新型の脅威!ノロウイルスの予防と対策~ためしてガッテンより

今やその名を知らない人はいないほどの存在となった「ノロウイルス」
感染力はインフルエンザの1000倍もあり、急激な下痢や嘔吐の症状をもたらす恐ろしいウイルスです。
ノロウイルスの感染者はこの20年で100倍以上に急増しており、アメリカCDC(疾病予防センター)の調べによれば、世界中で5歳以下の子供が毎年20万人も死亡しているそうです。
そんなノロウイルスの新型が2014年に日本で発見され、感染者は世界中に広がりつつあるといいます。
そこで今回は、ノロウイルスに関する知識やその予防と対策がNHK『ためしてガッテン』で紹介されていましたので、まとめておきたいと思います。

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新型ノロウイルスが川崎市で確認される

2014年3月、日本のある医療機関でウイルスの集団感染が発生し、患者たちは激しい嘔吐と下痢に悩まされました。
ノロウイルス特有の症状であったため、医師はノロウイルスの診断キットを使って患者たちを検査しましたが、反応はありませんでした。
現場では判断できなかったため、川崎市健康安全研究所が世界中のデータと照合しながら3ヶ月かけて検査を進めると、そのウイルスが全く新しいノロウイルスであることがわかったのだそうです。

そのウイルスは「GⅡ・P17」と名付けられ、通称「カワサキ変異株」と呼ばれています。

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ためしてガッテンより

この新型ノロウイルスの構造には、驚くべき事実がありました。

ウイルスが人間に感染する際には、ウイルスの表面にある6種の突起が関わっているのですが、新型ノロウイルスは全ての突起の形が従前のノロウイルスから変化していたのです。
そのため、これまでは有効だった免疫が役に立ちません
これは大幅な変異で、番組に登場した国立感染症研究所の片山和彦氏は「フルモデルチェンジに近い。(車に例えると)同じ車種に見えて同じ名前だけど、形が違い、性能も違う。」と、その特異性を語っていました。
今年流行すれば、世界中にあっという間に広がることが予想されるそうです。

その脅威から身を守るために、まずはノロウイルスに関する基礎知識から見ていくことにしましょう。

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ノロウイルスの基礎知識

下の図は、国内の急性腸炎患者からノロウイルスが検出された数の推移を表したグラフです。

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ためしてガッテンより

1968年に初確認されて以降、どんどん増えています。
なぜ、このように急増しているのでしょうか。

「ノロウイルス」という呼び名がついた2002年に、ノースカロライナ州である実験が行われました。
その実験は、様々な性別・年齢・人種の77人が、ノロウイルスの入った水を飲む、という信じられないものでしたが、重要な事実が2つ明らかになりました。

1,わずか10個のウイルスでも激しい症状を引き起こす強い感染力がある
2,何度繰り返しても全く感染しない人がいる

2点目はとても意外な結果で、発症した人としなかった人の割合が44:33と拮抗していたのです。
さらに、発症した人の血液型に注目してみると……

O型60%
A型44%
B型33%
AB型0%

O型の人は特に発症しやすく、AB型の人はまったく発症していなかったのです。

ノロウイルスは、ホコリなどにくっついて口から体内に入ってきて、小腸まで到達すると粘膜を破壊し、ものすごい勢いで増殖をはじめます。8時間で数十万倍の数になるそうです。
すると、小腸の細胞はボロボロになり、食べ物を消化したり吸収したりできなくなってしまい、嘔吐や下痢が引き起こされるのです。

しかしノロウイルスは、AB型の人の小腸の粘膜を突破できませんでした。
突破するには“鍵”のようなものが必要で、その鍵穴の形は血液型によって違うのだそうですが、ノロウイルスの持っているA型・B型・O型の鍵ではAB型の人の鍵を開けることができなかったのです。

ここまでお読みになったAB型の方は「私は安心だ…」と思われたかもしれませんが、残念ながらそうではないのです。

この実験の翌年(2003年)に日本で起きた集団感染で血液型調査をすると……

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AB型の人も発症してしまっています。

これらの実験と調査からわかるのは、

ノロウイルスは増殖しながら、驚異的なスピードで進化・変化を遂げている

ということです。
ノロウイルス感染が急増している理由はここにあったのです。

さらに、人間の文明が感染の拡大に一役買ってしまっている事実も明らかになっています。

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ノロウイルスは「文明病」

一時期、ノロウイルス流行による風評被害で牡蠣が売れなくなるということがありましたから、牡蠣などの二枚貝がノロウイルスの発生源だというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際は、二枚貝がウイルスを発生させているわけではないのだそうです。

