず、血液に入って全身に広がり、重症化しやすいそうです。
そして「(肺炎球菌自体は)お子さんは高頻度で持っているし、大人も約1割が喉や鼻の奥に保菌している。健康な人はそれで発病するわけではないが、咳などで高齢者に飛沫感染すると発病しやすくなる」といいます。

目に見えるものではないだけに、免疫力が下がりやすい時期は特に注意したいですね。

肺炎球菌ワクチン

しかし、肺炎球菌にはワクチンがあります。
Tさんは肺炎が完治した後すぐに接種し、再発を防いでいるそうです。Nさんも「ワクチンをうつとうたないとでは(心理的に)全然違う。」と話していました。
肺炎球菌ワクチンには2種類あります。

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チョイス@病気になったとき「高齢者は要注意!肺炎」より

永井氏によれば、「肺炎球菌の外側を覆っている膜をよく調べると、その構造の違いで90種類以上に分類できることが知られている」そうで、種類によって悪さをする程度も違うそうです。

その膜の部分の23種類を集めたワクチンが「23価」で、13種類を集めたものが「13価」です。
永井氏によると「13価の方が(種類の数は)少ないですが、23価の方はそのものを生成しただけで他のものを入れていないので、免疫を作る力がちょっと弱い。抗体が上がっても5年位で(力が)下がってくる」そうです。一方で「13価の方はあるたんぱくをくっつけているので、免疫を上げる力が強い」という特徴があるそうです。

23価は2014年から高齢者に定期接種することになりました。65歳から5年おきの定期接種で、いつでも誰でも受けられるそうです。アメリカでは65歳以上には先に13価をうってある程度免疫をつけてから1年後に23価をうつと、数もカバーするし免疫がさらに高まると考えられているそうですが、まだ様々な議論があり“正解”は確立されていないそうです。ワクチンの接種については主治医と相談してみるとよいでしょう。

ただし「ワクチンをうてば100%肺炎にならない」というわけではありません。
肺炎球菌による肺炎は肺炎全体の3割ほどなので、その他の菌を病原とする肺炎は防ぐことが出来ないのです。

肺炎球菌ワクチンには重篤な副反応(具合が悪くなること)はないので、まだ接種していない方はぜひ接種するようにしましょう。

 

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肺炎の予防法

永井氏によると、まずはかぜやインフルエンザにならないようにすることが第一だそうです。インフルエンザワクチンを毎年接種することも忘れないようにしましょう。
風邪やインフルエンザが流行っているシーズンにはなるべく人混みを避けることも大切です。どうしても外出するときにはマスクを着用し、帰宅時に手洗いやうがいをしっかりとするようにしましょう。

誤嚥性(ごえんせい)肺炎

Hさん(92歳女性)はこれまでに2度、肺炎で入院した経験があるそうです。
2年前の夏、1度目のときは1ヶ月の入院で完治したといいますが、昨年夏に再び肺炎を患ってしまったそうです。突如息苦しさを感じて熱が40度以上まで上がり、意識が朦朧としてきたそうです。
Hさんが罹患したのは「誤嚥性肺炎」いう種類の肺炎です。
詳しく検査してみると、食べ物をうまく飲み込めていないことがわかりました。通常、食べ物を飲み込む際には喉頭蓋(こうとうがい)という気道の蓋が一瞬閉まり、肺に入らないようにする「嚥下反射(えんげはんしゃ )」という動きが生じてスムーズに飲み込むことができます。

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チョイス@病気になったとき「高齢者は要注意!肺炎」より

しかし、Hさんは飲み込む力が衰えて喉頭蓋がうまく閉まらなくなっており、食べたものが喉に引っかかってしまっていたのです。
喉頭蓋が閉まらないために食べ物や飲み物が肺に入っていってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。飲み込んだものには口内の細菌が混ざっているので、それが肺の中で繁殖することにより、肺炎が起きてしまいます。(正常に胃に飲み込めていれば細菌は胃酸で死滅します。)
下図はHさんのCT画像です。

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チョイス@病気になったとき「高齢者は要注意!肺炎」より

肺の背中側に炎症が起きているのは、仰向けで寝ている時に誤嚥したからと推測されるそうです。

Hさんは治療として抗菌薬を点滴しながら口腔ケアも実施し、歯と歯茎にいる菌を減らしました。普段から口腔内に保湿ジェルを使うなどの工夫も取り入れます。
さらに、飲み込む力を取り戻すトレーニングとして、舌の運動や発声練習を行いました。これで喉頭蓋の反応を良くすることができるそうです。
食事の内容も、最初はあまり噛まずに食べられるものからはじめて、少しずつ噛んで食べるものに切り替えていきます。食べるときには背筋を伸ばして食べるようにすることも重要です。

以上のような肺炎の治療をしながら、日常生活の動きを回復するリハビリも行います。寝たきりの状態で嚥下機能だけを回復させることは難しいので、離床して歩く練習をしたり、日常生活の動作を練習したりして動ける状態を作るのが大切だそうです。

永井氏によると「肺炎を起こす誤嚥は気づかない誤嚥が多い」といい、肺炎のうち3分の2がこの形で起こる肺炎だそうです。
脳血管障害や認知症の人はリスクがさらに高まります。永井氏によると「寝ている間、知らず知らずのうちに(のどにつまった食べ物が)肺に落ちていく」といい、さらには「口の中の雑菌が唾液と一緒に肺に落ちていくことが多い」といいますから、常に口の中をキレイにしておくことが重要です。
寝る時にベッドに角度をつけるなどの工夫も効果的だそうです。

 

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まとめ

高齢の方には注意すべき点が多い病気であることがわかりました。
今回の特集で紹介されたように予防法・対策法はあるので、日常生活の中での小さな心がけをしていくようにしましょう。
ちなみに、定期接種のお知らせは自治体から対象者に手紙が届けられるそうです。
費用に関しては、任意での接種は23価が8千円ほどで13価が1万円ほどとなっており、23価の方は自治体から補助が出る場合もあるので、調べてみるとよいでしょう。


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