胆石・胆のうポリープの症状と治療法~チョイスより

あなたは、「胆のう」についてどのくらいのことを知っていますか?
正直、胃腸や大腸などの臓器に比べるといまいちピンとこない器官ですよね。
実は胆のうは食事の際にとても大切な役割を果たしているのですが、病気になるとある厄介な特徴がある器官でもあるのです。
今回は、胆のうに生じる異常・病気に関する知識や、それらと上手に付き合う方法について紹介していたNHK『チョイス』をまとめておきたいと思います。

 

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胆のうとは

胆のうは肝臓の裏側に位置する器官です。
脂っこいものを消化するために肝臓でつくられる「胆汁」をためておく役割があります。
ここで生じうる主な異常・病気には、胆石、胆のうポリープ、胆のう炎、胆のうがんなどがあります。

胆石が見つかって20年後に…

胆石は、胆汁の中のコレステロールなどが胆のうや胆管で固まったものです。6〜8割は無症状であるため「サイレントシック」と呼ばれるのですが、これが胆管の出口を塞いでしまうと、胆のう内に溜まった胆汁を押し出そうと胆のうが収縮し、痙攣を起こして激痛が走ります。

番組に登場したKさん(60代男性)は2年前、胆石が原因で緊急手術を受けました。
もともと、20年以上前の定期健診で胆石があることはわかっていたそうで、だからこそKさんは「痛みもないし違和感もないし、なにもないので意外だった」といいます。
2年前に生じた違和感は「食べたものが消化しない、胸がつかえた状態が数時間続いた」という異常から始まったそうで、みぞおちに違和感をおぼえたそうです。
最初は胃もたれかと思い、数時間後には治まったので忘れていましたが、数日後の夜につよい痛みが出始めたそうです。
しかし、週末で病院が休みだったこともあって、Kさんは病院へはいかずに我慢してしまいました。「重苦しくなる痛み」はどんどん強くなり、丸一日我慢し続けた翌日の夕方、救急外来を受診。血液検査やエコー検査、CT検査を受けた結果、胆石に原因があることがわかりました。

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チョイス@病気になったときより

この画像では少しわかりづらいですが、胆のうの周りに炎症が起きています。

Kさんは「急性胆のう炎」と診断されました。
まず、胆石が胆のうの出口をふさいで、痛みが生じました。その上、病院へ行かずに我慢し続けたため、胆のうの内部は強い圧力を受け続けることになったので炎症を起こしてしまい、痛みが激化したと考えられるそうです。

下の画像が、Kさんの体内にできた実際の胆石です。

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チョイス@病気になったときより

大きく硬いこの胆石は、「黒色石」と呼ばれる種類の胆石です。
人によっては、コレステロールが固まった真っ白な石ができることもあるそうです。

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チョイス@病気になったときより

肥満気味の人や脂っこい食事が好きな人、50歳以上の人は胆石が出来やすいそうで、最近では60歳以上の人に多く現れる傾向にあるようです。
石ができる原因は、歳とともに消化管の機能が低下することや、欧米型の脂っこい食事にあるのではないかと言われているそうです。

胆石発作は、みぞおち辺りの痛みだけでなく背部痛が出ることもあるそうで、吐き気を感じたり、さらに悪化すると発熱や黄疸が出ることもあるそうです。
胆のうが活発化する食後に発症することが多いという特徴もあります。

 

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リスクの低い腹腔鏡手術で胆のうを摘出

Kさんは、腹腔鏡手術で胆のうを摘出するという決断をしました。
腹腔鏡手術は、腹部にあけた小さな穴からカメラや器具を入れて、モニターを見ながら行われる手術のことです。胆のうをまるごと摘出する手術の8割は、この方法で行われているそうです。従来の開腹手術に比べると小さな穴をあけるだけなので、身体への負担が少ないのが特長です。
Kさんは入院翌日に腹腔鏡手術を受け、無事成功。「術後の痛みも特になかった」そうです。

摘出した胆のうを見ると、大変な状態になっていました。壊死性変化を起こしていたのです。

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チョイス@病気になったときより

緑色の部分は、血流が悪くなったために組織が死んでしまった部分です。このまま放置していたら胆のうに穴が空いて腹膜炎を起こし、命を脅かす可能性もあったといいます。

胆のうをすべて摘出してしまったKさんですが、「食べてはいけないものも特になく、普通に生活している」そうです。術後数週間は下痢が出る人もいますが、基本的には日常生活に支障はないそうです。
というのも、胆のうが摘出されると胆管を太くするなどの対応を身体が自然としてくれるので、とってしまっても問題がないのだそうです。

「だったら胆石が見つかった時点で胆のうを摘出すれば良いのでは?」と思ってしまいますが、腹腔鏡手術もリスクがゼロではないため、胆石があるだけで無症状の人に胆のうの摘出手術を勧めることはないそうです。