牡蠣には、海水中の汚れを取り込んで浄化する習性があります。
その際に、海水1リットルあたり1個ほどの割合で存在しているノロウイルスまで吸い込んでしまうため、体内に蓄積してしまうのだそうです。つまり貝は「発生源」ではなく、「通過点」だったのです。

そこで番組では、ノロウイルスの出どころを探るために、海水をさかのぼって調べていました。

まず「河川」では、1リットルあたり100〜1000個のノロウイルスが検出されました。
更にさかのぼって下水処理場の下水を調べてみると、1リットルあたり10万個ものノロウイルスが検出されていました。
さかのぼるにつれてウイルスの濃度が高くなることからわかるのは、ノロウイルスを増やしているのが「人間」だということです。
ノロウイルスは人間の腸管の中で増殖し、それが下水に流れ、川に排出され、海水に混じって、魚介類の体内に蓄積され、それをまた人間が取り込んでいるのです。

ふつう、清潔な先進国では感染症は減少するものですが、ノロウイルスは例外です。
さらに航空機の発達によって、短期間で世界中に拡散してしまいます。
このような構造から、ノロウイルス感染症はいわゆる「文明病」の一つと言われているそうです。

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最新の研究

更にやっかいなことに、ノロウイルスは実験室で増殖させることができません。
生きた人間の腸以外で増やすことができないために、実験や研究はなかなか進まず、ワクチンや特効薬もいまだに誕生していません。
下水処理場でも、現時点の技術ではノロウイルスを100分の1程度に減らすことしかできないそうです。
ふつうの細菌やウイルスは表面に膜があるため、アルコールに晒されると溶けて感染できなくなるのですが、ノロウイルスは膜がないために消毒が効かないのです。

とはいえ少しずつ、研究は前進しています。

例えば、番組に登場した北海道大学の佐野大輔准教授は、ノロウイルスを吸着する腸内細菌「SENG—6」に注目し、研究を進めています。

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佐野教授によると「トイレからの水を環境中に出す前にノロウイルスの濃度を下げることが大事」だそうで、ノロウイルスを吸着する細菌をトリモチのように使って、浄水場でウイルスを回収してしまうことを目指しているそうです。

佐野教授によるSENG-6の研究

ノロウイルスは,人の血液型を決定する多糖(以下,血液型決定抗原)に吸着することが知られています。そこで,血液型決定抗原様物質の産生能力を手がかりとして,腸内細菌を健常者の糞便から選り分けました。単離された菌株(Enterobacter sp. SENG-6)に関し,ノロウイルス粒子との吸着能力評価,及びノロウイルス粒子吸着部位の探索を行いました。
(中略)
SENG-6は、血液型決定抗原様物質を細胞外に分泌しており,そこにノロウイルス粒子が強く捕捉されることが確認されました。
この腸内細菌にノロウイルスを捕捉させれば,腸の細胞へのノロウイルス感染を抑制できる可能性があり,プロバイオティクスへの応用が期待されます。またノロウイルスを大量に含む下水を処理する際にも,ノロウイルスをこの腸内細菌に捕捉させた後で膜ろ過を行うことで,大きい口径を持つ膜であってもノロウイルスをこし取って除去することが可能となることが予想され,新たな水中ノロウイルス除去手法の確立が期待されます。

北海道大学プレスリリースより

また、広島大学の島本整教授は、一般家庭でもノロウイルスを99%以上消毒できると語り、その方法を解説していました。

使うのは「渋柿」で、渋柿に含まれる「タンニン」という物質がノロウイルスのタンパク質に作用してウイルスを固めてしまい、人間に感染できないようにするのだそうです。

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渋柿をつかった消毒液の作り方

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  1. 熟していない青い渋柿を、沸騰したお湯に入れて煮ます。
  2. 5分間煮たら今度は冷まして、種を取り除いてから皮ごとすりおろします。
  3. それから、すりおろしたものを布で絞り、果汁だけを抽出します。
  4. その果汁を消毒用アルコールで3倍に薄めます。
    つまり「果汁:消毒用アルコール」が「1:2」になるようにします。

