大腸ポリープと大腸がん~チョイス@病気になったときより

40歳以上の日本人の4人に1人が持っていると言われる大腸ポリープ。
ポリープとは、粘膜の一部がイボ状に盛り上がったもののことで、胃や十二指腸、胆嚢、鼻や喉など粘膜のあるところに発生するのですが、大腸ポリープの場合は痛くもかゆくもないため、気づきにくいという特徴があります。
しかも、できていることに気づかずに放置してしまうと、いつの間にかそれが大腸がんの元になってしまうといいますから、非常に厄介です。
そこで今回は、大腸ポリープと大腸がんの関連について解説していたNHK『チョイス@病気になったとき』をまとめておきたいと思います。

 

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大腸ポリープが見つかっていたのに…

番組に登場したKさん(73歳男性)は、タクシードライバーとして40年以上勤務しています。
特に体調の悪さも感じていなかった13年前の60歳のとき、会社の健康診断の「便潜血検査」で、陽性が出たといいます。つまり、便に血が混じっていて、大腸がんの疑いがあることがわかったのです。
ところがKさんは、自覚症状がないことや、「がんと言われるのが怖い。」という思いから、より詳しい検査を受けに病院に行くことをしませんでした。
その結果、半年後に再び受けた便潜血検査でも同じ結果が出てしまったそうですが、それでもやはり放置してしまいました。

次第に下痢と便秘を繰り返すようになったKさん。それが3ヶ月も続き、血便まで出るようになってしまったためさすがに心配になってきたKさんは、陽性が出てから9ヶ月経ってはじめて近所の大腸専門医を受診しました。
大腸を詳しく調べてみると、1.5センチほどのきのこのような形をしたポリープが見つかりました。しかも、そのポリープはすでに大腸がんになってしまっていました。

結果、Kさんは大腸を5センチも切除し、長期入院することになってしまいました。当然、仕事も休まざるを得なくなり、その間の収入はゼロになってしまいました。

東京都立駒込病院消化器内科部長の小泉浩一医師によれば、大腸がんの患者数は年々増加しているといいます。

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チョイス@病気になったときより

特に女性の患者数は急増しており、胃がんや肺がんを抜いて1位となってしまっています。

大腸ポリープの8割は、がんになる可能性がある「腺腫」と呼ばれるものです。
出来たばかりの時点では良性ですが、大きくなる過程で一部ががん細胞になることがあるそうです。
つまり、大きくなるほどがん細胞になってしまう可能性が高いということです。

 

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大腸内視鏡検査

「大きくなるほどがん細胞になってしまう可能性が高い」ということは、早期発見が何より大切ということです。
その早期発見のためにもっとも有効な検査方法は「大腸内視鏡検査」です。
番組では大腸内視鏡検査の詳しい内容も紹介されていました。

大腸内視鏡検査では、大腸内に便が残っていると正確な検査が行えないため、検査前日から準備をする必要があります。
医師から消化が良くて腸に残りにくい食事が勧められ、前日の夕食を最後に検査が終わるまでは食事を摂ることができません。自宅で飲むための下剤も渡され、前日夜の8時に飲むよう指導されます。
当日は、検査着に着替えてからおよそ2リットルもの下剤(腸管洗浄剤)を飲んで、大腸を完全に空っぽにします。200mlを10分おきに飲んでいると、1リットルあたりからトイレに行く回数が増えてくるそうです。
これを繰り返して、大腸がカラになったかどうかを便の色から判断します。

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チョイス@病気になったときより

ほぼ透明(画像の⑤)になったらようやく準備完了。検査に入ることができます。

検査は、肛門からカメラを入れます。
内視鏡を大腸の一番奥(約1メートル)まで入れて、引き抜きながらモニターで見ていきます。
およそ20分にわたる検査中、被検者もリアルタイムで自分の腸内を見ることができます。

「痛み」がないか心配になりますが、手術を受けていて癒着がある場合などには痛みを感じることもあるそうです。ただしその場合でも痛みをなくす薬があるそうですから、そう怖がる必要はないでしょう。
軽い痔でも、局所麻酔や静脈麻酔をしてから検査を行うので、基本的には大丈夫だということでした。(ただし、ひどい痔がある場合には痔の治療を先に行う必要があるそうです。)

このように、大腸内視鏡検査はすこし手間のかかる検査ではあります。
それでも、年間約100万人もの人が受けており、自治体や企業での健康診断の中で便潜血検査をおこなうところが増えていることもあって、被検者数は増加傾向にあるそうです。
費用は、人間ドックなどのがん検診で受ける場合は「自由診療」扱いとなるためおよそ2万円で、便潜血検査で陽性が出たあとに受ける場合は保険が適用され、およそ6千円で受けられるそうです。

小泉医師によれば、検査を受けた結果ポリープが見つからなかった場合は、10年後に再び検査を受けるのがよいそうです。
ポリープが見つかってしまった人は、ポリープの数や状況によりますが、短い期間で定期的に検査を受けるよう勧められていました。
ただし、小泉医師が強調していたのは、体調の変化の有無に関係なく、40歳を過ぎたら3〜5年毎に定期的に大腸内視鏡検査を受けるべき、ということでした。「自分の誕生月に受けると決めておけば覚えやすくていい」そうです。

