先日の『きょうの健康』では、高齢者の糖尿病について特集していました。糖尿病はやはり高齢者に多く、70歳以上では約4割が糖尿病がその予備軍なのだそうです。手指がしびれる場合に考えられる病気の種類やその原因などについて詳しく伝えられていました。
解説をするのは、糖尿病の診療とともに糖尿病の発症メカニズムの研究も行っている、国立国際医療研究センターの植木浩二郎糖尿病研究センター長です。
今回の番組は、主に血中のHbA1c(ヘモグロビンA1c)の値をテーマにしたものです。HbA1cは血糖値を知るための指標のようなのですが、具体的にどういう働きをしている物質なのか、調べてみました。
ネットの情報によると、ヘモグロビンa1c(エイワンシー)は、血管内でブドウ糖とヘモグロビンが結合したものだとのことです。ヘモグロビンは赤血球内のたんぱくで、体中に酵素を運ぶ役割をしていますが、体内をまわりながらブドウ糖と結合するのだそうです。そして、余剰の糖が多いほどヘモグロビンと結びつくことが増え、結果としてグリコヘモグロビン(ヘモグロビンa1cのこと)が増えるのだそうです。
正常ではこのヘモグロビンa1cの値は4.7~6.2%で、6.5%以上で糖尿病が強く疑われるそうです。
このことを踏まえておくと、今回の番組の内容が若干理解しやすくなると思います。
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血糖管理の目標
高齢者は、糖尿病の治療に特別な注意が必要だということで、日本糖尿病学会と日本老年医学会は「高齢者がめざすべき血糖管理の目標」を初めて定めたそうです。
きょうの健康より
一般成人は、過去1~2ヶ月の血糖値の平均を示すHbA1c(ヘモグロビンA1c)で7%未満が基本目標であるのに対し、高齢者は一人ひとりの健康状態などに応じて7%未満、7.5%未満、8%未満、8.5%未満という4段階の数値のいずれかを目標にすることになったとのことです。すなわち高齢者は一般成人に比べて目標を少しゆるめるということです。
その理由について植木センター長は、
「低血糖を避けながら糖尿病を治療するのが最大の理由。
60歳以上の糖尿病患者を対象にしてHbA1cと合併症の危険度を調査したところ、HbA1cの値が高くなると合併症の危険度は高くなるが、一方HbA1cと死亡の関係を見ると、HbA1cが7%台が最も低く、6%を下回ると死亡率が上がっている。
このようにHbA1cが低い人の中に低血糖を起こしている人が多いと考えられる」
と解説します。つまり、高齢者は血糖値が高くてもいけないが、低すぎてもいけないということです。
きょうの健康より
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低血糖とは
低血糖とは、糖尿病の薬が効きすぎるなどの原因で血糖値が下がりすぎることです。
低血糖の症状
まず空腹感や脱力感、冷や汗やふるえ、動悸などが起きます。
血糖値がさらに下がることにより頭痛や吐き気、かすみ目や集中力の低下といった症状も出てきます。
さらにひどくなると意識障害やけいれんなどより重篤な症状が現れるそうです。
きょうの健康より
高齢者は、薬を分解したり排泄する機能が低下しているため、薬が想定以上に効いてしまうことがあり、低血糖が「起こりやすい」状態になっているとのことです。
同時に、高齢者では低血糖が「重くなりやすい」状態にもなっているといいます。加齢で自律神経の機能や認知機能が低下していることもあるので、低血糖でまず起こる「動悸」などの症状を自覚しにくかったり、低血糖を起こしてもそれを他人に訴えられないなどの状況から、低血糖が重くなりがちな傾向があるそうです。
低血糖の合併症
高齢の糖尿病患者では、動脈硬化の合併症が進んでいることが多く、重い低血糖では次のようなリスクが高まるそうです。
―心筋梗塞・脳梗塞
⇒HbA1cが低すぎる場合の死亡のリスクに!
―認知機能低下
⇒重い低血糖は脳にダメージを与えるので、認知機能は低下する
―転倒・骨折
⇒低血糖で意識レベルが低下すると起こる
⇒寝たきり状態になるリスク上昇!
