腰痛の原因~負担とストレスを和らげて改善する方法~チョイスより

先日の『チョイス@病気になったとき』では、「腰痛とオサラバするためのチョイス」と題し、腰痛対策について特集していました。日本人の8割が経験しているという身近な病気ですが、今、腰痛の常識は大きく変わりつつあるのだそうです。とても簡単に取り組めるのに腰痛に効果のある体操を紹介したり、最新の科学の見地から腰痛について解き明かしたりしていました。

 

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腰痛治療のイメージ

腰痛の原因は、現代の進歩した医学をもってしても、85%のケースで原因は不明のままで、特定できるケースははわずか15%なのだそうです。
従来の腰痛治療のイメージは、まず湿布やマッサージ、針灸などで自分でケアし、それでも改善がなければ整形外科を受診して治療。それでも治らない場合には手術という過程を経ます。
しかし最新医学は、このイメージがガラリと変わるほど進歩しているといいます。

<Sさんのケース 腰痛悪化の過程>
29歳の女性Sさんは、7年前、激しい腰痛に襲われました。普通のぎっくり腰とは比べ物にならない痛みで、通常の生活ができないほどだったそうです。立ち上がろうとしたところ突然痛みを感じ、整形外科を受診したところ、ぎっくり腰と診断されます。
医師の指示に従って絶対安静にしながら鎮痛薬を飲むと、1週間で回復しました。以降は重い荷物を持つときに意識したり、少しでも痛いとコルセットをしたり、腰痛が再発しないように気をつけていたそうです。
2年後、就職を機に生活が変わったある日、ソファに座ろうとした瞬間に腰痛が再発しました。全身に走るような痛みで悶絶し、立てないほどだったといいます。年末で近所の病院も開いておらず、自宅で安静にすることにしましたが、痛みが全くひかず、激化するばかりだったそうです。1歩歩くのが辛く、いすにしがみついて移動するほどで、痛みで寝ることもできず、寝返りもうてないほどでした。
日常生活もままならず、2ヶ月後には仕事を退職することに!
治療法が見つからないこともSさんを追い詰めました。医師ごとに言うことが違い、何を信じていいかわからなかったとSさんは振り返ります。手術を勧められたこともありましたが、失敗した人の話などを聞くと踏み切れなかったそうです。

 

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原因不明の腰痛の真犯人とは

昨年からSさんの治療にあたっている東京大学医学部附属病院22世紀医療センターの松平浩特任教授は、

「鎮痛薬を処方し、それを服用するのが一般的な対症療法。それでも改善しないときは画像検査や血液検査を行う。Sさんは一般的なぎっくり腰から始まったが、原因の特定が難しいケースと言える」

と語ります。そんな原因不明の腰痛にも真犯人はいると言います。長引く腰痛の真犯人は、「恐怖」と「借金」なのだそうです。

<恐怖>
「恐怖」=ぎっくり腰になると脳が「こわい」と覚えてしまい腰をかばうので、徐々に腰まわりが硬くなり、逆に怪我しやすくなる・・・、これは「恐怖回避思考」と呼ばれ、最近注目されている腰痛悪化のメカニズムなのだそうです。

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チョイスより

痛みへの「不安」から長時間コルセットをつけ続けるなど腰をかばって「安静にしすぎる」と、腰まわりの血流が悪化します。そのストレスで脳にまでダメージが及び、痛みの感じ方を抑えるシステムが機能しなくなり、痛みが激化するという悪循環を招くというのです!
恐怖回避思考を招かない、上手なコルセットの使い方について松平特任教授は、
「ぎっくり腰になったあと、コルセットは最初の数日だけにし、それ以降はなるべく普段どおりにして依存しないようにする」
とアドバイスします。

<借金>
「借金」といっても金銭を借りる借金ではありません。この場合、髄核のズレなのだそうです。髄核は、背骨と背骨の間でクッションの役割をしている椎間板の中にあり、前後左右に動いています。

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チョイスより

正常な場合は真ん中にありますが、前かがみの動作で腰に負担がかかると、髄核が徐々に背中側にずれます。椎間板の外側に傷がつくとぎっくり腰になるそうです。

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チョイスより

髄核が椎間板から完全にはみ出してしまうのが「椎間板ヘルニア」なのだそうです。

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チョイスより

すなわち、腰痛になる前には髄核のズレという借金の積み重ねがあるのです。

 

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「恐怖」と「借金」の解消法、「これだけ体操」

「恐怖」と「借金」のどちらにも効果があるのが「これだけ体操」だそうです。気になったときにやるだけでよく、あごをひいてひざを曲げないよう、正しいフォームで行うことがポイントです。

1) 肩幅より少し広く足を開く
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2) おしりに手をしっかりあてる
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3) 骨盤を手で押し込むイメージで体を反らす。ひざは曲げず股関節の前側が伸びるようにする
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4) 反らしたまま息を吐きながら3秒押し、ゆっくりと戻す。イタ気持ちいいぐらいの強さで行うと「借金」が返されます!