内視鏡の能力

内視鏡カメラの能力も詳しく紹介されていました。
内視鏡カメラで1万円札の表面を見てみると…

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チョイス@病気になったときより

およそ0.2ミリの小さな文字までハッキリと映すことができています。
これだけの能力があってはじめて、腸管内の表面の色の違いやポリープの性質の違いなどを見極めることができ、治療の方針を考えることもできるようになるのです。

大腸内視鏡検査以外の検査方法

大腸の検査には、便潜血検査、CTコロノグラフィー、X線バリウム検査などの検査方法もあります。

「便潜血検査」

これがもっとも身体に負担のかからない検査方法です。便を採取し、便に血が混じっているかどうかで大腸内の異変の有無を知ることができます。簡単におこなえるぶん詳しく調べることはできませんから、便潜血検査で陽性になったら必ず大腸内視鏡検査を受けるべきだそうです。

「CTコロノグラフィー」「X線バリウム検査」

CTコロノグラフィーとバリウム検査は、準備段階で下剤を飲み、大腸をカラにする必要がある点では内視鏡検査と変わりません。
さらにバリウム検査ではバリウムをお尻から注入する必要があり、心理的な負担は大腸内視鏡検査とさほど変わらないかもしれません。
これら2つの検査ではポリープの有無までしか把握できず、それが癌になるかどうかの判断を下すためにはやはり大腸内視鏡検査を受ける必要があります。

ポリープが見つかったら、どうする?

続いて番組に登場したNさん(58歳男性)は、体育会系で若い頃から健康には自信があったといいます。だからこそ、ポリープが見つかった時には思考停止状態になってしまったといい、「自分がなるとは」と信じられなかったそうです。

2015年の秋、知人からもらった旬の魚をいつもよりも多く平らげた翌日から、下痢と下腹部の痛みが10日間も続きました。さらにベルトの穴を2つ分ゆるめないといけないほどお腹がパンパンに腫れ上がってしまったといいます。
不安になったNさんは病院へ行き、大腸内視鏡検査を受けることに。すると…

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チョイス@病気になったときより

腸を塞ぐほどの巨大なポリープが1つと、4ミリ程度のポリープが2つ見つかりました。
当時を振り返って、Nさんは「良性なのか悪性なのか、そして、悪性ならどこまで進んでいるのかが気になった。身体の中に時限爆弾を仕掛けられたような感じ。」と語っていました。

ポリープ切除の判断の仕方

このようにポリープが見つかった場合、それを切除するかどうかはどのように判断するのでしょうか。
小泉医師の解説によれば、1センチを超えるポリープは多くが悪性であるため「切除」という判断になることが多いそうです。しかし、4ミリ以下だと必ずしも悪性の細胞を伴っているとは限らないため「経過観察」ということになり、定期的に診察・検査をするという判断になるそうです。

ただしこれはあくまで原則であって、1センチ以上のポリープでも悪性でないものも存在するといいます。
例えば…

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チョイス@病気になったときより

このポリープは大腸の正常な部分との境目も不確かで、表面には正常に粘膜が覆っているため、がんになることはまずないそうです。
これだけ大きくなって大腸を塞いでいたらトラブルが起きそうですし、患者からすると「ポリープができてしまっているならとってほしい」という思いもありますが、たとえば患者が脳梗塞や心筋梗塞を予防するための薬を飲んでいたりする場合は、ポリープをとることで出血のリスクが高まるため、切除しないほうがいいという判断になることもあるそうです。
また、過形成性ポリープというがんになる可能性がほとんどない、高齢者に多くみられるポリープも存在します。

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チョイス@病気になったときより

このポリープも切除しないという決定になることが多いそうです。

このように、ポリープの状態や患者の体調・体質、服用している薬などを総合的に考慮して、ポリープの切除は判断されます。
また、ポリープができてしまった人はポリープができやすい体質になってしまうそうですから、以後の検査の頻度を医師と相談して変えてゆく必要があるそうです。

「切除」を選んだ、Nさんの決断

ポリープが3つも見つかったNさんは、悩みました。
悩んだ結果、友人やご家族をがんでなくした経験などもあったため、念のため4ミリ以下のポリープまで含めてすべて切除するという決断をしました。

ポリープの切除には、大腸内視鏡の先端についたスネアを用います。

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チョイス@病気になったときより

ポリープの根っこをスネアでしぼりこみ、電流を流して焼き切ります。

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チョイス@病気になったときより

焼きすぎると腹膜炎になってしまうため加減が必要な治療ですが、最近ではクリニックでも安全にできるようになっているそうです。

術後には切除したポリープの詳しい検査を経て、良性だったか悪性だったかを診断します。
Nさんの場合、大きい方のポリープは悪性の細胞が現れていて、小さい方は良性だったそうです。Nさんは術後の感想として「時限爆弾が解除された、スッキリした気分」と語っていました。

 

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まとめ

以上、大腸ポリープと大腸がんについてまとめてきました。
もし、がん細胞がポリープの外にまで広がってしまった場合は、大腸の一部をまるごと切除する必要が出てくるため、早期発見がとにかく重要です。
面倒臭さや恐怖感がネックになって敬遠しがちな大腸内視鏡検査ですが、まずは手軽な便潜血検査から受けてみるというのも有効です。
会社の健康診断に含まれていないなどの理由で今まで受ける機会がなかった方は、自治体が行っている健康診断などで自主的に受けるようにしましょう。

 


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