その他の胆石除去方法

胆石の治療法には開腹手術、腹腔鏡手術以外にも方法があります。
「体外衝撃波結石破粋療法」は、機械で体の外から衝撃波を加えて胆石を壊す方法で、ほとんど痛みを感じない療法です。
「胆石溶解療法」は飲み薬で胆石を溶かす方法です。
どちらも体の負担は少ないのですが、胆のうの機能が正常で、小さなコレステロール結石ができている患者だけが対象になります。
しかも、石を完全に除去できないこともあり、除去できても半数ぐらいの例で再発する可能性があるため、やはり主な治療法は腹腔鏡手術による胆のうの摘出になるそうです。

腹腔鏡手術は4日〜1週間程度の入院で、手術費は22万円プラス入院費で60万円(3割負担で20万)、さらに高額療養費制度を適用して約9万円になるそうです。
ただし、胆のうがんの疑いがある場合や、以前に手術を受けて内臓の癒着が考えられる場合は、開腹手術で摘出するしかないようです。

 

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胆のうポリープ

会社で経理を担当するNさん(50代女性)は、2年前に胆のうポリープが見つかりました。貧血が気になってエコー検査を受けたときに、胆のうに複数のポリープが見つかったそうです。

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チョイス@病気になったときより

多くはコレステロールポリープなど良性のものでしたが、なかには11ミリという大きなものも見つかりました。
ポリープの見極めの基準は大きさで、大きいと悪性の疑いが強くなります。
現在のガイドラインでは10ミリ以上のポリープはがん、またはがん化する可能性があるので、胆のうの摘出が勧められるそうです。

Nさんは5日間悩み続け、大きな専門病院で検査することにしました。
CTや超音波内視鏡、MRIなどで詳しく調べると、ポリープは11ミリではなく9ミリであり、その形からも良性の可能性が高く、手術の必要はないことがわかりました。

Nさんは「ホッとしたが、放っておいたらがんになるのではという不安な気持ちになった」そうで、以後半年に1回エコー検査などで定期検査しているそうです。
定期検査をすることによって心境にも変化が生じ、「細かいポリープもあるが、(ポリープの大きさなどに)変化があったら手術しようという感じで、いまは安心している」そうです。

都立駒込病院の神澤輝実医師によれば、「良性か悪性かを鑑別するには、ポリープの形や内部構造がよく見える超音波内視鏡が有用」だそうです。
超音波内視鏡検査は、体内から超音波を当ててポリープの形や構造を調べる検査です。他にも、血流量なども合わせてみることでがんの可能性を調べる「造影CT」や「造影超音波」などの検査法があり、エコー検査で10ミリを超えるものが見つかった場合は、これらの検査を行って詳しく調べるそうです。

 

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どうしても胆のうを摘出しなければならないケース

Mさん(50代女性)は24年前、胆のうにポリープが見つかりました。
娘3人の子育て真っ最中に体のだるさを感じ、病院で診てもらったところ、急性肝炎と診断されました。そこで肝臓を詳しく検査しているときに、医師から「胆のうに影がありますね」と言われたそうです。
CTや超音波内視鏡の検査を受けた結果、胆のうに10ミリのものも含む複数のポリープが見つかりました。

先述のように、これだけでは胆のう摘出をしない場合もありますが、Mさんは「膵胆管合流異常(すいたんかんごうりゅういじょう)」であったため、胆のうを摘出する決断をしました。
膵胆管合流異常とは、胆汁が流れる胆管と、膵臓からの膵液が流れる膵管の合流部分が一般的な形とは違っている状態です。通常、胆管と膵管は十二指腸に直接つながっているのですが、Mさんの場合は十二指腸の手前で両者が合流しているため、膵液が胆のうまで逆流してしまうことがあったのです。

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チョイス@病気になったときより

膵胆管合流異常が原因で胆のうがんになる可能性は極めて高く、がん予防のために胆のうを摘出することが強く勧められます。

24年前には腹腔鏡手術が普及していなかったため、開腹手術を受けたMさん。
手術は無事成功したそうです。

膵胆管合流異常だと、なぜがんになりやすいか

膵管の中の圧力は胆管の中よりも高いため、膵胆管合流異常があると膵液が胆管や胆のうの中に逆流します。長期間のこの刺激によって胆のうがんが発生しやすくなるのです。
驚くべきことに、膵胆管合流異常がある人のおよそ5割に、胆のうがんが発生するそうです。
この異常は生まれつきのもので、千人〜1万人にひとりの割合で存在すると言われています。見つかりにくいため、胆のうがんになってはじめて見つかるケースも少なくないそうです。

膵胆管合流異常の治療について

肝外胆管切除を行い、消化管と胆管を吻合することにより膵液と胆汁の相互逆流を遮断する分流手術が必要です。胆管拡張例では診断がついた時点で分流手術を施行することが推奨されていますが、胆管非拡張例では胆嚢摘出術のみ施行して経過観察することもあり、胆管切除を施行するべきか一定の結論は得られていません。

日本膵・胆管合流異常研究会ホームページより

 

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まとめ

胆のうのトラブルは、ひどい状態になるまで痛みがないという特徴があることがわかりました。普段意識しない臓器であることも、早期発見を難しくしているのかもしれません。
エコー検査などで胆石や胆のうポリープが見つかった場合は、痛みがなくても、必ず定期検査を受けるべきであることは覚えておきましょう。


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