猛暑がつづく夏には熱中症の話題が連日のように報道されます。
しかし、これだけ熱中症が周知された今でも、「自分は健康だから大丈夫!」と考えてしまっている方が多いのではないでしょうか?
実は、多くの人がすでに「軽い熱中症」を経験している可能性は大いにあるそうで、その兆候を見逃してしまうと重症化し、命の危険にまでつながるというのです。
そこで今回は、熱中症の事例を紹介するとともに具体的な対策法まで解説していた『健康カプセル!ゲンキの時間』をまとめておきたいと思います。
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症例1:のどの渇きは感じなかったのに…
Nさん(60代女性)は2013年7月、浅草に来た友人たちの観光案内をしていました。
「短い時間でいろんなところを見て欲しい」と考えたNさんは炎天下を4時間も歩き続けましたが、案内している最中はのどの渇きを感じなかったそうです。
友達と別れたあと、喉の渇きや空腹を感じたNさんは近くのおにぎり屋さんに入り、おにぎりとビールを頼んで飲み始めたそうです。
すると、急に眠くなり、直後にものすごい吐き気が出てきたそうです。「もしかしたらこのまま死んじゃうのかな」というほどだったそうで、すぐに救急車で搬送されました。
体温は本来37度以下にコントロールされていますが、これを保てずに上がってしまう状態のことを熱中症と言います。
夏の暑さによって体内の臓器が熱を持ったり、水分や塩分の不足によって血流が減少したりすることで、栄養分やエネルギーが全身に行き届かなくなって異常をきたす病気です。
昭和大学病院救命救急センター長の三宅康史氏によれば、「(Nさんのように)ものごとに集中している場合は喉の渇きを忘れてしまう場合がある。喉の渇きに気づいた時には熱中症になっている」といいます。
私たちの脳には口渇中枢という水分センサーがあります。体内の水分不足を察知すると唾液の分泌量を減らして口や喉の渇きとして知らせてくれるのですが、何かに集中しているとこの機能が鈍ってしまうそうです。
Nさんの場合は、喉の渇きを癒すためにビールを選んだのもよくなかったそうです。アルコールは体内で熱に変わってしまいますから、暑い環境に身を置いていた場合は、塩分を含んだ水分を大量に摂るべきだったのです。
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症例2:ランニング中に脚が痛くなって…
Aさん(66歳男性)はフルマラソンを完走するほどの実力の持ち主で、普段からランニングを日課にしているそうです。
2010年8月、仲間とランニングに出かけたAさんは快調に飛ばしていましたが、脚に痛みを感じ、次第に脚がつる感じがひどくなっていったといいます。水分補給をしようとしても吐き気で気持ちが悪く、まともに水を飲むことすら出来なかったそうです。
そのままなんとか帰宅してお風呂に入り、つった部分を伸ばしてみましたが、激痛はとれませんでした。そこで、尋常じゃない様子に気づいた奥さんが救急車を呼んだそうです。
三宅氏によれば「暑い環境の中でつったら、それは熱中症だと考えたほうが良い」といいます。つる状態というのは、血流不足によって末端に酸素や栄養が届かず筋肉が活動できなくなる状態です。そこに吐き気が加わると水分や塩分の補給が出来ないので、もう病院に行くしかありません。
Aさんの場合はお風呂で身体を温めてしまったのもよくありませんでした。水風呂なら良かったそうです。
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症例3:夏風邪かと思いきや…
Tさん(44歳女性)は、東京が真夏日だった2010年8月のある日、体調を崩してしまいました。
エアコンが古いためサウナ状態になっている職場で仕事をしていると、次第に汗が吹き出すように出てきて、しばらくすると逆にまったく汗が出てこなくなったといいます。
帰宅後、体調が悪いので体温を測ってみると37.5度に上がっており、頭痛や寒気もあったので風邪薬を飲んで寝ることにしたそうです。
翌朝起きると体調はさらに悪化しており、体温は41度まで上がっていました。意識がもうろうとした状態で救急車に運ばれたTさんは、医師から「これ以上体温が上がったら死んじゃいますよ」と言われたそうです。
オフィスで起きたTさんの身体の変化について、三宅氏は「人間は汗をかいて身体を冷やすが、水分が足りなくなって汗が出なくなってしまったのだろう」と解説していました。
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熱中症の危険度
三宅氏によれば、熱中症の危険度は下図のように3段階に分けられるそうです。
(Ⅰ→Ⅲの順で危険になっていきます。)
危険度Ⅱ以上では医師の診察も含めた対処が必要になります。
予防のための水分補給のポイントとして「胃腸を冷やし過ぎない白湯でとると非常にいい」とも指摘していました。
エアコン嫌いの人を説得するには
総務省の発表によると、熱中症で搬送された人のおよそ半数が65歳以上だったそうです。
高齢者は体温調節機能が衰え、熱中症対策を怠りがちなのがその原因とみられています。
高齢の方にはクーラー嫌いの方が多かったりして、なかなか対策をとってくれませんよね。番組に登場したご高齢の方も、「クーラーの冷えは体に合わない」と話していました。
そういう方を説得する際には、以下の3点がポイントとなります。
・ 高齢者は暑さを感知しにくいことを知ってもらう
・ 気温が以前より上がっていることを認識してもらう
・ デジタル温度計を部屋に設置する
下図は、東京近辺で30度を超えた合計時間を示した図です。
30年ほどのうちに倍増しているのがわかります。さらにエリアも拡大していますね。
先述の高齢の方も、この気温変化のデータを見て考えが変わったそうです。温度計を毎日チェックして室温を気にかけるようになり、付いているエアコンを勝手に消すこともなくなったそうです。
三宅氏は「高齢者は熱中症弱者であるという認識が必要。エアコンを必ず使うこと。温度計を見て30度を超えたら必ず使おう、というふうに決めておくといい」とアドバイスしていました。
エアコンは28度前後に設定するか除湿モードにし、扇風機などを使って部屋全体を涼しく保つのがコツです。
就寝前や夜トイレに起きたときにコップ1杯の水、せめて半分は飲むようにすることも習慣づけておくとよいそうです。
まとめ
熱中症の症状は、はじめはちょっとした体調の変化に過ぎないので、見落としがちであるのがやっかいなところです。
今回細かく紹介されていた症例を覚えておいて、いち早く熱中症の可能性に気づけるようにしておきましょう。