すなわち、糖尿病の治療は高血糖を抑えることが目標であるものの、低血糖もデメリットが大きいので、高血糖と同じくらい避けなければいけないとのことです。
低血糖で心筋梗塞・脳梗塞のリスクまで高まることについて植木センター長は、
「低血糖は血液中のエネルギー源であるブドウ糖が不足している状態なので、体の緊急事態となる。その緊急事態に反応して交感神経が活発になり、脈拍が速くなったり血管の収縮が起こったり、血圧が上がったり、さらに血液が固まりやすくなるといったことがあこる。それが心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる原因だと考えられる」
と説明します。
低血糖の予防
低血糖も危険なので、防がないといけないことがわかります。予防としては、まず自分がどのような治療を受けているか=低血糖を起こしやすい薬を飲んでいないかを知ることだそうです。
低血糖を起こしやすい薬には、「インスリン製剤」、「スルホニル尿素薬」、「速効型インスリン分泌促進薬」などがあるそうです。これらを飲んでいれば、食事を抜いたり量を減らしたり、または運動などで体を激しく動かすことにより血糖値が下がりすぎることがあるので要注意ということです。
実際に低血糖が起きてしまった場合には、砂糖を含むものやブドウ糖をすぐに摂取して対処し、血糖値を上げます。
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高齢者の目標値 設定の仕方
高齢者一人ひとりの健康状態などに応じて血糖管理の目標は変わり、
―認知機能が低下していないか
―日常生活の動作がひとりでできるか
という2つを見極めます。
認知機能が正常で、日常生活の動作も自立している →カテゴリー1になります。
認知機能に軽い障害があるか、日常生活動作が少し低下している(=買い物や食事の準備が自立してできない)→カテゴリー2になります。
認知症進んでいるか、日常生活動作が大きく低下している(=服を着たり入浴、トイレといった基本の動作ができない) →カテゴリー3になります。
さらに低血糖が心配される薬(インスリン製剤、スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬など)を使っているかどうかでも目標値の設定が左右されます。
カテゴリー1で低血糖が心配される薬を使っていなければ、HbA1cの目標値は7.0%未満、
カテゴリー1で低血糖が心配される薬を使っており、年齢が65~74歳だと7.5%未満、
カテゴリー1で低血糖が心配される薬を使っており、年齢が75歳以上だと8.0%未満、
となります。
きょうの健康より
カテゴリー2で低血糖が心配される薬を使っていなければ、HbA1cの目標値は7.0%未満、
カテゴリー2で低血糖が心配される薬を使っていれば、8.0%未満、
カテゴリー3で低血糖が心配される薬を使っていなければ、8.0%未満、
カテゴリー3で低血糖が心配される薬を使っていれば、8.5%未満が目標値
となります。
きょうの健康より
この目標値について植木センター長は、
「HbA1cは7%以下でないと合併症は防ぎにくいが、認知機能や日常生活の動作に支障がある高齢者には、合併症よりも低血糖のほうが生活の質や予後を損なうリスクが高い。そのことを考慮して設定された目標となっている」
と説明します。
高齢者の目標では、低血糖が心配される薬を使っている場合に限り、HbA1cの下限の値も定められたそうです。
きょうの健康より
この下限の値の意味について植木センター長は、
「低血糖を起こしやすい薬を使っている場合に、この下限値より低い値だと低血糖を起こしている可能性が高まっていると言える。なので、これより低い値は目指さないようにするという意味。ただ、高齢者でも若い人と変わらず健康な人もいるので、主治医と相談しながら、一般成人の目標を採用してもよい」
と語ります。
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筋肉量と糖尿病の関係
糖尿病の高齢者は筋肉が減少すると糖尿病も悪化することにも注意が必要だそうです。
そのしくみですが、植木センター長は、
「高齢者は加齢や生活習慣によって筋肉が減ったり筋力が低下しやすい。それが進んだ状態は『サルコペニア』と呼ばれる。
筋肉は多くのブドウ糖をエネルギー源として消費する大事な臓器だが、筋肉が減少すると体全体のブドウ糖の消費が減るので、血糖値が上がりやすい状態になる。糖尿病の原因にはインスリン分泌量の低下と、肥満によるインスリン抵抗性の2つ以外に、最近では3つ目の原因としてサルコペニアが注目されている。」
と解説します。筋肉量の低下は、糖尿病の大きな原因になっているということです。
きょうの健康より
筋肉の減少を防ぐには
高齢者は、筋肉を鍛え、維持するための運動を積極的に行うことが必要だそうです。
スクワットは、筋肉が多い太ももやお尻が鍛えられるので効果がありますが、高齢者がより安全に行うために、通常のスクワットではなくいすを使ってゆっくり行うことが推奨されます。
きょうの健康より
片足で立つ運動も、より簡単で効果があるそうです。左右の足で交互に、それぞれ1分くらいずつ続けて立ちます。こちらも転んだりしないよう、机や壁などを支えにしながら安全に行うのがよさそうですね!
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まとめ
高齢者の糖尿病は、認知機能や生活機能のレベル、そして特定の薬の服用の有無で血糖値の管理目標が決まってくることが理解できました。高血糖だけでなく、低血糖も致命的な影響を与えることがあるのですね!やはり糖尿病にはかからないのが一番なので、まだなっていない人は、まずはサルコペニアに陥らないよう、若いうちから筋トレに励むのがよさそうですね!