これでノロウイルス用消毒液の完成です。

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スプレーに入れて、調理器具や手にかけて消毒しましょう。
口には入れないように注意してください。

渋柿を手に入れるのが難しい場合は、ホームセンターなどで売られている無臭の「柿渋(かきしぶ)」を使いましょう。(無臭のものを選ばないと臭いがキツくて大変だそうです。)
柿渋を用いる場合は、消毒用アルコールで10倍に薄める必要があるそうですから、注意しましょう。

柿渋や消毒用アルコール(=消毒用エタノール)はアマゾンでも販売されています。


柿渋エキスが配合された消毒スプレーも販売されています。

日常生活におけるノロウイルス感染予防

番組には浜松医療センターの矢野邦夫研究員が登場し、日常生活でできるノロウイルス対策を紹介していました。

一番は、やはり「手洗い」だそうです。冬は水が冷たくて大変ですが、15秒以上洗い流すことが必要とのことです。

また、「トイレの消毒」も有効だそうです。便座やドアノブ、スイッチ、レバーなどには確実にウイルスが付着しているので、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)で消毒するようにしましょう。

こちらもアマゾンで購入可能です。

ちなみに、トイレを流す際にフタを開けっ放しで水を流すと、眼に見えないくらい細かい飛沫が飛び散ってしまい、90分間ほど空気中を舞ったままになるそうです。これでは個室内にウイルスが充満することになってしまいますから、トイレを流すときには必ずフタを閉めるようにしましょう。

同じ原理で、トイレの温風乾燥機を手洗いが不十分な状態で使うと、ウイルスを空気中に撒き散らすことになってしまうそうです。

このお話からもわかるように、空気中に漂うウイルスの吸入を抑える目的で、外出時には「マスク」をすることも勧められていました。

どれも基本的なことですが、しっかりとやれば大変効果的だそうです。
日頃から心がけるようにしましょう。

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あまり知られていませんがウォシュレットもウイルスを飛散させる原因となります。これは強い水流の場合に顕著で、温水が水蒸気となりウイルスを運ぶのだそうです。
ゆえに感染者はウォシュレットを使わないか、使っても水流を弱くするなどの工夫をした方が良いです。もっとも、それ以上に大切なのがトイレの除菌です。
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ノロウイルスの感染予防に効く食べ物

牛乳やチーズなどの乳製品は、ノロウイルスの感染予防に効果的だそうです。
「ラクトフェリン」というタンパク質が小腸のバリアになって、ノロウイルスの侵入を防いでくれるのだそうです。

ラクトフェリンの機能
1,免疫調整機能
小腸にあるパイエル板は、リンパ球が集合した免疫組織で、全身の免疫ネットワークの維持に大きく関与しています。ラクトフェリンは、このパイエル板に働きかけて、免疫細胞を活性化します。

2,抗菌・抗ウイルス作用
ラクトフェリンは、鉄との結合力が大変高いため、マクロファージや好中球の中で鉄を利用したフェントン反応(強力な活性酸素の発生)を活性化して、細菌やウイルスを攻撃します。

オーソモレキュラー.jpより

ある実験では、毎日乳製品を摂ったグループでは、摂っていないグループに比べて感染率が3分の1以下になったといいます。

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ためしてガッテンより

手洗いや消毒などと組み合わせて、徹底的に予防していきましょう。

ラクトフェリンといえばやはりヨーグルトを思い浮かべますが、サプリメントでもたくさん発売されています。自分の好みで試してみるのも良いでしょう。


まとめ

今回話題にもあがった牡蠣ですが、「生食用」と書いてある牡蠣はほとんどが安全に生産されているそうですから、神経質になる必要はありません。

逆に、「加熱用」の牡蠣を加熱が不十分なまま食べてしまうことによる感染が多いそうです。
ノロウイルスは85度で1分以上加熱すれば死滅します。
食べ物にはしっかりと火を通し、予防対策も万全に整えて、ノロウイルスに苦しめられない冬を過ごしましょう。


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