チョイスより

「これだけ体操」、左右チェックバージョン

壁を用いて、髄核を「左右」方向にも保ちます。

1) 肩の高さに腕をしっかり安定させて立つ
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2) 壁と足の距離を、壁と肩の距離の2倍にする
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3) 手をベルトのラインに当てて、体が「く」の字になるよう手で押し込む
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4) 左右どちら側もやってみて、やりづらい方をチェックし、やりづらい方で5秒間を5回行う

チョイスより

この左右チェックバージョンは2~3日に1回すればOKで、ポイントとしては猫背にならないことと、やりづらい方を重点的にすることだそうです。そして左右チェックバージョンのあと、仕上げに「これだけ体操」を加えるとよいとのことです。

 

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これだけ体操の効果

20年以上慢性の腰痛に悩まされているという50歳男性のKさんが、これだけ体操に取り組みました。物流の仕事で荷物を扱うので、日ごろから腰に負担がかかり、毎朝コルセットをつけるそうです。

「これだけでよくなるのか?」と半信半疑のKさんでしたが、腰に負担のかかりそうなとき、そして腰に負担がかかった後などにこれだけ体操を実践しました。すると、2週間後には6歳の子を無理なく抱き上げられるほどになり、「知らない間に痛みを感じなくなっていた」という感想が出るほど腰痛が改善しました。

これだけ体操は、痛くなる前、痛くなったとき、医療機関にかかっているときも行える体操だそうです。
注意点としては、次の2点のいずれかに該当する人は、他の病気の可能性もあるので、体操をやめて医療機関にかかるようにとのことです。

― お尻から太ももにかけて痛みやしびれを感じた人
― 体操後も10秒以上痛みが続く人

 

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腰への負担を軽減する方法

新潟医療福祉大学医療技術学部の勝平純司准教授は、人間の動きを3次元的に解析する技術である「モーションキャプチャー」を研究しており、この技術で腰にかかる負担もわかるそうです。
人の動きを7台のカメラで捉え、解析しますが、くしゃみをすると腰になんと237kg重もの負担がかかっていることがわかりました!
また解析の結果、負担を減らす方法も明らかになったとのことです。くしゃみをするときは、机に手をつくだけで、腰への負担が92kg重と62%も軽減されていました。

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チョイスより

他にも、重いものを持ち上げるときは、離れたところから前かがみになるのではなく、まず物に近づき、きちんとしゃがんで、背筋を伸ばしながら持ち上げると負担が軽いそうです。これだけで、腰への負担は43%も減っていました。

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チョイスより

台所などでの長時間の立ち仕事では、片足だけ台に乗せると前かがみの角度が浅くなり、腰への負担は57%も軽減されます。上げる足は時々変えて、台は高すぎないほうがいいとのことです。

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チョイスより

立ったまま靴下を履くときも、壁におしりをつけて履くと前にかがむ角度が浅くなるので、34%の負担減になるそうです。

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チョイスより

<前かがみになるときのポイント>
骨盤のところから背骨がまっすぐになっているかどうかで、腰への負担が変わってくるそうです。「ハリ胸&プリけつ」の姿勢が腰への負担を減らしてくれるのです!

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チョイスより

1)足は肩幅に開き、小さく前へならえのポーズをとる
2)手のひらは上に向け、胸を開く

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チョイスより

3)おしりをつき出しながら前にかがむ
4)手を下におろす

松平特任教授は、
「前かがみの作業は、とにかく体の近く=重心の近くで作業することが重要で、一番の方法として胸ハリ、プリけつを意識するとよい」

と指摘していました。

腰痛にならないようにするには、まずは腰への負担を軽減するワザとハリ胸&プリけつを実践することです。
腰痛に関するアドバイスとして松平特任教授は、

「借金(髄核のズレ)をためないための予防をすれば、腰痛は怖くない」

ということを挙げていました。

 

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腰痛治療の最前線

腰痛治療の最終手段と考えられている手術ですが、腰椎を手術しても腰痛が残る割合は6割にものぼるのだそうです。

おしり神経腰痛

Hさん(75歳男性)は、8年前に腰痛と足のしびれを発症し、歩けなくなりました。痛みがひどく、5メートル歩くと20分休む状態だったそうです。整形外科では脊柱管狭窄症と診断されました。
脊柱管狭窄症は、加齢などで腰の骨が変形し、背骨の中の脊柱管を圧迫するものです。脊柱管には神経や血管が通っているため、圧迫されると激痛やしびれが起こります。

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チョイスより

脊柱管狭窄症になると一般的に、鎮痛薬や血流改善薬が処方されるそうです。Hさんも薬を3年間飲んだものの、症状はよくなるどころか悪化したため、脊椎固定術という手術を決意します。これは不安定になっている脊柱管の周りの骨を整えるため、変形した椎間板を人工のものに入れ替え、金属で腰の骨を固定することで神経を圧迫しないようにする術です。

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チョイスより

Hさんは術後4日目には歩けるようになりましたが、1ヶ月後にはまた腰痛が戻ってきたそうです。痛みとしびれに苦しみながら、4年後、日本医科大学千葉北総病院の「脳神経外科」で手術後の痛みに特化した研究が行われていることを突き止め、受診しました。

脳神経センターの金景成医師がHさんのX線写真を見たところ、手術自体はうまくいっていたものの、CTやMRIでもうつらない細い神経が腰痛を起こす「上殿皮(じょうでんひ)神経障害」であると見抜きました。

上殿皮神経障害とは、おしり神経腰痛とも呼ばれ、左右の腰の内部からおしりの表面にかけて「おしり神経」が通っているそうです。加齢などで腰の筋肉が緊張するとおしり神経がひっぱられ、「腸骨稜」という骨盤の最も出っ張った部分で神経が圧迫され、痛みやしびれが生じるのです。

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チョイスより

おしり神経腰痛の発見と治療

おしり神経は直径2mmと細く、CTやMRIでも見ることができないため、これまでは原因不明の腰痛として片付けられてきたとのことです。おしり神経腰痛であることを見抜くには、おしり神経が通る部分を医師が直接手で押して、痛みが出るかを確かめるという方法によります。
治療は、「上殿皮神経ブロック」という注射による治療法となります。おしり神経が引っ張られた部分に麻酔を打ち、過敏になっている神経を鎮めて症状を緩和するとのことです。注射から1分後にはHさんの腰は伸びて痛みがなくなり、来るときには使っていた杖なしで歩いて帰宅できました!

金医師は、

「医師は画像診断に頼りがちだが、上殿皮神経障害のような画面にうつらない疾患にも今後さらに注目していかなければならない」

と述べました。さらにおしり神経腰痛に詳しい釧路労災病院脳神経外科の井須豊彦部長は、

「最近の報告では腰痛の14%がおしり神経腰痛。釧路労災病院では日常生活を送れないほどの腰痛患者にブロック注射を行っているが、10日間という短期に4~5回と集中して注射を行うと、6~7割の人で1年半ほど治療効果が持続している」

と説明します。まとめての注射はちょっと怖い気もしますがその後1年半も痛みが和らぐのはカンジャンさんにとっては救いの手だといえるでしょう。
この治療が受けられる場所については、

「おしり神経腰痛は認知されはじめたばかりで普及していないので、どこででも受けられる治療にはなっていない。ただ、注射を取り入れている施設は増えてはきている。普及していかなければならない」

と指摘します。

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番組で取り上げられていた金医師は、上殿皮神経障害治療の第一人者のようで、AllAboutの「痛み・しびれガイド」を担当されています。こちらのページ(http://allabout.co.jp/gm/gc/445592/)で上殿皮神経障害について金医師が簡潔に説明しています。
この治療を行っている医療機関はまだ多くないようですが、検索するとざっと次のようなところがヒットしました。

日本医科大学千葉北総病院 脳神経センター(千葉県印西市。金医師所属)
釧路労災病院 脳神経外科(北海道釧路市。井須部長所属)
横浜市立脳卒中・神経脊椎センター(横浜市 磯子区)
林脳神経外科内科クリニック(東京都杉並区)
日本医科大学付属病院 脳神経外科(東京都文京区)
福岡大学医学部 脳神経外科(福岡市城南区)
小西第一病院(福岡県筑紫野市)

お近くに医療機関がない方は、まずはかかりつけ医に相談されてみてはいかがでしょうか?

 

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まとめ

多くの人が苦しみ、また原因がわからず治らないものとあきらめるケースも多い腰痛ですが、治った方の事例も多く紹介され、希望が持てた方も多いのではないでしょうか。
腰痛の再発が怖いからといってかばいすぎると、余計に腰痛を引き起こすこと
腰痛の遠因である髄核のズレは「これだけ体操」で改善すること
腰に負担のかからない動作があること
CTやMRIではわからないからと従来は原因不明で片付けられてきた腰痛も、注射で治療が可能であること
など、腰痛にまつわるさまざまな新常識がわかりました。これからはただ我慢するのではなく、自分でできる予防には積極的に取り組みたいものですね!


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